パブリックドメイン作品の複製はパブリックドメインとすべきだ

Claudio RuizClaudio Ruiz 

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2019年11月20日

文化遺産に関わる施設において、世界中でパブリックドメインであることが明白である彫刻、胸像、版画、碑文などの作品の、写真による複製や3DスキャンへのCCライセンスの利用が増えていることがクリエイティブ・コモンズの注意を引いている。最近の例ではベルリンのNeues Museumが、そこで展示されている3000年前のネフェルティティの胸像にCC BY-NC-SAライセンスを適用した例がある。CCライセンスを付与する際に採用されるのは、CC BYから、最も制限の強いCC BY-NC-NDまで幅広い。

対象物のほとんどは長らくパブリックドメインであり、そもそも著作権の対象でなかったものも多い。作品に対しCCライセンスを付与できるのは著作権者のみである。もし作品がパブリックドメインである場合、著作権ライセンスは一切適用されるべきではない。CCライセンスは著作権が存在する場合にのみ機能するよう設計されているため、著作権が存在しないこのような場合は効力を持たない。この場合、もし何かを適用するのであれば、世界的にパブリックドメインであることを示すために、パブリックドメインマークあるいはCC0マークを適用するのがふさわしい。

もし作品がパブリックドメインである場合、著作権ライセンスは一切適用されるべきではない。CCライセンスは著作権が存在する場合にのみ機能するよう設計されているため、著作権が存在しないこのような場合は効力を持たない。

これらの主張は、作品そのものではなく作品の3Dスキャンや写真による複製について述べられている場合もある。しかし、デジタル化それ自体で著作権や類似の権利が発生することはない。なぜなら大多数の法的管轄域では、創作物を忠実にデジタル複製することに創作性があると認められないからである。多くの場合これらの複製は、作品の保存のための確立された業界標準に従う。これらのスキャンが高度な技能に基づくものだとしても、ほぼ世界的に、これらの複製は著作権の保護を受けるには創作性が不十分である。

他にも、文化的な管理と所有が法的、政治的、外交上の議論の対象となっている作品にCCライセンスが適用されたケースもある。クリエイティブ・コモンズはこの問題について掘り下げており、これらの問題に対処するためには、CCライセンスは十分でないことを認識している。しかしこれらの事例では、起源となるコミュニティが有する、デジタル化とアクセスの制限と条件に関する決定を含む文化的権限に意識を向けることは非常に意味のあることだ。(*1)

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは、オリジナルの作品の創作者が公衆に対してどのような許可を与えているかを利用者によりよく理解できるようにするためのツールである。CCライセンスが誤用されると、CCライセンスの著作権許諾の意思疎通を行うためのスタンダードとしての能力が損なわれてしまう。作品へのCCライセンスの誤用は作品の再利用者の混乱を招き、世界中のコモンズから恩恵を被る公衆の権利を制限することになる。

いくつかの事例では、文化遺産所蔵施設が自らが行った作業の功績のため、あるいはデジタル複製の出どころを示すためにCCライセンスを用いていることを私達は認識している。しかしこれらの目的については、メタデータや機械可読性標準などのより適切な技術的ツールが存在する。

最後に、オープンアクセスポリシーを評価する際、時に文化遺産所蔵施設が示す収益と利益に関する懸念について私達は理解している。しかし、パブリックドメインである作品の著作権を主張することと、成功する収益化の戦略を考えることは、異なる話題であり、一緒にされるべきものではない。さらには、画像をライセンスすることに関わるコストが、画像から得られるであろう潜在的な利益または収益源を縮小させることを示すエビデンスが増えている。(*2)

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスはパブリックドメイン作品の発見、共有、再利用の可能性を制限するためのツールではない。文化遺産所蔵施設は、公衆に文化と情報へのアクセスを与えることを、機関の任務の一部と考え、オープンアクセスポリシーを採用することが望ましい。

クリエイティブ・コモンズは文化遺産所蔵施設向けに、オープンアクセスに関する研修・教育活動をより多く提供することに努めている。また、Wikimedia Foundationと連携し、2020年5月のGlobal Summitで公開予定のDeclaration on Open Access for Cultural Heritage(文化遺産のオープンアクセス宣言)の作成を行っている。この活動に参加したい方は@openglamまでご連絡を。

レファレンス

1. Pavis, Mathilde and Wallace, Andrea, Response to the 2018 Sarr-Savoy Report: Statement on Intellectual Property Rights and Open Access Relevant to the Digitization and Restitution of African Cultural Heritage and Associated Materials (March 25, 2019). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=3378200 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.3378200

2. Crews, Kenneth D., Museum Policies and Art Images: Conflicting Objectives and Copyright Overreaching. Fordham Intellectual Property, Media & Entertainment Law Journal, Vol. 22, p. 795, 2012; Tanner S. Reproduction charging models & rights policy for digital images in American art museums: A Mellon Foundation funded study. Online: King’s College London, 2004. 57 p.; Foteini Valeonti, Andrew Hudson-Smith, Melissa Terras & Chrysanthi Zarkali, Reaping the Benefits of Digitisation: Pilot study exploring revenue generation from digitised collections through technological innovation, Proceedings of EVA London 2018, UK.

このブログ投稿は Claudio Ruiz と Scann による“Reproductions of Public Domain Works Should Remain in the Public Domain”を翻訳したものです。

(担当:豊倉)