by Anna Tumadóttir, Sarah Hinchliff Pearson

私たちは先日、CCシグナルの進化に関する最新情報をお伝えしました。AIシステムが適切な同意、クレジット表示、透明性を欠いたままコモンズから価値を抽出することが増える中、健全なコモンズを維持するには、より強力なガバナンスと説明責任が必要となっています。これは、「プレファレンス(意向)の表明」から「コモンズを保護するための力の再均衡」へと、私たちのアプローチの変化を反映しています。
本記事では、人間の知識への持続的なアクセスという目標を支援するために、CCシグナルを基盤として強化していく計画の概要を説明します。現時点で全ての答えが出ているわけではありません。しかし、その目標に向かってどのように取り組んでいくかという枠組みは確立しています。
振り返り:何が課題なのか
AIに関して言えば、著作権は不均衡で、多くの場合不透明な状況にあります。このため、CCライセンスは依然として重要ではあるものの、AIシステムにおけるコンテンツの利用方法に対処するには不十分です。詳細はこちらでお読みいただけます。また、CCライセンスは、AIが介在する世界においてクリエイターやデータ管理者が抱く多様な意図を完全には捉えきれていません。
ウェブ全体で、クリエイター、コミュニティ、機関は、様々な形態のアクセスの制限に乗り出しています。これには以下のものが含まれます。
- 法的な制限(ライセンスなど):例えばオープンアクセス出版者が制御メカニズムとして CC BY-NC-ND を推奨する行為(すでに ACM(Association for Computing Machinery)はこれを実施しています)。これは人間同士のコラボレーションに悪影響を及ぼします。
- 技術的な制限(CAPTCHA、ボットのブロック、レート制限など):例えば報道機関が行っているような対応。これはアーカイブ活動に悪影響を及ぼします。
- 経済的な制限(ペイウォール付きAPIなど):例えば買収後のXが行ったような対応。これは研究者に悪影響を及ぼしています。
問題は、これらのツールが目的のいかんを問わず、すべての機械による利用を同じものとして扱っていることです。AI開発者による大規模な抽出を制限しようとする過程で、研究、保存、アクセシビリティといった公益目的の利用もブロックしてしまっているのです。
私たちの調査は継続中ですが、長年守られ、維持されてきた公益のための保護が弱まっている中、コモンズのさらなる分断や、ことによると縮小などの兆候も見られます。
共有のための次世代インフラを構築する
CCライセンスを通じたオープンアクセスは、共有のグラデーションを生み出しました。今日、私たちはAIに対しても同様のものを必要としています。それは、知識がどのように生み出され、共有され、利用されるかというプロセスに、クリエイターやデータを管理するスチュワード(管理者)が主体的に関与できる「参加のグラデーション」です。
私たちが過去25年間で構築してきたコモンズは、自然に現れたものではありません。それは、法的枠組み、技術標準、そして共有された規範を通じて設計されたものです。AI時代には、その次世代となるインフラが必要です。私たちは、グローバルな知識コモンズがアクセス可能な状態を維持し、AIシステムが透明性、説明責任を伴い、公益に合致した形でコモンズに関与する未来を望んでいます。
私たちの計画
CCは、AI知識エコシステムの信頼を回復し、参加を強化し、公益的な価値観を組み込むため、CCシグナル・フレームワークの一環として、いくつかの影響力の大きい介入策を推進しています。
- 現時点で人々が情報に基づいた意思決定を行えるよう支援する
- AIにおいてクレジット表示を規範にする
- 公益目的の利用を保護しつつ、主体性を回復する新しいツールの構築
現時点で人々が情報に基づいた意思決定を行えるよう支援する
AIシステムによるCCライセンス作品の利用方法を巡っては、既存のCCライセンス体系が依然として自らの目的に合致していると言えるのか、多くの人々が疑問を抱くようになっています。
こうした懸念はさまざまな形で現れています。AIシステム内で消えてしまうクレジット表示、本来の文脈から切り離された機微性の高い知識、価値と権力の集中の進行、そして互恵性や説明責任のための明確なメカニズムの欠如などです。しかし、これらすべてに共通する根本的な原因は、この新しい環境においてCCライセンスが実際に何を意味するのかが不明である、という点にあります。
私たちは、CCライセンスを選択する皆さんが自信を持ってそれを行えるようにしたいと考えています。また、CCライセンスをポリシーに組み込んでいる機関が、AIに関してライセンスが「カバーしている範囲」と「カバーしていない範囲」を明確に把握できるようにしたいとも考えています。今後6ヶ月間にわたり、AIが提起する新たな問いにCCライセンサーが迷わず対応できるよう、セクター別の暫定的なガイダンスを提供していきます。このガイダンスは、すべての法的な曖昧さを一挙に解決することを目的としたものではありません。むしろ、この不確実な移行期において、AIによって危機に瀕している「共有」という行為を守りつつ、コミュニティの懸念に応える新しいツールやアプローチを開発していくためのものです。
この暫定ガイダンスへのフィードバックを募集するため、セクター別のバーチャルイベントを順次開催します。詳細が決まり次第、CCニュースレターでお知らせしますので、ぜひご登録ください。
AIエコシステムにおいてクレジット表示を規範にする
クレジット表示は、常にコモンズの基礎であり続けてきました。それは人々が創作に参加する支えとなり、透明性を確保し、知識がどこから来て、どう評価され、どのように次の創作へと積み重ねられていくかを辿ることを可能にします。
しかし、今日のAIエコシステムはこの規範を揺るがしています。ほとんどの生成AIシステムは、自らが依拠している出典を意味のある形で明示していません。AIが知識へのアクセスを仲介することが増えるにつれ、深刻な影響が生じています。出所の情報の喪失、信頼の低下、そして共有することのインセンティブの減退です。CCシグナルの初期のバージョンでは、クレジット表示を「推奨事項」として含めていましたが、現在の私たちは、クレジット表示は「必須の要件」でなければならないと考えています。
私たちの計画は、AIの文脈におけるクレジット表示のベストプラクティスを定義することです。AI開発者はよく「LLMの仕組み上、クレジット表示は不可能だ」と主張します。しかし、これは設計段階における選択の結果であり、技術的に不可能なわけではありません。私たちは、クレジット表示を優先するAIエコシステムがどのような姿になるかを構想することには、大きな価値があると信じています。過去に戻ることはできませんが、RAG(検索拡張生成:AIシステムが特定の追跡可能なソースから情報を引き出して回答を生成する手法)のように、既存のシステム内で技術的に可能な領域については、クレジット表示を要求することができます。
私たちの取り組みには、AIシステム、エンドユーザー、そしてクリエイターに向けて理想的なクレジット表示を具体的に示すガイダンス策定が含まれます。その上で、RAGモデルにおいてどのようにクレジット表示を実現できるかを実証していきます。このイニシアチブには2つの目的があります。一つは、AIにおけるクレジット表示が現在何ができて、何ができないのかの共通認識を築くこと。もう一つは、クリエイターやAIユーザーに対し、クレジット表示を最低限期待される基本要件として要求するためのツールを提供することです。クレジット表示を強化することは、知識を生み出した人々やコミュニティへのつながりを失うことなく、その知識が広く循環することを保証する助けとなります。
CCは、クレジット表示の標準化に取り組む専門家や、クレジット表示を保持できるAIシステムを開発しているエンジニアとの連携を求めています。もしあなたの活動がこれに該当するなら、ぜひご連絡ください。
公益目的の利用を保護しつつ、主体性を回復する新しいツールの構築
著作権法だけでこの課題に対処することはできません。人間中心のインターネットを維持するためには、集団で協力して維持する有意義なガードレールが必要であると私たちは考えます。私たちのゴールは、オープン性と主体性、アクセスと説明責任のバランスが取れたエコシステムを支援することです。
第一に、私たちは、クリエイターの主体性を守りながらも、公益にかなう利用は阻害しない、慎重に適用範囲を定めた「AIオプトアウト」の開発と普及を提唱しています。このニーズに応えるため、私たちはインターネットの基礎的な標準を策定する機関であるIETFに対し、クリエイターの主体性と公益のための再利用との適切なバランスを取るための補助となる「AI Preferences」語彙への追加を提案しました。オプトアウトの仕組みや関連する法整備において、公益目的の利用が保護されることは不可欠です。これには、文化遺産機関によるコンテンツの保存や分析を可能にすることや、非営利の研究機関や教育組織による活動の支援が含まれます。
第二に、オープンに共有されたコレクションやコンピレーションへの「条件付きアクセス」を可能にする、新しいツールの研究開発を進めています。これにより、データの管理者は、自らの技術インフラの持続可能性を守るためのアクセス条件・利用条件を設定できるようになります。ここで想定している管理者とは、図書館、アーカイブ機関、研究機関、データリポジトリ、公共の知識プロジェクト、文化遺産団体などです。リソースを大量に消費するような大規模なデータ再利用者には厳しい条件が課される可能性がありますが、公益目的の利用は全てその対象外となります。
AI開発の条件を定義するための実用的な法的ツールがなければ、データ管理者は「AI開発者による無制限のデータ抽出を許すか」、それとも「アクセスを完全に遮断するか」という、二者択一の極端な選択を迫られてしまいます。どちらの選択肢も、多くの知識リソース管理者が目指すゴールとは一致しません。この研究開発は、コミュニティメンバーやステークホルダーとの緊密な協議に基づいています。これには、過去1年間におけるアフリカ地域の実践者(プラクティショナー)との対話や、Open Future Foundation による文化遺産の共有に関する分析といったムーブメント内でのより幅広い探求、さらには、社会的マイノリティの言語コミュニティにおける権力の均衡を再調整するために開発された NOODL などが含まれます。
多くの人々は、自分たちのコレクションの共有を続けたい一方で、AI開発者がクレジット表示を尊重し、透明性を確保し、自分たちの公益的な使命に沿った他の安全対策の要求を満たすことで、責任あるデータ利用をするようにしたいと願っています。私たちは、これを標準化された、法的に執行可能な方法で実現するためのツールを構築したいと考えています。
今後の展開
こうしたツールの模索は、これまでの著作権だけを見る視点からの脱却を必要としており、CCにとって真のパラダイムシフトです。私たちはこれを軽く考えてはいません。しかし、条件付きアクセスを支援する法的ツールのリスクとメリットを精査することは、コモンズの長期的な健全性を維持する上で不可欠なプロセスであると信じています。価値ある知識リソースへのアクセスを維持しつつ、それらを管理する機関やコミュニティが、AIエコシステムの未来を形作る積極的な参加者であり続けられるようにしなければなりません。
現在の状況は以下の通りです。今月、ロンドンでワークショップを開催し、新しいツールが提起する設計やガバナンスの課題に取り組み始めます。今年後半には、このアプローチを実際にテストし、ブラッシュアップしていくためのパイロット版導入者を募集する予定です。進展があり次第、随時情報を共有していきます。
私たちには明確な計画があり、これらのイニシアチブは年内にパイロットフェーズに移行する予定です。多くの非営利団体と同様に、私たちの前進のスピードは利用可能なリソースに直接左右されます。これまでの進展は「Open Infrastructure Circle」からの支援によって支えられてきました。そして、設立25周年を迎えるにあたり、私たちはCCシグナルの次なる進化を推進するため、500万ドルの資金調達目標を掲げました。もし可能であれば、この活動へのご支援をお願いいたします。
コモンズが次に必要としているものを、共に築いていきましょう。
2026年5月13日掲載
このブログ投稿は Creative Commons による “From Signals to Infrastructure: Strengthening the Commons for the AI Era” を翻訳したものです。
翻訳に際して Gemini の出力を参考にしました。
(担当:豊倉)





