オープンデータ

Open DATA METIサイトでCCライセンスを採用

政府の持っている情報(データや著作物など、ありとあらゆる情報)を広く公開して国民に活用してもらい、経済活性化につなげていこう、また、同時に行政の透明化を図ろう、という理念から、政府情報をオープン化して、インターネット上で二次利用可能な形で公開する動きが世界中で始まっています。欧米では特に、税金を払って作られた政府のデータは、もともとは国民のものではないか?そうだとすれば、国民に還元して当然ではないか?という意識がとても高いため、ビックデータ時代の到来を背景にしてこのような動きが高まってきたのは、とても自然なことかもしれません。

こうした取り組みは、オープンガバメント、オープンデータなどと呼ばれることが多く、欧米をはじめ世界中に例があります。たとえば、2009年12月に米国のオバマ大統領が就任後の目玉政策のひとつとしてOpen Government Initiative を発表し、2010年3月には英国のキャメロン首相が政府機関宛書簡で推進姿勢を打ち出しました。その他、フランス、オーストラリア、ニュージーランドなど、多くの国でオープン・ガバメントの動きがあり、オープンガバメントを推進する国際的イニシアチブであるオープン・ガバメント・パートナーシップ(Open Government Partnership)の参加国や、オープンデータの提供ウェブサイトのリストなどを見るとその広がりが伺えます。こうした世界的な潮流の中で、CCライセンスの政府や公的機関による利用例についても30ヶ国を超える国での利用が報告されています。

日本でも、2012年7月に「電子行政オープンデータ戦略」がIT戦略本部で打ち出され、現在その具体的な内容について電子行政オープンデータ実務者会議で議論が行われています。この動きと並行して、いくつかの省の中でも具体的な取り組みが検討されています。

と、前置きが長くなってしまいましたが、今回ご紹介するのは、この日本におけるオープン・ガバメントの動きの中で、経済産業省の取り組みです。経済産業省の取り組みは、主に公共データWGで議論されていますが(筆者も委員の一人です)、まずは、モデルケースとしていくつかのデータを公表してみよう、ということになり、下記の経済産業省のオープンデータサイト(Open DATA METI, http://datameti.go.jp/)で統計データと白書データが公開されました。

統計データには、CC表示ライセンスが、白書データにはCC表示-改変禁止ライセンスがつけられています。CCライセンスは、上記でもご紹介したとおり、すでに世界中で広く使われているライセンスですので、今後の世界規模でのビック・データの動きも視野にいれて考えた場合、日本でもCCライセンスを採用してくださったことはとてもよい動きだと思います。

なお、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは著作権に関するライセンスですので、著作物ではないもの(統計データなどの数値がその代表です)についてまで及ぶものではありません。(Open DATA METIサイトの利用規約も、「当サイトの内容(掲載されている情報を含む。)に存在する著作物の著作権は注があるものを除いて、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示 2.1(http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/)のもとでライセンスされています。」と記載されていますので、著作物ではないものには適用されないということだと思います。)

白書については、改変禁止がついている点は今後の課題だと考えています。この点は、公共データWGの第4回会合でも取り上げて議論しましたが、経済産業省としては、不正確な引用などで誤解を招く利用をされた上で経済産業省の名前を使われることに対して警戒していることが、改変禁止を利用条件とした主な理由であるとのことでした。公共データWGでは、私も含め多くの委員から、改変を許容したほうが翻訳や要約など正しい二次利用が促進されるため望ましい、不適切な利用への対策は別の方法で検討すべきだとの意見が出されました。私としては、この点は、基本的には第三者が検証し指摘することで訂正されていくことで対応すべき問題だと考えています。

2013年はオープンガバメントにとって大切な年になると思います。このブログでも出来るだけ発信しますが、皆様に是非興味を持っていただければ嬉しいです。

(文責:野口)

第5回CCサロン:「建築・都市におけるソーシャルデザインの可能性」開催のお知らせ

00

クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCJP)による、オープンカルチャーに関する新しい対話の場/学びの場である「CCサロン」第5回「建築・都市におけるソーシャルデザインの可能性」を開催いたします。

00
0021世紀に入り、日本では、人口減少・高齢化と経済停滞による財政上の問題を前に、公共建築や都市計画の設計のあり方が変容を余儀なくされている。2040年には空き家率が40%に達することや、現在の建築物の床面積を3,4割に圧縮しないと維持することができなくなる等の研究・報告がなされるなかで、これまで構築されてきた既存の公共建築や社会的インフラ等のリソースをどう有効再利用または縮小していくか?これらは公共建築に特有の問題なのか?それとも商業施設や戸建ての住宅にも適用可能なのか?
00
00一方で、インターネット/デジタル技術の発達により、建築や都市計画の設計における技術的・データベース的なインフラは整いつつあり、それをベースにして、よりプロセスをオープンに透明化・可視化する集団的設計のあり方も模索されるようになった。そして、それは政府や教育機関の情報を市民に対して公開・透明化するという、オープンガバメント・オープンデータという世界的な潮流とも整合しているように思われる。そのような流れのなかで、建築のデザインとクライアント・住民の要求のバランスをいかに図っていくのか?
00
00今回のCCサロンでは、日本社会の縮小をポジティブに捉え直す「列島改造論2.0」を構想し、「公共建築から考えるソーシャルデザイン・鶴ヶ島プロジェクト」なども行っている建築家の藤村龍至氏、そして、オープンガバメント・データの専門家であり、『情報社会と共同規制』などの著書でも知られる生貝直人をゲストに、集合知的な建築、都市計画、そして(ソーシャル)デザイン等の可能性をオープンガバメント、オープンデータといったオープン化の流れの中で多角的に議論してみたい。
00
00

【開催概要】

日時:2013年2月3日(日)16:00~18:00

場所:loftwork Lab

東京都渋谷区道玄坂1-22-7 道玄坂ピア10F

地図: http://www.loftwork.jp/profile/access.html

ゲスト:藤村龍至(建築家)、生貝直人(博士(社会情報学)、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教)

モデレーター:ドミニク・チェン(CCJP理事)

【入場料・申込方法】

入場料:1,500円(including 1 drink)

申込み:こちらに入力お願いいたします。

【プロフィール】

■藤村龍至(建築家) 1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年より藤村龍至建築設計事務所主宰。2010年より東洋大学専任講師。2007年よりフリーペーパー『ROUNDABOUT JOURNAL』企画・制作・発行。2010年よりウェブマガジン『ART and ARCHITECTURE REVIEW』企画・制作。

建築家として住宅、集合住宅、オフィスビルなどの設計を手がけるほか、現代の建築、都市に関わる理論を発表し、建築系、思想系の専門誌などに寄稿を行う。建築や都市に関わるテーマでフリーペーパーや書籍、シンポジウム、トークイベント、ウェブマガジンの企画・制作・編集、展覧会のキュレーション等、メディア関連のプロジェクトを数多く手がける。近年は、公共施設の老朽化と財政問題を背景とした住民参加型のシティマネジメントや、日本列島の将来像の提言など、広く社会に開かれたプロジェクトも展開している。

主な建築作品に「BUILDING K」(2008)「東京郊外の家」(2009)「倉庫の家」(2011)「小屋の家」(2011)「家の家」(2012)。主な編著書に『1995年以後』(2009)『アーキテクト2.0』(2011)『3・11後の建築と社会デザイン』(2011)『コミュニケーションのアーキテクチャを設計する』(2012)。主なキュレーションに「超都市からの建築家たち」(hiromiyoshii, 2010)「CITY2.0」(EYE OF GYRE, 2010)「超群島 -ライト・オブ・サイレンス」(青森県立美術館, 2012)

■生貝直人(博士(社会情報学)、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教 1982年埼玉県生まれ。博士(社会情報学、東京大学)。2005年慶應義塾大学総合政策学部卒業、2012年東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。情報・システム研究機構融合プロジェクト特任研究員、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教、東京藝術大学総合芸術アーカイブセンター特別研究員、特定非営利活動法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事、総務省情報通信政策研究所特別フェロー等を兼任。

専門分野は日米欧の情報政策(知的財産、プライバシー、セキュリティ、表現の自由)、文化芸術政策。『情報社会と共同規制』により第27回テレコム社会科学賞奨励賞受賞。

政府と図書館: クリエイティブ・コモンズを利用したデータのオープン化

ここ数か月、オープンデータを取り巻く状況は刻々と変化しています。その中でも、政府や図書館に関係したオープンデータの動きが顕著です。今回は、最近オープンデータを採用したオーストリア政府、イタリア文部省(教育・大学・研究機関担当)、イタリア下院議会、ハーバード図書館の事例をご紹介したいと思います。

Open data / opensourceway / CC BY-SA

Open data / opensourceway / CC BY-SA

オーストリア政府は、膨大なデータを公開するオープンデータ・ポータルを、CC BYライセンスで開始すると発表しました。このポータル利用規約においては、オープンデータを行う場合にCC BYライセンスの付与を推奨すること、そしてそのようなデータの詳細にはCC BYランセンスを付与した旨を記載することなどが述べられています。

イタリア文部省も、CC BYオープンデータ・ポータルを開始しました。このポータルには、イタリア国内の学校に関するデータ(住所・電話番号・ウェブサイト・管理番号など)、生徒の情報(学生数・性別・成績)、教員の情報(教員数・性別・退職の有無など)が含まれています。同省は、透明性を高めるため、ゆくゆくは全データを二次利用のために公開・オープン化することを目標としており、同時に、教育システムに対する理解を高め、生徒・教員・保護者のための新しいツールやサービスが作られていくことを助けたいと考えています。

また、イタリア下院議会は、CC BY-SAで関連オープンデータを公開するプラットフォームを開発しました。

続いて、米国ハーバード図書館の事例です。同図書館は、1200万点もの目録CC0を使ってパブリック・ドメインとして公開しました。CC0とは、作品をパブリック・ドメインに置くため“いかなる権利も保有しない”という意思表示をするためのツールです。この動きは、ハーバード図書館のオープン・メタデータに関する指針に従ったものであり、FAQでは以下のように述べられています。

CC0 パブリック・ドメイン表示によって、ハーバードは、メタデータにおけるいかなる著作権、それに付随する権利を放棄することになります。これにより、データの幅広い利用とその利用によって生じる発展が期待され、図書館コミュニティーと市民の双方にとって有益なものとなると信じています。

また、ハーバードのプレス・リリースには、オープンデータ化を進めた動機について、以下のように書いています。

DPLA(Digital Public Library of America)の議長であるJohn Palfrey氏は、「この素晴らしい提案によって、多くの開発者は、地方公共図書館や研究図書館・博物館・アーカイブや文化的コレクションを含む、重要な国のリソースを利用した革新的アプリケーション構築を試みることが可能になります。」と述べました。さらに、彼は、「今回の動きが、その他の機関においても、それぞれのコレクション・メタデータを公開するきっかけになれば嬉しい。」とも話しています。

オープンデータにCCツールが利用されることは、非常に喜ばしいことです。CCとデータに関する質問はこちらをご覧ください。このFAQには、データを公開している政府・図書館・組織へのリンクも掲載されています。

原文: Government and Library Open Data using Creative Commons tools
http://creativecommons.org/weblog/entry/31884
公開日時: 2012年4月24日
BY Jane Park (Communications Manager)

Nature Publishing GroupがCC0で45万点以上の出版データを公開

Ideal Knot final rendering / Matt Biddulph / CC BY-SA

Ideal Knot final rendering / Matt Biddulph / CC BY-SA

2012月4月4日、Nature Publishing Groupは、新しいLinked data(データをオープン化するためのデータの共有方法)のプラットフォームを始めることを発表しました。 これにより、2000万点ものリソース・ディスクリプション・フレームワーク(RDF)のステートメント へのアクセスが可能になります。この中には、NPGが1869年の創刊以来発行してきた45万点以上もの記事の主要なメタデータも含まれています。また、これらのデータは、NPG特有のオントロジー(メタデータを各文書に加え、それを記述する用語を定義する構造)と同様に、基本的な引用情報(タイトル・著者名・発行日など)も含有しています。そして全てのデータは、記事をパブリックドメイン化するために、CC0のライセンスの下で公開されています。CC0はライセンスではありませんが、作品に生じる(存在する)著作権とデータベースに関する権利の放棄を永久的に望むなら、誰でも利用できる法的手段です。つまり、CC0の利用によって、可能な限り作品をパブリックドメインに近いものにできるのです。

今回の動きは、NPGが2009年に発行した数ある記事の中でも、特にこの意見記事「データとツールを取り巻く今後の出版物の共有について」で述べられている内容を実行に移した、非常に素晴らしいものです。その記事内容は、オープン共有とデータをパブリックドメインとする際のCC0の利用を、明確に推奨したものでした。

データへの自由なアクセスと利用を目的に、大規模な公共データベースがデータを公開するというのは、ごく自然なことです。しかし、この場合、利用に対する制限は非常に少なくなければなりません。そこで、私たちが支持するのは、曖昧な部分のないオープンな共有の仕方を推進することです。データをパブリックドメインとするため、いかなる権利も保持しないとするクリエイティブ・コモンズのCC0がその1つの解答です。

NPGの他にも、多くの組織や機関がデータ公開のためにCC0を利用しています。私たちのwikiページ、データとデータベースに関するCC0の利用で詳細が述べられていますので、興味ある方は是非ご覧ください。また、データに対するCCライセンスについては、http://wiki.creatibecommon.org/Data 内の記事とCCのFAQをお読み下さい。

原文: Nature Publishing Group releases publication data for more than 450,000 articles via CC0
http://creativecommons.org/weblog/entry/32283
公開日時:2012年4月5日
BY Jane Park (Communications Manager)

国立図書館・博物館がCC0ライセンスでデータを公開

Open Data Stickers” / Copyright and related rights waived via CC0 by jwyg

Open Data Stickers” / Copyright and related rights waived via CC0 by jwyg

ここ数ヶ月、CC0ライセンスはデータの分野、特にGLAMデータ(ギャラリー、図書館、アーカイブ、博物館の頭文字をとってGLAMと呼ばれます)においてますます評価が高まっています。スペインとドイツの国立図書館は、CC0パブリック・ドメイン・デディケーション・ツールを利用し、書誌データを公開しました。これがどれだけ意味のあることか、ここで少し説明したいと思います。CC0ライセンスでデータを公開するということは、データを効果的にパブリック・ドメインにし、そのデータが活用される可能性を広げるために、図書館が全ての著作権を放棄するということを意味します。さらに、それらのデータはLinked open dataとして公開されています。つまり、これらのデータはウェブ上で様々なソースからのデータをリンクでつなぐことを可能にするRDF(Resource Description Framework)として公開されているのです。

スペイン国立図書館は、データ・ポータル: datos.bne.es.をつくり出すため、Ontology Engineering Group(OEG)と手を組みました。このデータ群へはhttp://www.bne.es/es/Catalogos/DatosEnlazados/DescargaFicheros で直接アクセス可能です。

そして、ドイツ国立図書館(別称:Deutsche Nationalbibliothek(DNB))はここでCC0を利用し、Linked open dataとして文書を保存しています。CCドイツでもこの動きを報じており、英語版はOpen GLAMに掲載されています。

関連して、NYのメジャーな博物館であるスミソニアン・クーパー・ヒューイット博物館も、文書化されたコレクションの60%を、CC0でパブリック・ドメインとして公開しています。このデータ群はGithubで公開されています。詳しくは http://www.cooperhewitt.org/collections/dataをご覧ください。

先日アップデートしたFAQを含め、クリエイティブ・コモンズとデータについて詳しく知りたい方は http://wiki.creativecommons.org/Dataで詳細をご確認いただけます。

原文: National Libraries and a Museum open up their data using CC0
http://creativecommons.org/weblog/entry/31853
公開日時: 2012年3月12日
BY Jane Park (Communications Manager)