作成者: Mitsuru

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今こそオープンアクセスポリシーが重要なときだ

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オープンアクセスに強く懐疑的な人たちさえも困惑させたニュースが出た。「トランプ対ベルリン」という見出しのもと、ドイツのWelt am Sonntag新聞は、トランプ大統領が「アメリカ合衆国のためだけに」COVID-19ワクチンを確保するべく、ドイツの製薬会社CureVacに対し10億ドルの支払いを提案したことを報道したのだ。

これに対し、ドイツの保健相のJens Spahnは、そのような取引は「ありえない」と述べ、ドイツの経済相のPeter Altmaierは「ドイツは売り物ではない」と話した。特に憤慨したのがオープンサイエンスを推進している人々だ。Trinity College DublinのLorraine Leeson教授は、「今はこのような行動を起こすようなときではない。これは有意義な対応をするために今やっている #OpenScience の活動に逆行する行為だ。今は排他的な行動ではなく連帯のときだ。」とツイートした。ホワイトハウスとCureVacは報道を否定している。

今私達は、共に効果的に協力し前例のない世界的な健康危機に対応しなければならない、歴史的な転換点にいる。「when we share, everyone wins(共有するとき、皆が利する)」という標語が今ほどあてはまるときはない。これを念頭に、我々は危機的状況下におけるオープンアクセスの重要性、とりわけオープンサイエンスの重要性を強調する必要があると感じた。

世界的な健康危機の状況下でなぜオープンアクセスが重要なのか

特に脅威が迫っている状況下で世界の健康状態を維持するためには、科学者のみならず、市民、政府関係者、医療関係者に対して、信頼できる最新の科学に基づいた情報を作成し広めることが重要だ。CC-now-1

Gates FoundationHewlett FoundationWellcome Trustといった科学研究の資金を提供する団体は長きにわたってオープンアクセスポリシーを維持しており、COVID-19の流行を抑えるために、関連する研究を迅速に、開かれたかたちで共有するさらなる努力を呼びかけているところもある。世界保健機関(WHO)の資料はCC BY-NC-SA(表示 – 非営利 – 継承)がつけられている。この保守的なアプローチは科学コミュニティが今まさに必要としている、重要な情報にアクセスし利用するための水準には達していない。

公的資金を受けているすべての組織は以下の2点を実施すべきである。1) オープンアクセスポリシーを導入し、公的資金を受けて行われた研究をオープンライセンス(例えばCC BY 4.0)のもとで公開する、あるいはパブリックドメインに置く。これは、研究論文や研究データが自由に再利用可能なことで、科学者同士のコラボレーションが促進され、新たな発見が加速されることを意味する。2) 信頼できる実用的な情報を市民に広めるために、動画、図解、その他のメディアツールなどの教育リソースにもオープンライセンスを確実に導入する。

現在急がれているCOVID-19のワクチン開発は、科学研究と教育資料への迅速で自由なアクセスが、あらゆる意味で、最も開かれたかたちで提供されることが極めて重要であることを示す良い例だ。大流行するまで科学者もこの病気を全く知らなかったという事実、今では世界的になっているという事実を含め、この病気の性質それ自体からして、一つの組織、機関、政府がこの危機に単体で取り組むことは不可能だ。実際に、中国の衛生当局者や研究者が2020年1月にウイルスの性質に関する重要な情報を共有していなければ、現在のCOVID-19のワクチンを開発する世界的な努力は実現していなかっただろう。

私達は、共に効果的に協力し、前例のない世界的な健康危機に対応しなければならない、歴史的な転換点にいる。標語である「when we share, everyone wins(共有するとき、皆が利する)」は今ほどあてはまるときはない。

COVID-19の感染者数は世界で20万人を超えており、科学コミュニティ全体と世界中の衛生当局者が協力し、治療法とワクチンを開発し共有することが緊急の課題となっている。3月13日には、12カ国の政府の科学アドバイザーが、出版社に対し、COVID−19に関する科学研究とそのデータをオープンアクセスにすることを求める公開書簡を発表した。そこには「現状の緊急性を考慮すると、科学者と市民が可能な限り早く研究結果にアクセスできることが特に重要である」と書かれている。これらに加え、WHOなどの政府間組織によって作成された教育資料も制限なしに開かれたかたちで利用可能とするべきだ。これは現在の世界的な危機において必要であるだけでなく、こうした機関の公的使命および義務にも合致している。CC-now-2

この公開書簡が発表される前に、すでに多くの科学者がbioRxivArXivGisaidといったプレプリントを掲載するプラットフォームを通じて、研究結果とデータをオープンアクセスで公開し始めていた。非営利団体であるFree Readは「unlock coronavirus research(コロナウイルス研究を開放する)」ための請願で、1週間で3万2千もの署名を集めた。これを受け、Elsevier、Oxford University Press、Springer Nature、The Lancetなどの出版社はCOVID-19関連の論文の購読料を撤廃しはじめた。New York Times、Bloomberg、The Atlantic、Clarin、Publico、Globo、Folhaといった世界中のメディアもCOVID-19関連の記事を無料で読めるようにしている。個々の科学者も、メディアと共同で、複雑な科学的コンセプトを解説する図をオープンライセンスのもと公開し始めている。たとえば感染症の専門家であるSiouxsie Wiles博士が、どうすれば「感染のピークを抑えられるか」を説明したこのGIF画像はクリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承 4.0 国際(CC BY-SA 4.0)のもと公開された。

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オープンサイエンス支持者の多くがCOVID-19に関する科学研究をオープンアクセスにするこれらの取り組みを称賛しているが、これらは今までもずっとやるべきことであったとも主張している。カリフォルニア大学バークレー校の生物学者であり、オープンアクセスジャーナルのeLifeの編集者であるMichael Eisenは、WIREDにて「もちろんオープンアクセスとすることはCOVID-19だけでなく、すべての科学研究についてのデフォルトであるべきで、過去25年のあいだもそれがデフォルトであるべきだった。しかし、今そうなりつつあるのを見れて嬉しい。」と語った

Plan Sは自身のウェブサイトで、購読料を課すことは「科学コミュニティの大きな部分および社会全体から、多くの研究結果へのアクセス」を保留していると主張している。これは「共同体としての科学研究の基礎部分を妨害し、社会による科学への理解を妨げる」ことになる。例えば2014年に西アフリカで起きたエボラの流行について研究している研究者は、ウイルスとそのリスク要因に関する必要な知識が、出版社による購読料の設定により必要なところに伝わらなかったことを明らかにした。彼らは「知識へのアクセスそのものはエボラの流行を防ぐことはなかったかもしれないが、衛生当局者たちがより情報を持つことで、時宜にかなった予防策や、より準備の行き届いた状態で、流行時および流行後の対策を行えたかもしれない。」と記している。

今こそオープンアクセスポリシーを導入し、改善するときだ。

これらの理由から、クリエイティブ・コモンズ(CC)は英国研究・イノベーション機構(UKRI)などの組織や政府に対してオープンアクセスポリシーを導入することを呼びかけている。CCは現在UKRIが提示したオープンアクセスポリシーに対するパブリックコメントプロセスへのコメントを準備しており、アメリカ連邦官報の「政府資金による研究の、査読付き学術出版物、データ、コードへの公的なアクセス」の情報提供依頼書へも同様のコメントを共有する予定でいる。

CCライセンスはオープンライセンスの世界標準となった。様々な政府と組織におけるオープンアクセスポリシーの作成、導入、実施の取り組みの支援をしてきた今、私達は引き続き、研究者、産業、そして公衆の利益のためのオープンアクセスを強く支持し続ける。これは、国際組織または政府の資金提供によって作成されたすべての情報を、最大限に再利用できるようにすることを含む。加えてCCは、「Public Statement of Library Copyright Specialists: Fair Use & Emergency Remote Teaching & Research(図書館著作権専門家による公的ステートメント:フェアユースと緊急時の遠隔授業と研究)」のような、現在のような例外的な状況においてフェアユースがどのように適用されるかを明確にしようとする取り組みを支持する。上記の資料はアメリカ合衆国の、マサチューセッツ工科大学を含めた複数の大学の、著作権に詳しい専門家の図書館員のグループによって公開されたものである。

オープンアクセスポリシーの導入やCCライセンスの付与についてのお問い合わせはinfo@creativecommons.orgまでどうぞ。(日本ではCCJPも同様のお手伝いを致します。お問い合わせについてはhttps://creativecommons.jp/contact/を御覧ください。)

👋COVID-19の蔓延を食い止めるためにWHOがまとめているとおり、20秒以上の手洗いや、密集・密接を避けることなどを実践しましょう。

このブログ投稿はVictoria Heath と Brigitte Vézina による“Now Is the Time for Open Access Policies—Here’s Why (March 19, 2020)”を翻訳したものです。

(担当:豊倉)

Mike Winkelmann (別名: beeple)のアートとEvery Dayについて

Jennie Rose HalperinJennie Rose Halperin

January 18, 2018

Beeple(Mike Winkelmann)は、ビデオアートやデザインワークの作品をCCライセンスの下で無料で提供しているグラフィックデザイナー、アーティスト、映像作家です。Winkelmannは過去10年間、毎日「Everydays」シリーズとして作品をリリースしており、現在では3000を超えるCGIの絵と映像作品のアーカイブとなっています。彼の作品は他のジャンルでも人気で、CCライセンスで提供されている彼の数百に及ぶVJループは、マッシュアップを求める電子音楽の作曲者やアーティストに人気です。

Winkelmannのショートフィルムは様々なフェスで上映され、彼のCCライセンス付きのイラストや絵はSkrillex、Amon Tobin、Tiëstoといったアーティストにも使用されています。彼は現在Flying LotusのBrainfeederレーベルで作品をリリースしています。

Winkelmannの作品はBeeple-CrapInstagramTumblrVimeoで見ることができます。

あなたは人気のあるレーベルの、多様なジャンルにおいて成功したアーティストですが、VJループや他の素材をCCライセンスのもとでリリースし続けています。どのように2つの創作のモードのバランスをとっているのでしょうか?なぜ作品をコモンズへリリースするのでしょうか?そもそもCCライセンスを利用しはじめたきっかけはなんだったのでしょうか?

作品を作って無償で提供することは、なぜかはわかりませんが私にとって自然なことなのです。力を注いで作り上げたものは、できるだけ多くの人に見てもらいたいので、それを実現するためには無償で提供することが最も簡単な方法なのです。

もちろん、私もみんなと同じように家族がいて払わないといけない請求書もあり、制作した作品に対してお金を請求したい気持ちもよくわかります。しかし私の場合は、フリーランス(個別契約)の制作と、純粋に個人的な制作作品を無料でリリースすることとの区別ができています。


ANGULAR (loop) by beeple ライセンス:CC BY 3.0 非移植版

懐疑的な人がCCライセンスに関して話すときに、「無料で同じものが手に入るのにお金を払う人がいるのか?」という疑問が投げかけられることがあります。あなたはこれに対してどのように返答しますか。CCライセンスを使い続ける理由はなんですか?個人アーティストとして、どのようにして無償/アトリビューションモデルと有償モデルのバランスを保っているのでしょうか?

アート作品を金銭的に評価することは大変興味深いテーマだと思います。需要と供給の問題に収束する側面もあると思いますが、コストをかけずにコピー可能なデジタル作品においてはより複雑です。正直、「正しい」答えというのはないと思いますが、個人的には両方の立場が成立するでしょう。ほとんどの人が、無料で手に入れられるものに対してお金を払わないというのは明らかにそうなのですが、そうではない事実が存在するのも確かです。例えばPatreonのように、自分が気に入った作品の作者にお金をあげるサイトなども存在します。人々は作品にもっと集中すべきなのに、ビジネス化することに集中しすぎていることも時にあると思います。

私のデジタル作品については有料モデルといったものはありません。お金を受け取って行う制作は、わたしの場合は全て個別契約(フリーランス)の仕事です。今はそのように割り切ることを好んでいます。


“Miami” From Everydays by Mike Winkelmann

「Everydays」が11ラウンド目に入り、毎日ひとつの作品を完成させてきた結果、オリジナル作品が3500を超えました。このプロジェクトの原動力は何で、11年間でどのように変わりましたか?これまでに学んだこと、そしてこれから変えていきたいことは何ですか?

10年間のeverydays は、去年の5月に、一日たりとも欠かすことなく10年目が終わりました。このプロジェクトの主な目標は絵の上達でした。最初に始めた時は、絵をもっと上手く描きたかったのです。1年間描いたら、かなり上達したのです(間違いなくまだ下手でしたが)。同時に、このプロジェクトが、新しいテクニックを学んで継続的に上達していくための強力な方法であると感じました。

正直なところ、この10年間であまり何かが変わったということはありません。このプロジェクトから、絵が著しく上達し、多くの恩恵を得ましたが、私の技術は求めているものとはまだかけ離れています。まだまだフォーカスしたい領域がたくさんあるので、やめることは当分ないでしょう。


“VICEMOON” from Everydays by Mike Winkelmann

InstagramやFacebookといった、より視覚的でバイラルな(拡散する)ソーシャルメディアは、あなたの活動をどのように変えましたか?個人アーティストとして成長する過程で、ほかのプラットフォームをどのように活用してきましたか?

これらのプラットフォームは、特に私が作るような作品を多くの人々に届けることに大いに役立っています。小さ目で利用しやすい絵や短いVJクリップを一日に一作品投稿していますが、媒体がそれらにとても適していることを、とても幸運に感じています。これらのプラットフォームを活用して、それぞれの利用者のニュアンスを理解することが大切です。一方、のめり込み過ぎて時間を奪われてしまう可能性もありますから、これらのプラットフォームでプレゼンスを保ちつつ、時間をかけすぎないバランスを維持する必要があると思います。


CLEANROOM (loop) by beeple (video) and Justice (audio) ライセンス:CC BY 3.0 非移植版

現在取り掛かっているプロジェクトで最も刺激的なものはなんですか?どのようなプロジェクトがお好きですか?

最近はVRとARの作品に取り掛かっており、とてもワクワクしています。これらは当然新しいフォーマットで、決まり事も少ないので、創作しながら、いろいろな発見があります。everdays、VJクリップ、ショートフィルムの制作も継続しています。私は同じことをしているとすぐに飽きてしまうので、幅広いメディアを用いて制作することで、とても楽しんでいます。

このブログ投稿はJennie Rose Halperinによる”Art and the Every Day with Mike Winkelmann (AKA beeple)” を一部変更し、翻訳したものです。

元のブログ投稿のライセンス表示:” Except where otherwise noted, content on this site is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International license.”

文中に挿入した作品例のライセンスがわかっている場合は、作品に付記してあります。

(担当:豊倉)

 

Blender InstituteのTon Roosendaalが語る、オープンライセンスの活用とアーティストとしての成功について

Eric-Steuer_avatar_1520861651Eric Steuer

2016年10月12日(原文投稿日)

 

世界初のオープン映画をプロデュースしたBlender InstituteのTon Roosendaalと彼のチームは、プログラム、ライセンシング、配給まで、全ての面で「オープン」になっています。無料でオープンソースの3DCGアニメーション制作の総合環境であるBlenderは、個人アーティストから小規模企業まで、あらゆるクリエイターをサポートします。

Blender Instituteについての詳細はMade with Creative Commonsに記載されています。 (※1)

この映画はどのような経緯でできたのでしょうか?原点は何でしょうか?

Blender Institute スタジオでは2007年から CC BY ライセンスを用いた映像作品を作ってきました。初期の短編映画は、映画本編と、映画をリメイクするための素材とソフトを収録したDVDの販売で資金を調達しました。この成功により、作品とそこから得られた収益を利用してオープンソースの3D制作ツールであるBlenderを改良してきました。

しかし、DVDの販売が低調となり、データを収録するにもあまり実用的ではないため、2014年にこの資金調達の方法を廃止しました。代わりに、全ての映画と、その映画制作のための全素材、そして数年間にわたって作ってきた100時間あまりのチュートリアル資料をウェブサイトにアップロードしました。これをBlender Cloudと呼んでいます。登録者は月額たったの10ドルで、このサイトにある全てのCC BYライセンス付き資料にアクセスでき、登録者からのサブスクリプション収入をもとに新しいコンテンツや映画を継続的に制作できます。

「Caminandes Llamigos」はBlender Cloudのサブスクリプション収入によって作られた3本目の短編映画です。これまでと同様、このプロジェクトの目的はBlenderをさらに改善をすることと、オンラインでユーザーと共有するCC BYコンテンツとチュートリアルを数多く用意することでした。人々は面白い映画が大好きで、制作者本人たちからその作り方を学ぶことは大きな刺激になります。

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「Caminandesシリーズ」はPablo Vazquez監督の故郷であるパタゴニアを舞台にしています。Pabloは、面白くてクレイジーな動物と、アメリカの1950年代以降の伝統的短編が大好きです。

 

制作にはどれくらい時間がかかりましたか?実現までにどんなプロセスを経たのでしょうか?

脚本の執筆と絵コンテの作成は昨年10月に始まりました。制作は11月から始まって3ヶ月間続きました。2月には1ヶ月かけて、メイキング資料、ダウンロード可能な素材、チュートリアルなどを追加し、プロジェクトの仕上げを行いました。

 

プロジェクトにはなぜ特定のCCライセンスを利用するのですか?

制作したものにはCC BYとCC 0以外はほぼ使用しません。制作した映画やその素材を非商用ライセンス提供することは、本格的なアーティストやプロとのコンテンツの共有が不可能あるいは困難となるため、一度も検討したことがありません。

 

オープンライセンスは、映画とその素材を共有するために欠かせません。CC BYとCC 0により、素材コレクションを他のプロジェクトでも使用できるのです。また、トレーニングを通じて、学生に、新しい作品を作り、共有し、公開するために、作品を改編・編集する権利を与えることが不可欠です。

 

人々が映画をどのように使うことを願っていますか?また、それとどのように関わりたいですか?

共有することは他人を思いやることです!アーティストや制作者として、作品がたくさんの人に見られるように共有されることを望みます。過去のCaminandesのバージョンはDisney Channelに移植され、大成功でした。Caminandesのキャラクターは広く知られており、想定していなかった方法で使われ始めていて嬉しく思っています。

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CCライセンスのもとアニメ映画を共有してきたこの10年間を顧みると、新しいエピソードやバージョンを作るために素材が使われていないことに驚きます。少なくとも私達が作った質と量では作られていません。「全てを公開する」ことで、自身の素晴らしい作品が誰にでも複製・再利用されると全てを失うと考えるかもしれません。しかし実際は違うということを知りました。制作に用いた素材を含めて全てを共有しても、一定のレベルの作品を作るためには才能と技能、時間、費用がかかります。作品に厳しい著作権上の制限を課すことには価値がないのです。

 

(※1) “Made with Creative Commons” はこの記事の原文が作成された2016年10月の時点ではリリースされていませんでしたが、現在はリリースされているため、表現、リンク先を原文とは異なるものに改めました。

このブログエントリーはEric Seuterによる” Blender Institute’s Ton Roosendaal on open licensing and artistic success” を一部変更し、翻訳したものです。

元のブログエントリーのライセンス表示:” Except where otherwise noted, content on this site is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International license.”

文中に挿入したアニメーション画像のライセンス表示:Caminandes 3: Llamigos by (CC) caminandes.com からのスクリーンショット
ライセンス:Creative Commons Attribution 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/&gt;

 

(担当:豊倉)

楽譜を開放するためのOpenScoreの計画

Peter Jonas

2017年6月30日(原文投稿日)

この記事はOpenScoreのPeter Jonasによるゲスト投稿です。OpenScoreはKickstarterを通じて始まった、楽譜をCC0のもとで公開する先進的なプロジェクトです。CC0の詳細はこちら。文化資産組織にとってのCC0と、その活用効果を知りたい方はニュースレターへの登録を。

OpenScoreは、モーツァルトやベートーヴェンらパブリックドメインとなっているクラシック音楽の楽譜を、クラウドソーシングを通じてデジタル化しようという先進的なプロジェクトです。ウィキペディアやプロジェクト・グーテンベルク、オープンストリートマップなどの大規模なクラウドソースプロジェクトは知識の民主化に多大な貢献をしており、人々に情報と力を与えてきました。



OpenScoreは、歴史的に最も影響力のある作品を、紙媒体からインタラクティブ・デジタル楽譜に変換し、これを聴いて、編集して、共有することで、オーケストラ、合唱団、合奏団、練習用の教材を探している人に役立つことを期待しています。OpenScoreで公開されている全ての楽譜はCC0のもと、無料で公開されています。これにより、私達は音楽教育と研究への恩恵を最大化し、作曲家や編曲家に新しいコンテンツを生み出すきっかけとしたいのです。


ベートーヴェン - エリーゼのために by OpenScore


OpenScoreはMuseScoreIMSLPという2つのオンライン楽譜大手コミュニティの協同により実現しました。IMSLPコミュニティは2006年以来、PDF形式でのパブリックドメインの楽譜の世界最大級のオンラインアーカイブを作るために、著作権の切れた楽譜を探し、スキャンしてアップロードしてきました。MuseScoreには、作曲、編曲、練習、デジタル化された楽譜の共有のためのMuseScore サイトと、MuseScoreが提供するオープンソースの楽譜作成ソフトを使う、世界で数百万人の活発コミュニティが存在します。OpenScoreはこのコミュニティを活用し、画像のみで構成されるIMSLP版の楽譜の音符をMuseScoreの楽譜作成ソフトに入力して、インタラクティブにデジタル楽譜化する予定です。

OpenScoreのデジタル楽譜は、広く支持されているMusicXML形式で提供されています。MusicXML形式は、ほとんどの楽譜作成ソフトで読み込み可能で、ギタータブ譜や他の表記への変換も容易です。楽譜は、ソフトウェアを用いることで研究や分析が可能で、Nicholas Rougeuxによるヴィヴァルディの「四季」を、下記のように芸術的に視覚化することができます。Nicholasはシカゴに拠点を置くデジタルアーティスト、ウェブデザイナーで、OpenScoreの楽譜に独自のカバーイメージを制作することに同意しました。

ヴィヴァルディの「四季」の視覚化 by Nicholas Rougeux

採譜に関心を持つ多くの人々のおかげで最初のOpenScoreを公開することができました。もし採譜に興味があれば、MuseScore forumにあるこちらの記事をご覧ください。

このブログエントリーはPeter Jonasによる“Openscore’s plans to liberate sheet music” を翻訳したものです。

元のブログエントリーのライセンス表記:”Except where otherwise noted, content on this site is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International license. “

8/25 MIAUシンポジウム2016「欧州の事例から考える著作権の未来」サマリーレポート

8月25日(木)に東京飯田橋のアンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュにて「欧州の事例から考える著作権の未来」シンポジウムが開催されましたので、サマリーをレポートします。
(以下、敬称略)
<主催>
インターネットユーザー協会(MIAU)
<協賛>
作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム
Creative Commons Japan

基調講演

講演者:Julia Reda(欧州議会議員、欧州海賊党)
「Correcting CopyWrongs」
ヨーロッパは国ごとに著作権の保護期間と保護規定が異なるので様々な問題がある。例えば意匠性の高い家具は、生産国では購入できても他国だと著作権侵害となって購入不可になる。これらの違いを緩和するため、多くの例外が存在する。例えば 「Freedom of Panorama」サイトは、非商用を条件に風景写真を自由にアップし再利用する仕組み。今の各国の著作権の違いによる弊害を低減するためにEUとしてまとめ(リフォーム、統一、緩和)ようとしており、自分も積極的に法案化に関わっている。

 

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シンポジウム

モデレーター:香月啓佑(MIAU事務局長)
登壇者:
Julia Reda(欧州議会議員、欧州海賊党)
長塚真琴(一橋大学 法学研究科 教授)
上野達弘(早稲田大学 法学学術院 教授)

世古和博 (一般社団法人日本音楽著作権協会 常任理事)
水野祐(弁護士、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事)

1. Redaさんのプレゼンを聴いての所感

<登壇者>著作権は排他権であることは避けて通れない。仕事の単価を維持し高めるための最終手段ではないか。
EUは個別の著作権は守りつつ、共有できる付帯条項を付加するアプローチ。保護期間は、著作権を復活させることも行っている (TPPは著作権が消滅したものは復活させない)。多様性を認めることも大切。
権利者保護と利用者の利便性のバランスを保つことが大切。 
インターネット時代になり、保護だけでは権利者のためにならず、二次利用を促進することの方が得になる場合がある。(フェアユースなどのような法律やCCのような契約で)コモンズをどう作るかが重要である。 著作財産権を排他権行使ではなく報酬請求権で解決したり著作権を登録制にする可能性も考えたい(ベルヌ条約をどう超えていくか)。
そもそも権利保護をしてあげないといけないクリエーターがそんなに多いのか?権利保護の弱い食料生産や料理人、ファッションクリエーターのような分野は市場規模は小さくない。
衣食住のような基本生活品には人は対価を支払う。
音楽やアートは、無料で消費されてしまう可能性があるので、それを守る必要がある。
<Reda>適正に安価であれば音楽やアートでも消費者は対価を払う。

2. 未来の著作権

<登壇者>権利保護が必ずしも著作権者のためになっているのか、なっていない場面も多いのではないか。
かつてなく権利者がユーザにもなる時代なので、再利用しやすくする工夫が求められている。コンテンツIDや登録制、権利者への分配などを(BlockchainやEthereumなどの)テクノロジーの進歩で普及させていくことも重要と考える。
著作権者を守るためにブロックするのも一つの方法だが、表現の自由を束縛する懸念がある。もぐらたたきの保護はお金がかかり、長期にやりたくない。何か仕組みを作りたい。JASRACはすでに登録制と集中管理を実現していると言える。
<Reda>20世紀型の著作権は自動付与だったが、21世紀型の著作権はCCライセンスやインターネットの利用をふまえて登録制もあってよいのではないか。

3. 最後に

<登壇者>レダ レポートは著作権保護期間を死後50年と主張するなど過激さが薄くバランスがとれている。
(どうあるべきかを学問として扱っている我々)学者と違って、議員だけあって現実的な法案作りを目指されていると感じた。
<Reda>EU議員としての立場もあるので、多くのEU構成国に寄与する内容とした。完全に統一された著作権法を作ろうとしているのではなく、できるだけハーモナイズをとりつつ、各国の独自性も維持出来る内容を目指している。
<モデレーター>本イベントを通じてEUと日本のハーモナイズに寄与できたのではないか。

 

投稿者:前川 充