オープン・ソース

2012年: 政府のオープン・イノベーション

今回は、相互性・共有性を確保することを目的に、オープンシステムと協調性のあるテクノロジーの採用を公的機関に促す取り組み“Civic Commons”についてご紹介したいと思います。Civic Commonsは政府構成にとっての基盤・知識・ツールセット、必要に応じて(データやプロジェクトホスティングのような)技術的な基盤を供給し、共通の “市民のためのテクノロジー” とプロトコルの発展を促しています。 オープンかつ共通のテクノロジーは経費を削減し、公的サービス・透明性・市民参加・運営効果の向上をもたらすことが期待されます。

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2012年になり早5ヶ月。時間の流れと共に、Civic Commonが昨年行なった活動・学んだ事、そして次なるステップについて考えたいと思います。

昨年は多忙な1年でした。Code for AmericaOpenPlansの間の非公式パートナーシップとして、ゆっくりとスタートをきったCivic Commonsの取り組みですが、その開始にあたり、Omidyar NetworkMacArthur FoundationKnight Foundationからの寛容な支援に感謝しながら昨年5月より本腰を入れて活動開始しています。

この頃から、Civic Commonsは大きな目標に向かって加速してきました:

ここではCivic Commonsの行動中心域の活動に焦点をあてます。1) 政府に対しオープン・ソースの利用を活用するよう促す。テクノロジーへのお互いの投資は政府にとって有益なものとなります。2) Open311(注釈: 市民がより直接的に都市の情報を得ることができるオープンで相互利用性の高いシステムを構築し、その国際的な取り組みを推進している) のようなテクノロジーの発展への根本的に異なるアプローチ “オープンプラットフォーム” の発展をサポートする。3)これらの取り組み実行にあたり、その中に含まれる政策や業務に関わるオープンな知識のインフラ構築

では次に、それぞれの分野でCivic Commonsが昨年行なった活動を簡単にご紹介します。

政府のオープン・ソース活用を支援する

私たちはまず、政府は毎年多額の資金をソフトウェア開発に費やしており、オープン・ソースの提案採用が、経費削減とイノベーションが広まることを支援することができるかもしれないと仮定することから始めました。Civic Commonsは(ホワイトハウスとの)連邦ITダッシュボード・(Open Indicators Consortiumとの)WEAVE可視化ツール・(現在NYC会計監査事務局と共に開発中の)checkbook NYC 2.0・(Local ProjectsとCode for Americaとの)Change by Us・その他準備中のプロジェクトを含む、多くの政府ソフトウェア・プロジェトに直接協力することに多くの時間を投資しました。

これらの活動を通して、Civic Commonsは開発プロセス・コミュニティーとのやりとり・そしてライセンシングといった点をサポートする、政府ソフトウェア開発の第一線で活動しています(主にKarl Fogel氏が素晴らしい活躍をしてくれています)。

おそらくCivic Commonsにとって最も重要なことに、これらの活動から学んだこと(詳細は後述します)をCicvic Commons wikiに記録してきたことが挙げられますが、これは今後も続けていきます。

オープン・プラットフォームを構築する

Civic Commonsが推進している中心概念の1つに、政府は開発者と起業家に対し、政府からのサービスと直接融合するツール構築の機会を与えることで、より“プラットフォーム”としての役割を果たすという考えがあります(iPhoneのプラットフォームでアプリ制作が可能であるのとほぼ同じイメージです)。政府系のテクノロジーにおいて、このプラットフォームを基礎としたアプローチは多少なりとも新しいアイディアであり、そこで構築すべきものとその構築方法について再考を要するものでもあります。

“プラットフォームとしての政府”を実現するための重要要素は、ガバメント・サービス同士の接続、そして外部ツールとの接続のための優れた標準化された方法を導きだす事です。インターネットは数々のオープン・スタンダード上(HTTPやHTMLなど)で構築されていますが、その手法のほとんどにおける“市民ウェブ”の基盤は、簡単にテクノロジーを相互運用させることができる標準データ形式とAPIです。

そうした点を考慮して作られてきたのが、地方自治体で発生する問題(道路に空いた穴や壊れた街頭など)を報告するAPIのためのオープンなウェブ標準であるOpen311 standardであり、Civic Commonsの中心プロジェクトになっています。このサービスは異なる都市をまたいでも十分な一貫性をもち、政府と市民の関係性の中核に位置付けられるので、Civic Commonsが最初に力を注ぐ理想的なプロジェクトでもあります。(注釈:Open311プロジェクトはOpenPlansによって2009年に発足され、現在はCivic Commonsが運営しています。)

今年はOpen 311にとって安定した成長がうかがえました: ブルーミントン(イリノイ州)やマイアミ・デイド(フロリダ州)に見受けられる組織内の規約制定の発展に加え、ConnectedBitsSeeClickFixMotorolaKana Laganのような業者関与を通して獲得したOpen311に準拠する都市は現在24を越えます。そしてCode for Americaは、自身のオープン・ソースOpen311ダッシュボードを開始しました。Civic Commonsはこのダッシュボードの活躍によって、2012年加盟都市の多くが翌年それぞれの道を切り開くことを願っています。

Open311の開始当初より、テクニカル・コーディネーター兼コミュニティ・マネージャーを務めているPhil Ashlock氏は、1年の締めくくりとして素晴らしい記事をOpen311のブログに投稿しました。この内容には、Open311コミュニティーに向けた2012年の要求リストが書かれています。

知識を広める

これまでに対話を行ってきたほぼ全ての都市で、オープンデータ・API・標準・オープンソース・発展プロセス・テクノロジー政策といった問題に向き合う際に、同じ様な質問と懸念をかかえています。しかし個々の都市がそれぞれの問題に初めて対処する場面であっても、集合として見た時には多くの経験が積み重なり、多くの教訓が得られています。Civic Commonsの仕事は同じ問題に立ち向かう人々の繋がりを作り、時間をかけて意思決定をサポートする情報リソースを構築し、そして時間を節約するために内部での議論を回避することです。

この知識基盤を形成し、そこからの利益を促すために、誰もが接点を持つ事ができる進行中の取り組みをいくつかご紹介したいと思います。

  • 一般的に、Civic Common Wikiは政策・プロセス・実践において先例となる素晴らしいリソースです。今年、Civic Commonsの2011年Code for Americaの仲間であるMichelle Koeth氏が、およそ20都市からの法定代理人とインタビューした結果、法律上の調達問題指針を開始することで大きな1歩を踏み出しました。今年2月3日には、ある都市が発表しようといていた規約の一部に向けたライセンシング・オプションについての質問に回答しました。これをゼロから書き上げたわけではなく、単純にオープン・ソース・ライセンス・オプションに関するwikiページを参照したのです。また、オープン・データ政策データ規格のようなトピックに関する、素晴らしい参考文献を得ています。
  • 去年暮れ、Civic Commonsは市民のためのテクノロジー・スペースをトラックする、wikiデータベースCivic Commons Marketplaceを開始しました。このアイディアは“市民向けテクノロジーのためのCrunchBase(テクノロジー関連企業・人物・投資家の自由データベース)”とでも呼べるものです。来年はその内容とツール、両方の改善に尽力することになるでしょう。
いつものようにディスカッションに参加したい方は、Civic Commonsディスカッションを訪れてみてください。専門家の方も気軽にirc.freenode.netの#civiccommonsでディスカッションに参加していただけます。以上を念頭に置いて、ここからは今年取り組む事項について述べたいと思います。

マーケットプレイスの形成

Civic Commonsは最近になってMarketplaceのα版を立ち上げ、 どのツールがどこで利用されているかという記録をとる目的で利用を開始しました。これを使い始めるのはとてもシンプルですが、「それぞれの政府団体が目標を達成するのにどのツールを使っているのか?」ということを示す基本のデータセットでさえ、当時は着想するのが非常に難しかったのです。そのため、この状況を変えようという構想から取り組みは始まりました。また、Civic Commonsの目標はこれをオープン化されたデータセットにすることです。CrunchBaseが初期のコミュニティーとなったように、Marketlpaceが時間とともに市民のためのテクノロジー・コミュニティーになることを願っています。

もしあなたが(政府IT職員・政府に関わる場所の業者職員・市民部門に焦点をあてた新規事業に携わるなど)市民のためのテクノロジーの利用者・プロデューサー・購入者であるなら、すぐにでもMarketplaceを訪れプロフィール登録してみて下さい。Civic Commonsは、あなたが何のアプリケーションを構築・購入・使用しているかという情報を必要としています。例えばこちらにご紹介するAzavea社の企業ページは、New York City Dep of ITに向けられたものです。

Civic Commonsは、市民のためのテクノロジー・スペースで活動しているその他全ての組織・企業・政府団体と同じように、 MarketplaceがCode for Americaの新しい事業Brigadeのような新興プログラムにとって使いやすいリソースの役割を果たすよう望んでいます。さらに時間とともに、Civic Commonが構築可能なその他の有益なサービスとツール上で、 Marketplace自体がプラットフォームになれば良いと考えています(ワンクリックのサンドボックス・アプリケーション機能や業界データ分析など)。もし皆さんの中にどなたか開発者であり、最高のマーケットプレイス構築に興味がある方いらっしゃるなら、developers centerこちらのページをチェックしてみて下さい。

オープン構造とプラットフォームの力

多くの都市がアプリをオープンソース化し、二次利用の例も実体化し始めてきた一方で、最も興味深く、広範囲に広がる活動はOpen311のようなプラットフォームの周囲で起こってきました。それはプラットフォームが単体アプリケーションよりも大きいからです。プラットフォームは多くのツールにとって共通の核のまわりで構築される機会を与えます。さらに、ツールがプラットフォームのまわりで構築されるにつれ、プラットフォームの影響力はより大きなものとなり、プラットフォームの採用率が高まり、更に多くのアプリケーションの開発を促します。このことの利点は容易に想像して頂けると思います。

つまり、個々のアプリケーションよりもプラットフォームに着目することで、多くのことが起こるチャンスを作り出すのです。Civic CommonsはOpen311のコミュニティー内でこの展開を続け、同時にプラットフォームとしての公共輸送サービスはどうなっているのか、などといった事例を観察することができます。

そして、来年Civic Commonsがどの分野に尽力したいかを考えるにあたり、都市が個別にオープンソース的に開発を行い続けるだけでなく、相互に拡張可能なプラットフォーム構造を行ったオープンなインフラの開発も促す予定です。全てはオープンなイノベーションの基礎を固めるためにあるといえます。

全体的な連携:オープン化改革

ハーバード大学法学部教授John Palfrey氏は、最近発行された自身の著書『知的財産戦略』でオープン・イノベーション改革について以下のように表しています。:

オープン・イノベーションの裏にある実にシンプルで強力な考えとは、「新しいアイデアの創造者はあなたの組織にいなくても有用たりえる」 ということである。

これはつまり異なる人同士の努力を結合する可能性を実現するということであり、まさにシンプルで力強いものですね。

オープン・プラットフォームによって、政府が提供するテクノロジーの上に誰でもイノベーションを進めることを可能にします。オープン・ソースは複数の都市がお互いのイノベーションから利益を得ることを可能にし、オープンな知識は1カ所で得られた教訓や経験を他の決定の場へ活かす鍵となります。つまり、Civic Commonsの本当の意味での中心的活動とは、政府に対し、オープンなイノベーションのための潜在的な可能性を解き放つよう働きかけることです。

2012年、Civic Commonsはこれらの実現に向け突き進んで行きたいと思います。

原文: 2012: Open innovation for government
http://opensource.com/government/12/2/2012-open-innovation-government
公開日時: 2012年2月3日
BY Nick Grossman

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最先端をゆくオーストラリア: グローバルなデジタル化、そしてオープン教育改革

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オーストラリアは英語圏の中はトップ、そして全世界では2番目にグローバルなデジタル化とオープン教育改革を率先している国です。これは、2015年までに、全ての教科書と教育カリキュラムのデジタル化を目指すという大胆な政策を定めた韓国に次ぐ順位です。2012年2月、オーストラリア政府は、My School websiteの最新版を発表しました。これにより、My School websiteのユーザーは、オーストラリア国内の約1万校もの学校の中から、特定の学校の統計資料をはじめとする、さまざまな情報を検索し、複数の学校を比較することができるようになりました。読み書きや数学の能力に関する国家評価プログラムを含む、広範囲の評価基準を提供することで、学校選びに悩む保護者を支援しています。

また、全ての国民がデジタル経済の恩恵を受けられるよう、オーストラリア政府はここ数年、デジタル化に向けた国際レベルのインフラを構築することに力を入れてきました。これにはNational Broadband Network (NBN) とDigital Education Revolution (DER) という主要2団体のほか、さまざまな出版社、著作権、デジタルコンテンツ関連事業者、クリエイティブ産業が共に取り組んでいます。オーストラリア政府は、これらの政策に豪ドルで24億ドル(日本円で約2005億円)以上を投資してきました。

DERの目的は、学生たちが今後のデジタル化社会に対応できるよう、知識と経験を身につけることです。そして今年2月、オーストラリアの教育大臣Peter Garrett氏は、国の目標として、高校生1人1人にパソコンを提供することを発表しました。このプログラムでは、連邦政府・州・地方の政府関係機関と教育機関が連携してオンライン学習や高速ブロードバンド環境づくりをサポートしています。 その他にも、オーストラリア国内の全学校で利用可能な、12,000以上もの無料デジタル・カリキュラムの提供などもあります。

この中でも、グローバルなデジタル教育を行っているオーストラリアの評判に貢献しているのが、Moodleです。オーストラリアでは現在もなお、著作権・商標制度や特許制度が従来的なものですが、政府はこの政策を改正し、政府関係機関がオープンソース・ソフトウェアを使うことが認められるようになりました。その結果、Moodleがオーストラリア国内で広く利用されるようになったのです。Moodleは、オーストラリア中心部から遠く離れた西部に住むMartin Dougiamas氏によって制作・開発されました。彼自身がdistance learner(学校と家の距離が離れている学習者)であったこともあり、Moodleは家と最も近い学校との距離が1000kmもある学習者のために制作されました。西オーストラリア州パースにあるベルモント市立大学は、いかに短期間でMoodleを実装し、教師・スタッフ・学生にプラスの効果をもたらすことができるかを表した、よい事例となっています。

また、オープンソース・ソフトウェアに関する知識を提供する事業、Australian Service for knowledge of Open Source Software (ASK-OSS) の取り組みも、グローバルなデジタル教育におけるオーストラリアのリーダー的地位を支えています。この事業は、オープンソース・ソフトウェアに関するアドバイス、マネージメント、管理、ストレージ、そして普及活動を行うための情報を提供しています。2004年、南オーストラリア州マウントガンビアにあるグラント高校は、中等教育にオープンソースを取り入れることの効果を調べるため、ASK-OSSの調査に参加しました。調査に踏み切ったのは、コスト削減という大きな動機となる要素があっただけでなく、オープンソース化の活動を支持する考え方そのものが、学校で育まれる指導と学習に適合するものであったからです。この考え方が、上記調査におけるもう1つの要素であり、学校側は所有権のある製品の利用をやめる決断をするようになりました。それ以来、グラント高校は、どうのように学校はオープンソースを採用し、教育的目標を達成することができるか、ということを示す良い事例となっています。また、この調査以降、グラント高校の生徒はLightworksでビデオ編集を行い、従来の手書きのアニメーションはPencilで制作するようになりました。

原文: Australia is leading a global, digital, open education revolution
http://opensource.com/education/12/3/australia-leading-global-digital-open-education-revolution
公開日時: 2012年3月14日
BY Carolyn Fox

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SPARKcon: オープンソース・プロセスを利用したアート、音楽、そしてその成功例

Image credits: h0tgrits

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“Process over content(コンテンツよりプロセスを)。Gamil DesignとDesignboxのオーナー、Aly Khalifa氏は、SPARKconでオープンソースの本質を吹き込むため、これを合い言葉のようにしています。SPARKconとは、元々ノースカロライナ州の三角地帯(注釈: 有名なデューク大学のあるダーラム、ノースカロライナ州立大学のあるローリー、そしてノースカロライナ大学のあるチャペルヒルの学術都市3つを称して、米国南部研究都市の“三角地帯”とよばれている) で設立され、(アートや音楽など)クリエイティブなムーブメントを紹介し・歓迎し・影響を与えていくことを目的に、1年に1度開催されるイベントです。

Khanlifa氏は次のように話しています。「Process over contentへの取り組みは、 初めのうちは人々の理解を得るのが難しく、説明するのも大変で、厄介なこともありました。」また、現在のオープンソースとコミュニティーについて、「オープンソースは素晴らしいものです。最終的にどのようなコンテンツを取り入れるかは、コミュニティーの取捨選択によって決まっていくという構図があるからです。そこにあるのは私たちが打ち込んできたことと同じ精神です。現在、いろいろな人が様々な層で活動していることも素晴らしいことですし、私たちがプロセスに重点を置いて活動していることに、徐々に周りが理解を示し始めているのだと感じています。」と語ってくれました。

一方で、世の中には、プロセスを越えた共同作業や相互作用が存在します。それぞれの人が、それぞれの興味・専門分野でコンテンツを生成してくこと(SPARKsと呼ばれます)を後押しすることで、殊更に大きなものを生み出すことにつながっていきます。

Visual Arts ExchangeのSara Powers氏は言います。「確かに、SPARKconはオープンソース・プラットフォームのほんの一部にすぎません。なぜなら、自分たちでプログラミング・プランニングをすることで、どのような専門家であっても関われるようにしていて、そこからさらに大きなものを作れるようにしているからです。」

今皆さんが取り組んでいるものや、情熱を注げるようなプロジェクトの中に、オープンソース化のプロセスを必要とするものはありますか?学校や仕事、ビジネス的なものや、個人的なもの、どんなものでもかまいません。おそらく、それはSPARKconのようなクリエイティブに富んだものであるはずです。もしくは、周りにイベントを主催しようとしている人がいるのであれば、オープンソースに頼る方法でそのイベントをさらによくできるかもしれません。

原文: SPARKcon: Art, Music, and success with open source process
http://opensource.com/life/12/3/sparkcon-art-music-and-success-open-source-process
公開日時: 2012年3月13日
BY Jason Hibbets (Red Hat)

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連邦政府機関は情報の透明化にどのように取り組み、どのような恩恵を得ることができるか

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昨年10月に完成した文献「透明化を達成するための手引き: 連邦政府機関は情報の透明化にどのように取り組み、どのような恩恵を得ることができるか」がついに公表されました。この手引きは米国政府の“人的支援”機関である米国人事局(旧 米国国家公務員任用委員会)の支援によって作られました。

情報の透明化(情報やデータの自由かつオープンな共有)とは、情報の出所が民間機関であるか?公共機関であるか?ということに関係なく、根本的な民主主義的価値を有します。そして、それは主要な科学的データだけでなく、組織的な取り組みに関するデータや情報を含むものです。

具体的に言うと、オープン・ガバメントの活動においては、オープンソースが重要な役割を果たします。オープンソース・ソフトウェアは、定義の上では、まさに透明化そのものといえるでしょう。それはオープンソース・ソフトウェアも、ユーザから成る民主主義的なコミュニティーによって開発され、平等な方法により共有されてきたものだからです。

加えて、予算の制約により、政府が技術環境に応じたダイナミックな変化に対応することに制約がある場合であっても、オープンソース・ソフトウェアはその対応やそれに付随する取引費用を最小限に抑えてくれます。

そこでキーポイントとなvる法的・技術的・予算的な課題については、今回ご紹介した文献の第4章「透明性の制約」で概説されています。情報の透明化(あるいは開示)のために、私もボランティアとしてこの第4章を執筆しています。

民間機関における透明化への取り組みは、営利企業と非営利団体それぞれの実績に対する確たる評価に関し、重要な情報とデータを公開することに焦点をあてています。一方、公共機関において、オープン・ガバメントは政府業務の透明性向上に努めています。これにより、政府と国民は、意図する政策を達成するために、政府のプログラムが効率的かつ効果的に行われているか、十分な情報を得たうえで判断をすることができます。第3代アメリカ合衆国大統領トーマス・ジェファーソンは、そのような情報の透明化が 「議会の議員、そして合衆国の人々1人1人が政府の権限濫用を把握・調査することを可能にし、結果として政府のコントロールをも可能にする」 (Jefferson, 1802, as quoted in Rawson and Miner, 2006)と透明化の正当性を述べています。

皆さんは、これらの話題や政府の透明化についてどのようにお考えですか?

原文: How federal agencies can implement and benefit from transparency
http://opensource.com/government/11/10/how-federal-agencies-can-implement-and-benefit-transparency
公開日時: 2011年10月31日
BY Tom Moritz (Project Director at Sonoma Valley Heritage Coalition)

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新プラットフォーム“Booktype”なら、本の共同制作・編集がオンラインで簡単にできます

Image credits: limaoscarjuliet

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これまで本の制作において、自分以外の作家・編集者・書籍制作関係者と共同制作・編集したことがある方なら、そのような作業が簡単なものではないことをご存知でしょう。また、このような経験がなくとも、ワープロソフトで複数の文章を1つにまとめようとした経験があるなら、同類の難しさを感じたはずです。

今回は、先月中旬に行なわれたO’Reilly Tools of Change会議において発表された、Booktypeと呼ばれる新しいプラットフォームをご紹介したいと思います。このプラットフォームは、コンテンツの編集や出版を行う上での共同制作を促進する目的で開発されました。

この本に関するオープン・ソース・プラットフォームには、著作者にとって魅力的な機能がたくさん備わっています。

  • 印刷・Amazon・iBooks・ほとんどの電子書籍(pdf・epub・mobi・odt・htmlなど)といった、様々な読者のタイプに合わせた形式に対応 。
  • 用途に応じた目次・章立て・ページ番号・およびフォーマットの設定、および共同制作・編集を容易にするインターフェイス。
  • 執筆が終わると即座にLulu.com・Amazon・iBooksへ出版可能。
  • ライセンスの帰属表示とライセンスのトラッキング(利用者の行動を記録・追跡するなど、情報を継続的に収集・監視する機能)が可能。1冊の本に複数のライセンスを使うことも可能。
  • バージョン管理(コンピュータ上で作成、編集されるファイルの変更履歴を管理するためのシステム)
  • 翻訳機能・現地語化するための枠組みの設定。

このシステムは、*FLOSS Manualsのプラットフォームに基づいています。これは、Booktypeに馴染みがあったり、すでに利用してい多言語の寄稿者が大勢いるこということを意味します。

*FLOSS Manuals- オランダに本拠地を置く非営利財団。2006年設立。フリーソフトウェアの使い方について質の高い文書を制作することに取り組んでいる 。

原文: Booktype makes book collaboration web-based and simsple
http://opensource.com/life/12/2/booktype-makes-book-collaboration-web-based-and-simple
公開日時: 2012年2月21日
BY Ruth Suehle (Red Hat)(このCCJPによる翻訳記事はCC:表示-継承 非移植3.0ライセンスで公開しています)

図書館ポータルサイト“ヨーロピアナ”に新機能 : マップ検索・ディスプレイ

CCJPブログでも言及する機会の多い図書館ポータルサイト“ヨーロピアナ(Europeana)”。先月もデジタル新聞を提供するプロジェクト“European Newspapers”を開始するなど、その勢いはとどまることを知りません。今回はこのヨーロピアナに新しく追加された機能のご紹介です。

「皆さんがオンライン検索する時、その探していたものがどこにあるのかわかりますか?」そして「皆さんの身近にあるものはあったでしょうか?」-これら質問には、ヨーロピアナ・ポータル最新機能を利用し回答することができます。これまでヨーロピアナの開発部では、マップ上で検索結果の位置情報とプレビューを確認することができる新しい相互検索・ディスプレイ機能の開発に力を注いできました。

検索クエリーから検索結果トップ1000件が多層化された地図(OpenStreetMap・Google Physical・Google Street・Google Hybrid・Google Satellite)に自動的に分布・表示されます。検索アイテムは紫色のサークルによって表示され、地域あたりの検索結果数が多ければ多いほど、大きいサークルで表されます。そして利用者が興味のあるエリアや地域を拡大すると、サークルが細分化され、より正確に検索結果を表示します。さらに、サークルをクリックすると別のディスプレイが開き、検索アイテムの特定場所・ タイトル表示・地理座標を表示します。また、タイトルをクリックすれば、オーバーレイとアクセス記録を残すことなく、フルページ表示で結果を閲覧することができます。このマップはタッチやスワイプにも反応するので、iPadやAndroidタブレットなどのデバイスからの新しいマップと連動することも可能です。

1つ1つのアイテムは、所在地の座標に基づいて位置表示されます。現段階では、全てが地理座標を持ち合わせているわけではなく、今後ヨーロピアナが継続的に新アイテムを追加し、コンテンツ提供者とともに蓄積された情報をより強化していくようになっています。検索した際には、ページの上左端にある地球儀マークをクリックすることで直接開くことも可能です。今回の新機能をお試しになる際には、以下のような検索ワードを利用するとよいでしょう。(検索中に何かしら不具合が生じた場合には、アップデートを有効にするためにブラウザーのキャッシュを消去してみて下さい)

 

ヨーロピアナの内容が、利用者の皆さんにとって身近なものとなれば嬉しく思います。今回の新しいマップ検索・ディスプレイに関して感想をお待ちの方は、是非ご連絡下さい。これは、これから皆さんと共有しようとしている数々の新機能の中のほんの一部ですので、今後ヨーロピアナのブログで発表される内容についてもご期待ください。

原文:New Feature: Map Search and Display
http://blog.europeana.eu/2012/02/new-feature-map-search-display/
公開日時: 2012年2月17日
BY Neil Bates (Junior Marketing Specialist)

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Mozillaパブリック・ライセンス 2.0

2年間のバージョニング・プロセスを経て、Mozillaよりパブリック・ライセンス2.0(MPL2.0)が発表されました。Mozillaの会長であるミッチェル・ベイカーは今回のライセンスについて「前バージョンの精神を受け継いではいるが、以前と比べてより簡潔で優れており、Mozilla以外のフリーソフトウェアやオープン・ソース・ライセンスとも相互性が高い」と自身のブログで語っています。

前回のMozilla・パブリック・ライセンス1.1(MPL1.1)は最も一般的なフリー/オープン・ソース・ソフトウェア・ライセンスの1つであり、最も有名な例としてはMozillaのFirefoxブラウザーで利用されています。そして、現在最も多く使用されているフリー/オープン・ソース・ソフトウェア・ライセンスであるGPL*と相互性の高いMPL2.0は、ソフトウェアにとっての大きな前進ステップとなります。その理由については、クリエイティブ・コモンズのFAQで、なぜCCライセンスはソフトフェアに使われるべきではないのか(CC0は除く)について説明したページに貼ってあるリンク Make Your Open Source Software GPL-Compatible. Or Elseをご覧ください。(注釈:CCライセンスはソフトウェアに使われるソースやオブジェクトコードについて言及していないので、よりソフトウェアに特化したライセンスであるGPLの利用を推薦しています) しかし、ライセンス間の非互換性を緩和させるための原理は一般的なものであり、ソフトウェア同様、科学研究・行政の情報・データベースなど幅広くに共通するものなのです。なので、CCライセス バージョン4.0にとっての重要な最終目標の1つは相互互換性を高めることです:

相互互換性- CCライセンスとその他のライセンス間の共通する部分の不適合を減らすため、相互互換性を最大限にする。そしてライセンスの氾濫を防ぐと共に、その標準化を促す。

これは長期間の熟考と他のライセンス関係者との協力を必要とする難しい目標です。これ以外にもCCライセンス・バージョン4.0に関する目標は多くあります。私たちはその過程で蓄積される効果がこれまでのバージョン3.0よりもかなり優れたライセンス群を作る糧となり、その精神は今後も続くと期待しています(例えばCC:表示-継承は今後も引き続き使用されます)。分かりやすく言うと、私たちはあらゆる全てのものとのバランスを考えようとしているのです。

MPL 2.0の発表では、多くの人々がライセンス制作のために素晴らしい貢献をしてくれたことが綴られています。おそらくソフトウェア・ライセンスを考案する第一段階として、そのデザイン性に取り組むことを含め、異なるスキルを持った人々がライセンスをより使いやすく改善することができる機会を提供することが重要なのでしょう。そして、CCライセンスを利用した様々なプロジェクトが増えるにつれ、コミュニティー全体のフィードバックの必要性も大きくなるのです。この機会に是非、CCライセンス4.0に関するあなたの意見をお聞かせ下さい 。

*GPL- General Public License。フリーソフトウェア財団(FSF)の理念に基づくフリーソフトウェア・ライセンス。利用者に対しソフトウェアの利用、複製、 再頒布などの自由を与える事を最大の目的としている

原文: Mozilla Public License 2.0
http://creativecommons.org/weblog/entry/31140
公開日時:2012年1月3日
BY Mike Linksvayer (Vice President, Creative Commons)

オープン・ソース・マジック

Image credits: virtualmagician

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マジックとは常に錯覚を作り出し、その仕掛けを明らかにしないものです。もし種明かしされたなら、私たちは驚きを全く感じなくなります。マジックの種はミステリーを守るものなのです。書籍『Magic:A picture History』の中で、ミルバーン・クリストファーはこう語りました。「ミステリーはマジックの基本的な魅力。一度種明かしされた途端、マジシャンは少しインパクトのあるサスペンスドラマの俳優のように、ただの操縦者になってしまう。観客は先にエンディングを知ってしまっているからね。」

偉大なるマジシャン達は、私たちの心理は怠惰で、脳はパターン照合機械であり、そして大きな動きは小さな動きを覆ってしまうということをよく知っています。

しかし、今日のテクノロジー発展により、人々は以前よりも簡単にマジックの種を知ることができるようになりました。マジシャンのパフォーマンスを録画し、映像を巻き戻してコマ送り再生する、そして確実にマジックの秘密を発見できてしまうのです。YouTubeにアップされているマジシャンに対し、「マジックの種が分かった」という内容のコメントはいくつも見受けられます。

では今後、テクノロジーの発展と共に、どのようにマジックは展開し革新するのでしょうか?

スイス出身ニューヨーク在住のマジシャン、マルコ・テンペストはしばしば自身の作品を「オープン・ソース・マジック」という言葉で表します。彼はマジックの種を明かし、オンライン上で観客とコミュニケーションをとり協力しながら、コミュニティーで作品を共有しているのです。

Marco Tempest: Augmented reality, techno-magic
http://video.ted.com/assets/player/swf/EmbedPlayer.swf

テンペストはガジェットやソフトフェアを愛するテクノマジシャンであり、その作品には従来の見慣れた小道具と同じように 、拡張現実、ロボット工学にソフトフェア、スクリーンといったものが使われます。彼の動きは “持続したマジック” と表され、Wired紙は “種がバレる瞬間ではなく、的確なカードが出された時に、途切れる事の無い魅力的な体験が生まれる” と述べています。このようなテンペストの新手法は、現実と非現実の境界線をまたいでいるのです。例えば、Wired紙は次のようにも著しています。“彼がマジックに使う映写トリックでは、ボールが現実とバーチャル世界を行き来する。そうと明示されないが、従来のマジックは彼のショーにも組み込まれているのだ。”  “観客がそれほど確信を持てない時とは、目の前のことが‘現実か、それともコンピュータによって作られているのか’が分からない時である。彼のマジックではこの感覚が見事に観客に作用を及ぼし、成功を納めている。”
そして、テンペストはマジックについて全く何も隠さないのです。ある手品シリーズではたった1つのカメラ付き携帯のみ用いて、(このマジックは一切の映像編集、撮影後の編集なし)、その後のフォローアップ・ビテオの中で種明かしをしています。これだけでも驚きですが、まだ話は終わりません。

テンペストはソーシャル・メディア・チャンネルを利用し、観客と接点を持つことでフィードバックを得ているのです。ここで出されたアイディアを作品に取り入れた場合は、観客の名前を作品クレジットに載せます。

さらにマジックの種明かしだけでなく、パフォーマンスを作り出すテクノロジーをもシェアするのです。「科学の世界と同じように、私たちが知識と研究を共有すればマジックはより速く前進する。そしてそれは全員がマジックを向上させる大きな役割を果たしているということ」とテンペストは話します。iPhoneを使ったマジックを制作するにあたり、彼はオープン・ソース・コミュニティー上で人々と協力し、MultiVidと呼ばれる2つ以上のスクリーン間の映像を同期するソフトウェアを作りました。さらに他のアーティストのため、このソフトウェアをアップルストアから無料でダウンロードできるようにしたのです。

マルコ・テンペストのモットーは、対話型・包括的・オープン・そして協力的なマジックの公開です。観客と接点を持ち、マジックに参加させたいと考える彼は言います「マジックとは観客とリレーションシップを築くこと。だから僕のアプローチはパーフェクトだ」と。

原文:Open Source Magic
http://opensource.com/life/12/1/open-source-magic

公開日時: 2012年1月16日
BY Lori Mehen (Red Hat)

(このCCJPによる翻訳記事はCC:表示-継承 非移植3.0ライセンスで公開しています)