原文記事 FAQ: CC and NFTs
NFT (Non-fungible tokens、非代替性トークン)にCC0やCCライセンスを使った事例がたくさんあります。CC0やCCライセンスがNFTとどのように作用し合うかについて多くの混乱があるので、私たちは幾つかのよくある疑問に答えるべくこの基本的なガイダンス資料をまとめました。
これらのテクノロジーや、実践、方針、関連用語などは常に進化しています。このFAQはNFTがCCのオープンライセンシングツールやパブリックドメインツールとどのように関係するかについてのCCの最新の理解と解釈を提供するものですが、網羅的なガイドではなく、具体的な法的アドバイスでもありません。私たちは私たちの理解と解釈が発展するのに合わせてこのFAQを更新するつもりです。
最終更新:2022-09–09
NFTsとは何ですか?また、それはCCライセンスと共に使えますか?
NFTsは一意的に特定できるデータの単位で、アート作品やその他の著作物などのデジタルファイルに紐づけることができます。作品と結びついたNFTが発行されると、そのNFTの全ての売買はブロックチェーン上にデジタル的に記録され、そのNFTの購入者はそれによりその作品と結びついたその唯一のトークンを保有することになります。
ですが、特筆すべきことに、このNFT購入者は紐づけられた作品の著作権を自動的に取得することになるわけではありません。著作権の移転に関して明示する法的な合意が別途に存在していることが必要です。アート作品の番号付きのプリント品を所有するのと同じように、NFTの保有者は、自らが保有している特定のトークンに起こることについて決定権を持ちます。別途の移転がなければ、購入者はトークンの根底にある作品についての権利を保有しませんし、他の人がその作品をコピーしたり、リミックスしたりできるかについて決定権を持ちません‐‐そのような権利は根底にある作品の権利者によって排他的に保有されたままです。
CCの法的ツールはクリエイターが自身の作品を公衆がコピーし、シェアし、再利用できるようにするための標準化された一手段です。これらは権利者によって特に許諾されない限りは著作権法によって禁止されている行為です。あるNFTの保有とその根底にある作品の著作権の保有は別々でありうるため、NFTsの根底にある作品に対してCCライセンスを適用することは可能であり、一部のクリエイターは既にそのような使い方をしています。
CC0とは何ですか?どのように機能するのでしょうか?それはライセンスですか?
CC0は作品をパブリックドメインにするためのものです。これは作品の著作権に影響を与えるためしばしば誤ってライセンスのひとつとして言及されます。ですが、ライセンスは権利者があなたに何を許諾するかを説明するものであるのに対して、CC0は全ての権利を放棄し、誰も権利者ではなくなり、作品が公衆に属するようにするものです。あなたがCC0を使う時、あなたは著作権法上の全ての権利を放棄し、作品の権利についての決定権・支配(control)を一切持ちたくないこと、そして作品は自由に誰でもどのようにでも利用できることを宣言します。
CC0は(全てのCCライセンスとツールと同じく)著作権にのみ適用されるものです–その他人格に関する権利、商標権、プライバシー権などは、他の仕組みを通じて明示的に放棄されない限り、依然として執行され得ます。ある作品と紐づいたNFTの保有は著作権の一種としての権利ではないため、その作品がCC0の下で提供された場合でもそのNFTは保有されたり移転されたりし続けることが可能です。
幾つかの管轄地域では、完全なパブリックドメインでの提供は法的に不可能です。そこでCC0はそのような場合のために、権利者には可能な限りすべての許諾を与えるという、予備的なライセンスを含んでいます。法的な詳細は異なりますが、最終的な結果は同じです:CC0で提供された作品は誰でもどのような目的にも利用できます。
CC0をNFTに関して使うことは意味があることでしょうか?もしそうだとすると、どういう意味があるのでしょうか?
NFTと結びつけられたある作品がCC0によってパブリックドメインになると、その作品は誰にでも自由にシェアされ、リミックスできます。トークン(NFT)自体は一度に1人だけが持てるもののままです。
CC0によるパブリックドメインへの移行は、元の創作物に適用され、その結果として、商業目的利用であれ非商業目的利用であれ、誰もその作品のコピーやリミックスの権利を排他的に保有しないことになります。それはNFTの保有者であっても、元の権利者であってもです。作品の利用に関する権利の保有は、その作品と関連づけられたトークンの保有と別です。
CC0によってパブリックドメインに提供された作品は誰でも自由にコピーできますが、その作品と関連づけられたNFTの購入は購入者にとって依然意味を持ちえます。例えば、購入者はそのNFTを発行するクリエイターや組織を金銭的に支援したいと思ったり、そのNFTを保有のみが参加できるクラブやフォーラムのメンバーになったり、あるいは単にそのNFTの保有者であると主張できることの社会的なメリットを求めるかも知れません。
もし私があるNFTの根底にある作品をCC0を使ってパブリックドメインに置いた場合、私は他のライセンスの条件を申し出ることもできるでしょうか? 例えば商業目的の利用に関して別のライセンス条件を設けることはできるでしょうか?
CC0は全ての利用者と全ての利用に関するパブリックドメインへの提供です。そこで、もしも他のライセンス条件が提示されたとしても、CC0で提供されている作品を制約なく利用することを選択できます。
例えば、ある作品を非商業目的の利用についてはCC0で提供し、商業利用についてはより制約の厳しいライセンスの仕組みを使う、ということは意味がありません–これは商業利用者もその作品をCC0に従って利用できるため、意図した通りの効果を持たないでしょう。CC0は普遍的なものです:全ての人に同じ形で適用されます。
(これはCCライセンス全般についてもあてはまることです–提供された全ての許諾は全ての人に適用されます。ですが、ライセンスが制限していることについて別の許諾を与えることはできます:例えば、CC BY-NCである作品を提供した上で、料金を支払う利用者には商業目的でコピーをすることを許諾することができます。)
CCライセンスは作品を全ての人に利用できるようにするためのものですが、NFTの保有者は一人しか存在できません。これらは互いに矛盾しているでしょうか?
ある作品のNFTが発行されると、その作品に関連づけられた代替不可能なトークンが作成されます。そして売りに出されるのはそのトークンです。NFTの購入者がその固有のデジタルデータについて排他的な権利の主張をできるのであり、保有に伴う全ての特権、恩恵、社会的な栄誉などを得るのです。ですが、そのNFTが権利の譲渡に関する追加的な契約を含んでいない限り、購入者は関連づけられた作品の著作権の排他的な保有者にはなっていません。
物理的なメディアを作るアーティストについて考えるとわかりやすいかもしれません:アーティストが物理的な作品を売る時、それが唯一無二のコレクターズアイテムであれコピーであれ、これが根底にある著作権の販売とセットになっていることはほとんどありません。アーティストは典型的には、自身の作品の複製に関する排他的な権利を保持します。そして、物理的なメディアの所有者あるいは公衆一般に、それらの権利の一部、または全部をライセンスしたり、全くしなかったりします。
NFTの保有者はしばしばその根底にある作品のコピーやリミックスに関する排他的な決定権を特に求めてもいないかも知れません。例えば、あるクリエイターを支援するためにNFTを購入する人は、通常、クリエイターが著作権を保持することを望むでしょう。それによってそのクリエイターが作品を他の形でライセンスし、利益を受け取り続けられるようにするためです。
もしある作品がCCライセンスで提供されていたら、そのライセンスの条項は、その作品のNFTが販売された場合でも適用されます。NFTは一人の人が保有していますが、その作品自体はその作品に適用されたCCライセンスに従って誰でも自由に使い続けられます。CC0で提供されたなど、作品がパブリックドメインに属している場合、排他的な権利はもはや誰も保有していませんから、権利を売買することもできません。一般公衆はその作品を自由にコピーしたり、リミックスできます。そのトークンを保有することと、これらの条件とは矛盾しません。
誰かがCCライセンスで提供した作品のNFTをあなたが発行することは出来るでしょうか?
細かな事を言えば、これがCCライセンスによって提供される権利(全体や一部のコピー、作品のリミックスなど)を全く必要としない形で行われるなら、CCライセンスはあなたの利用を制限するものではなく、あなたはその条件を守る必要はありません。単にある作品についてのNFTを発行することは、必ずしもこれらの権利を必要とするものではありません。ただ、NFTに関係する利用の多くはライセンスに反するかもしれません。もしもNFTを発行したり販売するあなたの行為が、著作権許諾を必要とするような作品のコピーを伴うものであれば、あなたはライセンスの条項に従わなければなりません。(たとえば、あなたはNCライセンスで提供されている作品を商業目的でコピーしてはいけません。)
しかしながら、CCは一般的に、クリエイターの同意なしに他人の作品についてNFTを発行することを支持しません(作品が既にパブリックドメインに属している場合を除く。)。CCのミッションは単なるシェアではなく、よりよいシェアです–より活気のあるコモンズを促進し、自由に再利用できる作品のクリエイターへの一層の支援を生み出すようなするような形でのシェアです。CCライセンスで提供されている作品についてクリエイターの同意なしにNFTを発行すると、あなたはネガティブな結果を招きかねません。ひとつは誰かほかの人があるクリエイターの作品でお金を儲け、ある種の公式な保有者のステータスという、クリエイターが自分が提供するべきものと考えるようなものを提供している場合、そのクリエイターはしばしば自分がアンフェアな形で搾取されたと感じます。また、クリエイターによっては、金銭的な報酬の支払いとクレジットを受けるとしても自分の作品がNFTに使われたり、NFTと関連づけられたりすることを全く求めず、自分の作品がこのように使われることが回復困難なほど自分の評判を損なうと考えるかもしれません。
CCを活用するクリエイターが自らの作品の再利用に関してこのようなネガティブな経験をすることによって彼らは作品を自由に提供するこをためらいます。彼らは、自分達の寛容さにつけ込むものと思うような利用を止めるためにより制約の厳しい条件や、デフォルトの「All Rights Reserved」にすら切り替えるかも知れません。もしコミュニティの相当の割合がこのように感じるなら、それはコモンズにとっての大きな損失になるでしょう。
もしもあなた誰か他の人の作品についてNFTを発行したいのであれば、私たちは、クリエイターが搾取されたと感じるような形で彼らのアートを利用するよりも、彼らに問い合わせ、彼らと共同で進めることをお勧めします。ライセンスの法的要件を満たすことは、著作権侵害を避けるために最低限しなければならないことで、倫理的な行動基準ではありません。
CCはNFTに特化したライセンスを提供していますか?
CCはNFTに特化したライセンスは提供していませんが、既存のライセンスやリーガルツールはNFTの根底にある作品に適用することができます。私たちはもしあなたが他の人に作品を自由にコピーさせたり、コモンズに存在する他のマテリアルと互換性がある形でリミックスをさせたければ、CCライセンスの利用やCC0によるパブリックドメインへの提供を奨励します。私たちは、CCライセンスで提供されている作品と他のNFTライセンスが互換性があるかどうかの分析をしていませんが、幾つかのプロジェクトではトークン自体の売買に関して追加的な条項を加えるために主に設計されており、根底にある作品についてはCC0を使うか、CCライセンスと互換性持たせていることを確認しています。しかし、他の一部のライセンスは根底にある作品の方について追加的条項を加えており、許容する利用の種類を制限する条項も含まれています。これらの多くはCCライセンスで提供されている作品と互換性がありません。もしあなたがCC0での提供やCCライセンスを含んでいたり、それらに言及しているNFTのライセンスを見かけたら、それらのライセンスがどのように関係しているか、そしてNFTや紐づけられた作品に関する権利にとってどのような意味を持つか、理解すべく注意を払う必要があります。
CCはNFTを創作的な作品に使うことを支持しますか?
CCは自由に再利用やリミックスできる文化的な作品の創造やシェアを支持します。そしてわれわれは、作品の創作やデジタル化を支えるため、排他的な著作権以外の何かを使う資金調達モデルを支持します。私たちは多くのクリエイターや文化機関がそのような精神にのっとってNFTを使うのを見てきました。
私たちはまた、一部作品のクリエイターの同意なしに彼らの作品に関するNFTが発行されていることを承知しています。一部にはトークンの価値や潜在的な投資家に販売されているのが何なのかについての誤解を招くような、あるいは虚偽の約束をするものがあることも承知しています。また、NFTの発行者に資金が誘導されるように欺くような手法を使うことも、その他の多くの倫理に反する使い方が存在しているということも、承知しています。そしてCCは、これらの活動は、CCライセンスやリーガルツールが使われていても支持しません。
他にも考慮に値する批判が存在しています。最も注目に値するのはNFTの環境への影響でしょう。NFTを発行する際、クリエイターは他の新しく、強力なツールを使う時と同じように、選択肢や目標を慎重に考慮することをお勧めします。
創作的な作品へのNFTの活用がそもそも奨励されるべきかについて、私たちのコミュニティには様々な意見があることを、私たちは承知しています。ですが、多くの人がこれを採用したこと、コモンズ内で作品をシェアするための一手段としてどのようにこれを活用するとよいかのガイダンスを求めている、ということも承知しています。この文書はNFTの活用の推奨でも、これらの課題についての本格的検討でもありません。むしろこの文書は、CCライセンスとこれらの新しいツールや実践がどのように相互作用するかについて既に模索している方々へのガイダンスとなることを目的としています。
この文書はCreative Commons による“FAQ: CC and NFTs” を翻訳したものです。 (担当:渡辺)