
2020年6月1日
この記事はJan Gondol、Ebba Ossiannilsson、Karolina Szczepaniak、Spencer Ellisと共同で執筆された。本記事の一部はOpen Government Partnershipのサイトに掲載された。
私達は今、オープン教育リソース(OER)への支持の拡大と、従来の教育制度の壊滅的な混乱に直面している。COVID-19によって15億人もの若者が登校できておらず、数多くの教師や親はオンライン教育へ方向転換しており、教育制度は巨額の財政的な負担と向き合っている。OERは今起きている教育危機を解決できる魔法の薬ではないが、教育を取り巻く環境のレジリエンスを高め、国際的な協力をサポートするためにオープン教育に取り組むことは有効だ。
現在は、OERを使った教育への取り組みと集団としての貢献を加速することへの、より多くのニーズと、確立された国際的な枠組みがある。今回のパンデミックは、情報とコミュニケーションへのアクセスを遮断することがコミュニティにどのような影響を及ぼすかを明らかにしている。しかし同時に、(情報の自由な共有、教育資料への自由なアクセスなどの)オープンプラクティスが人間の集団的安全保障にとっていかに重要かも明らかにしている。
COVID-19への対応でOERを活用している事例
変化の激しい現在においてOERはより機敏な解決策を提供する。OERは増加しているオンライン学習者のニーズに応えるために教育者が教育リソースを加工することを可能とする。そのニーズは母語への翻訳、アクセシビリティ、低いコストなど様々である。
COVID-19への対応としてどのようにOERを活用すればよいのだろうか? 以下に挙げるのはその事例だ。
ほとんどの事例は着手し始めることはできるが、短期間で完全に実現することはできない。むしろこれらの事例は、よりレジリエンスのある教育プラクティスを実現するための枠組みを定義している。
- オープン教育プラクティスのメリットを示す好例に、スロバキアの最近のOpen Government Partnership (OGP)の誓約がある。スロバキアOGPチームは、スロバキア語で利用可能なオープン教育リソースを整理している。スロバキアのOGPチームはCOVID-19に伴い学校が閉鎖された際に速やかにリソースの概観の進行中のバージョンをソーシャルメディアを通じて公開した。これはスロバキアOGPチームのFacebookの投稿で最も人気の高いものとなった。教師と生徒の親は、リソースに即座にアクセスし、加工し、自由に再利用することが非常に有益であることに気づいた。このインパクトは現在の危機が去った後も長く持続するのではないだろうか。
- ポーランドにおいて60万の教師と480万人の生徒を対象とする2万4000の学校で遠隔授業モデルへの移行が素早く行われる中で、NGOはオープン教育リソースを用いることで教師の授業への取り組みを即座に強化することができた。ポーランドの国民教育省の(OERである)電子教科書の教育プラットフォームは、以前は教師の間では十分に活用されていなかったが、即座に、制限なく利用可能であったことから、重要なかつ十分に活用されるリソースとなった。ウェブサービスのLessons on the Web(Lekcje w sieci)は3週間のうちに、すべての教育レベルにあわせた200を超えるOER授業シナリオを作成した。
- ドイツのウィキメディアとedu-sharing.netは共同でWir lernen online(一緒にオンライン学習)というサービスを4月に開始した。このオープン教育プラットフォームは学校による家での授業をサポートするデジタルインフラを強化するもので、主催者は教育セクターのステークホルダーとの協力を歓迎している。
- ノルウェー政府、UNESCO、UNHCRおよび複数の営利組織や非営利組織がオープンライセンスの子供向けの本(OER)の翻訳を支援することで提携した。このプロジェクトはTranslate a Storyと呼ばれ、子どもたちがパンデミック中そしてパンデミック後も読み続けられるよう支援することを目的としている。
OERを支援している国際的な枠組み
OERとオープンガバメントの取り組みに強い交点があることを多くの国々が認識している。ここ10年間でチリ、ギリシャ、ルーマニアといった多くの国々が、透明性、説明責任、市民の参加、教育システムでの多様性の受け入れ、財政の説明責任、公共サービスの改善といったOGPの目標に取り組むためにOERの取り組みを活用してきた。9つのOGPの誓約がオープン教育リソースの利用を通じていかにOGPの目標の達成を支えているかについて、このサイトで読むことができる。2019年のOGP Global Reportでは2018年の終わりには少なくとも160の教育についての誓約があったと報告している(教育の章 6ページ)。教育の章では、従来の資料では法外な価格が設定される可能性、オープンソースの資料は常に最新の状態に保つことができること、より高い学生のパフォーマンス、等を含むOERを選択するべき理由がとりあげられている(23ページ)。
オープンな政府の取り組みに加え、各国政府、国際的・地域的組織は、OER、そしてオープン教育の目標を支援する国際的なフレームワークのもとに協力することのポテンシャルを認識している。2019年の11月にUNESCOはオープンでインクルーシブ、かつ参加型である知識社会を構築するためにUNESCO OER 勧告を全会一致で採択し、勧告を支援するために連携をとった政府、市民社会、民間企業の専門家から構成される連合体(ダイナミック コアリッション)を設立した。OER勧告はSDG4の取り組みと非常にうまく合致するもので、オープン教育が「インクルーシブで公平な質の高い教育」と「すべての人が生涯に渡って学習する機会」を支援することができることを強調している。
各国の政府はSDG4の目標の達成、OER勧告のアクション、OGPの義務を果たすためのパートナーシップとオープンプロジェクトを探している。今こそOERの取り組みにてこ入れし、SDG、UNESCO OER勧告、OGPの諸目標を同時に満たすための格好の機会だ。そして同時に、COVID-19への対応として教育制度に一層のレジリエンスを組み込むべき時でもある。
参加しよう
OERは多くの場合、教育リソースを共有することに情熱的で、オープン教育に熱心な人たちのネットワークとつながりを持っている。
オープン教育ネットワークはハウツー面を扱うウェビナー、心のケア、オープンリソースのリストを通じて、教師、保護者、生徒、支持者へのアウトリーチを提供してきた。こちらのWikipedia記事の一節ではリソースと反応の一部を見ることができる。そしてオープン教育の取り組みに関わる機会を話し合うためにクリエイティブ・コモンズのオープン教育関連のメーリングリストまたはSlackコミュニティに参加しよう。
👋 COVID-19の拡大を食い止めるためにWHOがまとめているとおり、20秒以上の手洗いや、密集・密接を避けることなどを実践しましょう。
このブログ投稿は Jennryn Wetzler による“Leveraging OER for COVID-19 Response Efforts and International Partnerships”を翻訳したものです。
(担当:豊倉)