オープン教育

最先端をゆくオーストラリア: グローバルなデジタル化、そしてオープン教育改革

Image by opensource.com

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オーストラリアは英語圏の中はトップ、そして全世界では2番目にグローバルなデジタル化とオープン教育改革を率先している国です。これは、2015年までに、全ての教科書と教育カリキュラムのデジタル化を目指すという大胆な政策を定めた韓国に次ぐ順位です。2012年2月、オーストラリア政府は、My School websiteの最新版を発表しました。これにより、My School websiteのユーザーは、オーストラリア国内の約1万校もの学校の中から、特定の学校の統計資料をはじめとする、さまざまな情報を検索し、複数の学校を比較することができるようになりました。読み書きや数学の能力に関する国家評価プログラムを含む、広範囲の評価基準を提供することで、学校選びに悩む保護者を支援しています。

また、全ての国民がデジタル経済の恩恵を受けられるよう、オーストラリア政府はここ数年、デジタル化に向けた国際レベルのインフラを構築することに力を入れてきました。これにはNational Broadband Network (NBN) とDigital Education Revolution (DER) という主要2団体のほか、さまざまな出版社、著作権、デジタルコンテンツ関連事業者、クリエイティブ産業が共に取り組んでいます。オーストラリア政府は、これらの政策に豪ドルで24億ドル(日本円で約2005億円)以上を投資してきました。

DERの目的は、学生たちが今後のデジタル化社会に対応できるよう、知識と経験を身につけることです。そして今年2月、オーストラリアの教育大臣Peter Garrett氏は、国の目標として、高校生1人1人にパソコンを提供することを発表しました。このプログラムでは、連邦政府・州・地方の政府関係機関と教育機関が連携してオンライン学習や高速ブロードバンド環境づくりをサポートしています。 その他にも、オーストラリア国内の全学校で利用可能な、12,000以上もの無料デジタル・カリキュラムの提供などもあります。

この中でも、グローバルなデジタル教育を行っているオーストラリアの評判に貢献しているのが、Moodleです。オーストラリアでは現在もなお、著作権・商標制度や特許制度が従来的なものですが、政府はこの政策を改正し、政府関係機関がオープンソース・ソフトウェアを使うことが認められるようになりました。その結果、Moodleがオーストラリア国内で広く利用されるようになったのです。Moodleは、オーストラリア中心部から遠く離れた西部に住むMartin Dougiamas氏によって制作・開発されました。彼自身がdistance learner(学校と家の距離が離れている学習者)であったこともあり、Moodleは家と最も近い学校との距離が1000kmもある学習者のために制作されました。西オーストラリア州パースにあるベルモント市立大学は、いかに短期間でMoodleを実装し、教師・スタッフ・学生にプラスの効果をもたらすことができるかを表した、よい事例となっています。

また、オープンソース・ソフトウェアに関する知識を提供する事業、Australian Service for knowledge of Open Source Software (ASK-OSS) の取り組みも、グローバルなデジタル教育におけるオーストラリアのリーダー的地位を支えています。この事業は、オープンソース・ソフトウェアに関するアドバイス、マネージメント、管理、ストレージ、そして普及活動を行うための情報を提供しています。2004年、南オーストラリア州マウントガンビアにあるグラント高校は、中等教育にオープンソースを取り入れることの効果を調べるため、ASK-OSSの調査に参加しました。調査に踏み切ったのは、コスト削減という大きな動機となる要素があっただけでなく、オープンソース化の活動を支持する考え方そのものが、学校で育まれる指導と学習に適合するものであったからです。この考え方が、上記調査におけるもう1つの要素であり、学校側は所有権のある製品の利用をやめる決断をするようになりました。それ以来、グラント高校は、どうのように学校はオープンソースを採用し、教育的目標を達成することができるか、ということを示す良い事例となっています。また、この調査以降、グラント高校の生徒はLightworksでビデオ編集を行い、従来の手書きのアニメーションはPencilで制作するようになりました。

原文: Australia is leading a global, digital, open education revolution
http://opensource.com/education/12/3/australia-leading-global-digital-open-education-revolution
公開日時: 2012年3月14日
BY Carolyn Fox

(このCCJPによる翻訳記事はCC:表示-継承 非移植3.0ライセンスで公開しています)

UNESCOとCOLが高等教育に向けたオープン教育政策文書を発表

昨年11月、UNESCOと*Commonwealth of Learningが連帯して「高等教育においてのオープン教育リソース(OER)・ガイドライン」を発表しました。このガイドラインの目的は“政府と機関における決定権を持った人々に、体系立てられた生産・適応・OER利用への投資を促し、これらを高等教育の主流へ取り込むことでカリキュラムと教育内容を向上させ、さらにはコスト削減を勧める”というものです。

(さらに…)

オープン・コース・ライブラリーより第一期42講座が開始

昨年10月末、ワシントン州コミュニティー・高等専門学校委員会(SBCTC)は同州で多い生徒登録数を誇る81のオープン・コース・ライブラリー講座の中から、第一弾として42講座を開始しました。今回開設された以外の残り39講座も、2013年までに開始される予定です。ワシントン州議会とBill and Melinda Gates財団によって創設されたオープン・コース・ライブラリーは、国際オープン教育リソース(OER)活動に参加するとともに、補助金体制を通して制作された資料が、オープンライセンスのもと自由に利用・適応・再頒布できるよう要求するSBCTCオープン政策を支持しています。

また、全講座はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC:表示3.0非移植(CC-BY)のもと公開されています。

この度開設された42講座は、以下のテクニカル形式でも利用可能です。

Green Riverコミュニティーカレッジの教師Michael Kenyon氏の生徒は、新しい数学のテキストに以前は約200ドルも支払っていました。しかし現在は教科書に20ドル払うか、それともオンラインで無料のものを使うかの選択できます。彼が使用している教科書(CC BY-SA)はPierce College Fort Steilacoomにあるコミュニティーカレッジの教授 David LippmanとMelonie Rasmussenによって書かれました。Kenyonは言います「僕たちはたくさんの教科書を見て来ましたが、その中でもこれが1番の教科書だと考える人達がいます」。

SBCTCのオープン教育政策に携わるTom Caswellは、「今回の講座はワシントンの大学生からの要望を考慮して作られました。そして世界中の人々とこれらのオープン講座を共有したいという私たちの考えも原動力となったのです。」と話します。

1つ1つの講座は、指導者・教育デザイナーや図書館員から成るチームによって校正・改善されてきました。講座資料の利用はオプションとなっていますが、既に多くの教授や学部が導入を開始しています。

学生公共利益調査グループ (PIRGs)が行なった非公式の研究によると、ワシントンのコミュニティーカレッジ・専門学校学校に通う生徒全員がオープン・コース・ライブラリーを利用した場合、1年間で約32億円(訳注:$41.6Million=4160万ドルx76.78円換算)の節約になるそうです。さらに、42講座の学部コース開発者が2011年-2012年の学期でオープン資料を使うと、約9,600万円(訳注:$1.26Million=1,260万ドルx76.78円換算)もの生徒の出費を回避することができ、これは開設した42講座の制作費約9,060万円(訳注:$1.18Million=1,180万ドルx76.78円換算)をこの学期だけで上回ることになります。「これらの節約は大学に通うワシントンの学生を助けるだけでなく、初期投資にも明らかに多大なリターンをもたらすでしょう」とう語るのは学生PIRGsへのオープンな教科書を提唱するNicole Allenです。

米国教育省報道官のJustin Hamiltonはこのワシントン州の取り組みについて、国にとって革新的であったと次のように評しました。「大学の学費を安くすることで、生徒はより多く講座を履修し、予定時期に合わせた学位取得ができます。そしてグローバル経済で成功するために用意された職場で社会人となります。これは生徒だけでなく国にとっても有益なことです。」

では最後に、オープン・コース・ライブラリーそしてOER(オープン教育リソース)の熱心な擁護者であり、ワシントン州第36地区の下院議員であるReuven Carlyle(民主党-シアトル)の言葉で記事を締めくくりたいと思います。「今日の現実に添わず、閉ざされ、高価でありながらプロプライエタリ(独占所有物)化した商業的教科書の終焉が本当に見えてきました。膨大な経費削減が求められるこの時代、オープン教育への取り組みは州を挙げて投資すべきものです。私たちはK-12(幼稚園〜高校卒業までの13年間の教育期間)と大学・専門学校教育において、いかに困難であっても、従来のコスト・モデルの現状改善に立ち向かわなければなりません。」

原文: Open Course Library Launches 1st 42 Courses
http://creativecommons.org/weblog/entry/30201

公開日時: 2011年11月2日
BY Cable Green (Director of Global Learning)