イベント開催報告:「NFTの使い方と創作活動の未来」
CCJPのメンバー内で年に1-2回程度開催される勉強会を、今年はNFTをテーマにし、公開勉強会として実施しました。CCJPメンバー2名による発表と、それに更に2名を加えた4名での討論などが行われました。

話題は多岐に渡りましたが、増田雅史からはNFTの取引と著作権や所有権などとの関係の曖昧さなど法的な位置づけについての議論があり、以下のような指摘がありました。
・NFTは現在の法律上の所有権の対象にはならないだろう。
・著作物関連のNFTはそれ自体が著作物ではなく、何かの著作物と結びついているものだが、技術的には、著作権者本人でない人がNFTを発行することや、本人がひとつの著作物について複数のNFTを発行することもできてしまう。
・NFTの購入者に著作権を譲渡するという仕組みを考えた場合、購入者がNFTを保持したまま著作権だけを第三者に譲渡することができてしまい、著作権法上、譲渡方式をNFTとともに譲渡するといった一定の方式に制限することはできない。このような譲渡が起きると、残ったNFTは空になる。そのようなリスクがあることから、NFTの譲渡によって著作権を譲渡するという仕組みの取引は実務上行われていない。
永井幸輔からはNFTにおいてシェアが占める重要性を示唆する多様な利用例の紹介と、その理由の分析、CCライセンスやCC0などの使い方についての議論などがありました。Blitmap、CryptoCrystals、mfers、Nouns DAO(いずれもCC0を使っているNFT)、Hashmasks、Bored Ape Yacht Club(利用規約で商用利用を許諾するNFT)などを紹介し、特徴について触れたのち、以下のような点を含む議論を行いました。
・オープンカルチャーとNFTは相性がよいが、その理由にはNFTが転売された場合の利益の一部を発行者などが受け取れるようにできること、そこから、自由な利用を促進して、NFTの価値を高める戦略が合理的になる場合がある。
・CC0の採用にあたっては、ブランドや収益源を手放すことになる点などを踏まえた決定が適切。
・CC0を採用すること自体がブランドづくりや競争戦略として意味を持つこともある。
・CC0以外にもカスタムライセンスなどを採用している例もある。
水野祐(コメンテーター)、渡辺智暁(モデレーター)を交えたパネル討論では、以下のような問いについて意見が交わされました。
・NFTの法的な位置づけについて立法が必要か
・CCライセンスやCC0は万人に開かれたシェアを想定して設計されているが、NFTはメンバーを限定したシェアのためにこうした手段を使っていることがある。これが法的に持つ効果はどのようなものか。
・万人の参加を暗に前提とするオープンカルチャーと、メンバーシップとシェアの組み合わせが重要な役割を果たす(一部の)NFTのあり方とを比べて、後者を低く評価するか。
・収益化が創作活動に果たす役割をどう考えるか。
・投機的な盛り上がりが多いNFTは、より実質的な可能性を持っているのか。
いずれの論点についても登壇者の意見の不一致があり、この話題について様々な見方が可能であることが浮き彫りになるイベントでした。
イベントの様子は動画で公開されており、以下でご覧頂くことができます。
1.NFTについて概説します(増田雅史) https://www.youtube.com/watch?v=G6I5Pul5cAU
2.NFT with Open Culture (永井幸輔) https://www.youtube.com/watch?v=DunpeJrCeyU
3. パネル討論、質疑応答(増田雅史、永井幸輔、水野祐、渡辺智暁) https://www.youtube.com/watch?v=kPZkyOpTZ5k
また、発表資料は以下のURLから閲覧・入手可能です。
1.NFTについて概説します(増田雅史) https://komtmt.files.wordpress.com/2022/10/220522-ccjpe58b89e5bcb7e4bc9aefbc88nftefbc89.pdf
2.NFT with Open Culture (永井幸輔) https://komtmt.files.wordpress.com/2022/10/20220522-ccjpe58b89e5bcb7e4bc9ae6b0b8e4ba95.pdf