クリエイターや一般ユーザーは日本版フェアユース導入に積極的
〜クリエイティブ・コモンズ・ジャパン、ウェブ・アンケートの集計レポートを公開〜

特定非営利活動法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(本社:東京都港区 代表者:中山信弘)(CCJP)は、本日9月15日、日本版フェアユース導入に関する一般ウェブ・アンケートの集計レポートをホームページで公開しました。同レポートは9月18日の文化庁・文化審議会著作権分科会法制問題小委員会に配布資料として提出する予定となっています。


本調査の目的と概要

現在文化庁で、著作権法の改正の1つの重要問題として、コンテンツの創作や利用に大きな影響を与える可能性のある「日本版フェアユース」の導入についての議論がなされています。 今年はこの日本版フェアユースを導入するか否かを決めるとても大事な年であるため、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンは本調査を通して、実際に広く創作活動やコンテンツの利用に関わっているクリエイターやユーザーの方の意見を集めて、この議論に反映させるために施行しました。

この集計レポートはクリエイティブ・コモンズ・ジャパンが実施した、フェアユース(著作権の一般制限規定)に関する一般ウェブ・アンケート調査の結果をまと めたものです(実施期間2009年7月24日から8月17日、有効回答数912件)。
本調査の告知は、CCJPその他のウェブサイ ト、メーリングリスト、ブログ(Twitterを含む)などで行い、回答の協力を依頼しました。

調査結果の概要

本調査から得られた主な結論は以下の通りです。

1)現行の著作権法上は違法とされる著作物の利用行為であっても、創作活動やコンテンツの利用にかかわっているクリエイターやユーザーの多くがフェアだと考えるものが複数存在する。

2)クリエイターは著作権の強力な保護を支持する傾向にあるのではないか、との観点から、上記(1)の回答について、創作活動の頻度と、各利用行為がフェアであると考える度合いの間に相関関係は認められず、創作活動を通じて収入を得ている人と得ていない人の間で、各利用行為をフェアであると考える度合いにもほとんど差が認められなかった。興味深いことに、創作活動から収入を得ているクリエイターの方が、収入を得ていないクリエイターに比べ、幾つかのシナリオにおいて、著作物利用をフェアだと考える傾向がやや強かった。

3)著作権の制限規定について、個別の事例ごとに立法する場合と、より一般的・包括的な制限規定を導入する場合のどちらが望ましいかについて尋ねたところ、一般制限規定を支持する意見が61%を占め、個別制限規定を支持する意見の約3倍に上る。

4)一般制限規定を導入した場合、クリエイターが事前に予想していなかったような形で自分の作品の利用がなされる機会が増える可能性があることを説明した 上で、権利保護(権利者による許諾)を重視する著作権制度と、許諾を受けずに一定の自由な利用が可能になる著作権制度とではどちらが良いか尋ねたところ、後者を支持する意見が71%を占め、前者を支持する意見の約5倍に上る。

5)クリエイターは著作権の強力な保護を支持する傾向にあるのではないか、創作活動の頻度や、創作活動から得ている収入により、上記(3)および(4)で得られた結果に違いがあるかを分析したところ有意な差は認められなかった。

[資料URL]
本調査のレポート全文(40p, PDF)は下記からダウンロードできます:
> PDFダウンロード
https://creativecommons.jp/public/fairuse/ccjp_fairuse_report.pdf

[付録資料URL]
自由回答(Q16およびQ24)をまとめた資料はこちらです:

個別制限規定を支持する理由(Q16):
> PDFダウンロード
https://creativecommons.jp/public/fairuse/kobetsu.pdf

一般制限規定を支持する理由(Q16):
> PDFダウンロード
https://creativecommons.jp/public/fairuse/ippan.pdf

分からない/どちらともいえないとする理由(Q16):
> PDFダウンロード
https://creativecommons.jp/public/fairuse/both.pdf

一般制限規定を導入する場合にQ18-23以外に考慮してほしい要素(Q24):
> PDFダウンロード
http://www.creativecommons.jp/public/fairuse/kouryo.pdf

<フェアユースとは?>

一般制限規定、いわゆる「日本版フェアユース」とは、作品(著作物)の利用が「フェア」つまり「公正」であると考えられる一定の条件に当てはまる場合には、その作品に ついて権利を持っている人(著作権者)の許可を得なくても合法に利用ができる制度のことです。

日本版フェアユースが導入されると、いま著作権法で具体的に定められていない利用方法でも、一定の要件をみたすフェアな内容である場合には、著作権者の許 可をもらうことなく利用できる可能性が生じ、その結果より多くの人が自由に文化と接する機会を得られることが考えられます。また、法律の条文の文言上は比較的簡単で、法律を改正せずに様々な場面に対応できる柔軟性があると言われています。
その一方で、著作権者の許可をもらうことなく利用できる範囲を増やしてしまうと、著作権者が嫌だと思っているような利用をされてしまうこともあります。また、何がフェアかの解釈をめぐる争いが増えたり、フェアとされるべきでない行為までフェアだと裁判所が判断してしまう可能性を心配する声もあります。

このようなメリットとデメリットを考慮した上で、上記で述べた教室における利用(35条)、私的複製(30条)や引用(32条)など、現在の著作権法に定 められている個別規定のみでよいか、より一般的な条件を定めた例外規定を追加し、最終的な判断は裁判所が行う形式の例外規定を著作権法に追加すべきか、追 加するとすればどのような内容とすべきかについて、現在、文化庁で議論が行われています。

■ 特定非営利活動法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパンについて

クリエイティブ・コモンズとは、法律の専門知識がなくても、より自由で柔軟な作品のライセンス条件を、4つのアイコンの組み合わせで分かりやすく表示し、誰 でも簡単に自分の作品にライセンスを設定できる、画期的なライセンスシステムです。2002年に米国で始まり、2009年8月現在、世界52の国や地域 で、それぞれの法律に準拠したライセンスを展開し、世界的に標準化されたライセンスの普及に取り組んでいます。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンは 2004年3月に世界で2番目にクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの日本版をリリースし、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの普及や利用サポート を日本において行っています。2007年7月に、東京都の特定非営利活動法人(NPO法人)として認可されました。

■ プレスリリースに関するお問い合わせ窓口
クリエイティブ・コモンズ・ジャパン事務局 広報まで
E-mail: info@creativecommons.jp

本リリースのPDF版は下記からダウンロードできます:
https://creativecommons.jp/public/fairuse/ccjp_release_0915.pdf