作成者: tomoakiwatanabe

クリエイティブ・コモンズの現在地、シェアの未来

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)が世に出た2002年から今年で20年になります。当初は音楽業界のビジネスモデルやファイル共有との関係で論じられることも多かったCCライセンスは、音楽の世界を塗り替えるような大きな変化は起こしていませんが、ウィキペディアやオープンデータのように情報資源共有やコラボレーションの新しい実践を支えるツールとして世界的に見ても大きな役割を担うようになっています。
クリエイティブ・コモンズ・ジャパンではCCライセンスのリリース20周年を機会に、CCライセンスやクリエイティブ・コモンズのムーブメント、更にはシェアの未来について議論し、文化やクリエイティビティ、デジタル社会の行方を考える機会を設けます。
これらの領域にご関心のあるみなさまの幅広いご参加をお待ちしています。

登壇者

ドミニク・チェン* / 野口祐子* / 水野祐* / 山崎富美** / 渡辺智暁*
*クリエイティブ・コモンズ・ジャパン 理事
** クリエイティブ・コモンズ・ジャパン フェロー

開催要項

日時:2023年1月15日(日) 16-18時
場所:トークセッション:オンライン(Webex)及び東京(国際大学GLOCOM)を予定
懇親会:東京会場の近くで開催(トークセッション後、18時半くらいから)
参加申し込み:こちらのオンラインフォームよりお申込み下さい
参加費:トークセッションは無料、懇親会は2000円程度を予定

本イベントは、Creative Commonsの助成金を受けて開催されます。

イベント開催報告:「NFTの使い方と創作活動の未来」

イベント開催報告:「NFTの使い方と創作活動の未来」

CCJPのメンバー内で年に1-2回程度開催される勉強会を、今年はNFTをテーマにし、公開勉強会として実施しました。CCJPメンバー2名による発表と、それに更に2名を加えた4名での討論などが行われました。

 話題は多岐に渡りましたが、増田雅史からはNFTの取引と著作権や所有権などとの関係の曖昧さなど法的な位置づけについての議論があり、以下のような指摘がありました。

・NFTは現在の法律上の所有権の対象にはならないだろう。

・著作物関連のNFTはそれ自体が著作物ではなく、何かの著作物と結びついているものだが、技術的には、著作権者本人でない人がNFTを発行することや、本人がひとつの著作物について複数のNFTを発行することもできてしまう。

・NFTの購入者に著作権を譲渡するという仕組みを考えた場合、購入者がNFTを保持したまま著作権だけを第三者に譲渡することができてしまい、著作権法上、譲渡方式をNFTとともに譲渡するといった一定の方式に制限することはできない。このような譲渡が起きると、残ったNFTは空になる。そのようなリスクがあることから、NFTの譲渡によって著作権を譲渡するという仕組みの取引は実務上行われていない。

永井幸輔からはNFTにおいてシェアが占める重要性を示唆する多様な利用例の紹介と、その理由の分析、CCライセンスやCC0などの使い方についての議論などがありました。Blitmap、CryptoCrystals、mfers、Nouns DAO(いずれもCC0を使っているNFT)、Hashmasks、Bored Ape Yacht Club(利用規約で商用利用を許諾するNFT)などを紹介し、特徴について触れたのち、以下のような点を含む議論を行いました。

・オープンカルチャーとNFTは相性がよいが、その理由にはNFTが転売された場合の利益の一部を発行者などが受け取れるようにできること、そこから、自由な利用を促進して、NFTの価値を高める戦略が合理的になる場合がある。

・CC0の採用にあたっては、ブランドや収益源を手放すことになる点などを踏まえた決定が適切。

・CC0を採用すること自体がブランドづくりや競争戦略として意味を持つこともある。

・CC0以外にもカスタムライセンスなどを採用している例もある。

水野祐(コメンテーター)、渡辺智暁(モデレーター)を交えたパネル討論では、以下のような問いについて意見が交わされました。

・NFTの法的な位置づけについて立法が必要か

・CCライセンスやCC0は万人に開かれたシェアを想定して設計されているが、NFTはメンバーを限定したシェアのためにこうした手段を使っていることがある。これが法的に持つ効果はどのようなものか。

・万人の参加を暗に前提とするオープンカルチャーと、メンバーシップとシェアの組み合わせが重要な役割を果たす(一部の)NFTのあり方とを比べて、後者を低く評価するか。

・収益化が創作活動に果たす役割をどう考えるか。

・投機的な盛り上がりが多いNFTは、より実質的な可能性を持っているのか。

いずれの論点についても登壇者の意見の不一致があり、この話題について様々な見方が可能であることが浮き彫りになるイベントでした。

 イベントの様子は動画で公開されており、以下でご覧頂くことができます。

1.NFTについて概説します(増田雅史) https://www.youtube.com/watch?v=G6I5Pul5cAU 

2.NFT with Open Culture (永井幸輔) https://www.youtube.com/watch?v=DunpeJrCeyU 

3. パネル討論、質疑応答(増田雅史、永井幸輔、水野祐、渡辺智暁) https://www.youtube.com/watch?v=kPZkyOpTZ5k 

また、発表資料は以下のURLから閲覧・入手可能です。

1.NFTについて概説します(増田雅史) https://komtmt.files.wordpress.com/2022/10/220522-ccjpe58b89e5bcb7e4bc9aefbc88nftefbc89.pdf

2.NFT with Open Culture (永井幸輔) https://komtmt.files.wordpress.com/2022/10/20220522-ccjpe58b89e5bcb7e4bc9ae6b0b8e4ba95.pdf

メール受信不具合についてのご報告とお詫び

クリエイティブ・コモンズ・ジャパンで使用しているメールアドレスでのメール受信に不具合が発生していました。お詫びと共にここにご報告いたします。現在は解消されています。

期間:8月4-8日頃から21日頃にかけて

内容:メールの受信の不具合(送信は可能、受信は送信者にエラーメッセージが返され、失敗する)

範囲:creativecommons.jp のついているメールアドレスへの送信メール

原因:メールに関連したサービスの自動支払い設定の誤りによるもの

私どもの不手際によりお手数をおかけして申し訳ありませんが、この期間中にお問い合わせ、その他ご連絡などを下さったみなさまには再度のご連絡をお願いできれば幸いです。

容易に再発する種類の不具合ではないと思われますが、再発防止に努めてまいります。ご連絡を下さったみなさまにご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

「CCJP年次報告書 2021年度」公表のお知らせ

この度CCJPでは、ここ最近の活動などをまとめた「CCJP年次報告書 2021年度」を公表しました。

CCJP年次報告書 2021年度
(PDFファイルとなっております。こちらのリンクからご覧ください。)

この年次報告書では、CCJPのここ最近の活動をご紹介するとともに、グローバルのクリエイティブ・コモンズの活動や、CCJPの会計報告なども記載しています。ぜひ一度ご覧いただけたら幸いです。

引き続きCCJPをよろしくお願いいたします。

5/22(日) 「NFTの使い方と創作活動の未来」(CCJP勉強会)開催のお知らせ

著作権との微妙な関連性や加熱する投資が議論になることもあるNFTをはじめとするWeb3テクノロジーには、創作活動や作品と社会の新しい関係を作る可能性もあるように見えます。動きも早く、技術的・法律的にも複雑な部分があるテーマであることから、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCJP)では著作物の流通や創作活動の現状と未来を考える上で、NFTやCC0、クリエイティブ・コモンズがどういう役割を果たすことができるのか、どのような可能性があるのか、をテーマに勉強会を開催することに致しました。

CCJPではこうした勉強会を主にメンバー限定で開催してきましたが、今回は公開で開催いたします。専門家ではないけれども、改めて学んでみたいという方のご参加を広く歓迎いたします。

話題提供は増田雅史と永井幸輔が行い、水野祐がコメントを、渡辺智暁が議論のモデレーションを行います。

【開催概要】

「NFTの使い方と創作活動の未来」(CCJP勉強会)

5/22 (日) 15:00-17:00
オンラインイベント(Webex)
URL:https://cisco.webex.com/cisco-jp/j.php?MTID=m416a88f792e2d71a4ca266162119c097
参加費無料・事前申込不要です。お時間になりましたら上記URLにアクセスしてください。

登壇予定者
増田雅史(ますだ・まさふみ)
森・濱田松本法律事務所 弁護士
ブロックチェーン推進協会 アドバイザー
日本暗号資産ビジネス協会NFT部会 法律顧問
Creative Commons Japanには、2009年よりスタッフとして参画。
Twitter: m_masuda

永井幸輔(ながい・こうすけ)
弁護士
株式会社メルカリ NFT Business Development マネージャー
Creative Commons Japan理事
一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(JCBI)著作権流通部会 副部会長
Twitter: hanatochill

水野祐(みずの・たすく)
弁護士(シティライツ法律事務所)
Creative Commons Japan理事。
Arts and Law理事。
Twitter: TasukuMizuno

渡辺智暁(わたなべ・ともあき)
国際大学GLOCOM主幹研究員/教授/研究部長
Creative Commons Japan理事長
https://www.glocom.ac.jp/researcher/299

CCJPチャプター設立のお知らせ

クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCJP)は、クリエイティブ・コモンズ(CC)のコミュニティの中で「チャプター」と呼ばれているグループを設立します。これは2017年に打ち出されたCCのグローバルなムーブメントの中で各国の活動の取りまとめを担うことを期待されているグループであり、オープン性やコラボレーションを原則として活動するものです。

チャプター設立の背景とCCJPの関わり

CCの本部組織は、2014年にRyan MerkleyをCEOとして迎えて以来、改革のための議論をグローバルに重ね、2017年にはその議論をネットワークとして展開するための新しい戦略としてまとめました。その一つの特徴は、CCをグローバルなムーブメントとしてこれまで以上に多くの人に開かれたものにしよう、という点にあります。

CCJPのメンバーも、グローバル・サミットでの議論への参加、戦略文書草案へのコメント等の形でこの作成に関与して来ました。また、戦略文書がまとまってからも、アジア地域を中心とする他国のメンバーと共に議論を重ね、あるいはこれまでの各国ごとの「アフィリエイトチーム」からの移行を支援するTransition Advisory Groupや、国際的にアクティブなメンバーが参加することを想定している国際的なネットワークのメンバー承認プロセスを暫定的に担当するInterim Membership Council のメンバーとしても、その実現を後押しして来ました。CCJPの組織的な母体であるNPO法人コモンスフィアも、グローバルネットワークの組織メンバーとなりました。

なおチャプターはこれまで40近い国で設立されています。アジア地域ではこれまでに存在したアフィリエイトの数に比べるとまだ設立数が限られていますが、アフリカのように勢いのよい地域もあります。日本同様、体制変更などの検討に時間がかかっている国もありうるものと思います。

チャプターの特徴
新しい戦略における特徴は、組織面に着目すると以下のようなものです。

  • 各国のとりまとめを担ってきた「アフィリエイト」は廃止する
  • 国際的に活動し、CCのムーブメントに参加したい人は、アフィリエイトチームのような国ごとのチームに参加することなく「CCグローバル・ネットワーク」に直接参加することができる
  • (アフィリエイトチームに代えて)各国にチャプターを作る
  • チャプターはCCグローバル・ネットワークのメンバーを原則として拒んではならない
  • チャプターはコンセンサスを原則として運営する
  • グローバルな自治に参加する(Global Network Councilに代表メンバーを選出する)

CCJPもこれまでアフィリエイトとして活動してきた経緯から、改めてチャプターを設立することがCCの本部スタッフなどからも期待されて来ましたが、今回のチャプター設立はその期待に応えるものです。

設立時には、会合を開き、広くチャプターの設立会合についてお知らせすることが期待されているため、ここにお知らせいたします。ご興味があれば、設立会合であれ、後の時点であれ、どうぞご参加をご検討ください。

チャプターはとりわけCCグローバル・ネットワークのメンバーで当該国のチャプターに興味を持っている人をメンバーとして迎え入れることが期待されています。他に、グローバルネットワークのメンバーではないが、その国を拠点に活動している人などが参加することも想定されています。

チャプター設立後のCCJP
CCJPはこれまで、CCの本部スタッフや、他国のチャプターのメンバーなどからも情報を得つつ、新しいグローバル戦略やチャプター設立の受け止め方について議論をして来ました。そこで得られた結論には、法とライセンス以外の活動領域にも注力していくことなど、特に今回のチャプター設立を待たずに実施しているものもあります。

CCJPは新規メンバーに常に門戸を開いており、既存メンバーからの紹介やメンバーによる面談の上、国際的に活躍する人であるかどうかを問わず、法、クリエイティビティ、教育、情報等に関連する多くの業界のプロフェッショナルや様々な分野の学生をこれまでも迎え入れて来ました。この方針はチャプター設立後も継続する予定です。

ただし、これまでCCJPの活動は東京やその近郊に拠点をおくメンバーが中心になりがちであり、過去にはそれ以外の地域にお住いの方の参加を断念して頂いた例も過去10年で少なくとも2件はありました。これはチャプター設立を期に解消したいと考えており、関東以外の地域の方々にお声がけをさせて頂くことも予定しています。

現在のCCJPには、アクティブなメンバーが常時15名程度、そうでない者も含めると100名近くのメンバーがいますが、これらのメンバーはチャプター設立後も引き続きCCJPの(チャプターの)メンバーとして参加できるようにする予定です。

CCJPの運営・活動はこれまでにも事務局スタッフが主導して議論・提案・実施し、組織的な母体である特定非営利活動法人コモンスフィア(の理事会)はスタッフと共に活動するか、その活動に必要な承認は概ね与える、という形をとって来ました。このような体制についても継続を予定しています。

チャプター設立会合の予定
チャプター設立にあたって必要となる手続きの一環として、設立会合の開催を予定しています。

  • 日時:9月18日19時~ (予定)
  • 場所:東京都内(TBD)(遠隔参加のオプションも検討中)
  • 参加予定者:CCグローバル・ネットワーク・メンバーで日本チャプターに参加予定の3名、他、現CCJPのアクティブなメンバー

これを機にCCJPに参加をご希望の方がいらっしゃいましたら、是非事務局 (info at creativecommons.jp) までご一報くださいませ。( at の部分は@マークに置き換えて下さい。)

また、メンバーとしてではなく、コラボレーションのパートナーとして連携して下さるみなさまや、ご寄付等を通じて支えて下さっているみなさまにも、この場を借りて引き続きご愛顧をお願い申し上げます。

今後ともクリエイティブ・コモンズ・ジャパンをどうぞよろしくお願い致します。