3Dプリントでできた物にはどのようなライセンス表示をすべきか?

 

原文(〈著者:ジェーン・パーク〉2016年4月19日)
https://creativecommons.org/2016/04/19/attribute-3d-printed-objects/

 

CCライセンスがついた3Dデザインを用いて印刷し、3Dの立体物を制作する場合、そのデザインの作者をどのように表示すべきでしょうか。

3Dプリントされた物に関する作者の表示、もしくは「デザイン・ソースの確認」にまつわる課題は、CCネットワークの重要な一部である、3Dプリンティングに関わるコミュニティにおいて、広く検討されています。複雑な問題ですが、3Dデザインのクリエイターとユーザー双方がこの問題を検討する必要性を感じています。クリエイターは自分のデザインがクレジットされることを望みます。認知されることは気分のよいものですし、クリエイターとして、自分の作品が使われているのか、そしてどのように使用されているのかは知りたいものだからです。ユーザー(ユーザー自身クリエイターであることもよくあります)は、対象物のデザイン・ソースを知りたいと考えます。そうすれば、そのデザイン・ソースを使って新たに印刷したり、デザインを変更したり、他のデザインとリミックスさせたり、あるいはそのデザインに大きくて、クリエイティブな改良を加えることができるからです。

昨年10月のCCグローバルサミットで、Shapeways(シェイプウェイズ)のマイケル・ワインバーグは、この3Dプリンティングの表示に関する課題について初めてプレゼンテーションを行いました。その問題の概要をこちらの投稿でまとめています。

CCとしては、これは単にCCライセンスの表示の条件を遵守すればよいという問題ではありません。そもそもCCライセンスが付与された3Dデザインを3Dプリンティングした立体物に対し、表示を法的に求められるかどうかは議論の対象となるところです。

表示の必要の是非という法的な問題とは別に、CCがこの問題に興味を寄せるのは、それが私たちの新たな3つの戦略的成果のうちの2つ、すなわち、「発見」と「協働」に関わっているからです。3Dプリンティングされた立体物の表示方法を標準化し、その背景にある情報インフラ(例:レジストリやデータベース)を提供することは、立体物に付与されているCCライセンスのデザインに関するさらなる発見につながります。また、CCライセンス下のデザインを異なる文脈で独自に、もしくは元のクリエイターとのやりとりして翻案物を作っていきたいというユーザーたちにとって、つながりやコラボレーションを増やすことにもなります。

デザインに付与されているライセンスを示すことは簡単です。ThingiverseやSketchfabといったプラットフォームのおかげで、3Dデザインをアップロードし、CCライセンスをつけて掲載することが容易になりました。デザインファイルをダウンロードする先のウェブページに、機械で読み込めるライセンスのメタデータが埋め込まれるようになっています。ただ、そのファイルを3Dプリンティングすると、(物になった時点で)ライセンス情報は消えてしまい、その創作物のソース(作家やソースに辿り着く方法など)も同様に失われてしまいます。3Dプリントされた物にはライセンス情報がつかないのです。例えばThingiverseの「print thing tags」のように、プラットフォームによってはこの問題の回避策が提供されてはいますが、この回避策が有効なのは、置物や立像のような物に対してだけであり、イヤリングのような物には有効ではありません。ではどうやって、著作権を有する3Dプリントされた物のソースを確認し、クレジット付けをしたり、自ら作ったバージョンをあしたり、元のデザインを繰り返し使ったりすることができるのでしょうか?表示することが法的に義務付けられている場合、どうやってCCライセンスの表示に関する必要要件を満たすことができるのでしょうか?

 3Dプリントされた立体物のソースについて、その標準的な表示あるいは確認方法を考えてみましょう。

3Dプリンティングに関する現在のムーブメントや寄せられている関心を考えると、この標準ルールは今すぐにでも導入されることになるでしょう。ただし、どんなルールが作られるのであれ、見つけることができ(機械で読み込める)、使えるもの(ユーザーフレンドリー)であり、広く適用される(3Dコミュニティの承認済みの)ものでなければいけません。また表示一つ一つの背景にある情報が失われることなく、レジストリやデータベース上できちんとインデックス化されるようにしたいと考えています。そうすることで例えばユーザーは、3Dプリントされた立体物をスキャンしたときに、そのソースやライセンス情報だけでなく、その印刷物の派生物や関連する商業製品をも確認したりすることができることが期待されます。

この3Dプリンティングに関する標準ルールは、(デジタルの3Dデータのみならず)デジタル情報にリンクする物理的な立体物の領域でも、適用できることが望ましいですが、ひとまず3Dプリンティングのコミュニティのニーズに焦点を当てたいと考えています。

まずどこから始める?

まず、考えねばならない基本的な問題と法律上の課題を下に挙げましたので、これらに関する検討から始めましょう。

要約:どのような種類のコンテンツならば、著作権の保護対象となるのかを含め、3Dプリンティングの基本についてリサーチし文書化します。3DプリンティングのコミュニティでCCライセンスがどのように使われているのか(ユーザーは何に対し、どのようにCCライセンスを付与しているのか、現在はどのようにクレジットやソースに関する情報をつけているのか)、リサーチします。また、著作権がないゆえに表示が(法的な意味で)必要とされない場合であっても、社会的な規範の一つとして表示を推奨する政策の意味も探っていきます。

リサーチ事項の詳細

Dプリンティングの基本的な知識

  • アイディア作りから対象物のクリエイションまで、最も一般的な3Dプリンティングの過程をわかりやすく説明する。これには関連デジタルファイル(例:スキャン、CADファイル)の種類、3Dプリンターの技術的プロセスの簡単な説明などを含む。
  • この領域ではどのくらい頻繁にCCライセンスが付与されているのか?どの程度正しく表示されているのか?
  • 3Dプリンティングにおいてクレジットを表示したり、ソースを特定したりする際に一般的に用いられている技術は何か?(他の分野と同様の)一般的な表示ライセンス(ShareAlike)の表示方法が用いられているのか?   

3Dプリンティングにおける著作権の役割

  • 3Dプリンティングのプロセスでは、どのデジタルファイルと対象物に著作権が付与されることになるのか? それはなぜか。また付与されないものは何か?
    • これらデジタルファイルと対象物における、著作物性の限界は何か?またどのようにして適用され得たのか、もしくは適用されているのか?(例:適用できる条文があった、創作性が認められる表現かどうか(例: 実用品、マージ理論))?
    • 関連判例の要点を明記(米国、及び主要な海外判例)。
  • 3Dプリンティングのプロセスにおいては、どの時点でこれら対象物の著作権を問われる可能性があるか?
    • 複製や翻案においてはどのような例外や制限が与えられる可能性があるか(例:フェアユース、分離テスト)
    • 関連判例の要点を明記(米国、及び主要な海外判例)

3Dプリンティングにおける著作権についてのリサーチを踏まえて検討すべき政策上の意味

  • クレジットの表示が法的に求められないとしても、表示を行っていくことを原則とすることを推進することが、著作権の保護範囲の拡大(あるいは世間一般の人たちが著作権の範囲が拡大すると認識すること)につながるだろうか
  • 著作権が適用されない場合、この領域におけるCCの役割は何か、あるいは役割は何であるべきか。

マイケル・ワインバーグとPublic Knowledgeはこれらの疑問に対し、素晴らしい基本的な事項のリサーチをすでに行っています。他の既存のリサーチへのリンクも歓迎します。私たちがアクセスできないアカデミックなリサーチもあるかもしれませんので(皮肉なことですが)、どのようなアドバイスでも歓迎です。

 ご意見・アイディアをお待ちしています

法的なリサーチを詳細に行うと同時に、私たちは法律、デザイン、そしてテクノロジーに関する3Dの専門家たちの初会合の開催(CCライセンス下の3Dデザインのホスティングと配布ができるプラットフォームづくりを含む)に向けて尽力したいと思います。私たちは、会合を踏まえて最初に考えたことやプロトタイプの青写真をシェアし、コミュニティからのフィードバックを集約し、プロトタイプを発展させていくつかのプラットフォームでテストしたいと思います。目的は、技術的にパーフェクトな何かを開発することではなく、広く簡単に使える、コミュニティに支持されるものを開発することにあります。

上記のいずれに関することでもご意見をお待ちしています。法律上、あるいはポリシー上の疑問において、何か見落しとていることがあれば、あるいはプラットフォームですでに用いられているテクニカルなソリューションで私たちが検討すべきことがあれば、さらにはまだ私たちが接触していないものの協力してもらうべき人たちがいれば、ぜひお知らせください。最後に、重要なこととして、ユーザーとしてあなたが現在行っていることやあなたがお持ちのアイディアも歓迎します。ご連絡は直接こちらか、CCコミュニティのリストへどうぞ。プロジェクトは、ようやく始まったばかりです。

 

翻訳:松丸、東久保、水野