iCommonsの一員である著作権専門家のTobias Schonwetterは、“国際著作権制度”の誤りについて発議するともに、知識へのアクセスを支援するやり方を身につけるために、“3段階テスト”がどのように機能するのか検討している。
確かにたくさんの理由があるにせよ、このコラムの読者は、クリエィティブな素材へのアクセスを促進し、そのためにさまざまな制約を弱めるという目的のもとに結束しているはずだ。そして疑う余地もなく、近年、たくさんの価値あるアイデアが生み出されてきた。
けれども、残念なことに、そのようなアイデアが検証されなければならない法的な枠組みについては、しばしば見過ごされ、もっと悪いことには故意に無視されてきた。著作権法である。たとえ議論で扱われたとしても、法律家によるものでないこの法の領域のためにぼくが考案した最も柔らかな条件は、“風変わりな”ものであったようだ。言うまでもなく、違法とされるアイデアは、はじめにどれだけ首尾一貫したものに思えたにしても、吟味なくして破綻するものとされているにも関わらず、である。
このような背景からは、こうした文脈において最も著名であり広がっている構想が、何らかの法律のバックグラウンドをもつ人物によって推進されたということは驚くに値しないであろう。たとえば、クリエイティブ・コモンズを率いるスタンフォード大学の法学教授、ローレンス・レッシグなどである。単に法律を知ることが、このような構想のインパクトを見極めるためのベストな方法である。
けれども、この時点でぼくがまちがっているとは考えないで欲しい。ここで言うことは、我々の現行の著作権法が全くもって公正であり、正当であり、なかんずく最新のものであるということを意味するものでは決してない。それでも、法律を変えるために自分たちが持っているルールで遊んでみたり、とりわけ格闘することは有益なものだ。
この場は著作権法について概説するためのものではないが、ここでいくつかの鍵となる考え方について指摘しておくことが望ましいだろう。最も重要なのは、全世界レベルである作品を自動的に保護してくれる“国際著作権”のようなものは存在しないということだ。特定の国における不正使用に対する保護は、本来、その国の国内法に基づくものである。それでも、過去の200年以上にわたって、各国のあいだで著作権法の重要な調整策が採られてきた。二国間あるいは多国間協定(自由貿易協約を含む)が締結されてきたにも関わらず、である。これらの協定は、たいていの場合、著作権保護の対象となる作品を守るための最低限の基準を有するものであった。その結果、何がしか独創的なアイデアが表現され、明示された後には、著作権保護はほとんどの国において自動的に発効するものとなった。加えて、著作権で保護される作品の大多数は、原則として、著者の死後少なくとも50年にわたって保護されるものである。ところが、数多くの国々は、50年を大幅に超えて保護期間を延長してきた。たとえば、メキシコにおける一部の作品の保護期間は、今や、著者の存命年数プラス100年にも及んでいる。
同時にこの国際協定は、とりわけ著作権の制限や例外について、たくさんの特例事項を有している。原著作者・著作権保持者・ユーザーのあいだでしばしば競合する利害の公平なバランスを取るためである。これらの特例事項を利用することが、クリエイティブな素材へのほとんど制限のないアクセスという当初の目標を達成するための最も有望な方法の一つだ。けれども、これに関連する著作権協定のほとんど全てが、“3段階テスト”と呼ばれるものからは、同様に重大な制限規定を有するものである。
このテストによると、国内の著作権法における制限や例外は、(1)ある種の特別な事例において、(2)その作品の通常利用を妨げない限りで、(3)原著者や著作権保持者の正当な利益を法外に損なわない範囲においてのみ許容される。素材へのより良いアクセスを促すために新たなアイデアが提案されるとき、ほとんどと言ってよいくらい考慮されないのは、まさにこの国際協定上の規定である。
(無条件/一般的な)“私的利用”という例外を求め、たびたび要請が繰り返されることは、この問題のよい例である。アナログの世界にあっては、私的なコピーは時間のみならずお金がかかるものであり、それもコピーされたものの品質は著しく低下するのが常であった。ある作品の通常利用をめぐる現実の争いは心配されるような性質のものではなく、その結果として、これら著作権法に“私的利用”という例外を導入するという話になったとき、世界中の政治家はむしろ寛大になったものである。
しかし、デジタル技術によって、個々のユーザーは無制限かつ完全なコピーを即座に作成することが可能になった。今やこれらのコピーは、インターネットを通じ、全世界規模で配布されうるものである。加えて、デジタル著作権管理システムは、著作権保持者が自らの作品を商業利用するための新たな手法を生み出した。増えつづけるたくさんの作品が、今やエンドユーザーに向けて直接的に売り込まれるものであることはその顕著な例である。こうした事情から、あらゆる私的コピーに一般的な例外を認めることは、著作権保持者の市場における売上げ見込みと潜在的に衝突するものであり、それゆえ国際的な3段階テストの二次的な派生を妨げるものであるということになる。
いったい答えはどんなものかって? あぁ、我々は、3段階テストを修正するために、あるいは-より見込みがありそうな手段だが-テストの要件を寛大に解釈するために、ロビー活動をする必要があるだろう。けれども、現段階では、このようなテストの存在を周知することが最も重要だと思う。
将来的には、他の法律上の問題のみならず、前述した事柄のいくつかがここで議論されることになるだろう。たくさんの問題が継続的に議論されていく中で、ぼくの個人的な見解が繰り返し語られていくことは当然である。活発な議論がなされることを期待している。
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翻訳:eboshilog
オリジナルポスト:Things you should know about copyright law(2007/2/5)