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ライセンスの執行

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは、シンプルな条件の下でクリエイターが自身の作品を自由にシェアすることを可能にする法的なツールです。これらのライセンスは芸術的、教育的、学術的、そして表現的文化の繁栄を目的としているため、CCライセンスの付与されたマテリアルを利用するための条件は最小限にとどめられています。CCライセンスを使う人はシェアがしたいのであり、見返りをあまり求めません。CC BY については作者のクレジット表記とライセンスの承認を、その他のライセンスについては作品の再利用についてのいくつかの条件が求められるだけです。

しかし、CCライセンス作品を利用するために守るべき条件がシンプルなことと、それが重要ではないことを混同してはいけません。

公開された作品に付与されたCCライセンスは、作品を再利用するための分かりやすい案内であると同時に、作者の意思表示でもあります。コモンズの健全さと持続可能性は、これらの意思表示の尊重にかかっています。作品の再利用者がライセンスの条件に従うために最善を尽くすことが重要であると私たちは考えています。そしてこれらのシンプルな条項を無視する形でCCライセンスの付与されたマテリアルが利用されていた場合、私たちはライセンスの執行を支持します。CCライセンスが国際的に法的な執行力を持つように、何百人もの法律の専門家によって細心の注意が払われました。そしてこのしっかりした法的な後ろ盾が、CCライセンスの枠組みの力と成功の重要な要素であると私たちは考えています。同時に、CCライセンスが使用されてきて20年以上になりますが、訴訟がこれほど少ないことも喜ばしいことです。コンプライアンスを巡るほとんどの論争は裁判所外で解決されており、これはコモンズが健全に機能している証しであると私たちは捉えています。

しかしここ数年、CCライセンスが付与された作品を巡って、訴えを起こすという脅しや、実際に訴訟となる事案が増加しています。この事象に関する最近の学術研究では、ライセンス違反を主張して一人のクリエイターが2019年から2020年の間に40以上の訴訟を起こしたことが明らかになりました。訴訟の増加の理由の一つは、自動化されたツールを使ってライセンスを遵守していない事例をウェブから探し出し、クリエイターが著作権を執行することを支援する、 Pixsy などのサブスクリプションサービスの広まりにあると思われます。著作権法が設けている高額な罰金により、ライセンスの執行は高収益になりえます。

「ビジネスモデルとしてのライセンスの執行」は、厳格な著作権法とペナルティを軽減することを目的として創設されたクリエイティブ・コモンズの理想から逸脱するものです。同じくらい重要な点ですが、ライセンスの強引な執行はCCライセンスの全般的な試みにとって有害なものです。これはCCライセンスが付与されたコンテンツを再利用する公衆からの信頼を低下させる行為です。また、裁判所が過剰に訴訟を起こす許諾者(ライセンスする方)に対して煩わしさを募らせたり、ライセンスに関して問題のある判例法をもたらす懸念があります。別の言葉で表すと、強引なライセンスの執行はコモンズの脅威となります。

これを受けて、クリエイティブ・コモンズは、ライセンスの理解と遵守を向上させ、ライセンスの執行に関するコミュニティの原則を確立し、ライセンスに関する紛争に関わるクリエイターと利用者の双方の支援することを目的とした、一連の新たな資料をリリースすることにしました。私たちはこれが、CCライセンスを理解して遵守することをより容易にする、というこの問題の中心的な課題への、より広範囲かつ長期的な取り組みの最初の一歩であると考えています。より多くの許諾者が、CCライセンスを使うことで自身が不利になると思うことなく、自身の作品に使いたいと思えて、そして公衆がCCライセンスを安心して使うことができ、ミスに対して不当に罰せられることがないと感じることができれば、すべての人にとって良い結果がもたらされます。

新しい資料は以下の内容を予定しています。

  • ライセンスの執行に関わる原則についての声明(公開中)
  • 自身の作品に付与したCCライセンスが侵害されているのを発見したクリエイターのための手引(公開中)
  • 再利用をする人たちがよりライセンス条件を遵守しやすくするためのポイントが書かれた、許諾者のための手引(制作中)
  • 「合理的な」表示についてのCCの新たな解釈(制作中)
  • CCライセンス執行の通告書が届いた人のための資料(制作中)

私達がこれらを適応させ時間をかけて改良していくことを、皆様が手助けしてくださるとの期待を込めてこれらの新たな資料をリリースします。

どうすればライセンスがあなたにとってより理解できるものになるでしょうか。ライセンスの条項をより遵守しやすくするために、CCや許諾者ができることはあるでしょうか。どのような場合において、裁判でのライセンスの執行が適切であると考えられるでしょうか。ライセンスの執行が許諾者と被許諾者(ライセンスされる方)の双方にとってフェアであり、かつそれがコモンズの脅威ではなくコモンズを補強するものとなるように、皆様のインプットに耳を傾け、そして皆様と共に取り組んでいけることを楽しみにしています。

本内容はCCHQの"License Enforcement"を翻訳したものです。

5/22(日) 「NFTの使い方と創作活動の未来」(CCJP勉強会)開催のお知らせ

著作権との微妙な関連性や加熱する投資が議論になることもあるNFTをはじめとするWeb3テクノロジーには、創作活動や作品と社会の新しい関係を作る可能性もあるように見えます。動きも早く、技術的・法律的にも複雑な部分があるテーマであることから、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCJP)では著作物の流通や創作活動の現状と未来を考える上で、NFTやCC0、クリエイティブ・コモンズがどういう役割を果たすことができるのか、どのような可能性があるのか、をテーマに勉強会を開催することに致しました。

CCJPではこうした勉強会を主にメンバー限定で開催してきましたが、今回は公開で開催いたします。専門家ではないけれども、改めて学んでみたいという方のご参加を広く歓迎いたします。

話題提供は増田雅史と永井幸輔が行い、水野祐がコメントを、渡辺智暁が議論のモデレーションを行います。

【開催概要】

「NFTの使い方と創作活動の未来」(CCJP勉強会)

5/22 (日) 15:00-17:00
オンラインイベント(Webex)
URL:https://cisco.webex.com/cisco-jp/j.php?MTID=m416a88f792e2d71a4ca266162119c097
参加費無料・事前申込不要です。お時間になりましたら上記URLにアクセスしてください。

登壇予定者
増田雅史(ますだ・まさふみ)
森・濱田松本法律事務所 弁護士
ブロックチェーン推進協会 アドバイザー
日本暗号資産ビジネス協会NFT部会 法律顧問
Creative Commons Japanには、2009年よりスタッフとして参画。
Twitter: m_masuda

永井幸輔(ながい・こうすけ)
弁護士
株式会社メルカリ NFT Business Development マネージャー
Creative Commons Japan理事
一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(JCBI)著作権流通部会 副部会長
Twitter: hanatochill

水野祐(みずの・たすく)
弁護士(シティライツ法律事務所)
Creative Commons Japan理事。
Arts and Law理事。
Twitter: TasukuMizuno

渡辺智暁(わたなべ・ともあき)
国際大学GLOCOM主幹研究員/教授/研究部長
Creative Commons Japan理事長
https://www.glocom.ac.jp/researcher/299

CC活用事例:IPSJ MOOC

CCJP:まずは IPSJ MOOC について簡単にご紹介いただけますか?

辰己:IPSJ MOOC は、高等学校「情報科」の教員研修や授業等で活用できる教材です。実際にプログラムを書きながら学習ができるGoogle Colaboratoryを用いた教材と、動画の教材を用意しています。MOOC 制作のプロジェクトは情報処理学会の理事が受け持っているもので、学会内部では特別なワーキンググループとしての位置づけで行っています。

2020年の秋より、情報処理学会(IPSJ)による高等学校「情報Ⅰ」に関する教材が公開され始めました(https://sites.google.com/view/ipsjmooc/)。こちらの教材は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-SA 4.0)にて無償で公開されており、日本ではまだまだ普及途上にあるOERの貴重な事例と言えます。今回、は放送大学の教授で、情報処理学会の理事も務め、MOOCの制作に携わっておられる辰己丈夫氏にご協力いただき、CCライセンス導入に至った経緯等について話を聞くことができました。(以下敬称略。)


「オープン・レボリューション翻訳記念イベント」開催報告

2021年9月26日にオープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン主催、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン共催で「デジタル時代の価値創出の姿:『オープン・レボリューション』翻訳記念イベント」がZoomにて開催された。

イベントのリンク:https://peatix.com/event/2942382

本イベントは、Rufus Pollock氏による著書「The Open Revolution 」の日本語への翻訳を記念して行われた。

冒頭にオープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン事務局長の東修作氏より開催あいさつが行われ、続いて The Open Revolution の著者である Rufus Pollock 氏のビデオメッセージの上映、そしてクリエイティブ・コモンズ・ジャパン事務局メンバーであり翻訳主担当豊倉幹人氏より本のサマリー紹介が行われた。

サマリー紹介の後、本書に関する討論が行われた。討論の前半部では、島根大学法文学部教授であり情報経済論の研究を行っている野田哲夫氏、シティライツ法律事務所、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事、弁護士である水野祐氏、国際大学GLOCOM研究員、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事長、オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン副理事長である渡辺智暁氏を交え、本書の内容にまつわる様々な議題について意見がかわされた。以下は議題の一部を抜粋したものである。

  • オープン化が制作者のモチベーションに与える影響
  • ネットワーク効果を強める手段としてのオープン化
  • オープン化とビジネスモデル
  • データの囲い込み、プライバシーの問題
  • 国際的な制度設計の問題

討論の後半では、The Open Revolution の著者である Rufus Pollock 氏を迎え、さらに議論を深めた。討論の後半部では以下の内容について意見がかわされた。

  • オープン化における企業の役割
  • 報酬権と著作者人格権
  • NFTの可能性
  • 政治への不信と市民運動

なお、本イベントの様子を収めた映像や発表資料などは以下のリンクにて公開しています。

The Open Revolution 原書(英語)

https://openrevolution.net

The Open Revolution 翻訳版(日本語)

https://docs.google.com/document/d/1MXiRWb8SiXhTNdr-UF1hWoXOoA8tzL0zaOhToZQtcWM/edit

『オープン革命』 もっともよくある質問

https://docs.google.com/document/d/1yXOhSeVg3s3Kznl6ubFUv67TD69MtmvJSYbLI9hIk1U/edit

Rufus Pollock氏によるビデオメッセージ
Pollock氏と渡辺氏による質疑応答
豊倉幹人氏による発表およびスライド

https://docs.google.com/presentation/d/1EfYDs7QyFq2Ky9270lGX_3yO8OvGW3hJG0EWW7-Yanc/edit?usp=sharing

討論前半部
討論後半部

CC活用事例:Asuka Academy

Asuka Academyは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(以下CCライセンス)で提供されている海外の大学のコンテンツの、国内での利活用を推進しているNPOで、ウェブサイトでは数多くの映像教材を日本語字幕つきで無償提供しています(https://www.asuka-academy.com/index.html)。今回、Asuka Academyの事務局長および常務理事を務めていらっしゃる中村久哉氏にお話を伺いました。(以下敬称略。)


CCJP:まずはAsuka Academyについて簡単にご紹介いただけますか?

中村:Asuka Academyは2014年4月に設立されたNPO法人で、海外のオープンコースウェア[^1]やOER[^2]の、ウェブサイトを通じた無償提供を行っています。2021年9月時点で提供しているコースは154個あり、無料会員登録をした上で利用可能となっています。

コンテンツとしては、マサチューセッツ工科大学(MIT)、イェール大学、デルフト工科大学、カリフォルニア大学アーバイン校、英国オープンユニバーシティが提供している、実際の講義や教育用動画があります。「修了証書・オープンバッジ発行」のオプションがあるコースについては、修了条件を満たした方にAsuka Academy から修了証書および「オープンバッジ[^3]」を発行しています。

オープンバッジはIMSグローバルが提唱する、個人の学習歴や取り組みをデジタルのバッジで証明し、生涯持ち歩くための世界標準のしくみです。世界ではすでに年間数千万個も発行されており、日本では一般財団法人オープンバッジ・ネットワークが普及を強力に行っています。なお、Asuka Academy の岸田徹理事長は、オープンバッジ・ネットワークの理事長でもあります。オンラインの学びではモチベーションの継続が課題ですが、バッジの取得は、学びの意欲を維持するのに役立っているようです。

また、CCライセンスでの提供ではありませんが、AFP World Academic Archive(AFPWAA)やGoogleといった、大学以外のコンテンツも提供しています。AFPWAAはニュース映像やフォトストックのアーカイブで、Asuka Academyは AFP通信と提携し、日本語字幕を加え無償で提供しています。

Asuka Academyのトップページ。

CCJP:コロナの流行を受けてオープン教育教材を利用する動きが世界で見られますが、Asuka Academyでもそのような動きは見られましたか?

中村:そうですね、コロナ渦の状況で、利用者は急激に増加しています。全国で休校措置がとられ、企業でテレワークも始まった2020年2月末時点では、利用者数は3万4000人ほどでしたが、5月下旬には6万人を突破し、2021年6月末時点では9万人ほどと、大幅に増えています。

海外との比較でいうと、英語が公用語である国では英語の教材をそのまま理解できますし、国によっては政府や大学が予算をつけて翻訳を行っている場合があります。日本ではそもそもこういった教材の認知度は低く、また日本語ではないため、利用されにくいという現状があります。Asuka Academy の日本語・英語字幕付きのコンテンツは、気軽に海外トップ大学の優れた講義やコンテンツに触れられるところが喜ばれているようです。また、翻訳ボランティアに興味を持つ方も、おかげさまでたいへん増えています。

「[Yale] 哲学と人間 Part 1 」の動画教材。動画と同期した日本語・英語字幕を表示することができる。

CCJP:翻訳はどのように行っているのでしょうか?

中村:のべ2400人以上のボランティアによってオンラインで翻訳が行われています。翻訳ボランティアに参加した方にはオープンバッジを発行しています。最近は高校生の翻訳ボランティアが増えています。コンテンツを翻訳するためにはその内容を深く理解する必要がありますので、翻訳活動を通じて、英語の勉強に限定されない、該当分野への主体的で深い学びなど、様々な学習効果が得られるという好循環が生まれています。高校生や大学生では特に、留学やサマーキャンプといった活動がコロナ渦で難しい状況ですので、代わりとなる活動として行っていただいている方もいます。

CCJP:学生による翻訳の活動についてはどのような反響がありましたか?

中村:例えば広尾学園では課外活動として翻訳を行っているのですが、活動が始まった2015年は6人で翻訳を行っていたのが、今では毎年100人以上が参加する規模になっています。小グループに分かれ、各グループにリーダーがつき、全体リーダーは全体をまとめる必要があり、チームとしてのスキルも養う場となっています。また最近は九州や近畿の高校も翻訳活動に参加しています。生徒たちにとっても楽しく、そして意義深い活動となっているようです。

CCJP:翻訳を行う大学やコースはどのように選んでいますか?

中村:CCライセンスでコンテンツを提供しているという大前提があります。スタンフォード大学やオックスフォード大学も授業の様子を一部YouTubeにアップロードしていますが、ライセンスがオープンでないので、Asuka Academyのコンテンツとしては扱えません。MITのほか、オープンコースウェアの発展を初期から支えているOpen Education Global(旧称Open Courseware Consortium)の中心的なメンバーとなっているのがデルフト工科大学、カリフォルニア大学アーバイン校などで、彼らは継続的に、さかんにコンテンツをCCライセンスで公開しています。これらの大学のコンテンツを対象に、人気の高いコース、各大学が強みとしている分野やコンテンツを選んでいます。たとえばデルフト工科大学は治水やエネルギー、都市設計などについて非常に進んでいる大学なので、これらの内容の講義を翻訳しています。小中高校生向けの教材については、MITの学生などが作成し、公開しているMIT+K12という教材を翻訳しています。

CCJP:翻訳の際に注意している点などはありますか?

中村:画面に表示できる文字数は限られるので、内容を落とさずに、できるだけ端的な訳を行うことに注意しています。先生が早口の場合など、どうしても訳が長くなってしまう場合がありますが、動画を止めたり巻き戻したりできるというのが動画教材の良いところでもあると思います。それから講義の中でジョークやイディオム、ジャーゴンも随時入ってくるので、それらも上手く訳すようにしています。ボランティアの方に翻訳していただいた内容についての最終チェックは事務局が中心に、コンテンツによっては専門家の協力も得ながら、行っています。

CCJP:CCライセンスのついた教材を使うにあたって、権利の扱いなど、難しく感じたことはありましたか?

中村:難しいと感じたことは特にありませんでした。というのも、Asuka Academy設立者の一人であり、前理事長の福原美三氏がオープンエデュケーションに長く携わっていらっしゃったため、CCライセンスとオープンエデュケーションの関係については団体の中でも共有されていました。

CCJP:今後のオープン教育、OERの利活用について、展望や期待をお聞かせください。

中村:国内・国外とも、優れたオープン教育コンテンツの発信はますます増えており、学生・社会人・生涯教育それぞれの分野で、幅広い学びを楽しめ、キャリアにも活かしていける選択肢はたくさんあります。在宅など多様な働き方や、大学のオンライン講義の浸透、リタイア後の学びへの注目などを背景に、オープンな学びコンテンツの利活用は、急激に、多様に、進んでいくことと思っています。Asuka Academy の取り組みやコンテンツをきっかけに、優れたOERの 活用 がより多くの人、多くの教育現場で進んでいくことを期待しています。


あとがき

世界的に見ると毎年数多くのOERが作成されていますが、日本でこれらを利用するとなるとどうしても言語の壁にぶつかります。翻訳は、こうした教材がより多くの人にリーチするためには欠かせない重要な作業です。

OERの文脈で語られる新たな教育方法の一つに、学生自身が他の学生のための教材を作り公開するというものがあります。コンテンツの作成に関わる過程で自身も学びを深めていく。Asuka Academyはまさにそのような、教材を作る人と使う人の双方にとって利益となる、学び合うための場でもあるのだと感じました。お忙しい中インタビューにご協力くださいました中村久哉さん、どうもありがとうございました。 

執筆:豊倉幹人

[^1] オープンコースウェアとは、大学や大学院などの高等教育機関で正規に提供された講義とその関連情報を、インターネットを通じて無償で公開する活動のこと。(Wikipedia:「オープンコースウェア」より)

[^2] OERとは、パブリックドメイン、または無制限または限定的な制約のもとで他者による無償のアクセス、使用、翻案、再配布を許可するオープンライセンスのもとで公開されている教育、学習、研究のための教材のこと。(UNESCO: Open Educational Resources (OER) より)

[^3] オープンバッジとは、達成度や成果、およびそれらを獲得するために何を行ったかなどの情報が含まれているデジタルのバッジのフォーマットのこと。(IMS Global FAQより)

「CCJP年次報告書 2020年度」公表のお知らせ

この度CCJPでは、ここ最近の活動などをまとめた「CCJP年次報告書 2020年度」を公表しました。

CCJP年次報告書 2020年度
(PDFファイルとなっております。こちらのリンクからご覧ください。)

この年次報告書では、CCJPのここ最近の活動をご紹介するとともに、グローバルのクリエイティブ・コモンズの活動や、CCライセンスに限らないオープン化の動きとして近年のオープン教育の動きやCOVID-19にまつわるオープン化のトピックや事例紹介、またCCJPの会計報告なども記載しています。ぜひ一度ご覧いただけたら幸いです。

こちらの年次報告書は2021年6月12日に開催した「CCJP年次報告会2021」の内容を反映したもので、年次報告会にゲスト出演していただいた吉岡純希さんの取り組みも紹介しています。吉岡さんは昨年のコロナ感染の拡大期において、3Dデータを利用したフェイスシールドの製作・リスク軽減のための情報提供活動をされました。こちらも是非ご覧ください。

CCJP年次報告会では20名以上の方に参加していただき、CCやオープン化の動きの紹介だけでなく、参加者の方々と情報交換やディスカッションも行われるなど有意義な時間となりました。またゲストの吉岡純希さんからはファブと医療にまたがるオープン化の貴重なお話もお伺いできました。

年次報告会の際の発表資料も以下に掲載しますので、ご興味ある方はこちらもご覧ください。
CCJPここ最近の活動報告(CCJP事務局 森靖弘)
デジタルアーカイブとCCの「準用」(CCJP理事長 渡辺智暁)
グローバル CC 活動紹介(CCJP事務局 前川充)
近年のオープン教育の動き(CCJP事務局 豊倉幹人)
COVID-19を巡るオープン化のトピック(CCJP事務局 森靖弘)

引き続きCCJPをよろしくお願いいたします!

 

6/12(土) CCJP年次報告会2021 開催のお知らせ

この度CCJPでは、「CCJP年次報告会2021」と題して、最近のCCJPやグローバルCCの活動を報告するとともに、コロナ・教育・アーカイブなどを巡るオープン化の動きなどを紹介するイベントを開催します。
私たちCCJPが普段どのような活動をしており、グローバルのCCではどのような動きがあるかをお伝えするとともに、最近のオープン化のトピックについてコロナ・教育・アーカイブなどといった分野を対象に、いくつかの具体例を挙げながらご紹介いたします。

またゲストに吉岡純希さんをお迎えして、昨年のコロナ感染の拡大期の、個人メイカーによるオープンな3Dデータを利用したフェイスシールドの製作・提供にまつわる話をお伺いします。
吉岡さんは、医療とファブの両方の現場を知る立場として、フェイスシールド提供や、安全性確保のための活動をされました。そのお話を中心に、オープンライセンスが実際に有効活用されるまでの道のりも取り上げます。

CCやオープン化にまつわる情報共有と意見交換の場とできたらと考えておりますので、CCの活動に興味をお持ちの方々はもちろん、著作権、オープンライセンス、デジタル・アーカイブ、オープン教育などにご関心のある方も、ぜひお気軽にご参加ください。

【開催概要】

「CCJP年次報告会2021」
コロナ・教育・アーカイブなどを巡るCCとオープン化を振り返る。
6/12 (土) 14:00-17:00
オンラインイベント(Webex)
URL:https://cisco.webex.com/cisco-jp/j.php?MTID=m2f911f307173ef065af95cff3fdd16c3
参加費無料・事前申込不要です。お時間になりましたら上記URLにアクセスしてください。

(プログラム)予定ですので、変更となる場合もあることをご了承ください。
14:00-14:30 CCJPここ最近の活動報告(CCJP理事長 渡辺智暁/事務局 森靖弘)
14:30-15:00 グローバル CC 活動紹介(CCJP事務局 前川充)
15:00-15:30 近年のオープン教育の動き(CCJP事務局 豊倉幹人)
15:30-15:45 休憩
15:45-16:00 Covid-19を巡るオープン化のトピック(CCJP事務局 森靖弘)
16:00-16:45 3Dデータを利用したフェイスシールドの製作・リスク軽減のための情報提供の活動を通じて(ゲスト:吉岡純希さん)
16:45-    質疑応答

吉岡純希 プロフィール
株式会社NODE MEDICAL 代表取締役社長
慶應義塾大学SFC研究所上席所員
1989年、札幌市生まれ。集中治療室や在宅での看護師の臨床経験をもとに、テクノロジーの医療現場への応用に取り組む。2014年より病院でのデジタルアート「Digital Hospital Art」をスタートし、患者・医療スタッフとともに病院でのプロジェクションマッピングや、身体可動性に合わせたデジタルアートを制作・実施。2015年より、慶應義塾大学SFCにて看護と3Dプリンタに関する研究「FabNurseプロジェクト」に参画。2017年に慶應義塾大学 制作メディア研究科エクスデザインコースにて修士号を取得。2018年より、研究の実践を社会に実装するため、株式会社NODE MEDICALを設立。

CC活用事例:IPSJ MOOC

2020年の秋より、情報処理学会(IPSJ)による高等学校「情報Ⅰ」に関する教材が公開され始めました(https://sites.google.com/view/ipsjmooc/)。こちらの教材は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-SA 4.0)にて無償で公開されており、日本ではまだまだ普及途上にあるOERの貴重な事例と言えます。今回、放送大学の教授で、情報処理学会の理事も務め、MOOCの制作に携わっておられる辰己丈夫氏にご協力いただき、CCライセンス導入に至った経緯等について話を聞くことができました。(以下敬称略。)


CCJP:まずは IPSJ MOOC について簡単にご紹介いただけますか?

辰己:IPSJ MOOC は、高等学校「情報科」の教員研修や授業等で活用できる教材です。実際にプログラムを書きながら学習ができるGoogle Colaboratoryを用いた教材と、動画の教材を用意しています。MOOC 制作のプロジェクトは情報処理学会の理事が受け持っているもので、学会内部では特別なワーキンググループとしての位置づけで行っています。

IPSJ MOOCのwebサイト

CCJP:2020年はコロナの流行でデジタル教育への関心が集まっている印象を受けますが、こちらの教材もコロナを受けてのものだったのでしょうか?

辰己:プロジェクトが始まったのは2019年の秋からで、同じ年の暮れには全体の構想は出来上がっていましたので、コロナが流行する以前から制作は始まっていました。コロナの影響で公開が想定よりも遅れてしまい、どちらかというと負の影響が強かったです。「コンピュータとプログラミング」の章の動画の撮影は2020年の3月に行う予定でしたが、コロナの影響でこれを延期せざるを得なくなり、最終的に公開できたのは同年の秋となりました。

CCJP:MOOC 制作の背景にはどのようなことがあるのでしょうか?

辰己:2022年度より高校での「情報Ⅰ」が共通必履修科目となります。しかし全国的にこの科目の内容に追いついけている教員が不足しているのが現状です。こうした状況を踏まえて文部科学省から高等学校情報科教員研修用教材が公開されましたが、この教材だけでは実際のプログラミングまで理解するのは難しいという声が多くありました。そこで情報処理学会と、情報処理学会と交流のある関係者とで話し合い、民間企業および一般社団法人から寄付を受けるかたちで情報処理学会が本教材を作成する運びとなりました。教材の作成の目的にはこのように情報科教員の研修がありますが、教員に限らず誰でも学習に利用できる教材にしようという考えのもとで制作しています。

CCJP:どのような経緯でCCライセンスを採用することになったのでしょうか?

辰己:CCライセンスを採用することはプロジェクトの初期の段階から決まっていました。高等学校の情報科の教員研修、もっと大きく言うと日本の情報教育のアップデートが目的ですので、なるべく広く利用してもらうために無償で使えるようにすることは優先事項でした。無料であれば教員間での二次利用などが発生することも当然想定されます。こうした場合、利用者に許諾を申請してもらって、それを私達の方で承認していくというのは双方にとって負担になりますので、そうした手続きは省いて自由に使ってほしいという思いがありました。ただし民間企業および一般社団法人からの寄付で作成している以上、教材の営利目的での利用はふさわしくないのではないかという考えから非営利(NC)の条項を入れています。動画もGoogle Colaboratoryで提供している教材も同ライセンスですので、インターネットが使えない環境でも事前にファイルをダウンロードして様々な形で利用することができます。

Google Colaboratoryを使った教材。ウェブブラウザ上でPythonのコードを書いて実行することができる。

CCJP:CCライセンスを採用するにあたって課題はありましたか?

辰己:特にありませんでした。情報処理学会のこのワーキンググループのメンバーは情報活用についてもカバーしていまして、著作権やCCライセンスの意義などについて理解している人は非常に多いと思います。

CCJP:教材を公開したことへの反響はありましたか?

辰己:利用に際して許諾申請の必要が無いので、どこでどのように活用されているかの把握はできませんが、YouTubeの再生数を見るとぼちぼち利用されつつあるかな、という感じです。4月現在までで公開している教材はPythonを使った実践が中心でしたが、制作中の「情報システムとデータサイエンス」では情報に関するより幅広い内容になっています。今後コンテンツが追加されていくので多くの方に使っていただきたいですね。

CCJP:今後、教材がどのように利活用されることを望んでいますか?

辰己:できるだけ多くの人に学習機会を提供したいという思いがありますので、教員研修での利活用はもちろんですが、学生や社会人などの個人や企業研修などでも使って欲しいです。実際に民間企業から社員研修で使ったという声をいただきましたし、また別の企業から、この教材をベースに新たな教材を作りたいという申し出もありました。CCライセンスで公開していますのでライセンスの範囲内であれば自由に利用していただけますし、利用に際して申告の必要はありませんが、こうした声が聞けるのは嬉しいですね。企業に限らず学校などで同じように、この教材をもとになにかを作っていただくのも大歓迎です。また、今回の教材は高等学校の教員研修にフォーカスしていますが、生徒を対象とした授業や、中学校や小学校、幼稚園での学習にも広がって欲しいという思いがあります。

CCJP:一時期に比べてMOOCに対する世間の関心は薄れているように感じますが、今後のオンライン教育の可能性についてどのようにお考えですか?

辰己:MOOCで目指していたやり方が後退していくことは無いと考えています。教材をオープンな形で公開することで多くの人々が幸せになり、そこから新たな価値が生まれます。そしてそれは長い目で見ると自分たちにとっても利益となります。こうした投資は中長期的に世の中を良い方向に向かわせるということを私が所属している情報処理学会や放送大学の教員・研究者らも理解しています。また、情報が物理的なものに縛られてしまうと価値の創造も制限されてしまいます。デジタルな情報は物理的なメディアに縛られていないからこそたくさんの人に使ってもらえますし、コストも負担しなくて済みます。そしてそれが結果として多くの価値を生み出します。ですので、こういったオープンな形でのオンライン学習は進んでいくと私は考えています。


あとがき

ここ数年でGIGAスクール構想により生徒一人ひとりへの端末の配備が進み、2021年3月にSTEAMライブラリーが公開されるなど、デジタル教育はますます進んでいます。その中でオープンな形の教材を作成・公開し、教育を進展させ支えていこうとしている方々がいることを今回のインタビューを通じて改めて認識することができました。オープン教育の認知度はまだまだ低いですが、多くの人々に利益をもたらすポテンシャルを持っています。IPSJ MOOCはそのポテンシャルを示す重要なロールモデルであると感じました。お忙しい中インタビューにご協力くださいました辰己丈夫さん、どうもありがとうございました。

執筆:豊倉幹人

COVID-19への対応および国際的な協力としてのOERの活用

Jennryn Wetzler
Jennryn Wetzler

2020年6月1日

この記事はJan GondolEbba OssiannilssonKarolina SzczepaniakSpencer Ellisと共同で執筆された。本記事の一部はOpen Government Partnershipのサイトに掲載された。

私達は今、オープン教育リソース(OER)への支持の拡大と、従来の教育制度の壊滅的な混乱に直面している。COVID-19によって15億人もの若者が登校できておらず、数多くの教師や親はオンライン教育へ方向転換しており、教育制度は巨額の財政的な負担と向き合っている。OERは今起きている教育危機を解決できる魔法の薬ではないが、教育を取り巻く環境のレジリエンスを高め、国際的な協力をサポートするためにオープン教育に取り組むことは有効だ。

オープン教育リソース(OER)とは(a)パブリックドメインである、または(b)5R活動を実践するため、すべての人に自由かつ永続的に許可が与えられる方法でライセンスされている、教育、学習、研究資料のことである。OERは教育をより費用的な負担の少ない、よりアクセスしやすく、より効果的なものとすることで可能な限り多くの人々に学習への自由なアクセスを提供するオープン教育の一つの要素である。オープン教育にはオープンプラクティス、オープンポリシー、オープン教育リソースが含まれる。

現在は、OERを使った教育への取り組みと集団としての貢献を加速することへの、より多くのニーズと、確立された国際的な枠組みがある。今回のパンデミックは、情報とコミュニケーションへのアクセスを遮断することがコミュニティにどのような影響を及ぼすかを明らかにしている。しかし同時に、(情報の自由な共有、教育資料への自由なアクセスなどの)オープンプラクティスが人間の集団的安全保障にとっていかに重要かも明らかにしている。

COVID-19への対応でOERを活用している事例

変化の激しい現在においてOERはより機敏な解決策を提供する。OERは増加しているオンライン学習者のニーズに応えるために教育者が教育リソースを加工することを可能とする。そのニーズは母語への翻訳、アクセシビリティ、低いコストなど様々である。

COVID-19への対応としてどのようにOERを活用すればよいのだろうか? 以下に挙げるのはその事例だ。

ほとんどの事例は着手し始めることはできるが、短期間で完全に実現することはできない。むしろこれらの事例は、よりレジリエンスのある教育プラクティスを実現するための枠組みを定義している。

  • オープン教育プラクティスのメリットを示す好例に、スロバキアの最近のOpen Government Partnership (OGP)の誓約がある。スロバキアOGPチームは、スロバキア語で利用可能なオープン教育リソースを整理している。スロバキアのOGPチームはCOVID-19に伴い学校が閉鎖された際に速やかにリソースの概観の進行中のバージョンをソーシャルメディアを通じて公開した。これはスロバキアOGPチームのFacebookの投稿で最も人気の高いものとなった。教師と生徒の親は、リソースに即座にアクセスし、加工し、自由に再利用することが非常に有益であることに気づいた。このインパクトは現在の危機が去った後も長く持続するのではないだろうか。

  • Open Government Partnership(OGP)は政府のリーダー、市民社会の推進者らが一丸となり、より透明性が高く、説明責任が担保でき、即応性のあるガバナンスとサービスを市民に提供することを推進している国際的な組織である。OGPには(20億人を代表する)78か国の政府と数千の市民社会組織と緊密に連携をとっている地方自治体が含まれる。OGP政府と市民社会メンバーは協力し、幅広い課題に取り組むための具体的な公約を持った2カ年行動計画を立てている。これにより市民社会組織は政府の仕事を方向づけ、監視することが可能になっている。

  • ポーランドにおいて60万の教師と480万人の生徒を対象とする2万4000の学校で遠隔授業モデルへの移行が素早く行われる中で、NGOはオープン教育リソースを用いることで教師の授業への取り組みを即座に強化することができた。ポーランドの国民教育省の(OERである)電子教科書の教育プラットフォームは、以前は教師の間では十分に活用されていなかったが、即座に、制限なく利用可能であったことから、重要なかつ十分に活用されるリソースとなった。ウェブサービスのLessons on the Web(Lekcje w sieci)は3週間のうちに、すべての教育レベルにあわせた200を超えるOER授業シナリオを作成した。

  • ドイツのウィキメディアedu-sharing.netは共同でWir lernen online(一緒にオンライン学習)というサービスを4月に開始した。このオープン教育プラットフォームは学校による家での授業をサポートするデジタルインフラを強化するもので、主催者は教育セクターのステークホルダーとの協力を歓迎している。

  • ノルウェー政府、UNESCO、UNHCRおよび複数の営利組織や非営利組織がオープンライセンスの子供向けの本(OER)の翻訳を支援することで提携した。このプロジェクトはTranslate a Storyと呼ばれ、子どもたちがパンデミック中そしてパンデミック後も読み続けられるよう支援することを目的としている。

OERを支援している国際的な枠組み

OERとオープンガバメントの取り組みに強い交点があることを多くの国々が認識している。ここ10年間でチリ、ギリシャ、ルーマニアといった多くの国々が、透明性、説明責任、市民の参加、教育システムでの多様性の受け入れ、財政の説明責任、公共サービスの改善といったOGPの目標に取り組むためにOERの取り組みを活用してきた。9つのOGPの誓約がオープン教育リソースの利用を通じていかにOGPの目標の達成を支えているかについて、このサイトで読むことができる。2019年のOGP Global Reportでは2018年の終わりには少なくとも160の教育についての誓約があったと報告している(教育の章 6ページ)。教育の章では、従来の資料では法外な価格が設定される可能性、オープンソースの資料は常に最新の状態に保つことができること、より高い学生のパフォーマンス、等を含むOERを選択するべき理由がとりあげられている(23ページ)。

オープンな政府の取り組みに加え、各国政府、国際的・地域的組織は、OER、そしてオープン教育の目標を支援する国際的なフレームワークのもとに協力することのポテンシャルを認識している。2019年の11月にUNESCOはオープンでインクルーシブ、かつ参加型である知識社会を構築するためにUNESCO OER 勧告を全会一致で採択し、勧告を支援するために連携をとった政府、市民社会、民間企業の専門家から構成される連合体(ダイナミック コアリッション)を設立した。OER勧告はSDG4の取り組みと非常にうまく合致するもので、オープン教育が「インクルーシブで公平な質の高い教育」と「すべての人が生涯に渡って学習する機会」を支援することができることを強調している。

各国の政府はSDG4の目標の達成、OER勧告のアクション、OGPの義務を果たすためのパートナーシップとオープンプロジェクトを探している。今こそOERの取り組みにてこ入れし、SDG、UNESCO OER勧告、OGPの諸目標を同時に満たすための格好の機会だ。そして同時に、COVID-19への対応として教育制度に一層のレジリエンスを組み込むべき時でもある。

参加しよう

OERは多くの場合、教育リソースを共有することに情熱的で、オープン教育に熱心な人たちのネットワークとつながりを持っている。

オープン教育ネットワークはハウツー面を扱うウェビナー、心のケア、オープンリソースのリストを通じて、教師、保護者、生徒、支持者へのアウトリーチを提供してきた。こちらのWikipedia記事の一節ではリソースと反応の一部を見ることができる。そしてオープン教育の取り組みに関わる機会を話し合うためにクリエイティブ・コモンズのオープン教育関連のメーリングリストまたはSlackコミュニティに参加しよう。

👋 COVID-19の拡大を食い止めるためにWHOがまとめているとおり、20秒以上の手洗いや、密集・密接を避けることなどを実践しましょう。

このブログ投稿は Jennryn Wetzler による“Leveraging OER for COVID-19 Response Efforts and International Partnerships”を翻訳したものです。

(担当:豊倉)

著作権法は博物館がその使命を果たせるようにしなければならない

Brigitte VézinaBrigitte Vézina

2020年5月18日

※原文における”Museum”という単語は博物館だけではなく美術館なども含んでいる。本記事では便宜上、博物館と訳している。

今日は国際博物館の日で、私達クリエイティブ・コモンズ(以下、CC)は世界の多様な文化、アイデア、様々な形の知識へのアクセスをキュレートし、世話し、提供する機関を祝うことを楽しみにしている。普遍的な価値である平等、多様性、インクルージョンを誓う今年のテーマは、博物館が異文化間の橋渡しと社会変革の強力な駆動力となり得ることの証だ。

国際博物館会議がデザインした2020年国際博物館の日のポスター

CCの私たちもこれらの価値観を共有しており、博物館をサポートし、世界中の社会の文化的基礎を育む手助けができることを嬉しく思っている。私達はこれをopenGLAMの活動を通じて行っている。openGLAMでは、文化団体がCCライセンスとツールを最大限活用し、文化遺産を可能な限りオープンなかたちでオンラインで共有することを支援している。また私達は著作権法とポリシーの分野において博物館の利益を推進することにも勤しんでいる。博物館の懸念事項やニーズが著作権者のものと対等に、バランスの取れたフェアなかたちで扱われるように担保するがCCの著作権ポリシーアジェンダの中心にあるのだ。このブログ記事では、博物館が不当な法的負担を強いられることなくその使命を果たすための柱となる著作権の例外・制限規定(L&E)の重要性に焦点を置く。

著作権の例外・制限規定(L&E)はクリエイターの権利と、利用者及び世間一般の正当な利益と権利の公平なバランスを確保するために存在する。L&Eは、著作権者からの承認がなくても、ほとんどの場合支払いなしでの利用を可能とする。コモン・ロー(慣習法)の国では、これらは多くの場合「フェアユース」または「フェアディーリング」の形態をとる。シビル・ロー(制定法)の国では、L&Eは多くの場合法律で規定の範囲を明確に定義している。

コレクションを皆と共有することは博物館のかけがえのないな使命だ

博物館は信じられないほど多様な歴史、人工物、経験を収集、保存、研究、解釈、展示、教育し、来館者(現地でもオンラインでも)が触れ、参加する場を提供する。博物館は、知識と文化へのアクセスを提供し、経済的、社会的、文化的な進展に貢献するという公益のための使命を委ねられている。ギャラリー、図書館、アーカイブ(合わせて「GLAMs」と呼ばれる)と共に、多くの博物館が現在と将来の世代の利益のために、デジタル技術を活用することによって、コレクションを保存し、アクセスを提供しようと努めている。例えばParis Muséesは、最近100,000点を超える作品をクリエイティブ・コモンズ・ゼロ(CCØ)のもと、パブリックドメインとしてリリースし、美術・文化の財のオープンアクセスの重要性を認識しているGLAMの増大するリストに名を連ねた。これは気候変動などの世界的な課題によって生じる消失と劣化のリスクに対する取り組みとして特に重要である。

Paul CardonによるフランスのフェミニストジャーナリストであるCaroline Rémy (1855-1929) のポートレート。こちらはパブリックドメインである。Paris Muséesにより利用可能となっている。

文化遺産に特化した博物館の場合には、世界共有の遺産をネットを通じて広めることは公的な使命とダイレクトに合致する。デジタル写真だけでなく書誌情報やメタデータを含む作品の情報まで、来館者および一般市民に対して情報とコンテンツを共有することも重要である。

著作権は博物館の基本的な機能の邪魔になってはいけない

悲しいことに、全ての大陸の博物館において、著作権によって保護されている作品を保存目的で複製したり、オンラインで閲覧可能にしたりするといった基本的な機能は、複雑・乱雑に絡まり合った著作権上の諸問題によって妨げられている。これは法的な不確実性が強いデジタル環境において特に顕著である。悩ましいグレーゾーンのひとつに、独創性のない複製についての権利の主張がある。これについてCCは、デジタル化されたパブリックドメイン作品はパブリックドメインとすべきであると断固として主張している。古くなった整合性のとれていない著作権のルールが世界中で、博物館の正当な活動をできなくし、博物館が知識と文化へのアクセスの提供に取り組む努力を抑圧してしまうことで不平等を拡大させ、共有されるデジタル遺産にブラックホールを作り出している。

公益に資する場合、著作権は制限されるべきだ。博物館が使命を果たせるようにするには、より強い、明確で効果的な制限・例外規定が必要だ。

私たちCCは、著作権法が、保全活動や教育へのアクセス、科学、文化に関する作品へのアクセス、その他公益に資する博物館の正当な活動の障害となってはならないとする考えを強く支持する。事実私たちは、公益に資する場合、著作権は制限されるべきだと考えている。このような理由から私たちは、博物館が使命を果たせるようにするには、より強い、明確で効果的な制限・例外規定が必要だとする国際博物館会議(ICOM)の主張に全面的に賛同する。実際に私たちは先月、世界知的所有権機関(WIPO)に対し文化遺産の保存を可能とする明確なルールを示す国際的な法的制度を早急に創設することを求める、ICOMを含む複数の団体によって作成された公開書簡に署名した。

制限・例外規定に関する国際法・ポリシーの進むべき明確な道筋

ヨーロッパ内の事例では、2019年のデジタル単一市場における著作権に関する指令(CDSM)には博物館をサポートし、文化遺産のデジタル化とオンラインでの共有を推進するための複数の制限・例外規定が含まれている。例えば第6条では文化遺産の保存を目的とした活動のための例外規定が設けられ、第14条ではパブリックドメインにある視覚芸術作品の忠実なコピーはパブリックドメインでなければならないとしている。CCの姉妹的な組織であるCommuniaはCDSMの導入にあたってのガイドラインと支援を提供している。EU加盟国は、博物館の社会における重要な役割を認識、サポートし、国内の著作権法に明確な制限・例外規定を設けるための、このかつてない機会を2021年6月までに利用する必要がある。

国際的には、博物館の利益となるような強制的な制限・例外規定を設けた明確な国際的フレームワークは存在しない。これはつまり、自国の著作権法に博物館にやさしい制限・例外規定を設ける義務がないことを意味し、実際に多くの国々では設けられていない。Dr. Lucie GuibaultとJean-François Canatが主導した博物館を対象とした制限・例外規定に関する2015年のWIPOの調査は、制限・例外規定は法的管轄域によって大きく異ることを示した。WIPO加盟国のうち博物館に特化した制限・例外規定を設けている国は3分の1以下で、3分の2の国は博物館が一般的な制限・例外規定とライセンスによる解決の両方またはいずれかに頼るに任せている。特化した例外は保存を目的とした複製、展示カタログでの作品の使用、作品の展示、孤児作品の使用を含む。一般的な例外は教育目的での利用または個人利用を含む。WIPOの2019年のRevised Report on Copyright Practices and Challenges of Museumsでは、制限・例外規定はその法的な不確かさが災いしてしばしばよく理解、利用されていないとしている。

このため、実情にそぐわない、実現困難な、そして時に端的に不公正な著作権ルールに従うことの負担なしに博物館が正当な活動を行う権利を明確に制度化した国際的な取り決めを作成することが不可欠である。先日このブログで述べたことだが、博物館とGLAM全般の利益を保護を念頭に置き、WIPOの著作権及び著作隣接権に関する常設委員会(SCCR)内で制限・例外規定を迅速に推し進める方策を確立させる時期が来ている。作品への視覚障害者のアクセスに関する2013年のマラケシュ条約の採択を参考に、SCCRは今、GLAMのための明確で拘束力のある制限・例外規定の作成に集中するべきだ。

博物館は一年を通して祝われても良いくらい様々な価値を生み出している。私達はopenGLAMと著作権ポリシーの取り組みを通じて博物館部門をサポートすることを誇りに思っている。さらに詳しく知りたい方は、info@creativecommons.orgまでご連絡をどうぞ。(日本ではCCJPも同様のお手伝いができる場合があります。お問い合わせについてはhttps://creativecommons.jp/contact/を御覧ください。)

このブログ投稿は Brigitte Vézina による“Copyright Law Must Enable Museums to Fulfill Their Mission”を翻訳したものです。

(担当:豊倉)