エイミー・ヒルの物語は物語を超える

デジタルヒーロー本プロジェクトの第二弾として、スティーブ氏はデジタル・ストーリーテリングの活動が、巨大メディアが物語の半分を独占しているような国に対し、民主活動の代理をするものとして利用できるということを発見した。彼は、このデジタル・ストーリーテリングの中心地である、この現代における物語の芸術の古い歴史の誕生の地でエイミー・ヒルと対話を行った。


Icommons:センターではどのような仕事を?
エイミー:私はNPOや、健康・社会サービス団体により行われる、さまざまな草の根活動の監督をしています。それらすべては、デジタル・ストーリーテリング活動の実践を広げる努力が、個人や社会の健康や福祉などに役立つこと、また社会環境や経済の平等化に向けてのキャンペーンのサポートに役立つことを目的としています。
私達のコミュニティの中核的な目標は、主流となるメディアの中で一般的に、劣ったかまたは誤って表現されたイメージや声を高めることです。私達は、教育のための施設を提供したり、彼らのストーリーやコミュニティ自身が安全な環境下に置かれるよう配慮しています。これらのワークショップで創られたデジタル・ストーリーは、さまざまな方法で使われます。公的教育の道具としてや、批評や政治的活動を行うために流通させること、政治的主張を行うためなどに使われるのです。これは、共同政策の協力を発展させることや、コミュニティで活動するためのトレイナーを養成すること、またさまざまなデジタル・ストーリーのワークショップでのファシリテーター役を行うなどの活動も含んでいます。
Icommons:どのようにして、この活動に参画したのですか?
エイミー:私は、デジタル・ストーリーテリングについて知る10年ほど前より、女性の健康についてのコミュニティ・ベースの仕事をしてきました。その当時、私は、女性の暴力被害などを防ぐための地域的許容を築き上げるためのいくつものプロジェクトをコーディネートしており、 そこでの人々の教育や勇気付けるために使用する適切なメディアの不足について非常に落胆させられました。そのとき、私は、バークレーでこの活動、デジタル・ストーリーテリングを偶然見つけて、このセンターに関係するようになりました。
私はそこで、共同出資による、Silence Speaksというプロジェクトで働きました。これは、デジタル・ストーリーの方法論を、暴力とトラウマの生存者と目撃者をサポートするという方法で適合させるプロジェクトです。私は、個人と物語の両方に焦点が当てられていること、また本当に人を動かさずにはおかない世界で重要な断片的メディアを作ることができるという理由から、このプロセスが大変に気に入ってしまったのです。
Icommons:あなたにとって、デジタル・ストーリーの定義は?
エイミー:さまざまなセクターの人々は最近、多くのいろいろなものを意味するのにデジタル・ストーリーという用語を使用します。たとえば、デジタル形式でオンライン上に保存される地域の写真から、短い形式の非常にプロのドキュメンタリーまで及んでいます。
私がデジタル・ストーリーテリングに関わった経緯が、バークレーセンターでの仕事からですので、私の定義は本質的には1990年代前半に戻るかと思います。私の定義は、少数の人々が集い、ストーリーをシェアして、短いデジタルビデオにするというワークショップの過程であると思います。センターと、デジタル・ストーリーテリングの歴史について、また行われていることについては私達のウェブサイトでご覧になれます。
私の意見では、デジタル・ストーリーの重要な点はグループ活動の中での過程として要素です。それぞれの個人をグループがそれらのストーリーのフレームを形成し、作り上げる際にサポートしているという、相互作用と対話という側面のことです。もう一つの重要な点は参加型の作成アプローチです(そのアプローチで、グループのメンバーは話の中身だけではなく、編集に関する決定も管理します)。これは、私たちがどのように編集するのかを教えるということを意味しています(もちろん、一般的には技術的な抵抗や困難がある場合以外には編集に関する教育を行いはしません)。私たちは、個人やコミュニティにおける、スキルの伝達や何かを残すということについて、深く局面を評価します。私たちは、できる限り、地方の共同体の中での教育技能、および技術を制度化するようなアプローチを取るようにしています。
これは他の、より伝統的な形式のメディア製作方法と非常に異なっています(訓練された技術者は、地域コミュニティの中に投入され、足を使ってインタビューを行い、コミュニティの内外にある、素材を集め、ストーリーが結局、どのように縁どられて、形成されるか、編集を行うのです)。それらは、パイオニアとして推進している映画制作アプローチと活動家ビデオ作成の戦略に強く関連しています。
icommons:あなたは、ここ数年間にわたってこのスペースで何か変化が起こっていると感じますか?
エイミー:私がこのスペースで気付いた中で最も重要な変化はウェブにおける縮約形ビデオ・コンテンツの絶対的な増加です。これはデジタル・ストーリーの展開のために重要な可能性を広げました。また、それは多くの刺々しい倫理的問題についてもオープンになったということを意味します。
最もセンシティブな話題に対する作品が、パートナーによる後押しからは離れて広く公開される中で、私たちが新人募集の過程におけるインフォームド・コンセント、およびプライバシーを保護する方法に関して、さらに厳密な注意を向けなければならないことが明確になりました。これに関連して、デジタル環境で、個人的なストーリーのスペースへ、ドキュメンタリーの映画制作者、商業メディアプロデューサー、およびブロードキャスターなどがゆっくりとではありますが、侵入してきつつあります。
ブログの増加や、YouTubeなどのホーム・メイド・ビデオや他の流通チャネルは、専門家が、そのサイトが‘一般ユーザーのコンテンツ‘か、または‘市民ジャーナリズム‘であるかという点に商業可能性を見るようになりました。私は、それらの議題を明確にすること、プロセスの価値を守ることが、コンテンツを広く数多に広げるエキサイティングなこの現象に飛び込むことよりも、このコミュニティでのプロセスに関わる人々にとっての義務であると思います。
一方では、魅力的なストーリーを広げるための大きな可能性があり、また同じような種類のメディアの広がりが、コミュニティのカラーやグローバル・サウスにおける映画作成と写真を汚染する可能性もあるのです。別の良い動向としては、言語化されているか否かに依存しない物語や、または高いレベルの読書能力を仮定するデジタル・ストーリテリングのモデルを開発することの必要性が出てきたということです。
私たちが、複数の言語、および共同体の母国語が書式化されていないような領域でも活動しているため、私たちはワークショップを開き、‘ ストーリー・サークル’と呼ばれるグループの中で口語としてストーリーをシェアし、それを書式化したり、言葉をレコーディングしたりすることによって、私達の活動を代替的に保護しています。また、与えられたストーリーの話の中心に注目するために行われるショート・インタビューがこれに続く場合もあります。私たちはまた、コミュニティ参加者達とともに、静止画像を作成することや、その画像にイラストを追加したり、ビデオクリップを作成したりすることにも挑戦しています。
icommons:クリエイティブコモンと、デジタルストーリーの関係について、どう思いますか?
エイミー: クリエイティブ・コモンズは素晴らしいリソースです。クリエイティブ・コモンズのライセンスは南アフリカのパイロット・プロジェクトである、Men as Partnersで利用されています。私たちは、定期的に仲間たちに対して、クリエイティブ・コモンズが彼女らの作品を守るために良いリソースであることを知らせたり、また、広いスケールでの活動家にとっても入手可能であり、コミュニティ・グループで利用するにも非常に便利であるということに対して、興味を持ってもらえるよう活動をしています。
私がちょうど今まだ地域ミーティングに参加する時間がなかったのですが、さまざまなパートナー達への最良な選択肢の答えの一つとして、クリエイティブ・コモンズと繋がることに大変興味を持っています。
私たちが著作権の周りで立ち向かう中で最も大きい問題は音楽権利についてです。人々は、彼女らのストーリーに音楽を使ううえである非常に特定の意味を持っています。しかし、広く公開しようと思ったら、ポピュラー・ミュージックなどは使うことが出来ません。ですから、私たちは出来るだけ無著作権の音楽を使用するように導くか、または彼女ら自身に作曲してもらえるよう、頼みます。
また、私たちはインターネットから無作為のイメージをダウンロードすることを避けるように指導しますが、私は、ビジュアルな素材を持たないグループと共に働いているときにはこれが非常に扱いにくい場合があると言わざるを得ません。私は、多くの入手可能な著作権フリーの素材を見つけるのが好きです。Internet Archiveは非常に有用ですが、初心者ユーザーの利用しやすさという点では、コミュニティでの活動がほとんどメディア作成の経験を持たない人々により行われるため、難しいという問題があります。
icommons:誰でも、話をするに値する話を持っているものなのでしょうか?
エイミー:はい、誰でも話す題材は持っているものです。実際には、さまざまな話の題材を皆が持っています。それらのストーリーを描くために、“The 7 Elements of Digital Storytelling” Cookbookというカリキュラムを作ることに注力しました。ワークショップでは、私たちは別の参加者の作品を例としてシェアし、そしてイメージと編集に関して、観点や物語の構造、感情的な内容、ペース、賢明な決定などについて話し合います。もちろん、私たちは、詳細なレベルまでワークショップのこの局面を特定のグループの必要性に応じて適合させます。
私が、個人の声に対するアプローチとして気に入っているのが、彼女らの経験に焦点を当てることを認めている点です。あなたが一度も話を聞いてもらったことがない若者でも、または話を利用されたり、沈黙するままにされたトラウマからの生存者でも、そういったことに関わらず、このアプローチは非常に力を持つものです。また、重要な内容が強調されることもまた好きな点です。メディア作成のツールがどれくらいアクセスしやすいかに関して、人々はしばしば話します。
この問題は、それらのツールを購入する能力がある、あるセクターの人々にとっては重要な問題ですが、実際にはそれらの人々の数以上の人々がツールを購入することなどできません。しかし、単にカメラかコンピュータを所有できるからと言って、価値のある話ができるとは限りません。Google videoやYouTubeには、多くのすばらしいビデオと他のユーザーにより作成されたコンテンツサイトがありますが、そこには多くの不快で味気ないものもあると思います。このことは、人間の性を反映させたものであり驚くには値しません。何人かの人々は、変化を起こそうとし、そして、他の何人かの人々が支配的イデオロギーを買収したのです。
icommons:デジタル・ストーリーの達成に当たって何を見つけましたか?
エイミー:人々の生活に、窓口を提供できるという、信じられないほどの名誉と特権です。私たちのワークショップで共有されるものは、誰かの非常に私的で繊細な経験を含むことがあり、それらは慎重にケアされ、参加者がそれらを物語にするまでの手助けを行うことができるのです。これはすばらしいことです。それはまったく仕事のようなものでなく、非常に根源的な人間同士の関係であるように感じており、まさに私たちがやろうとしているのはそういうものなのです。このような関係のが、アートの一端を作り出すうえで構成が掛け合わされ、社会的な広がりを持ち、経済や人権問題に貢献するために行われるより大きな対話やキャンペーンなどに大きく貢献しています。これは大変、達成感を感じるものです。
icommons:デジタル・ストーリーテリングの未来に関して、どのようなことをお考えですか?
エイミー:私たちのセンターでの仕事は個人の声と、製作過程へ参加ときわめて特定的であるため、“デジタル・ストーリーテリング”の一枚岩的なフィールドに対して代弁することはできません。しかし、そのセクターの中では、私は国民の健康、社会サービス、経済発展、および環境的公正セクターにおける、仕事の継続的な拡大と採用を見ることができます。また、私はこの仕事が国際的に、特に世界の南部地域において急拡大している気がします。インドと中国にプロジェクトを開始している仲間が私たちにはいて、私たちはアフリカのさまざまな国で活動を支持しています。私は、テクノロジーのアクセスが広がり続けるのにしたがって、これらの、コンテンツベースでの社会的な問題に焦点を当てたプロジェクトがより広がっていくものと思います。確かに、デジタル・ストーリーテリングは世界の問題のための万能薬ではありませんが、人との関係性とグループでの共有という要素がなくならない限り、それは何らかの形で、世界の問題に寄与できるさまざまな可能性を持っていると思います。

写真:エイミー・ヒル 撮影:ダニエル・ウェイシェンカー
CC BY-NC-SA 2.5

翻訳:Lisa Ito
オリジナルポスト:Amy Hill is not just telling stories(2006/11/16)