作成者: Mitsuru

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Blender InstituteのTon Roosendaalが語る、オープンライセンスの活用とアーティストとしての成功について

Eric-Steuer_avatar_1520861651Eric Steuer

2016年10月12日(原文投稿日)

 

世界初のオープン映画をプロデュースしたBlender InstituteのTon Roosendaalと彼のチームは、プログラム、ライセンシング、配給まで、全ての面で「オープン」になっています。無料でオープンソースの3DCGアニメーション制作の総合環境であるBlenderは、個人アーティストから小規模企業まで、あらゆるクリエイターをサポートします。

Blender Instituteについての詳細はMade with Creative Commonsに記載されています。 (※1)

この映画はどのような経緯でできたのでしょうか?原点は何でしょうか?

Blender Institute スタジオでは2007年から CC BY ライセンスを用いた映像作品を作ってきました。初期の短編映画は、映画本編と、映画をリメイクするための素材とソフトを収録したDVDの販売で資金を調達しました。この成功により、作品とそこから得られた収益を利用してオープンソースの3D制作ツールであるBlenderを改良してきました。

しかし、DVDの販売が低調となり、データを収録するにもあまり実用的ではないため、2014年にこの資金調達の方法を廃止しました。代わりに、全ての映画と、その映画制作のための全素材、そして数年間にわたって作ってきた100時間あまりのチュートリアル資料をウェブサイトにアップロードしました。これをBlender Cloudと呼んでいます。登録者は月額たったの10ドルで、このサイトにある全てのCC BYライセンス付き資料にアクセスでき、登録者からのサブスクリプション収入をもとに新しいコンテンツや映画を継続的に制作できます。

「Caminandes Llamigos」はBlender Cloudのサブスクリプション収入によって作られた3本目の短編映画です。これまでと同様、このプロジェクトの目的はBlenderをさらに改善をすることと、オンラインでユーザーと共有するCC BYコンテンツとチュートリアルを数多く用意することでした。人々は面白い映画が大好きで、制作者本人たちからその作り方を学ぶことは大きな刺激になります。

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「Caminandesシリーズ」はPablo Vazquez監督の故郷であるパタゴニアを舞台にしています。Pabloは、面白くてクレイジーな動物と、アメリカの1950年代以降の伝統的短編が大好きです。

 

制作にはどれくらい時間がかかりましたか?実現までにどんなプロセスを経たのでしょうか?

脚本の執筆と絵コンテの作成は昨年10月に始まりました。制作は11月から始まって3ヶ月間続きました。2月には1ヶ月かけて、メイキング資料、ダウンロード可能な素材、チュートリアルなどを追加し、プロジェクトの仕上げを行いました。

 

プロジェクトにはなぜ特定のCCライセンスを利用するのですか?

制作したものにはCC BYとCC 0以外はほぼ使用しません。制作した映画やその素材を非商用ライセンス提供することは、本格的なアーティストやプロとのコンテンツの共有が不可能あるいは困難となるため、一度も検討したことがありません。

 

オープンライセンスは、映画とその素材を共有するために欠かせません。CC BYとCC 0により、素材コレクションを他のプロジェクトでも使用できるのです。また、トレーニングを通じて、学生に、新しい作品を作り、共有し、公開するために、作品を改編・編集する権利を与えることが不可欠です。

 

人々が映画をどのように使うことを願っていますか?また、それとどのように関わりたいですか?

共有することは他人を思いやることです!アーティストや制作者として、作品がたくさんの人に見られるように共有されることを望みます。過去のCaminandesのバージョンはDisney Channelに移植され、大成功でした。Caminandesのキャラクターは広く知られており、想定していなかった方法で使われ始めていて嬉しく思っています。

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CCライセンスのもとアニメ映画を共有してきたこの10年間を顧みると、新しいエピソードやバージョンを作るために素材が使われていないことに驚きます。少なくとも私達が作った質と量では作られていません。「全てを公開する」ことで、自身の素晴らしい作品が誰にでも複製・再利用されると全てを失うと考えるかもしれません。しかし実際は違うということを知りました。制作に用いた素材を含めて全てを共有しても、一定のレベルの作品を作るためには才能と技能、時間、費用がかかります。作品に厳しい著作権上の制限を課すことには価値がないのです。

 

(※1) “Made with Creative Commons” はこの記事の原文が作成された2016年10月の時点ではリリースされていませんでしたが、現在はリリースされているため、表現、リンク先を原文とは異なるものに改めました。

このブログエントリーはEric Seuterによる” Blender Institute’s Ton Roosendaal on open licensing and artistic success” を一部変更し、翻訳したものです。

元のブログエントリーのライセンス表示:” Except where otherwise noted, content on this site is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International license.”

文中に挿入したアニメーション画像のライセンス表示:Caminandes 3: Llamigos by (CC) caminandes.com からのスクリーンショット
ライセンス:Creative Commons Attribution 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/&gt;

 

(担当:豊倉)

楽譜を開放するためのOpenScoreの計画

Peter Jonas

2017年6月30日(原文投稿日)

この記事はOpenScoreのPeter Jonasによるゲスト投稿です。OpenScoreはKickstarterを通じて始まった、楽譜をCC0のもとで公開する先進的なプロジェクトです。CC0の詳細はこちら。文化資産組織にとってのCC0と、その活用効果を知りたい方はニュースレターへの登録を。

OpenScoreは、モーツァルトやベートーヴェンらパブリックドメインとなっているクラシック音楽の楽譜を、クラウドソーシングを通じてデジタル化しようという先進的なプロジェクトです。ウィキペディアやプロジェクト・グーテンベルク、オープンストリートマップなどの大規模なクラウドソースプロジェクトは知識の民主化に多大な貢献をしており、人々に情報と力を与えてきました。



OpenScoreは、歴史的に最も影響力のある作品を、紙媒体からインタラクティブ・デジタル楽譜に変換し、これを聴いて、編集して、共有することで、オーケストラ、合唱団、合奏団、練習用の教材を探している人に役立つことを期待しています。OpenScoreで公開されている全ての楽譜はCC0のもと、無料で公開されています。これにより、私達は音楽教育と研究への恩恵を最大化し、作曲家や編曲家に新しいコンテンツを生み出すきっかけとしたいのです。


ベートーヴェン - エリーゼのために by OpenScore


OpenScoreはMuseScoreIMSLPという2つのオンライン楽譜大手コミュニティの協同により実現しました。IMSLPコミュニティは2006年以来、PDF形式でのパブリックドメインの楽譜の世界最大級のオンラインアーカイブを作るために、著作権の切れた楽譜を探し、スキャンしてアップロードしてきました。MuseScoreには、作曲、編曲、練習、デジタル化された楽譜の共有のためのMuseScore サイトと、MuseScoreが提供するオープンソースの楽譜作成ソフトを使う、世界で数百万人の活発コミュニティが存在します。OpenScoreはこのコミュニティを活用し、画像のみで構成されるIMSLP版の楽譜の音符をMuseScoreの楽譜作成ソフトに入力して、インタラクティブにデジタル楽譜化する予定です。

OpenScoreのデジタル楽譜は、広く支持されているMusicXML形式で提供されています。MusicXML形式は、ほとんどの楽譜作成ソフトで読み込み可能で、ギタータブ譜や他の表記への変換も容易です。楽譜は、ソフトウェアを用いることで研究や分析が可能で、Nicholas Rougeuxによるヴィヴァルディの「四季」を、下記のように芸術的に視覚化することができます。Nicholasはシカゴに拠点を置くデジタルアーティスト、ウェブデザイナーで、OpenScoreの楽譜に独自のカバーイメージを制作することに同意しました。

ヴィヴァルディの「四季」の視覚化 by Nicholas Rougeux

採譜に関心を持つ多くの人々のおかげで最初のOpenScoreを公開することができました。もし採譜に興味があれば、MuseScore forumにあるこちらの記事をご覧ください。

このブログエントリーはPeter Jonasによる“Openscore’s plans to liberate sheet music” を翻訳したものです。

元のブログエントリーのライセンス表記:”Except where otherwise noted, content on this site is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International license. “

8/25 MIAUシンポジウム2016「欧州の事例から考える著作権の未来」サマリーレポート

8月25日(木)に東京飯田橋のアンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュにて「欧州の事例から考える著作権の未来」シンポジウムが開催されましたので、サマリーをレポートします。
(以下、敬称略)
<主催>
インターネットユーザー協会(MIAU)
<協賛>
作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム
Creative Commons Japan

基調講演

講演者:Julia Reda(欧州議会議員、欧州海賊党)
「Correcting CopyWrongs」
ヨーロッパは国ごとに著作権の保護期間と保護規定が異なるので様々な問題がある。例えば意匠性の高い家具は、生産国では購入できても他国だと著作権侵害となって購入不可になる。これらの違いを緩和するため、多くの例外が存在する。例えば 「Freedom of Panorama」サイトは、非商用を条件に風景写真を自由にアップし再利用する仕組み。今の各国の著作権の違いによる弊害を低減するためにEUとしてまとめ(リフォーム、統一、緩和)ようとしており、自分も積極的に法案化に関わっている。

 

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シンポジウム

モデレーター:香月啓佑(MIAU事務局長)
登壇者:
Julia Reda(欧州議会議員、欧州海賊党)
長塚真琴(一橋大学 法学研究科 教授)
上野達弘(早稲田大学 法学学術院 教授)

世古和博 (一般社団法人日本音楽著作権協会 常任理事)
水野祐(弁護士、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事)

1. Redaさんのプレゼンを聴いての所感

<登壇者>著作権は排他権であることは避けて通れない。仕事の単価を維持し高めるための最終手段ではないか。
EUは個別の著作権は守りつつ、共有できる付帯条項を付加するアプローチ。保護期間は、著作権を復活させることも行っている (TPPは著作権が消滅したものは復活させない)。多様性を認めることも大切。
権利者保護と利用者の利便性のバランスを保つことが大切。 
インターネット時代になり、保護だけでは権利者のためにならず、二次利用を促進することの方が得になる場合がある。(フェアユースなどのような法律やCCのような契約で)コモンズをどう作るかが重要である。 著作財産権を排他権行使ではなく報酬請求権で解決したり著作権を登録制にする可能性も考えたい(ベルヌ条約をどう超えていくか)。
そもそも権利保護をしてあげないといけないクリエーターがそんなに多いのか?権利保護の弱い食料生産や料理人、ファッションクリエーターのような分野は市場規模は小さくない。
衣食住のような基本生活品には人は対価を支払う。
音楽やアートは、無料で消費されてしまう可能性があるので、それを守る必要がある。
<Reda>適正に安価であれば音楽やアートでも消費者は対価を払う。

2. 未来の著作権

<登壇者>権利保護が必ずしも著作権者のためになっているのか、なっていない場面も多いのではないか。
かつてなく権利者がユーザにもなる時代なので、再利用しやすくする工夫が求められている。コンテンツIDや登録制、権利者への分配などを(BlockchainやEthereumなどの)テクノロジーの進歩で普及させていくことも重要と考える。
著作権者を守るためにブロックするのも一つの方法だが、表現の自由を束縛する懸念がある。もぐらたたきの保護はお金がかかり、長期にやりたくない。何か仕組みを作りたい。JASRACはすでに登録制と集中管理を実現していると言える。
<Reda>20世紀型の著作権は自動付与だったが、21世紀型の著作権はCCライセンスやインターネットの利用をふまえて登録制もあってよいのではないか。

3. 最後に

<登壇者>レダ レポートは著作権保護期間を死後50年と主張するなど過激さが薄くバランスがとれている。
(どうあるべきかを学問として扱っている我々)学者と違って、議員だけあって現実的な法案作りを目指されていると感じた。
<Reda>EU議員としての立場もあるので、多くのEU構成国に寄与する内容とした。完全に統一された著作権法を作ろうとしているのではなく、できるだけハーモナイズをとりつつ、各国の独自性も維持出来る内容を目指している。
<モデレーター>本イベントを通じてEUと日本のハーモナイズに寄与できたのではないか。

 

投稿者:前川 充