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Mike Winkelmann (別名: beeple)のアートとEvery Dayについて

Jennie Rose HalperinJennie Rose Halperin

January 18, 2018

Beeple(Mike Winkelmann)は、ビデオアートやデザインワークの作品をCCライセンスの下で無料で提供しているグラフィックデザイナー、アーティスト、映像作家です。Winkelmannは過去10年間、毎日「Everydays」シリーズとして作品をリリースしており、現在では3000を超えるCGIの絵と映像作品のアーカイブとなっています。彼の作品は他のジャンルでも人気で、CCライセンスで提供されている彼の数百に及ぶVJループは、マッシュアップを求める電子音楽の作曲者やアーティストに人気です。

Winkelmannのショートフィルムは様々なフェスで上映され、彼のCCライセンス付きのイラストや絵はSkrillex、Amon Tobin、Tiëstoといったアーティストにも使用されています。彼は現在Flying LotusのBrainfeederレーベルで作品をリリースしています。

Winkelmannの作品はBeeple-CrapInstagramTumblrVimeoで見ることができます。

あなたは人気のあるレーベルの、多様なジャンルにおいて成功したアーティストですが、VJループや他の素材をCCライセンスのもとでリリースし続けています。どのように2つの創作のモードのバランスをとっているのでしょうか?なぜ作品をコモンズへリリースするのでしょうか?そもそもCCライセンスを利用しはじめたきっかけはなんだったのでしょうか?

作品を作って無償で提供することは、なぜかはわかりませんが私にとって自然なことなのです。力を注いで作り上げたものは、できるだけ多くの人に見てもらいたいので、それを実現するためには無償で提供することが最も簡単な方法なのです。

もちろん、私もみんなと同じように家族がいて払わないといけない請求書もあり、制作した作品に対してお金を請求したい気持ちもよくわかります。しかし私の場合は、フリーランス(個別契約)の制作と、純粋に個人的な制作作品を無料でリリースすることとの区別ができています。


ANGULAR (loop) by beeple ライセンス:CC BY 3.0 非移植版

懐疑的な人がCCライセンスに関して話すときに、「無料で同じものが手に入るのにお金を払う人がいるのか?」という疑問が投げかけられることがあります。あなたはこれに対してどのように返答しますか。CCライセンスを使い続ける理由はなんですか?個人アーティストとして、どのようにして無償/アトリビューションモデルと有償モデルのバランスを保っているのでしょうか?

アート作品を金銭的に評価することは大変興味深いテーマだと思います。需要と供給の問題に収束する側面もあると思いますが、コストをかけずにコピー可能なデジタル作品においてはより複雑です。正直、「正しい」答えというのはないと思いますが、個人的には両方の立場が成立するでしょう。ほとんどの人が、無料で手に入れられるものに対してお金を払わないというのは明らかにそうなのですが、そうではない事実が存在するのも確かです。例えばPatreonのように、自分が気に入った作品の作者にお金をあげるサイトなども存在します。人々は作品にもっと集中すべきなのに、ビジネス化することに集中しすぎていることも時にあると思います。

私のデジタル作品については有料モデルといったものはありません。お金を受け取って行う制作は、わたしの場合は全て個別契約(フリーランス)の仕事です。今はそのように割り切ることを好んでいます。


“Miami” From Everydays by Mike Winkelmann

「Everydays」が11ラウンド目に入り、毎日ひとつの作品を完成させてきた結果、オリジナル作品が3500を超えました。このプロジェクトの原動力は何で、11年間でどのように変わりましたか?これまでに学んだこと、そしてこれから変えていきたいことは何ですか?

10年間のeverydays は、去年の5月に、一日たりとも欠かすことなく10年目が終わりました。このプロジェクトの主な目標は絵の上達でした。最初に始めた時は、絵をもっと上手く描きたかったのです。1年間描いたら、かなり上達したのです(間違いなくまだ下手でしたが)。同時に、このプロジェクトが、新しいテクニックを学んで継続的に上達していくための強力な方法であると感じました。

正直なところ、この10年間であまり何かが変わったということはありません。このプロジェクトから、絵が著しく上達し、多くの恩恵を得ましたが、私の技術は求めているものとはまだかけ離れています。まだまだフォーカスしたい領域がたくさんあるので、やめることは当分ないでしょう。


“VICEMOON” from Everydays by Mike Winkelmann

InstagramやFacebookといった、より視覚的でバイラルな(拡散する)ソーシャルメディアは、あなたの活動をどのように変えましたか?個人アーティストとして成長する過程で、ほかのプラットフォームをどのように活用してきましたか?

これらのプラットフォームは、特に私が作るような作品を多くの人々に届けることに大いに役立っています。小さ目で利用しやすい絵や短いVJクリップを一日に一作品投稿していますが、媒体がそれらにとても適していることを、とても幸運に感じています。これらのプラットフォームを活用して、それぞれの利用者のニュアンスを理解することが大切です。一方、のめり込み過ぎて時間を奪われてしまう可能性もありますから、これらのプラットフォームでプレゼンスを保ちつつ、時間をかけすぎないバランスを維持する必要があると思います。


CLEANROOM (loop) by beeple (video) and Justice (audio) ライセンス:CC BY 3.0 非移植版

現在取り掛かっているプロジェクトで最も刺激的なものはなんですか?どのようなプロジェクトがお好きですか?

最近はVRとARの作品に取り掛かっており、とてもワクワクしています。これらは当然新しいフォーマットで、決まり事も少ないので、創作しながら、いろいろな発見があります。everdays、VJクリップ、ショートフィルムの制作も継続しています。私は同じことをしているとすぐに飽きてしまうので、幅広いメディアを用いて制作することで、とても楽しんでいます。

このブログ投稿はJennie Rose Halperinによる”Art and the Every Day with Mike Winkelmann (AKA beeple)” を一部変更し、翻訳したものです。

元のブログ投稿のライセンス表示:” Except where otherwise noted, content on this site is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International license.”

文中に挿入した作品例のライセンスがわかっている場合は、作品に付記してあります。

(担当:豊倉)

 

Blender InstituteのTon Roosendaalが語る、オープンライセンスの活用とアーティストとしての成功について

Eric-Steuer_avatar_1520861651Eric Steuer

2016年10月12日(原文投稿日)

 

世界初のオープン映画をプロデュースしたBlender InstituteのTon Roosendaalと彼のチームは、プログラム、ライセンシング、配給まで、全ての面で「オープン」になっています。無料でオープンソースの3DCGアニメーション制作の総合環境であるBlenderは、個人アーティストから小規模企業まで、あらゆるクリエイターをサポートします。

Blender Instituteについての詳細はMade with Creative Commonsに記載されています。 (※1)

この映画はどのような経緯でできたのでしょうか?原点は何でしょうか?

Blender Institute スタジオでは2007年から CC BY ライセンスを用いた映像作品を作ってきました。初期の短編映画は、映画本編と、映画をリメイクするための素材とソフトを収録したDVDの販売で資金を調達しました。この成功により、作品とそこから得られた収益を利用してオープンソースの3D制作ツールであるBlenderを改良してきました。

しかし、DVDの販売が低調となり、データを収録するにもあまり実用的ではないため、2014年にこの資金調達の方法を廃止しました。代わりに、全ての映画と、その映画制作のための全素材、そして数年間にわたって作ってきた100時間あまりのチュートリアル資料をウェブサイトにアップロードしました。これをBlender Cloudと呼んでいます。登録者は月額たったの10ドルで、このサイトにある全てのCC BYライセンス付き資料にアクセスでき、登録者からのサブスクリプション収入をもとに新しいコンテンツや映画を継続的に制作できます。

「Caminandes Llamigos」はBlender Cloudのサブスクリプション収入によって作られた3本目の短編映画です。これまでと同様、このプロジェクトの目的はBlenderをさらに改善をすることと、オンラインでユーザーと共有するCC BYコンテンツとチュートリアルを数多く用意することでした。人々は面白い映画が大好きで、制作者本人たちからその作り方を学ぶことは大きな刺激になります。

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「Caminandesシリーズ」はPablo Vazquez監督の故郷であるパタゴニアを舞台にしています。Pabloは、面白くてクレイジーな動物と、アメリカの1950年代以降の伝統的短編が大好きです。

 

制作にはどれくらい時間がかかりましたか?実現までにどんなプロセスを経たのでしょうか?

脚本の執筆と絵コンテの作成は昨年10月に始まりました。制作は11月から始まって3ヶ月間続きました。2月には1ヶ月かけて、メイキング資料、ダウンロード可能な素材、チュートリアルなどを追加し、プロジェクトの仕上げを行いました。

 

プロジェクトにはなぜ特定のCCライセンスを利用するのですか?

制作したものにはCC BYとCC 0以外はほぼ使用しません。制作した映画やその素材を非商用ライセンス提供することは、本格的なアーティストやプロとのコンテンツの共有が不可能あるいは困難となるため、一度も検討したことがありません。

 

オープンライセンスは、映画とその素材を共有するために欠かせません。CC BYとCC 0により、素材コレクションを他のプロジェクトでも使用できるのです。また、トレーニングを通じて、学生に、新しい作品を作り、共有し、公開するために、作品を改編・編集する権利を与えることが不可欠です。

 

人々が映画をどのように使うことを願っていますか?また、それとどのように関わりたいですか?

共有することは他人を思いやることです!アーティストや制作者として、作品がたくさんの人に見られるように共有されることを望みます。過去のCaminandesのバージョンはDisney Channelに移植され、大成功でした。Caminandesのキャラクターは広く知られており、想定していなかった方法で使われ始めていて嬉しく思っています。

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CCライセンスのもとアニメ映画を共有してきたこの10年間を顧みると、新しいエピソードやバージョンを作るために素材が使われていないことに驚きます。少なくとも私達が作った質と量では作られていません。「全てを公開する」ことで、自身の素晴らしい作品が誰にでも複製・再利用されると全てを失うと考えるかもしれません。しかし実際は違うということを知りました。制作に用いた素材を含めて全てを共有しても、一定のレベルの作品を作るためには才能と技能、時間、費用がかかります。作品に厳しい著作権上の制限を課すことには価値がないのです。

 

(※1) “Made with Creative Commons” はこの記事の原文が作成された2016年10月の時点ではリリースされていませんでしたが、現在はリリースされているため、表現、リンク先を原文とは異なるものに改めました。

このブログエントリーはEric Seuterによる” Blender Institute’s Ton Roosendaal on open licensing and artistic success” を一部変更し、翻訳したものです。

元のブログエントリーのライセンス表示:” Except where otherwise noted, content on this site is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International license.”

文中に挿入したアニメーション画像のライセンス表示:Caminandes 3: Llamigos by (CC) caminandes.com からのスクリーンショット
ライセンス:Creative Commons Attribution 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/&gt;

 

(担当:豊倉)

楽譜を開放するためのOpenScoreの計画

Peter Jonas

2017年6月30日(原文投稿日)

この記事はOpenScoreのPeter Jonasによるゲスト投稿です。OpenScoreはKickstarterを通じて始まった、楽譜をCC0のもとで公開する先進的なプロジェクトです。CC0の詳細はこちら。文化資産組織にとってのCC0と、その活用効果を知りたい方はニュースレターへの登録を。

OpenScoreは、モーツァルトやベートーヴェンらパブリックドメインとなっているクラシック音楽の楽譜を、クラウドソーシングを通じてデジタル化しようという先進的なプロジェクトです。ウィキペディアやプロジェクト・グーテンベルク、オープンストリートマップなどの大規模なクラウドソースプロジェクトは知識の民主化に多大な貢献をしており、人々に情報と力を与えてきました。



OpenScoreは、歴史的に最も影響力のある作品を、紙媒体からインタラクティブ・デジタル楽譜に変換し、これを聴いて、編集して、共有することで、オーケストラ、合唱団、合奏団、練習用の教材を探している人に役立つことを期待しています。OpenScoreで公開されている全ての楽譜はCC0のもと、無料で公開されています。これにより、私達は音楽教育と研究への恩恵を最大化し、作曲家や編曲家に新しいコンテンツを生み出すきっかけとしたいのです。


ベートーヴェン - エリーゼのために by OpenScore


OpenScoreはMuseScoreIMSLPという2つのオンライン楽譜大手コミュニティの協同により実現しました。IMSLPコミュニティは2006年以来、PDF形式でのパブリックドメインの楽譜の世界最大級のオンラインアーカイブを作るために、著作権の切れた楽譜を探し、スキャンしてアップロードしてきました。MuseScoreには、作曲、編曲、練習、デジタル化された楽譜の共有のためのMuseScore サイトと、MuseScoreが提供するオープンソースの楽譜作成ソフトを使う、世界で数百万人の活発コミュニティが存在します。OpenScoreはこのコミュニティを活用し、画像のみで構成されるIMSLP版の楽譜の音符をMuseScoreの楽譜作成ソフトに入力して、インタラクティブにデジタル楽譜化する予定です。

OpenScoreのデジタル楽譜は、広く支持されているMusicXML形式で提供されています。MusicXML形式は、ほとんどの楽譜作成ソフトで読み込み可能で、ギタータブ譜や他の表記への変換も容易です。楽譜は、ソフトウェアを用いることで研究や分析が可能で、Nicholas Rougeuxによるヴィヴァルディの「四季」を、下記のように芸術的に視覚化することができます。Nicholasはシカゴに拠点を置くデジタルアーティスト、ウェブデザイナーで、OpenScoreの楽譜に独自のカバーイメージを制作することに同意しました。

ヴィヴァルディの「四季」の視覚化 by Nicholas Rougeux

採譜に関心を持つ多くの人々のおかげで最初のOpenScoreを公開することができました。もし採譜に興味があれば、MuseScore forumにあるこちらの記事をご覧ください。

このブログエントリーはPeter Jonasによる“Openscore’s plans to liberate sheet music” を翻訳したものです。

元のブログエントリーのライセンス表記:”Except where otherwise noted, content on this site is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International license. “

【まとめ】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC

2017年、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンでは、『CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC』と題して一連の企画を実施してきました。

富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを付けて公表するというのが基本的な内容なのですが、そこから派生した一連の企画も展開してきました。
まとめとして各々のリンクを以下に掲載していますので、気になる内容がありましたらご覧いただけましたら幸いです!伝統文化が新たな創造へと繋がって行く可能性、そしてCCライセンスの可能性と限界を探る連続した試みです!

「越中おわら道場」による演奏の録音と、VIDEOTAPEMUSIC、colorful house bandによるリミックス


演奏を録音させていただいた「越中おわら道場」代表の庵さんインタビュー

【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.1
リミックスを制作していただいたVIDEOTAPEMUSICさんインタビュー
【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.2
リミックスを制作していただいたcolorful house bandのDJ KENSEIさんインタビュー
【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.3

DOMMUNEで放送した、ドミニク・チェンCCJP理事・大石始さん・高橋幸治さん・宇川直宏さんによる、上記の録音&リミックスの紹介から伝統・リミックス・テクノロジーなど多方面に展開したトークプログラムの書き起こし記事(前編/後編)
【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.4
【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.5

DOMMUNE放送時のtweetを中心にまとめたTogetter
#DOMMUNE 「Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC ~伝統文化からCCライセンス、ブロックチェーンまで~」まとめ #越中おわら節xCC

まとめてご覧いただけると、様々な角度から楽しんでいただけると思います。音源はCC-BYで公開していますので、新たなリミックスを作ってもらったり、CC-BYの条件の下で自由に使っていただけたら嬉しいです。
創造の循環が広がることを祈って!

【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.5

DOMMUNEトークプログラム『Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC ~伝統文化からCCライセンス、ブロックチェーンまで~』ダイジェスト版書き起こし(後編)

富山県富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表するという今回の企画。

今回は最終回!! 2017824日にDOMMUNEで配信されたトークプログラムのダイジェスト版後編です!!!!

CCJP理事のドミニク・チェンをホストに、ライター・編集者の大石始さん、編集者の高橋幸治さんをゲストにお迎えして、DOMMUNE宇川さんがトークに参加する場面もありつつ、前編ではアラレちゃん音頭からダンシングヒーローなど進化系盆踊りのお話や、きゃりーぱみゅぱみゅが音頭で国民的アイコンになった瞬間などのお話を、お届けしてきましたが、後編では今回の企画で録音された越中おわら節と、制作されたリミックスの試聴から始まり、ブロックチェーンの可能性、そして音楽の未来に希望を見る妄想トークをお届けします。

ぜひお楽しみください!

なお、番組に寄せられたツイートをtogetterにまとめていますので、こちらも合わせてどうぞ!
togetterまとめ→https://togetter.com/li/1147105

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(ドミニク)いやぁ、本当に話も尽きないのですが、今回録音した越中おわら節の元音源と、それをVIDEOTAPEMUSICさんとcolorful house bandさんにリミックスしていただいた曲を聞いていきましょう。この「越中おわら節」面白いのは、胡弓が入っているんですよね。胡弓が入っている日本の民謡とかってあるんですか?

(大石)結構珍しいんですよ。胡弓が「越中おわら節」で使われるようになったのは明治40年代以降らしくて。江戸初期には胡弓はいわゆる門付芸人、いろんな家を回りながら金品を受け取って生活をする芸人が胡弓を使って演奏をしていたっていう話はあるらしいんですけれど、その時代から演奏されていたものではないんですね。

(ドミニク)明治40年っていうと、日清戦争の10数年後ぐらいですね。

(大石)そうですね。だから、大きい時間で言えば割と最近のことですよね。

(ドミニク)こういう貪欲さも日本的な特異さなのかもしれないですね。では、お聞きください、「越中八尾おわら道場」による「越中おわら節」です。

(ドミニク)はい。こちらが原曲の「越中おわら節」でしたけれども、大石さんいかがでしたか?

(大石)いやあ、素晴らしいですよね。やっぱりこのテンポ感、すごくゆっくりしてるんだけども、しっかり確かなグルーヴがあって。踊ってる図は見えるんだけども、現代のポピュラー音楽の感覚からすると、ここまで遅い音楽ってなかなかないですよね。

(ドミニク)ありがとうございます。高橋さんいかがでしたか?

(高橋)独特ですよね。日本における弦楽器の受容みたいなことで言うと、弦楽器に幾つか種類があると思うのですが、バチで弾いたりとか、指で爪弾いたりとか。胡弓というのは、馬のしっぽの毛とかで擦るものですよね。以前本で読んだのですが、日本には弦を擦るタイプの弦楽器が、実は相当入ってきてるんだけれど、広まらなかったようですね。

(ドミニク)確かに、無いですよね。

(高橋)バチで弾くとか叩くと指で爪弾くというもの、例えば三味線中国から一回沖縄に入って、本土に入ってきてますよね。正倉院には大陸から伝わってきた楽器がたくさんあるけども、その中には馬の尻尾の毛で擦るタイプの楽器も実はたくさんあるらしいんですよね。入ってきてるんだけども、日本の風土には広まらなかったという歴史があるようですね。だから胡弓が入ってる音楽は、そういう意味でもとても珍しいんだと思うんですよね。

(ドミニク)これ自体がリミックス的という感じがしますね。

(大石)そうですね。エキゾチックな感じもしますよね。

(ドミニク)とても不思議な感じですよね。ちなみに「おわら節」の「おわら」ってどういう意味があるんですか?

CCDM16

(大石)「おわらい」からきてるんじゃないかとか、いろんな説あるらしいんですよね。ルーツがはっきりしなくて、謎めいた部分も多いんですけど、民謡自体そういうものが多くて。ただね、九州各地に「ハイヤ節」っていう歌があるんですよ。

(ドミニク)「ハイヤ」ですか。

(大石)「ハイヤ節」っていうのは、日本列島の民謡の大きな源流の一つなんですけど、その「ハイヤ節」に近いフレーズが「おわら節」に入ってるんですね。だから九州から北前船経由で富山に入ってきている部分が確実にあるんですよ。「おわら節」にも混血音楽的なところがあって、そこがおもしろいところですね。

(高橋)民謡っぽい節回しもあり、ちょっと義太夫のような感じもあったり、不思議ですよね。

(大石)そうですよね。八尾っていう土地は昔から義太夫や小唄が親しまれていたっていう話があるらしいですよね。そういう影響がもしかしたら出てるのかもしれない。

(高橋)なるほど。

(ドミニク)はい、じっくり原曲を聞いて、その背景も知ったところで次はリミックス曲に移りたいと思います。最初にVIDEOTAOEMUSICさんによる「Ecchu-Owara-Busi VIDEOTAPEMUSIC Remix」をお聞きください

(ドミニク)VIDEOTAPEMUSICさんによるリミックスでしたけれども、大石さん、いかがでしたか?

(大石)最高ですよね、これ。本当に素晴らしいと思います。最初と最後に水の音が入っていて、すごく印象的なんですけど、クリエイティブ・コモンズのホームページに掲載されているVIDEOTAPEMUSICさんのインタヴューによると、八尾の町に実際にVIDEOTAPEMUSICさんが足を運んだとき、路地の横をずっと水が流れていることが印象的で、それで水の音を録音した、と。

(ドミニク)フィールドレコーディングをしてるんですよね。

(大石)そういう事ってすごく重要だと思うんですよ。最初のほうでお話をした岐阜県の郡上踊りも、踊る人の下駄の踏み鳴らす音がリズム面においてすごく重要な役目を果たしているんですね。しかも大地を踏み鳴らす動きというのは悪霊を祓う意味合いもあるんです。お相撲さんの四股と一緒の、いわゆる悪霊祓いの足踏み、返閇がルーツにある。ただ、郡上踊りのCDを聞くと、その下駄の音って大抵入ってないんですよ。

(ドミニク)なるほど、それはちょっと残念ですね。

(大石)そうなんです。だから聞くと、なにかが圧倒的に足りないんですよ。

(高橋)実は重要な要素なんですね。

(ドミニク)それでは、最後の曲ですねcolorful house bandさんによる、「Ecchu-Owara-Bushi colorful house band Rebuildお聞きください

(ドミニク)はい。colorful house bandさんによるリミックスでした。これもやばいですね!色々好きすぎるポイントがあって、司会の役を放棄しそうになってますが(笑)いかがでしたか、大石さん。

(大石)これもまた、いろんな意味で面白いですね。さっきのVIDEOTAPEMUSICヴァージョンが元の歌に八尾の空間性などを加えていって世界観を広げていったとすれば、こちらのバージョンはラップが入っている。ここでラップしてるのはHIDENKAという素晴らしいラッパーですね。いわば「おわら節」を一つのトラックとして捉えているような感覚があるというか。いろんな言葉を新たに乗せていくって意味では、リミックスというよりもリビルドの領域ですよね。

(ドミニク)再構築ですね。

(大石)新しい曲が作られてるっていう感じがすごくしますよね。

(ドミニク)ありがとうございます。高橋さんはいかがでしたか。

(高橋)この「越中おわら節」が内包している色々なものを、それぞれ2組のトラックメーカーの方が、それぞれ違う形でうまく引きだしてるなという感じがしますね。

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(宇川)凄い良かったですね、今のトラックね。

(大石)最高ですね。

(宇川)彼岸を感じましたよ。

(ドミニク)彼岸を感じますよね。

(宇川)そこから先の涅槃すら感じますね。

(ドミニク)いやこのHIDENKAさんの声とリリックがやばすぎて、もう泣きそうになってるんですけど。

(全員)笑

(ドミニク)途中でコブシも入っている、コブシ入りのラップってちょっと聞いたことない。

(大石)そうですね。

(ドミニク)これは、ド名曲が2曲も出来ちゃったんじゃないですか!

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(ドミニク)SoundCloud上の、これはcolorful house bandさんのリビルド曲のページです。どのような条件かは、説明文の下のクリエイティブコモンズライセンスっていう部分をクリックすると出てきます。これはAttributionと言って、クレジットをちゃんと表記してさえくれれば、You are free to share and adapt、どんな場所でも自由に連絡とか全く必要なく使うことが可能です。だから是非これらの曲を日本中の盆踊りを踊るときに使っていただきたい。

(高橋)そうですよね。

(森)今回かけてませんが元の曲の胡弓のソロバージョンも収録していて、そちらもすごく良いと思います。素材としても魅力的で使いやすいものではないかと思っています。

(ドミニク)はい。どんどんリミックスしてもらって、21世紀ならではのお盆カルチャーがネットと実世界を交差しながら成長していってほしいです!

さて第一部は、一旦ここで区切らせていただいて、第二部がブロックチェーンの可能性という

(高橋)唐突な感じがしますね(笑)

(ドミニク)唐突感ありますね、ここまでのソウルフルな感じが一気に消し飛んでしまいそうですが(笑)。今回の主旨をご説明しますと、dotBlockchainというベンチャー企業がアメリカにあるのですが、彼らは音楽の権利許諾をブロックチェーンの技術を使うことによって、解決しようという人達です。Wiredでインタビュー記事が載っていたりもしていて、その創業者であるBenjiさんにインタビューを申し込んで、OKを頂いてたのですが、残念ながら急遽出張が入ってしまってキャンセルということになってしまい、少々変更となります。

ここからは、先ほど前半でいろんな民謡であるとか伝統芸能の話をしてきましたが、その世界観をもっとテクノロジーを使うことによって、こういうことができたら良いよねみたいな、妄想を広げるような話をしていければと思うんですね。

(高橋)そうですね。

(ドミニク)まずはこのお題で何か思うことはありますか?高橋さん。

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(高橋)音楽ということを、深く考えてしまうとですね、一つのエピソードですが、沖縄民謡の嘉手苅林昌さんという方がいらして。本当に名人でいらっしゃるんですけども、その方が自分のライブの時に、お客さんに向かって、歌を聞きにくるやつは馬鹿だって言ったらしいんですね。要するに歌っていうのは歌うものであって聞くものではないと。

(ドミニク)ああ、聴きに来てるんじゃない、音楽とは自分で歌うものだということですね。

(高橋)そうなんです。それをお客さんに向かって言ったっていうのが一つエピソードとしてあるようなんです。色々な見方考え方はありつつも、とても僕は音楽の、すごく根源的な部分みたいなものを言い当てているような気がするんです。

(ドミニク)なるほど。

(高橋)自分が参加してなんぼっていうところがあると思うんですね。演奏する人と聞く人、歌う人と聞く人が分化して別れてきたというのは、音楽が産業化していく中で、出来てきた区分ではないかと。だからそれが確立する以前は、自分で歌ってなんぼとか踊ってなんぼというものだったと思うんですよね。

(ドミニク)そう考えると、まさに創造の共有、クリエイティブ・コモンズだったわけですよね。

(高橋)そうなんですよね。だから自分で何かしらの形で活用する、使うものであるという事を考えると、労働歌みたいな文脈の中では、例えば替え歌が作られたりとかいう形で、その土地の人達に歌われてきたんですよね。

(大石)そうですね。レコードという記録媒体に記録されたり、譜面に書かれたりする前というのは、歌の形自体が固定していなかったと思うんですね。だから人によって、集落によって歌い方も違っていたわけだし、リズムもメロディーラインもそれぞれバラバラだったと思うんですね。それがレコードに記録されて、ラジオに乗ってしまうと、ひとつのスタンダードなスタイルになってしまう。民謡で言えば「正調」とか言われたりしますけれど、お師匠さんがその正調というスタイルをお弟子さんに伝えていくことで、様式がさらに固定していくわけですね。でも、民謡はそもそも異なる土地の歌が結びついたり、新しく作り替えられたりしながら歌い継がれてきた。リミックスというのは、固定された民謡の形をもう一回揺さぶって、改めて流動的なものにするものだと思うんです。

(高橋)そもそも持っていた、改変性や流動性というような自由度みたいなものをもう一回解放することで、音楽が再び活力をもてるのではないかという気がしています。

(ドミニク)ブロックチェーンの本質はいくつかありますが、一言で言うとユニバーサルな分散データベースなんですね。分散してるというのは、つまりある個人や企業や国家が独占できないアーキテクチャとなっていて、ノードと呼ばれる世界中の人たちが参加しているネットワークの中で、ハイパーレジャーと呼ばれている台帳が分散してあちらこちらにクローンがあるわけです。

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例えば、僕が高橋さんからお酒か何かを譲ってもらって、その報酬として0.04ビットコインとか払うとすると、その記録っていうのが世界中に分散するハイパーレジャーにクローンされていくわけです。そして、そのクローンしていくときに計算能力をとても使うプロセスが走り、計算がすごく大変なのでハックもしづらいっていうことなんですね。

だから、世界一セキュアなものを目指しているものではあります。過去には有名なイーサリアムっていうブロックチェーンは何回かハックされ、大損害を出したこともありますが、原理的には本当の意味での分散データベースというものができてきていると思います。
今、それが様々な人に想像力を掻き立てていて、例えば不動産の登記とかは現在、政府による認証を得ていますよね。それこそ役所とかで確かにこの土地はあなたのものですとかやるわけですよね。でも、そういった情報を全部ブロックチェーンに置いて共有することで一番セキュアで効率的な社会システムを作れるのではないか、ということをやり始めているベンチャーも出てきていますね。

その大きな流れの中で音楽に関係するところで言えば、著作権情報などをブロックチェーンに記録しておけば、今まで出版社とかを通して交渉したりしなきゃいけなかったところが中抜きできたり、自分が決めた一定の条件下での利用をあらかじめ許諾しておくということもできるのではないか、更にスマートコントラクトのプログラムを走らせれば、例えば僕が高橋さんの曲をリミックスして僕がお金を儲けると、僕が儲かった分から高橋さんに自動的に数パーセント還元されるような仕組みもできるのではないか、ということが考えられています。

(高橋)中間業者とかを介さずに個人間送金とかもできてしまう。

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(ドミニク)触っていいのかとかダウンロードしていいのかということを、エンドユーザーが意識せず、ただ聞くだけではなくて自由に使ったりする事が出来るようになる可能性があります。

(高橋)そうですね。ブロックチェーンは色々話題になっていますが、まだまだこれから使い方とか活用のされ方とかが開拓されていくところでもあると思うので、いろいろな文脈で捉えている人がいると思います。ビットコインとセットで考えている人もいれば、そうじゃない人もいると思う。今ドミニクさんの説明を聞いた人の中にも、なんかそのすごくサーベランスな、みんなで監視して誰がいつ何を買ったとかが全て記録される閻魔帳のようなイメージを持つ人もいるかもしれないですね。

(ドミニク)閻魔帳って良いですね(笑)

(高橋)もう良いこと悪いことも、みんな記録されていくように捉える人もいるかもしれないけれど。もっとポジティブに、今までのインターネットが「情報のインターネット」だとすれば、これからのインターネットは、「価値」をいかにちゃんとみんなで共有しながら上手く運用していくかというもの、と捉えていくことで、自分が使い、誰かに提供し、発表し、さらに誰かに改変されることを、とてもオープンな形で、そこに参加する個人個人で運用をしていくものに育つ可能性がある気がします。

(宇川)現在YouTube の動画をスキャンして自動検知するコンテンツIDってありますよね。例えば dommune ってリアルにこのシステムに晒されているのでが、DJが著作隣接権に触れる楽曲をプレイして、警告の上、2回バンされたら、アカウント剥奪されるっていうシステムがあります。その前提として、例えば誰かがここで北島三郎さんの「まつり」をかけたとして、権利元に連絡が行ったとします。その上であえて広告を表示させ、動画を収益化させて、そのコピーライトを現金として還元させるシステムっていうのは既にありますよね。

(ドミニク)そうですね。そのYouTube のコンテンツIDは、優秀で先見的な取り組みですね。コンテンツを配信してる人は権利を意識せずに使っても良いと、使っても良いんだけれども、ちゃんとYouTube がその広告収益を権利者に還元するよっていうことで関係者間の平和を保っているということですよね。

(宇川)そうですね。作詞作曲という意味での著作権に関しては、日本であればJASRACやドイツであればGEMAで権利の配分の取り組みがありますよね。そこからやっぱり一歩進んだところで原盤権の問題がありますよね。特に dommuneはDJカルチャーを推しているので、原盤権問題が常にグレーなのです。それにも関わらず、このような形でのびのびとやらせて頂いていますが(笑)、それはやはり、コマーシャルメディアとしての実績があるから、と言えます。例えばニューリリースがあったとして、DOMMUNEに出演することによって、AMAZONの売り上げが配信時間中に急激に伸びる。そうやって販促値がきちんと数字として現れているので、レーベル側もむしろ出稿してでもこのメディアに出演させたいと思ってくれている。そういった風通しの良さと新陳代謝があります。しかし、現代の日本の法律では、原盤権問題が常につきまとっているわけです。それもブロックチェーンが解決してくれるという話ならば、明日から師匠と呼ばせていただきます(笑)。

(ドミニク)そこは先ほど高橋さんがおっしゃっていたように、全部定義できるがゆえに、逆に雁字搦めになる部分もあるのではと思います。

(高橋)そこは問題ですよね。権利問題とかグレーにしているがために、豊穣に育ったカルチャーとかあったりするわけですよね。

(ドミニク)現代で言えばコミケや民謡というのもそうですよね。例えば江戸時代にJASRACがいたら(笑)

(全員)笑

(高橋)もう大変ですよね(笑)

(ドミニク)端唄とか小唄とか全部ね。今の音楽教室問題が江戸時代にあったら、長唄の寺子屋とか謡曲の習い本とか含めて、もう日本滅亡しちゃいますね(笑)

(高橋)本当ですね。全部摘発されちゃいますね(笑)

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(大石)やっぱり民謡や伝承歌ってやっぱりその土地だったり、あるコミュニティーで育まれてきた側面がすごく強いと思うんですね。今回のおわら節に関しては、オリジナルの演奏者の方が「自由に改変して良いよ」っていうことで、こういうプロジェクトが成立してるわけですよね。土地の人からこういう形で許諾を得れているというのは大きい。法的な許諾、改変する権利を獲得しても、土地のルールのなかではあまり効力を持たないこともあると思うんですよ。

(ドミニク)なるほど。仁義的なものが大事なんですね。

(大石)VIDEOTAPEMUSICさんのインタビューの中でも、伝統芸能に映像をつけてVJをやったら怒られたというような話をしてましたよね。民謡の世界でもそういうことはあると思います。いくらこちらが良かれと思ってリミックスしても、土地の人たちからしてみると、「こんな話、聞いてないよ」で終わりというか。そういう難しさっていうのはどこか孕んでるところがあると思うんで、今回みたいに演奏者の人から「好きにやって良いよ」とお墨付きを得てる物は、ある意味すごく安心だと思うんですよ。そういうものがないと、まず土地の方に一升瓶持ってお邪魔して、朝まで飲むところから始まるわけですよ(笑)。

(ドミニク)お神酒を捧げて、奉納して(笑)。

(大石)で、「君もなかなか飲むな、じゃあ好きにしていいよ」みたいな世界って、現代でもありますからね(笑)。

(ドミニク)それはブロックチェーンじゃ無理だなぁ。

(全員)笑

(大石)だから、そういう理解のある地元の演奏者の方が「好きにしていいよ」とオープンにしてくれる音源がもっと増えれば、民謡を新しく改変してリミックスするという行為ももっとやりやすくなると思うんですよ。

(ドミニク)リスペクトする気持ちでね。ただリスペクトを払う行為を自動化するのは語義矛盾な気がするんですよ。だから逆に情緒や人情が、すごく大事なパスワードになる、と言うと変な言い方になるかもしれないけれど。それは何か一周して面白い話ですね。

(高橋)音楽って記録されるようになって以降、普及という観点でいえば、たくさんの人に聞かれるようになったとか、ある種とても自由を得たと思うんです。でも、その裏では、記録され様々な権利関係などが出てきたことで音楽というものが不自由なものになっているとも感じます。だから一つのテストとしても、その不自由さを少しでも解放できる何か方策がないのかっていうことで、ブロックチェーンというものには期待したいっていう感じはあります。

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今日は、たまたま「越中おわら節」が取り上げられましたけれど。歌を歌う人がいなければなくなってしまう音楽ってすごいたくさんあるわけですよね。だから、どのように残すのかということもありますよね。

(大石)そうなんですよね。この瞬間にもなくなっている歌って確かにあって。僕もいろんなところを回っていると、地元の人たちから「いろいろと大変で、3年後はもう続けられないかもしれない」という話を頻繁に聞くんですよ。そこの歌や囃子を録音して記録として残すことはできるんですけれど、それを生きたものとして繋げていくにはどうしたら良いのか。それはもしかしたらリミックスもそのひとつの方法なのかもしれないですよね。

(ドミニク)お祭りのレシピは作れないんですかね。

(大石)お祭りのレシピ!

(ドミニク)つまり、マニュアルって言うと悪い言葉かもしれないですけれど、それが一回消えてなくなったとしても、やる人がいなくなったとしても、そのレシピがあれば、違う場所で、復活っていうか、再生できるっていうかね。なんか、そういう形式ってないのかなっていう。

(大石)そうですね。多分ね、歌われている言葉やリズムは、そうやって記録して再生することもできると思うんですけど、歌っていたこのお爺さんしか知らない個人史、地域の歴史みたいなものがやっぱり大事で、それが途切れることによって、一回歌やリズムが死んでしまうことってあるんですよ。そのあと誰かがその楽譜をもとに伝統を再生することはもちろん素晴らしいことですけれど、一回歴史が断絶してしまう部分はどうしてもある。歌が本来持っていた生命力をどういう風に維持するかが大事で、そのやり方は僕らも考えていかなくちゃいけないし、いろんなアイデアが出るべきかなと思いますね。

(ドミニク)VIDEOTAPEMUSICさんのリミックス曲の中での、川の音から環境の広がりを感じさせる方法や、先ほどの大石さんのお話での、郡上踊りでの下駄が石垣に当たる音をそのまま曲の一部と捉えるあり方などを聞いていると、デジタル音源でも、こういう音が鳴る場所を作るには、こういう環境が必要だと川を探し始めるとか、そういうアーカイブとアーカイブの対象が同じ次元にあるという作り方を模索できる気がしました。

(宇川)重要ですよね。やっぱりここで重要なキーワードは風土ですよね。

(ドミニク)ああ、風土ですね。風と土ですね。

(宇川)そうですよね。

(大石)ですね。

(ドミニク)越中には越中の風土があるし、関東には関東の風土があるし、それがローカリティーによって、勝手に自生的に生まれてくってのが、すごく美しいように思います。

(大石)そうですね。そもそも民謡自体がそういう形で、どんどん各地でローカライズされてきたものですからね。だから、おわら節は八尾の風土の中で生まれたものだし、その土地の風土、歴史や記憶みたいなものが、歌やリズムに現れてくるっていう事だと思うんですよね。

(ドミニク)だから、実在の空間が一種のニューラルネットワークのノードのようになり、点から点を移動するたびに違うプロセスがかかって別な物へと派生していく。それゆえに、人為的に変えようというのでなく、自然に生まれて変化していくところを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスも今後とも支援していきたいですね。

(高橋)改変がすごく自由に、あるルールのもとに出来るようになることが理想ですよね。たぶんクリエイティブ・コモンズのビジョンもそこだと思うんですけれど。

(ドミニク)そうなんです。今クリエイティブ・コモンズっていうのは契約とか同意みたいなスキーム、つまり意思表示なので、僕は勝手にこれを宣言しますと言えば、誰でも使えるようになります。しかし、それすらも人為的というか面倒とか、わざとらしいと感じて嫌がるクリエイターの人もいると思うんですよね。息を吸って吐くように、曲を歌って作る事が、ただ消え去るのではなく、アーカイブも同時にされていくというような、アーカイブや改変が自然化するってのが、僕の私見なんですが、理想だと思います。っていうのは、100年後ぐらいですかね(笑)。

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(ドミニク)さて最後に、ご感想をゲストのお2人に聞きたいと思います。大石さんいかがですか?

(大石)僕は基本的に土に近いところばかり掘り下げてきたので、今回のお話をいただいて初めてブロックチェーンの可能性を知ることができました。ブロックチェーンみたいな新しい技術と土に近いところの文化が組み合わさって、今後いろんなものが生まれてくるかもしれない。そういう可能性を感じれる、とてもワクワクする放送でした。ありがとうございました。

(ドミニク)大石さん、ありがとうございました!高橋さんいかがでしたでしょうか?

(高橋)クリエイティブ・コモンズの放送、今回2回目ですけれど。行きがかり上音楽の話が中心になりますが、音楽を色々な角度からひたすら考えたり、語るのはすごい大事だなっていう気がしますね。

(ドミニク)あまり日常生活でこういう観点では語らないですよね。

(高橋)3弾、第4弾もあれば、また呼んでください。

(ドミニク)ではこれは毎年、お盆の季節の恒例企画に出来るように。

(高橋)お盆と言えばクリエイティブ・コモンズ(笑)。

(ドミニク)はい(笑)お盆と言えばクリエイティブ・コモンズという風に、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン一同も頑張っていきたいと思います。

(宇川)そして、何か僕がまた最後にシメとして、傷跡を残さないといけないような雰囲気になってるんですけど(笑)、やっぱり「クリエイティブ・コモンズは土であり、風であり、dommuneは肥やしである。」ということが今日分かりました。つまりこのフロアは肥溜だということです(笑)。ありがとうございましたー。

(ドミニク)宇川さん、再び名言をありがとうございます(笑)そして最後にこの「越中おわら節」の原曲を提供していただいた八尾の庵さんたち、及び、VIDEOTAPEMUSICさん、colorful house band さん達に、改めてありがとうございましたと、心から感謝をしたい気持ちです。

改めて、大石さん、高橋さんありがとうございました!

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以上をもちまして、5回にわたって連載してきた『CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC』は終了となります!

今回の企画を進めるにあたっては、本当に多くの方からのご好意をいただきました!

庵さんをはじめとする越中八尾おわら道場の皆さん、リサーチ・録音などに多大なご協力をいただいたKENTARO IWAKIさん、remixをしていただいたVIDEOTAPEMUSICさん、colorful house bandの皆さん、DOMMUNEにご出演いただいた大石さん・高橋さん、宇川さんをはじめとするDOMMUNEの皆さん、CCJPの皆さん、繋がりを紹介をしてくれたり相談に乗ってくれたり資料提供などしてくれた友人の皆さん、諸々の企画を視聴していただいた皆さん、書き出すとキリがありませんが、本当に多くの方に感謝しています!

創造の循環が広がることを祈って!

文責:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.4

DOMMUNEトークプログラム『Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC ~伝統文化からCCライセンス、ブロックチェーンまで~』ダイジェスト版書き起こし(前編)

富山県富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表するという今回の企画。

vol.1,vol2,vol.3では演奏者、リミックス制作者のインタビューをお届けしてきましたが、今回のvol.4では2017824日にDOMMUNEで配信されたトークプログラムの模様をお届けします!!!!

CCJP理事のドミニク・チェンをホストに、ライター・編集者の大石始さん、編集者の高橋幸治さんをゲストにお迎えして、質・量ともに超人的なコンテンツを毎週月~木の夜に配信し続けている宇川直宏さん主宰のライブストリーミングチャンネルDOMMUNEにて多方面にわたるトークが繰り広げられました。宇川さんがトークに参加する場面もあり、全編に渡って濃い内容だったので、ダイジェスト版と言いつつ前編・後編に分けてお届けするボリュームになりました。ぜひじっくりお楽しみください!

なお、番組に寄せられたツイートをtogetterにまとめていますので、こちらも合わせてどうぞ!
togetter
まとめhttps://togetter.com/li/1147105
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番組スタート!!!

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(ドミニク)はい、こんばんはー。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのドミニク・チェンと申します。よろしくお願いします。『Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC ~伝統文化からCCライセンス、ブロックチェーンまで~』というお題で、2時間過ごさせていただくんですけれども。今日のゲストはライター・編集者の大石始さん、

(大石)はい、よろしくお願いします。

(ドミニク)よろしくお願いします。それと編集者の高橋幸治さんです。

(高橋)よろしくお願いします。

(ドミニク)よろしくお願いします。

(ドミニク)今日は、クリエイティブ・コモンズの枠ということで、大きくクリエイティブ・コモンズ を飛び出して、テーマは、民謡からリミックスそしてブロックチェーンまでを予定しているのですが、そこまでたどり着けるのか。

(高橋)すごいですね、はたしてまとまるのか。

(ドミニク)はい。まずはクリエイティブ・コモンズの簡単な説明からさせていただきますが、私たちはクリエイティブ・コモンズ・ジャパンと申しまして、クリエイティブ・コモンズとは、インターネット上でクリエイター自身が自由に作品に関する著作権の意思表示ができるシステムです。

これがクリエイティブ・コモンズのライセンスのページとなりますが、普通、利用規約とか法律の文章は、この100倍ぐらい長いテキストが、難解な法律用語で書かれてるんですけども。この「 You are free to share and adapt」は、自由に複製・コピーしてネット上でシェアしても良いし、リミックスしたり改変したりしたものを商用利用も含め使って良いという事を事前に認めているので、いちいち連絡したり許諾をとったりする必要がないということになります。

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このようなライセンスが、2002年にアメリカで生まれて、およそ15年を経って、最新の統計ではネット上に12億個以上のCCライセンスのコンテンツが存在しているようです。前回宇川さんが「クリエイティブ・コモンズ は大地、dommuneは給食」と最後に素晴らしい一言で締めくくってくれましたね。

(高橋)名言でしたね。

(ドミニク)ほんと、名言でしたよね。あの言葉が未だに脳内で響いていて、今年は、色々付け加えて「インターネットはぬか床」とか「サウンドクラウドは神社」とか、よくわかんないですけど(笑)。そういうことも含めて、色々お話していければと思っております。
では、今日の企画の説明について、企画担当の森さんと吉田さんからお願いしてもよろしいでしょうか。

(吉田)はい。前回の企画を昨年やりまして今回2回目です。先ほどもお話にあった宇川さんの名言にインスパイアされたところもありまして、今回はCCライセンスと民謡というところを取り上げさせていただきました。

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(森)はい、CCの大地を広げようという感じですね。

(吉田)そうですね。伝統文化って割とみんな興味があったりして、でも一方では日本で廃れていってるなっていう印象もある中で、自分たちがどういう風に関わっていけるんだろうって思って。そこに、CCライセンスがどういう風に活用できるかっていうことに特に興味があった、というところですね。

地方のお祭りとかに、東京の人が行って、今回で言えば富山県の民謡を取り上げさせていただきましたが、どういう風に触れれば良いのかという部分も、最初結構2人で話したり相談したりしていたところです。デジタルでオープンになってない文化を、クリエイティブ・コモンズの特徴であるリミックス性とかアーカイブ性を重ねていくと、どうなるんだろうところを今回チャレンジさせていただきました。

(森)なぜ富山なのかという話もあると思うんですが、これは本当に成り行きの部分もあります。今回リミックスをしているcolorful house bandに僕も参加しているのですが、そこで一緒にやってるDJ SAGARAXXさんと、この企画とはあんまり関係なしに民謡とかライセンスが自由になったもので制作できないかなという話を雑談でしていて。
SAGARAXX
さんが、先輩でDJKENTARO IWAKIさんというベテランの方が、地元の富山に戻って住んでいるよと。で、富山には色々民謡があるらしいよ、じゃあちょっと行ってみようといことで、去年の9月なんですけど、2人でIWAKIさんに案内してもらいながら、おわら節であったりとか、おわら風の盆の本番ではなかったんですが、実際に体験して、素晴らしいなと思いました。

その時、ちょうどクリエイティブ・コモンズで企画を行う話もあったところだったので、じゃあこれでやってみたらどうだろうというところですね。

(ドミニク)この方がおわら道場を主宰されているのですね?

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(森)そうですね。「越中八尾おわら道場」という演奏団体の方に今回は録音をさせてもらっています。今映ってっているのが、代表の庵さんという方ですね。

今回録音させてもらったおわら道場さんっていう団体は、八尾町の真ん中に聞名寺という町の中心のお寺があるんですけれど、そこで演奏している団体になります。この団体は町の外の人とか、県外の人とかも巻き込んで、ウェルカムな感じで、技術を習得したい人はどんどん来てくださいっていう体制でやっている団体になります。

(ドミニク)考えてみると不思議な流れですよね。「越中おわら節」にCCのスタッフが出会うところからして、オーソドックスではない企画です。後ほど皆さんも曲を聞いていただければ分かると思いますが、とても不思議な仕上がりで聞いたことのない音楽になっていて、改めて面白いなと思っています。

ここから大石さんと高橋さんと、お盆についてお話したいと思うのですが、まずは大石さんはお盆のプロなんですね?(笑)

(大石)お坊さんみたいですね(笑)。ま、盆踊りや祭りを追いかけながら、原稿の執筆、著作を書いたりしているという感じですね。

(ドミニク)旅と祭りの編集プロダクション B.O.Nですよね。

(大石)そのままですよね(笑)。カメラマンの妻とその名義でいろいろやらせていただくこともあります。

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(ドミニク)大石さんは、風の盆はご存知でしたか?

(大石)もちろんです。日本にもいろいろなお祭り・盆踊りがありますけど、その中でもトップクラスで有名ですね、風の盆は。ただ、実は僕まだ行ったことがなくて、ずっと憧れ続けていて。

(ドミニク)定番の盆踊りやお祭りもあれば、いわゆる奇祭や秘祭のような、激レアお盆みたいのもあるんですか?

(大石)奇祭ではないですが、有名なものでいえば、このあいだ徹夜踊りが終わったばかりの郡上踊り(岐阜県)。8月の半ばには徹夜で踊る期間がありまして、その期間は朝4時過ぎまで踊るんです。そこにはもう日本中のですね、踊り狂いの方々が集結するという。

(高橋)マニアが集結してくるんですね。

(大石)すごいですね。熱気が素晴らしい。

(ドミニク)それは盆踊りのマニア?それとも、盆踊りの達人に混ざって普通に騒ぎたい方や、踊りたい人も集まってくるんですか?

(大石)いろんな方がいらっしゃいますけれどね。何年も通い続けて完全にマスターしている方もいますし、ここ最近は郡上踊りの話が広がっているので、今年初めて来ましたという方もかなり多かったと思います。

(ドミニク)そうなると、盆踊りに参加する人口は増えていると思いますか?

(大石)僕の感覚的には増えてると思いますね。

(ドミニク)そこにはもちろん、大石さんの活動も寄与していると思うんですが、何か盆踊りを巡る大きな時代的な流れみたいなものは感じられますか?

(大石)盆踊りといっても、特定の土地で受け継がれてきたものもあれば、戦後になって都市部や郊外でコミュニティーが再編されるなかで新しく作り出された盆踊りもありますよね。さっき言った郡上おどりは前者に分類されるものですが、全国的には後者のほうが数自体は多いですよね。そういう盆踊りでかかっているのは東京音頭や炭坑節、それにアニソン音頭などです。

(ドミニク)おお、アニソン音頭!

(大石)有名なものだとアラレちゃん音頭やドラえもん音頭、オバQ音頭などですね。

(ドミニク)ありますね。アラレちゃん音頭。

(大石)そういった現代的な盆踊りのなかにも盛り上がってきているものもありますね。若い子がすごく増えてきてるものもある。まあ、盆踊りはインスタ映えしますから。

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(ドミニク)SNS映えですね。

(大石)浴衣を皆で着て、友達同士で写真撮る。櫓に提灯がかかっている光景は写真映えするし、盆踊りはやっぱりSNS向きだとは思いますよ。

(高橋)そう考えると、音頭というものが、色々とその時代その時代、様々なコンテクストの中で命脈を保ってますよね。

(大石)そうですね。実際今、何とか音頭って色々な形で出てる音頭って、進化とも言えますけれど、音頭って付いてるだけで、音頭でもなんでもないものもたくさんあるじゃないですか。

(高橋)実は何でもない(笑)

(大石)「音頭」という言葉が付けば音頭ってなってしまうぐらいの、すごくゆるい様式なんですよね、音頭って。だからこそ、音頭は時代の移り変わりにも耐えてきたとも言えると思うんですよ。

(ドミニク)大石さんは、民謡にフォーカスする前はどのような音楽に興味があったんですか?

(大石)もともと子供の頃から盆踊りで踊っていたわけでも、両親が民謡やっていたわけでもないんですよ。もともと旅をするのが好きで、それもアジア各地で現地の音楽に直接触れる旅をやってたんですよ。そのなかでワールドミュージックと言われる様なものであるとか、各地の大衆音楽にすごく惹かれるようになって。
その延長で2007年から2008年にかけて、1年間、中南米とかカリブとか北アフリカの方とか、いろいろまわってたんですよ。

(ドミニク)本当に世界中、満遍なくって感じですね。

(大石)そうですね。それでトリニダード・トバコでカーニバルに行ったり、ブラジルのサルバドールに行ったり、音の現場に触れたんですが、2008年に日本に帰ってきた時、モロッコのエッサウィラでグナワを体験したときのような感動を日本のどこかで体験できないんだろうか?と思ったんですね。それで最初に行ったのが東京・高円寺の阿波踊りでした。

そこでもうめちゃくちゃに感動してしまったんですね。高円寺の阿波踊りの存在はもちろん知っていましたけれど、ちゃんと触れたのはそれが初めて。で、その阿波踊りのビートを浴びた時に、ブラジルのサルヴァドールで体感したバトゥカーダみたいだ!という興奮がすごくあったんですよ。街全体が低音がぶわーっと揺れる感じであるとか。

(ドミニク)ああ、かなりでかい音に包まれる感じ。

(大石)もうすごい音ですね。

(ドミニク)低音も身体にビリビリ響くって感じで。

(大石)ですね。しかもそこいら中で演舞が繰り広げられているので、ある種カオスみたいなことになってる。そういったものって、ライブハウスやクラブで体験してきたものとはちょっと違う感覚だったんですよ。見る側聞く側も飛び越えたような、空間をシャッフルしちゃうおもしろさというか、圧倒的な祝祭感覚みたいなものがあった。「こういう凄いものがあるんだったら、実際にいろいろと現場で体験してみよう」というところから盆踊り・祭りをめぐる旅が始まったという感じでしたね。

(ドミニク)入り方が面白いですよね。日本人なのにブラジルを経由して高円寺を発見するみたいな。

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(大石)ただ、最初は「阿波踊りはブラジルみたいだ」とか、「河内音頭はジャマイカのキングストンみたいだ」とか、いろんなこと考えるわけですけど、まあ実際そんなはずもなくて、それぞれやっぱり違うわけですよね。

(ドミニク)それはそうですよね(笑)。

(大石)高円寺の阿波踊りは昭和30年代から地元の商店街の人たちが中心になって、地域振興の一環として始まったものですね。

(高橋)あ、結構古いんですね、あの高円寺のやつって。

(大石)そうなんです。ただ、本場・徳島のものをお手本として始まりながらも、徳島のリズムそのままではなくて、徐々に高円寺という地域性の中でまた別のものになっていくんですね。

(ドミニク)クレオール化していくっていう。

(大石)そうですね、ローカライズされていくというか。戦後の新しい文化であっても、そうやって土地の風土やそこで育まれてきた身体性だったり、いろんなものと結びついているんですね。そういうものが見えてきて、よりズブズブとはまっていったという感じはあります。

(ドミニク)2008年とおっしゃっていたので、もう10年ぐらい経ちますね。

(大石)そうですね。たった10年という感じではありますけどね。

(ドミニク)様々な国や地域の伝統音楽と共通項も見つけられたと思うのですが、大石さんから見て、どんなところが日本特有で面白いと感じてますか?

(大石)たとえば、東海地方や関東の一部の地域では荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」で踊る盆踊りが80年代後半から根付いていて、ある種伝統文化になってるんですよね。その盆踊りのように、その場で踊ってる方々がその土地の宗教性を意識していなくても、根底に念仏踊りであるとか、盆踊りが本来持っていた信仰的な部分であるとか、そういったものが横たわってることっていっぱいあると思うんですね。郊外でやっている夏のイベントとしての盆踊りも、そういった土地の風土や仏教以前の宗教性と地続きになっている部分がある。そこがおもしろいと思います。

(ドミニク)混ぜちゃうところですか。

(大石)そうですね。ボニーMっていうディスコのグループの「バハマ・ママ」っていう曲があるんですけど、関東を中心にした広い範囲の盆踊りでこの「バハマ・ママ」が踊られているんですよ。

(ドミニク)関東カルチャーなんですね。

(大石)面白いのが、この「バハマ・ママ」、振り付けのなかに炭坑節の振りが入っているんですね。

(ドミニク)炭坑節!

(大石)炭坑節の「掘って掘って~」という振りが「バハマ・ママ」のなかには取り入れられているんですね。あの動きってすごくシンプルで、転用しやすいんですよ。あと、いわゆる盆踊りの「ドドンがドン」っていう太鼓のフレーズがありますけど、あれもどんな曲調のものでもハメやすい。そういうフレーズであるとか体の動き、あと櫓を中心にしたその空間であるとか、そういうほかの何かに転用しやすい要素って日本の祝祭のなかにはたくさんある気がするんですよね。それもまた日本の祭り文化のひとつの特徴かもしれないですね。

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(ドミニク)面白いですね。炭鉱歌って、いわゆる労働歌なんだけども、多分、農作業とは違うビートとリズムに従う形の労働歌。

(大石)それがなぜかディスコと結びついて、当たり前に広がっている。すごく面白い現象だと思いますね。

(宇川)やはり考えるべきポイントは、日本特有の文化という前提であれば、もう一つ、ヤンキーカルチャーとの接続ですよね。

(ドミニク)確かに、よさこいとか。

(宇川)そうそう。どう思いますか?大石さん。

(大石)すべての盆踊り・祭りがヤンキー・カルチャーと結びついてるわけじゃないですけど、先輩から後輩へと受け継がれていくヤンキー・カルチャーの伝統は、地域コミュニティーの伝統的な形成のされ方とも同じですよね。盆踊りや祭りもまた、地域の先輩から後輩へと受け継がれていく部分が多分にあるので、どうしても繋がってきちゃうところはありますよね。ヤンキー的な繋がりのなかで継承されていくという。

(ドミニク)なるほど。コミュニティの構造が相似形になっているんですね。

(大石)そうですね。親和性が高いというか。盆踊りや祭りに限らず、地域の行事全般にいえることだとは思いますけど。

(宇川)あと、さっきアラレちゃん音頭の話が出ていましたが、「国民的ポップアイコンは、音頭に辿りつく」という推論を立証しようとしていたことがあって。それは、きゃりーぱみゅぱみゅの「なんだこれくしょん」というアルバムが出たタイミングで16000字の原稿を書いたのですが。アルバム1曲目の「なんだこれくしょん」は、中田ヤスタカさんのトラックに、きゃりーが熱唱した音頭なんですよ。

(全員)へー。

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(宇川)やはり、あのタイミングで、きゃりーが音頭をリリースしたのは、国民的なポップアイコンとして世の趨勢が迎え入れたタイミングだったからなんですよ。その証明として「なんだこれくしょん」は、オリコンで週間一位を獲得し、その年の日本レコード協会のプラチナディスクに選ばれて、日本レコード大賞の優秀アルバム賞も受賞してる。

(ドミニク)そこがある意味一つのゴールなんですね。

(宇川)そうなのです。例えばアラレちゃんに関わらず、オバケのQ太郎。そして僕ら世代はドラえもん音頭ですよね。例えば古くで言えば三波春夫さんや北島三郎さん。あとビートルズの「イエロー・サブマリン」には、そのオマージュとして金沢明子さんの「イエロー・サブマリン音頭」だってある。「ノリピー音頭」はすでにトリップチューンとして認識されていますが(笑)、当時は国民的アイドルでした。

(高橋)やっぱり、音頭はある程度のステータスに達しないと作れない(笑)。

(宇川)ステータスと言えますよね。

(大石)そうですね。

(ドミニク)音頭になるのが最高位なわけですね(笑)

(宇川)そうです、日本においては王座です。音頭は死者を供養する行事である、盆踊りのための音楽で独唱者っていうのはソリストで、言い換えれば司祭な訳ですね。だから、司祭になれる貫禄を身につけたキャラクターと言ったら、やっぱり既にある意味国民的アイコンである筈。

(ドミニク)なるほど〜。

(宇川)それで、現場の合いの手として、老若男女、ヤクザも商店街のおじさんもサラリーマンも幼児も参加する、シャッフルしたコミュニティがある。そこで重要なのが、「ハレとケ」という日本の伝統的世界観で「ハレ」の日を共有するための音楽が、音頭だと捉えられます。そもそも祭り自体が感謝と祈りの装置という概念で捉えるならば、「ケ」の日常を耐え忍んで、ようやく弾ける為の非日常の空間。「あげてこー」ってかけ声が聞こえそうですが(笑)もうほんとクラブカルチャーというか、パリピの精神ですよね(笑)。

(大石)そうですね。

(宇川)その中で身も心も委ねられる司祭として、それを先導する立場になれるのは、やっぱり国民的ポップアイコン。きゃりーぱみゅぱみゅがその地位に立てたということの証明として、「なんだこれくしょん」では1曲目が音頭だったと、僕は捉えたわけなんです。

(ドミニク)それは、その16000字の論文の主旨なわけですね。

(宇川)はい、そうです。ナタリーで読めるので、是非読んでください。

(ドミニク)それは素晴らしい論文ですね(笑)。

(高橋)宇川さんがおっしゃっていた、ヤンキーカルチャーやヤンキー的なマインドみたいなことで言うと、神楽ってあるじゃないですか。神に捧げる、お芝居的な踊りなんですが。いろんな地方に神楽ってありますよね。ある地方の神楽の公演を東京で見たことがあって。若い人たちが、ちゃんと継承してるんですよ。

それは強制されて嫌々やっているわけではなくて、若い人たちが、昔のままの状態のものを、多少アレンジは入りますが、本当に率先して継承してるんですよね。その演目なんかはそのスサノオが大蛇を退治するような展開の物語なんです。

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(ドミニク)ヤマタノオロチですね。

(高橋)これが単純に派手でかっこいいんですよ。

(ドミニク)なるほど。モチーフとしてかっこいい。

(高橋)物語自体がとても面白いし、いろんな衣装を身に付けたり。だから単純に若い人たちに自分もやりたいって思わせているんじゃないかと思います。

(大石)福岡の筑豊のほうにすごく渋い盆踊りがあるんですけど、太鼓と歌だけでやる古風な盆踊りで、しかもやってるのは全員若い人たちばかりなんですね。その団体の代表の方、30代前半ぐらいの方に取材したことがあって。「どうして盆踊りを始めたんですか?」と聞いたら、「先輩ですごくかっこいい太鼓打ちの人がいた」と言うんですよ。で、僕も叩いてみたいと思って始めた、と。

高橋さんがおっしゃった神楽のように単純に格好よくて継承されていく部分もあるだろうし、「あの人の太鼓の叩き方がかっこいい」「あの人の神輿の担ぎ方がかっこいい」みたいに素朴なところで繋がってく線っていうのもあるんじゃないかなと思いますね。

(ドミニク)それは、とても良い話ですね。去年、番組の時に原雅明さんとお話していて、LAのミュージシャンで2030代なんですが、やたらめったら50年代60年代のジャズに詳しいと。

でも、それは全部原盤で聞いてたのではなくて、全部YouTubeで見ていて(笑)。名プレイヤー達の演奏を何回も何回も見てるうちに、自分でもやるようになったようです。だから今で言えばInstagramInstagramストーリーがきっかけで、太鼓打つようになった人などが出てくるかもしれないわけですよね。

(高橋)そうですね。意外なところに、その継承の導線っていうのが案外あるもんだなっていう。

後編に続きます!!!!!

文責:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

CCライセンス・バージョン4.0 およびCC0イタリア語版の公開

このたび、クリエイティブ・コモンズでは、CCライセンス・バージョン4.0 およびCC0のイタリア語版を公開しました。
CCイタリアが中心となり、CCスイス、およびCC関連組織のNexa Center for Internet & Society の協力のもと、イタリア語版を完成させました。英語版4.0起案のときからクリエイティブ・コモンズ本部のリーガルチームと密接にディスカッションを行ってきたCCイタリアですが、その結果、今回の翻訳にあたっては齟齬を最小限に抑えられました。
翻訳のプロセスについての詳細は、Creative Commons wikiをご覧ください。

(2017年7月31日付記事https://creativecommons.org/2017/07/31/annuncia-la-traduzione-4-0-della-licenza-italiano/(by Sarah Pearson)より)

(担当:松丸)

バッセル・ハルタビル記念基金を設立

悲しいお知らせですが、私たちの友人でありCCシリアのプロジェクトリーダー、そしてオープンソースの開発者であるバッセル・ハルタビルが、先ごろ、シリア政府によって処刑されました。ご冥福をお祈りするとともに、バッセル・ハルタビル記念基金を設立したことをお知らせします。
同基金は、遺族の要望のもと、フリーカルチャーの熱心な推進者であったバッセルのスピリットを受け継ぐべく設立されました。CCも基金に賛同し、1万ドルを寄付しました。また皆さんからの寄付を広く歓迎します。
同基金への寄付は、アラブ世界におけるコミュニティ構築やリーダー養成プロジェクトなどに使われます。また、新しいクリエイションと歴史的文物のデジタル保存や共有、リミックスのサポートのためにも使われます。いずれもCCの、そしてバッセルが関わった他のコミュニティのミッションと深く関わるものです。
基金の詳細はBassel Khartabil Memorial Fundをご参照ください。
(担当:松丸)