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バッセル・ハルタビル記念基金を設立

悲しいお知らせですが、私たちの友人でありCCシリアのプロジェクトリーダー、そしてオープンソースの開発者であるバッセル・ハルタビルが、先ごろ、シリア政府によって処刑されました。ご冥福をお祈りするとともに、バッセル・ハルタビル記念基金を設立したことをお知らせします。
同基金は、遺族の要望のもと、フリーカルチャーの熱心な推進者であったバッセルのスピリットを受け継ぐべく設立されました。CCも基金に賛同し、1万ドルを寄付しました。また皆さんからの寄付を広く歓迎します。
同基金への寄付は、アラブ世界におけるコミュニティ構築やリーダー養成プロジェクトなどに使われます。また、新しいクリエイションと歴史的文物のデジタル保存や共有、リミックスのサポートのためにも使われます。いずれもCCの、そしてバッセルが関わった他のコミュニティのミッションと深く関わるものです。
基金の詳細はBassel Khartabil Memorial Fundをご参照ください。
(担当:松丸)

2018年CCサミットはトロントで開催

来年4月13日から15日まで、昨年に引き続きカナダのトロントで2018年CCサミットを開催します。ボストン、リオデジャネイロ、ソウルなどでのCCサミット経験を踏まえ、より充実した内容でお送りします。500人以上の参加が見込まれ、Global Network Councilの初会合も開かれる予定です。追って準備委員会が始動しますが、2018CCサミット開催のためのアイディアがあればどうぞお寄せください。

(2017年7月21日付記事https://creativecommons.org/2017/07/21/summit-2018-announcement/より)

(担当:松丸)

【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.3

音が持つ「質感」という名のDNA

富山県富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表するという今回の企画。
vol.1では「越中おわら節」を録音させていただいた「越中八尾おわら道場」の代表、庵進さんの、vol.2ではリミックスを制作していただいたVIDEOTAPEMUSICさんのインタビューをお届けしました。

今回のvol.3では録音した「越中おわら節」の一節をターンテーブルでループさせながら、その上に楽器とMICを重ねていくことでサウンドを再構築したcolorful house band、その中心人物であるDJ KENSEIさんのインタビューをお届けします。制作過程のお話や、サンプリング、土地と音楽の関係、CCライセンスの今後など、ぜひ音源を聴きながら、お楽しみください!

colorful house band / Ecchu-Owara-Bushi colorful house band Rebuild

越中八尾おわら道場の演奏、VIDEOTAPEMUSICによるRemixも含む企画全体はこちら

colorful house bandプロフィール

colorful house band_Fotor

毎月第1水曜日、青山蜂にて行われている『colorful』にて毎回SOUND LIVEを繰り広げている、パーティーの『house band』と言える面々。
メンバーはDJ KENSEI (Turntable&Effect)、DJ Sagaraxx (Visual) 、HIDENKA (Mic) 、ケンゴコバヤシ (Synth)、Norio Fukaishi (Bass)、YASUHIRO MORI (Guitar)
ここ最近のcolorfulでのSOUND LIVEは、DJ KENSEIのアジア旅行をきっかけにタイ~インド~アフリカ~日本まで各地の様々なルーツミュージックにフォーカスし、現代のサウンドと融合させた新たな”エレクトリック・ヴァージョン”をイメージしたものとなっている。

DJ KENSEIプロフィール

DJ KENSEI2

DJ/プロデューサー/ラップトップミュージシャン/ビートメーカー。
長い現場経験とそこで培われたキャリアによって、自然にクロスオーバーしながらも新鮮で洗練されたDJスタイルを真化させていくDJ Kensei。
ヒップホップを起点に80年代後期から現在に至るまで、常にDJを続けながら国内外の様々なレーベルからクラシックな作品やオフィシャルミックス等をリリースしている。ソロ以外に、Indopepsychics、Final Drop、Nude Jazz、Outerlimits Inc、Kemuri Productions、Coffee & Cigarettes Band、OMA’N’SEI(w/ Suzuki Isao)など、プロジェクトの中心として幅広く活動し、多彩なイベントに出演。
ミュージシャンとのライブを積極的に行い、「生音」と「DJ」から生まれるオリジナリティ溢れるユニークなトラックを多数リリース。Coffee & Cigarettes BandとしてレーベルElectric Rootsを主催、ネットラジオdublab.jp内でも同名の番組Electric Rootsを担当。
2016年にはオフィシャルミックス「Melancholic Jazz Moon BLK Vinyasa Mix by DJ Kensei」(Introducing)、タイ・ラオス滞在中に制作した自身初のサウンドスケッチビートテープ「Is Paar / DJ Kensei Beat Tape」(Mary Joy Recordings)をリリース。

第3回 DJ KENSEIさんインタビュー

2017年8月13日15:00 渋谷 某会議室にて収録
インタビュアー:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)
(森はcolorful house bandにも参加しています、、)

INTERVIEW DJ KENSEI 1

今回の制作のお話をはじめ、様々なお話をお伺いしました

まず、最初にcolorful house bandの説明をさせてもらったほうが良いかなと思うのですが、毎月第一水曜日に青山蜂でやっている『colorful』というパーティーでライブをしているメンバーですよね。

そうですね。自分がターンテーブルをやって、森君がギターを弾いて、ケンゴ君っていう十三画っていうグループのパーカッションとかMPC、リズム系の人が自分のFADERBOARDを使って(笑)。cat boysっていうグループのNO RIOっていうベーシストがベースを弾いて。あとラップ兼語りでHIDENKA。いつもライブやる時は映像も流してて、それをSAGARAXXが出してます。

この前までは、COFFEE&CIGARETTES BAND(DJ KENSEI & DJ Sagaraxx) feat.で参加してるメンバーを連ねてという名義だったんですけど、今回から名前を変えた形にしてますよね。

元々colorfulの前身のDREAM CATCHERっていうパーティーがあって、JLDという名義で僕とウッドベースのM.A.B.O.っていうやつを中心にライブをやり始めて、、、2〜3年やっていたのですがM.A.B.O.が事情があって出れなくなって。それで、パーティー名をcolorfulという名前に変えて、最初C&Cを中心にリニューアルしました。
colorfulをやっていく中で次第にいろんな人が自然に参加してくれるようになっていって。過去にクロマニヨンのTSUYOSHI,TAKUちゃん、BASSのシンジュ、VOでSOUCE81、SAXのMOTOHARUやPETの黒田卓也君とかも参加してくれたました。他にも色々、、
以降自分がインドに半年くらい行ってる間にお休みしていて、戻って来てから今のメンバーに落ち着いた感じです。メンバーも変わって表現も変わって来たのでこの名義の方が自然かなと….

なるほど。いろんなところから、メンバーが自然と集まってcolorful house bandができたということですね。

それぞれが持ち合わせる音の質感

音の質感に特徴がある人が好きだったりするんですよね。技術的なものよりも出てる鳴りというか。音質に特徴があるっていうことに、自分的には結構こだわっています。

音の質感っていうのはどういうことですか?

僕は時代とか場所がわからないような質感の音楽が好きで。サンプリングが好きなのかもしれないですけど。時代とか場所とか、そういうのを超える感じがするじゃないですか。質感でそういうところが分かるというか。音に入ってる空気とか。

音質にも情報が色々と入っていて、そこからイメージが湧いてくる感覚ですか?

音質に情報が凄く入ってるかもしれないですね。使うソフトもハードもなんとなく画一化されてきていると思うんですけれど、でも質感だけはその人が出ると思うんで。
質感から受けるインスピレーションはかなりありますね。空気、匂い、使ってた機材やその国や場所や時期、作り手のルーツやフィーリングとか。
自分がDJで色々な質感のソースをかけているというのもあるけど。

質感は人それぞれ持ってるとして、音楽制作を長く続けていく中で変わっていくものなのか、それとも変わらないものですか?

質感自体は時代や経験で変わっていくとは思うんですけど、やっぱその人から出るものは、そんなに変わらないのかもしれないですね。DNAみたいなもんですね。音にはすごい情報量が入っている。シンプルなフレーズにも。

モーラム経由、再認識した民謡のグルーヴ感

DJ KENSEIがタイを旅して制作したビート集より、Khane Whistle Reprise (JRP のテーマ)のPV

最初に、富山の音を録音してリミックスする企画を聞いた時の感想は何かありましたか?

民謡自体はすごい興味があったんで。昔から沖縄の民謡とかはすごい好きで趣味でレコード集めてたり、昨年タイに行って現地でモーラムとか聴くようになってそれを肌で感じて、なんか民謡感あるなって、それでメロディーやグルーヴ、音にイントゥしてる感じや楽器の持つ響きとか、、日本のグルーヴというか民謡の良さみたいなのを再認識したというか。頭でじゃなくて感覚的に良いなって思えるようになって。時代的に体が求めてるところもあるかもしれない。
その中でも、おわらって特徴があるというか、使ってる楽器にも特徴があるんで興味はあったんですけど。でも、自分でそれを体験してないっていうのが、そこがどうかな、と感じてはいたんですが、、、

でも、森君が録ってきた音源をみんなで聴いた時に全員がこれいいねってなって。皆でその音を聴きながら音を出したらいい感じになったので、いけそうかなって思ったっていうのが、感想ですかね。

民謡が気になったのは、タイ、モーラム経由なんですね。

それまで、日本にある古い音楽の良さをあんまり見出せなかったんですけど、モーラムを現地で聴いた後に民謡を聴いたら、すんなり入れたっていうのがあったんで。それがどうしてかっていうと、うまく説明できないですけど。現地でその空気を感じながら聴くのがいいんだろうね。

(注:モーラムはタイの東北部・イサーン地方の伝統音楽。元々は物語を抑揚をつけて歌うように語る芸能で、ビートが延々とループするダンスミュージックでもある。モーラムについてはsoi48というDJユニットが超絶詳しいので、興味のある方は彼らの書籍やブログをチェックしてみてください。)

モーラムを聴くことによって何か視点というか感覚がちょっと変わるみたいなところがあったんですかね。

なんだろう、プリミティブなものを求めてたのかもしれないですけどね。あと何度も言うけど地元で聴く体験はより刻まれるし、体に入るよね。

ローカルの想いを自分のフィルターに通すこと

今回は制作期間を決めていたこともあり、おわらを体験せずに作って頂いたのですが、サンプルを使う時は、自分で体験するなどして一度自分の中に入れたいっていう感覚があるんでしょうか?

やっぱり民謡って、ちょっと自分の中で敷居が高いイメージがあって。地元の人の想いとかいろんなものがあったりするんで。理解のない感じで、それを自分のものとして取り入れることに対してちょっと抵抗があったというか。
ヒップホップとかそういう音楽もローカルなコミュニティーの人たちが生み出した音楽だったりして。それを他人が簡単に拝借することに対して、ちょっと抵抗があったんですけれど。勘違いみたいなのは嫌だなと思って。
自ら経験したりその空気を知ったり、それを自分のフィルターを通してっていう方が自然かなとは思ったんだけれど、森君も何度も足を運んでるし、(音源を聴いた時)メンバー全員いいねって言ったのが、やっても良いなって思えるきっかけになったと思います。

INTERVIEW DJ KENSEI URANO 1

『colorful』でのSOUND LIVE
photo by Daisuke Urano

この録音は、FADERBOARDでリズムを出しているのもあるし、手の感触があるというか。例えばリミックスだとドラムブレイクを入れて作る方法とかもあるとは思うんですが、そういうのとはちょっと違う感じで元のグルーヴが活かせたかな、と感じています。

そうですね。おわらのグルーヴにメンバーが入ってる感じですね。
胡弓のメロディーも印象的だから、メロディーでアプローチするっていう方法もあったんで、そういう意味ではブレイクビーツとかもありなんですけれど、なんかこの揺らぎが一番グッときたっていうか、今回はそういう風になった感じですかね。

(注:FADERBOARDはシンセとドラムの音源を内蔵した機材。外部音源のサンプリングも可能。一般のシンセやドラムマシーンであれば、鍵盤やパッドで音を出すタイミングをコントロールするが、FADERBOARDはDJミキサーと同様のFADERで音の出力をコントロールする、このため独特の発音タイミングとニュアンスになる。)

音のズレ、うねり、揺らぎ

録音した時にはKENSEIさんがターンテーブルを使って元の音源を操作してるので、かっちりしたループとは違う感じになってますね。

みんなの演奏も聴きながら入れるっていう、だから全員の音がうねるというか。いい揺れというか、揺らぎというか。

タイミングが完全に正確なわけではなくて。ズレというか、かっちりしたものとはまた違うものになったのかなと思います。

同じようだけど、全然違うのかもしれない。その揺れが全編にわたって元になってるんで。揺らぎが良いグルーヴ感になってるっていうか、打ち込みだけではなかなかできないものですね。

そうですね、元の演奏も揺れてるっていうか。

クリックを聞きながらやってるわけじゃないですもんね、おわらも。そこはなんかちょっと表現できたのかもしれないなと。

録音のときなど、ターンテーブルを回してる時はどういう音を一番重視するというか、意識的にどこかに集中するのでしょうか。

それは音質と、その「間」とかですかね。

INTERVIEW DJ KENSEI URANO 2

『colorful』でのSOUND LIVE
 photo by Daisuke Urano

意識する、みんなの「間」

特にこの楽器ってわけじゃなくて、全体的な空間ということでしょうか。

ビートがループされてて、抜いて、また出すっていうと、ビートは一定でループされているものを抜いてまた同じ拍で入ってくると思うんですけど、抜いた時に、一回止めてみんなのタイミングで出すと、一定ではなくなるんですよね。みんなの突っ込んだり、レイドバックしたりっていう所をすごい意識してますね。
あとはみんなの音が馴染むように質感を聴きやすくするっていうのはすごい意識してますね。サンプリングなんで、音が浮かないようにとか、生楽器とちゃんと馴染ませたいなっていうのはあって。
以前はもう少し技術的なところに意識がいってた時期もあるんですけど。何かそこよりもっと重要なことがあるなっていう。そっちの方が結構ハートにダイレクトに突き刺さったりするんですよね。

日常の中のジェームスブラウン

今までに、民謡以外にもサンプリングやリミックスなどの際、気軽に扱いにくい素材とかはありましたか?

僕はヒップホップをやってきてるっていうのがあるんで。今はまた状況も変わってきたけど、自分の世代とか、例えばジェームスブラウンの曲を黒人が使うのと、自分が使うのは違うじゃないですか。子供の頃から親が聴いてて慣れ親しんで生活にあるとか、ラジオでずっとかかっててとか、それってなんか自分のルーツだったりするから自然にそこにいってると思うんで。もちろん使ってもいいんだけど、自分は知れば知るほど扱いにくかったかな。JB使うだけでもうかっこいいってのもあるけどね(笑)。

なるほど。

若い頃はそういうところあったんですよね、自分も。やっぱそういうのに憧れるじゃないけど、それ使えばかっけーみたいなあるんだけど、自分との温度差みたいな、自分がまだそこになんかこう馴染んでないみたいなのはありましたね。

民謡はやっと自分の年齢とか、いろんな音楽聴いてきた経験とかから、なんか自然に、違和感なく同じ温度で聴けるようになったのが、やっと最近そういうのがあるんで。

サンプリングやコラボレーションのセレンディピティ

制作される時はサンプルを使うことが多いとは思うんですけれども、サンプリングの魅力とは?

そうですね。空気が入るのが良いですよね。その空気ってやっぱりその土地とか時代とかそのコミュニティとか関わってる人とか情報だったりするんで。

KENSEIさんは、このバンドもそうですけど、いろんな人とコラボレーションされてるのが多いなっていう印象があるんですけれど、いろんな人と作った方が面白いものが出来るという感じでしょうか。

個人でできるものには、意外と限界がある気がしてて、いろんな人が関わることによって、できるものが自分の想像を超えてきますからね。コントロールしきれないっていうのもまた面白いし、作っていくプロセスも好きなんで。自分の描いてる世界を明確にしていくというより、コラボレーションしていくうちに、自然とそっちの流れになっていく感じが好きだったりしますね。やっていく中で方向性が決まってきた方が、みんなも自然にそこに向き合えるのかなみたいなのもあるんで。

音に込める、共有した時間と場所の空気

INTERVIEW DJ KENSEI 2

場所や時間と音楽制作についてもお伺いしました

タイとかインドとかもそうですけれど、いろんな土地で制作をされていたり、今回も京都にいるKND君に協力してもらって、実際にKND君の家に行ってミックスしたんですが、場所を移動して作ると、そうでない時とは違いますか?

より思いが強くなるというか。例えば、東京とかで生活してると、寝る前に今日はこんな一日だったな、みたいな回想はなかなかしないですよね。だけど地方行くと、ぼーっとしたりして、今日はこういう一日だったなって考えたりする。そうすると、その曲に対して考える時間とか、客観的にも見れるようになったりとか、向き合ってることを実感しますね。

(注:KNDは京都在住のミュージシャン、サウンドエンジニア。Final Drop、SOFT、aMadoo、UCND等での活動のほか、エンジニアとしてもDachambo、Nabowa、Coffee&Cigarettes Band、Based On Kyoto等々、多数の作品に関わっている。)

日常とは違うところに行くから落ち着いてというか、違う視点で見れたりとか

同じ時間を共有してる感じもあるんですよね。森君と一緒に京都行ったのもそうですけど、東京で会うよりも共有してる感じがあって。そこはその空気も入れてみたいところがありますね。

そうなんですね。今回の曲も京都に行ってミックスしなかったらまた違う感じになってたかもしれないですね。

京都じゃなきゃ駄目だっていうわけでもないんですけど、KND君のところじゃないとあの感じは出ないみたいのはありますね。で、森君とその後お祭りに行けたりとか。

そうですね。下鴨神社のみたらし祭っていう。世界遺産の神社があるんですけど、その奥にある池にみんなで入って、膝ぐらいまでなんですけど入って、ロウソクを納めてっていう。

涼しげなね。ああいうことを共有することでリミックスをやった時の記憶としてインプットされるというか。日常に追われてると結構、音楽に対する思いが消費されてる感が、特にDJとかやってると、出てきがちなんで、強制的にそういう環境に身を置くというのもあるのかもしれないですね。

改めて出来上がった音を聞かれてどんな印象でしょうか。

なんか遠い記憶を、呼び起こす感じありますよね。あと何だろう、晩夏、そういうのを思い出しましたね。

夏が終わっていくような感じがしますね。季節的にも風の盆は9月の1,2,3ですけど、ちょうどその時期の雰囲気っていうか。

そう、だからなんか、直球なものだけじゃない色んな夏があって。こういう夏も表現できるような年齢になったのか、でもきっと、みんながいたからそうなってると思うんですけれど。

意外と!?知られていないCCライセンス

今回はクリエイティブ・コモンズの企画で、CCライセンスをつけて出させてもらっているんですけれども、CCライセンスを付けてリリースって事に関してはどう思われますか?

自由に素材を使って、みんながやりたいように、なんか感じたものを作って広がっていくっていうのは良いと思うし、きっかけになると思いますね。
ただ、そのきっかけになるものを作る人は、責任が違うっていうか、そういう意味で自分は現場に行きたかったとかそういうのはあったんですけど。それ以降っていうのは、みんな自由に料理して、音楽だから楽しんでもらえれば良いんじゃないかな。

これ聞いた人がちょっと自分で使ってみようかとかってなると本当に嬉しいなと思います。クリエイティブ・コモンズの活動に対しての印象は何かありますか?

僕の周りで言うと、サンプリングを好きな人はとても多いんですが、ただそういう手法を使ってる人に対して、そこまで認知されてない気がする。

CCライセンスが使われやすい分野もあるんですけど、音楽分野ではそこまで広がらないというか。

ヒップホップとか、サンプリングカルチャーみたいなのもあるじゃないですか。ダンスミュージック、ハウスとかもそうですけど、CCライセンスはそこに意外と知られてないというか、どんな音源があるのかも、あんまりみんな分かってないのかもしれない。
でも、あんまり整頓されすぎてもどうなのかっていうところもありますからね。100円コーナーのゴミみたいなものから見つけてきてサンプルする楽しみ方というのもあるし。

CCライセンスと民謡の親和性

interview-dj-kensei-3.png

CCJPの活動やCCライセンスの印象などについてもお話していただきました

音楽分野だと、これはOKだけどこれはNGかなみたいな、なんとなくの感覚があってそれでやっていけてるから、別にCCライセンスがなくてもいいのかな、みたいには思ったりはするんですが、いかがですか?

その曲を発表する場所でも違ってくるよね。堂々と使えた方が良いんだけど、本当に好きだったらお金を払う人もいるし、それがリスペクトだったり。だけど逆にライセンス料が高すぎて払えなくて弾き直す人もいるし、、CCライセンスは法律的な部分を気にしないでできる意味ではいいんですけど、気にしないものを使いたいか?みたいなところもあるし、、、ヒップホップのサンプリングとか、もともとグレーではあるからね。ただそれって生まれるべくして生まれてるからね。自然なプロセスから生まれるものは美しいし。工夫して使うのがいいんじゃないかな?

あとは祭りとか民謡なんかの文化ごとライセンスして欲しいですね。

そうですね。文脈も込みで音だけに限らないライブラリーみたいのができたら面白いかもしれないですね。その土地の風土が理解できたり、町のことを知れたり、音なども取れるみたいなものが。

コンスタントに何年かこういうプロジェクトをやり続けないと、なかなかワンショットだと難しいですよね。是非続けてもらいたいなと思いますね。でも大石始くんとかね、そういう民謡をサポートしてやってる人たちが、どんどん協力して、少しずつは広がってる気がしますね。俚謡山脈という人たちもいるし。いろんな人が、それぞれの魅力を語った方が良いと思うんですよね。
まずは興味を持って、その存在を知るって言うことが大事だったりするからね。日本中の民謡が全部クリエイティブ・コモンズにあったらいいですけどね。

(注:大石始は編集者、ライター。著書に「ニッポン大音頭時代」「ニッポンのマツリズム」など。連動企画であるDOMMUNEでの8/24の特集番組にも出演)
(注:俚謡山脈は民謡のみでフロアを揺らすDJユニット。いわゆるダンスミュージックのもつビート/グルーヴ感ではなく、素の民謡のもつグルーヴ感をクラブで表現している稀有な存在。)

今後、それができたら面白いと思ってます。

ライフワークにした方が良いんじゃないですか(笑)?そのアーカイブ作ったらもう国宝級じゃないですか。それは日本で残すべきものなのかもしれないですね。北から南までね。

日本の人でも外国の人でも音楽で使ってみようっていうのも良いだろうし、そこからさらに調べてみようとなったりするのも面白いかもしれないですね。

まだ海外の人は存在すらあまり知らないんじゃないですかね。僕の場合すぐヒップホップに置き換えちゃうんだけど、ヒップホップも地域性があったりして、南部でトラップが生まれたとかさ。マイアミでベース・ミュージックが始まったり。日本でもその土地の風土からストーリーがあってこういうものが生まれたとかっていうのは案外知らないんじゃないかな?
自分もそうだし。同じ三味線や囃子なのに北と南じゃ全くテンポも弾き方も歌い方も違う。当たり前なんだけど。民謡はさ、ストリート感、生活感、水商売感(笑)あるよね。ベタだけどソーラン節とかニシン漁の話だったりするじゃないですか。その地元の話っていうか、全国区なローカル感。今はそういうリアルな感覚の音楽を皆欲っしてたりしますからね。

貴重なお話、ありがとうございました。

文責:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

8/24(木)19時よりDOMMUNEにて特別番組の配信が決定!!!!!!

8/24(木)19時よりDOMMUNEにて特別番組『Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC ~伝統文化からCCライセンス、ブロックチェーンまで~』の配信が決定しました!

民謡「越中おわら節」の録音を行いそれを元にリミックスも制作、両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表、さらには演奏団体、リミックス制作者のインタビューも連続して公開していく今回の企画、『Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC』
締めくくりとなるポイントとしてDOMMUNEでの特別番組の配信が決定!
番組までに公表した音源、インタビューなどを題材にしつつ、そこに留まらない幅広い視点でのトークが繰り広げられます!
cc-dmn 2X
出演:
ドミニク・チェン(早稲田大学文学学術院・表象メディア論系准教授/株式会社ディヴィデュアル共同創業者/NPO法人コモンスフィア理事)
⼤⽯始(ライター、編集者/旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」所属)
⾼橋幸治(編集者/元「MacPower」編集長/日本大学芸術学部文芸学科、横浜美術大学美術学部非常勤講師)

ビデオ出演(録画):
Benji Rogers (dotBlockChain Media CEO & Co-founder)

諸事情によりBenjiさんのビデオ出演はキャンセルとなりました。

リミックス制作:
VIDEOTAPEMUSIC / colorful house band

リミックス元音源演奏:
越中八尾おわら道場

企画:
森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

クリエイティブ・コモンズ・ジャパンは、「CCは大地、DOMMUNEは給食!!」という宇川氏の言葉から着想して、よりクリエイションの連鎖や大地を広げる試みができないかと考えた結果、日本の伝統文化に焦点をあてた企画を開催!!!!!!!!!!!!!!富山県で毎年9/1から3日間行われるお祭りで、毎年約20万人の観光客が訪れる「おわら風の盆」で演奏される「越中おわら節」を、現地の演奏団体の方々に録音をさせていただき、その音源を元に2組のアーティストによるリミックス作品を制作、その後オリジナルの録音とリミックス作品にCCライセンスをつけてSoundCloud上に公開しました!!!!!!!!!!!!!!連動したインタビュー記事も連続公開する中、総仕上げとなるDOMMUNEでは録⾳&リミックスの紹介から、日本の伝統文化の伝播や変遷、CCライセンス、はたまたブロックチェーンまで、過去と未来の双方向に話題を向けつつ、クリエイションを生む土壌や、著作権・⾳楽の今後の可能性を考察します。

ぜひご覧ください!!!!!!!!!!!!!!

連載インタビュー記事 VOL.1 / 越中八尾おわら道場代表、庵進インタビュー

連載インタビュー記事 VOL.2 / VIDEOTAPEMUSICインタビュー

連載インタビュー記事 VOL.3 / DJ KENSEIインタビュー

【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.2

サンプリングは肉体の手癖も越えられる

富山県富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表するという今回の企画。
vol.1では「越中おわら節」を録音させていただいた「越中八尾おわら道場」の代表、庵進さんのインタビューをお届けしました。
今回のvol.2では「越中おわら節」の歌心を生かしながら、ダブ感・納涼感の溢れる素敵なリミックスを制作していただいたVIDEOTAPEMUSICさんのインタビューをお届けします。制作過程のお話や、サンプリングに対する感覚、CCライセンスの印象など、ぜひ音源を聴きながらお楽しみください!

VIDEOTAPEMUSIC / Ecchu-Owara-Bushi VIDEOTAPEMUSIC Remix

越中八尾おわら道場の演奏、colorful house bandによるRebuildも含む企画全体はこちら

 VIDEOTAPEMUSICプロフィール

VIDEOTAPEMUSIC Profile

地方都市のリサイクルショップや閉店したレンタルビデオショップなどで収集したVHS、実家の片隅に忘れられたホームビデオなど、古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作している。VHSの映像とピアニカを使ってライブをするほか、MV制作、VJ、DJ、イベントのオーガナイズなど活動は様々。MVでは盟友ceroを始め坂本慎太郎、小島麻由美、NRQなどジャンルレスに手がける。ほかにもモデル、女優の菊池亜希子のムック本「マッシュ」のCM映像、楽曲も製作。ライブにおいては、クラブシーンからインディペンデントシーンまで幅広く活動。ダンスミュージックとしての下地に、近年盛り上がりを見せつつあるムード音楽やラウンジミュージックの文脈から繰り出すポップでメロウなメロディは絶妙であり、映像のセンス含め、まさに洒脱な音楽を作り出している。昨年秋にリリースした2ndアルバム「世界各国の夜」は全国各地で大好評ロングセールス中。
2016年5月に配信限定シングル「Sultry Night Slow」(カクバリズム)リリース、7月にはceroとのコラボレーション編成の「VIDEOTAPEMUSIC×cero」としてフジロックフェスティバル出演、12月に坂本慎太郎との共作 LP「バンコクの夜」(em records)、2017年1月に7inchシングル 「Kung-Fu Mambo」(雷音レコード)リリースと引き続き精力的に活動中。
映像のみならず音楽との双方向でゆらゆら踊れる夜を演出する、そんな素敵な男がVIDEOTAPEMUSICである。

昨年配信限定でリリースされたシングル VIDEOTAPEMUSIC / Sultry Night Slow MV

第2回 VIDEOTAPEMUSICさんインタビュー

2017年7月27日19:30 三軒茶屋 某会議室にて収録
インタビュアー:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

VIDEOTAPEMUSIC Interview 1

今回のリミックス制作のお話など色々とお伺いしました

まずは、基本的なことをお伺いできたらと思うんですが、最初はVHSの編集から映像と音楽を同時に制作するというスタイルで活動を始められたのでしょうか?

最初は映像とかを作ったりしてて。音楽はビデオ編集の延長で作り始めた感じです。

最初にビデオの編集をしようと思われた時には、何かきっかけがあったんですか?

美大に行って、ビデオアートって言って良いのかわからないですけど、そんな映像作品を作っていました。でも音楽も好きでバンドとかもやっていて。それである時、サンプリングと編集で作るっていう、実際には演奏しない作り方が音楽にはあるんだなということを知って、ビデオの素材だけを編集して曲を作るっていう作り方になりました。平行してやってたことがちょうど合わさったみたいな感じで。

サンプリングの魅力や面白いところってどのあたりに感じますか?

何ですかね。全然違う別の空間とか別の時代のものが、一緒の空間で鳴ったときに変に調和したり、ぎこちなくなったりみたいなそういう部分とかですね。

たしかに、時代とか場所を越えちゃうところがありますね。

サンプリングは元々の文脈から切り離されたものが無関係に合わさる面白さもあると思うし、逆にある時代や空間を意識させる面白さもあると思うし。どっちの面白さもあると思うんですけれども、時代とか空間を行ったり来たりできる感じが面白いですね。自分の肉体の手癖みたいのも全然越えられるっていうか。

VIDEOTAPEさんは、外的な要因から影響を受けて作る事って結構多いんですか?

そういうのが好きでこういう作り方をしているというか、あんまり自分の内から出てくるものは信用してないところがあったりするので。

そうなんですね、例えば怒りとか、内から出てくる感情が制作に影響することは?

まったくないという訳ではないですが、たまたま観た映画とか、景色とか、そういうものを毎回自分のフィルターを通して出す感じが多いです。
サンプリングするネタにしろモチーフとなる風景とか町のことにしろ、出会いは偶然というか、その偶然をいかに捕まえるかが自分の中の主題ではあります。

街の空気をそっと染み込ませる

最初にメールでこの企画のお願いをしたのですが、どんな印象でしたか?

自分としては願ってもないというか。やっぱり僕はサンプリングをメインに作っていて、そこに可能性を感じていることは間違いないんですが、その一方で著作権的な壁にぶち当たることも多々ありまして。リスクの大きな制作方法を選んでるなとは自覚していたので、こういう話をもらって、ちょうど悩んでる部分とも重なるというか、勉強にもなりそうだしちょうどいいなと思って。
ビデオの音声のサンプリングに限らず、違うつくり方も模索しようとしていたところで、今作っている音源もフィールドレコーディングの比重がけっこう多かったし。それも含め、何かタイミング的にやろうとしてることとリンクしている部分があったんで。

フィールドレコーディングというのは、自然の音とかを録ってくるってことですか。

厳密にはいわゆる自然だけではなくて、その街で流れている音とか、街の中の人のしゃべっている声とか、人が歌っている声とかを色々使ってやったりしていますね。
色々な地域を題材にした曲を作ることは多いのですが、曲の題材になった地域の空気みたいなのをフィールドレコーディングの素材を使って無意識レベルで染み込ませようとするような作り方はわりとずっとやっています。

今回のリミックスにも水が流れる音が使われていますね。

あれもそうですね。八尾の町に実際に行った時に、路地の側溝にずっと水が流れていて。町を歩くとずっと水の音がしていてそれが印象的だったので録音した音です。

VIDEOTAPEMUSIC Interview 2

八尾の町中にはエンナカと呼ばれる側溝が流れています

八尾の町が持つダブっぽさ

今回、町に流れる水の音を入れたっていうことで、親しみが増したりとかはありますか?

そうですね。話をもらって、おわら風の盆の事を色々調べたり、音源を聴いたり、YouTubeで動画を見たりしたんですが、初めて知った民謡だったので、やっぱり自分との距離がどこか遠く感じて。実際にその町に行って歩いたことで、インスピレーションみたいのはいっぱい得られました。使う使わないは考えずに、まず録音して後から考えようって感じで。行ったことでムードは自分の中に消化できたかな、みたいなのはありますね。

その土地に行ったことで、自分の中で納得感が増すという感じでしょうか?

そうですね。現地にある資料館に行った時に色々見たんですけれど、八尾の路地は狭くて道も石畳で出来ていて、それによってお祭りの時に四、五歩歩くたびに音の響きが違ってくるみたいで。虫の鳴き声だったり、水の音だったり、町を練り歩くときの音の変化も一緒に楽しんでました、みたいな解説があって。
四、五歩歩くたびに、その町の建物の変化で音の響きが変わる感じが、もしかしたらダブっぽい考えかなというか。建物の狭い路地から広いところに抜けただけでその石畳の響きが、反響の仕方が変わる。それも昔からお祭りをやってる人は意識してたんだなと思うと、その考え方がダブっぽいなあと思って。だからちょっとダブっぽい感じのニュアンスのリミックスにしようっていうのは、なんかその時に決めて。
それで、その時の水の音と石畳を歩いている音を録って使ってるっていう感じです。アタックの音に微妙に石畳の足音を紛れ込ませたりとか。

VIDEOTAPEMUSIC Interview

八尾の町の狭い路地

そうなんですね。現地に行ったことによって、作品の方向性が決まるというのは面白い作り方ですね。

自分の中でつじつまを合わせるというか。それを全面に伝える気はないんですけど、自分の中で納得できれば良いかなと。ただ実際にその場所に行けて見れたのは良かったです。自分が家にいて頭の中で考えただけではないアイデアがそこで出てくるから。その町に行ったことで音楽も変わってくるっていうか。

VIDEOTAPEMUSIC Interview 4

路地を抜けると広い通りに

土地勘と距離感

先ほども少しお話がありましたけど、アジアの国や熱海など、特定の土地をテーマにされる場合がありますが、サンプリングをする際はそこに愛着や憧れを感じてテーマを決められるのでしょうか?

きっかけは本当に色々です。本当に好きでやるときもあるし、なんか結果的に愛着がわくときもあるし。例えば、映画のワンシーンを何も考えずにサンプリングして、ある程度曲ができたとして、後々そのシーンがどこで撮られてたっていうことを知ることで、その土地に愛着や興味が湧いたり。そうこうしているうちに、土地を題材にした曲が増えてくるというところがあるかもしれませんね。

土地とか人とか作品とかを遡ることを意識されているのでしょうか?

そうですね。そこで見えてくる時代の変化みたいな事だったり、そういうのに惹かれることは多いです。
何の情報も無しに、音を聞いて凄く良いなって思うのも、もちろん好きなんですけれど。それだけじゃなくて、これはどの時代にどの場所で録られたものなのかって知ることで、自分との距離とかが分かって愛着が湧いたり。むしろ逆にすごい距離感を感じたり。そこで、その対象に対する理解が深まったり変わったりするみたいな、そういう楽しみも好きですね。

模索する、民謡との距離感

今回、題材が日本の民謡だったんですけれど、いかがですか?

興味はすごいあったんですけれども、取り込むにはもうちょっと自分の中で時間と経験がいるなっていうか、無責任に扱えないところでもあるっていうか。学生時代に大学の企画でとある伝統芸能の踊りに合わせてVJをしたことがあったのですが、その時に踊る方からすごく怒られたんですよ。歴史も文脈も理解せず生半可な気持ちでやるのは失礼だという感じで。
だから民謡は、ちょっと覚悟がいるなって。やりたいけど、もうちょっと自分の経験がいるし、中途半端に手を出せない分野だなと思っていたんです。でも今回、機会を与えてもらえて、踏ん切りがついたって感じです。

僕らも途中まで、結構悩んだんですよね。富山の伝統芸能に対して東京の僕らが手を加えることに対して。

まあ、そういうのももちろんありますね。それは向こうにとってみたら迷惑な可能性もあるし。

よくある話ですけど、搾取的なイメージで捉えられてしまう、というかそうなってしまう場合もありますね。

それはこういう作り方をしている時に、民謡だけでなく何事に関しても、結構直面する問題でもあるというか。全然文脈なく引っ張ってくる面白さもある一方で、文脈を無視することで失礼にあたるよくない場合もあるし。無邪気に珍しがって面白がるだけなのも違うし、ちゃんとこっちも勉強しないといけないっていうのもあるだろうし。

目に見えないリスペクト感を、お互いいかに持つかという難しさですよね。

それは大事かもしれないです。小さなコミュニケーションが案外大事なのかも。今回はお会いできるタイミングがなかったから、せめて町をもうこれでもかというぐらい歩くしかないというか。自分なりの落とし前のつけ方として、一応現地に行って勉強はしてくるっていう。

近寄り難さはどんなコンテクストから?

さっきの距離感の話で、ビデオの素材だったらそこまで気にしないと思うんですけれども、民謡とかだったら気になっちゃうっていうのが、不思議だなとも思うんですけれども。存在が近いがゆえなのでしょうか。

でも、ビデオでも気になる時は気になっちゃうんですけどね。気になる度合いの多さは違うと思うんですけど。

近いと気になるんでしょうかね?

もちろんそうですけどね。でもかといって、遠いから良いってこともないとは思うんで。そこは何か一概には言えないですけど。

例えば商業ベースに乗ってたら使いやすいけど、非商業だと使いにくいとか。

作品としてパッケージされたものと、民謡のようにそうでないものは確かに違う気もします。でも本当はどちらがどうとかあんまり区別しちゃいけないとも思う。そういうことを考えるきっかけに今回はなったかなみたいな。

徐々にアップデートされていく民謡

今回、録音した「越中おわら節」の音源をお渡しした際、聞かれた時の印象は何かありましたか?

胡弓がけっこうやっぱり効いてる感じはして。唄は、使ったのはほぼアカペラ状態のところが抜きやすかったので、そこしか使わなかったんですけど。歌詞は、なんて言っているのか調べてみても、一つだけではなくいろんなパターンの歌詞が出てくるからそれが面白かったですね。色々増殖していく感じというか。次から次へと作られていて、新しく増えたり変わったりしているのか、そんなところ面白かったです。

定番的な歌詞もあれば、それ以外のものも、すごくいっぱいありますからね

自分たちで替え歌みたいなのを作って、更新っていうか、地域毎にそれぞれの歌詞があるって感じなんですかね。

それもあるし、その昔、八尾の町を盛り上げようっていう時に、どんどん作ろうみたいな動きがあって、色んな人を呼んだりとか作っていったみたいですね。

歌詞を調べたら色々出てきて面白かったです。次から次へと歌詞がたくさん出てきて。
しっかり伝承しようという部分も、時代とともに自由に変化していく部分も、どちらも存在している感じがして、それも面白いなと思いました。

実際、出来上がった音をご自身で聞いてみて、どのような印象というか、普段とちょっと違う感じとかあったりしますか?

おかげさまで自分としても新しい試みができたのが面白かったですね。この先の自分の制作のきっかけというか。もうちょっとこの感じは掘り進めたい、みたいな感じはあります。

それは良かったです。

なんなら本当に各地いろいろやってみたいぐらい。

ノイズと偶然性

録音の状態に関しては、何か感想などありますか?

僕はもうめちゃめちゃ音の悪いものからとかもサンプリングしてるから。どういうものが来たとしても受け入れる準備はできてました。でも綺麗な状態のものが来てたんで。

反対にノイズに関しては何か思いがあったりしますか?人によっては、人の声もノイズ。でもそれを音楽に変えていくことに、どんな理由があるのかなって。

それがないと面白くないなって思っていて。曲を作ってても絶対なにかしらのノイズを入れちゃいますね。音に関しても世の中の状況に関しても、ノイズは必要というか、そもそも何がノイズかなんて人によっても違うし、一見邪魔だったり一般的に考えたら消すべきも音も、実はそうじゃないというか。本来ノイズとされている音を曲の中にはできるだけ取り入れたい気持ちはありますね。

偶然性や意外性とか、ちょっとストレートじゃないものがあった方がやっぱり面白いですか?

そうですね。綺麗にノイズが消された状態はなんか嫌だなぁっていうのはちょっとある。そもそもなにが不必要なものかは簡単には言えないと思っていて。必要ないと思っていたものでも、音楽では実は効いていたみたいな事はあったりすると思うんで。

そうですね。ノイズを全部消していったら綺麗ですけどね。ストレートになるけど、味気けないかもしれないし。

自分はノイズある方を選んじゃうかな。だから今回も綺麗に録ってもらってはいるんですけど、ずっと僕その下に環境音のノイズを入れちゃってるんで(笑)

CCライセンスの今後の可能性と限界

VIDEOTAPEMUSIC Interview 5

CCライセンスの印象などについてもお伺いしました

作品にCCライセンスをつけたものが提供されていけば、いろいろな音楽の可能性や、使える範囲というのも広がってくると思うのですが、今回実際使ってみて、ライセンスのここは使いづらいよとか、気になることなどはありますか?

なんですかね。もうちょっと僕もこれをきっかけに、こういうものがあるっていうのを勉強したいなとは思いますけれど。

例えばですが、他の人がVIDEOTAPEさんの曲を使った場合、そんな気にしないとか、他の人がお金を儲けてたらその何パーセントは還元してもらわないと嫌だなとか、人によって差があると思うんですけれども、いかがですか?

その作品によるというか。初めから自分もそういうつもりで出してれば、そんなに気にしないです。難しいですけどね。サンプリングで作った自分の作品がまた別の誰かに自由に使ってもらえることは、理想を言えば構わないとは思っています。でも作品は僕一人の意思で出していない場合もあるから全部がそうはいきませんが…

今回のやつで、ここからさらに派生したものが出来たりすると嬉しいですよね。

そうですね。ちゃんとライセンスつけて、自由に使っていいよって、こっちも意思表示をしていれば、そこから更に作れるっていうのは、何か良いですね。

ただ、CCライセンスは、どう使われたかっていう事に関して追うことはできなくて。例えば僕がVIDEOさんのやつを使ってリミックスを作ったとして、僕の発表した所には情報を掲載するかもしれないしけど、VIDEOさんに報告や通知がある訳ではないので。

こっちに報告が必ず来ないといけないということはないですよね。

そうです。そのあたりの仕組みが出来るようになると良いのかもと、ちょっと思ったりとか。

こういうところで使いましたっていうのが分かると嬉しいですね。知らないとこで使われてるかもしれないっていうのも面白いですけどね。

現在だと、ブロックチェーンの仕組みを使って情報管理や記録をみんなでしようっていう、それを使って著作権管理できないかみたいな動きも多少あって。いろんな細かい条件付けれたり、別に売ってもいいけど売れたらその10%下さいとか。その使われた情報がこっちに来たりとか。

そういう交渉や情報交換が、やりやすくなるとすごく良いなと思いますね。例えばこっちがサンプリングして使った時に、それをちゃんと許可を取ってやりたい時とか、交渉がしやすいとすごく良いですね。この音源使いたいけど誰に連絡したいかわからない。どこに許可とって良いか分からないという場合も結構あったりするんで。

気軽に連絡取れたりとかすると、また違ったコミュニティができたりとか、いろんな出会いができそうな感じですよね。音楽をやっている上で新しいコミュニティのあり方というか、なんか新しい出会いがあったり、それによってまた音楽が出来たりみたいな、なんかいい流れになるんじゃないかなと。

それは、面白そうですね。

今後、クリエイティブ・コモンズとかライセンスとかに何か期待することとかありますか?

サンプリングで作っていくのは色々と難しい部分もあります。でも、それでしか作れないものは確かにあるので、そういうものに対してクリエイティブ・コモンズが、突破口になってくれるといいなみたいな。勝手なあれですけど。期待してますって感じで。

クリエイティブ・コモンズはちょっと、逃げ道じゃないですけど、使えばまあ一曲ぐらい増えるぞみたいな。

いやいやいや(笑)

興味深いお話、ありがとうございました。

文責:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.1

なぜ私たちは、富山市八尾町へ?

今回クリエイティブ・コモンズ・ジャパンでは、富山県富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表するという試みを行いました。
この企画の背景には、実践を通じてCCライセンスの<可能性>と<限界>を検証するとともに、デジタルと親和性の薄い、地域・伝統文化との良い関係性の持ち方を模索したいとの思いがありました。

もっとライトに表現をすれば、日本の伝統文化は近くて遠い存在であり、リミックス等にそこまで多用されてはいないと感じていたので、日本の伝統文化とフラットに接して、模索しながらリミックスを行うことで、新鮮な音楽や刺激的な創作の連鎖が起きるのではないか、と思ったことが一番大きなモチベーションだったりします。

このような思いを抱いて調べていくうちに、富山が民謡の宝庫であること、またその中でも「越中おわら節」は屈指の名曲であることを知りました。実際に聞いてみると、日本の民謡には珍しく胡弓が使われていて耳を奪われましたし、また哀愁を帯びた響きが素晴らしく、とても心惹かれるものがありました。

何度か富山に足を運ぶうち、幸運にもご縁があり、今回の企画の実現に至ることができました。

演奏を録音させていただいたのは「越中八尾おわら道場」の皆様、リミックスを制作していただいたのはVIDEOTAPEMUSIC, colorful house bandの2組です。完成した音源をお楽しみいただきながら、以下読んでいただけるととても嬉しいです!

今回、企画の一環として「越中八尾おわら道場」の代表の庵進さんと、リミックスを制作していただいた2組の方々にインタビューを行っています。

まずは、第一回目として「越中八尾おわら道場」の代表の庵進さんのインタビューをお届けいたします。

「越中八尾おわら道場」は「越中おわら節」の研修と伝承・普及を目的とし、1985年に設立された団体です。
越中八尾おわら道場ホームページ

「越中おわら節」は富山市八尾町で毎年9月の1,2,3日に催される「おわら風の盆」というお祭りで演奏されています。「おわら風の盆」では十一の町ごとに編成される越中八尾おわら保存会の各支部が、それぞれの町を演奏と踊りを披露しながら練り歩く町流しが名物となっています。しかし、それとは別に、町の中心にある名刹、聞名寺のステージで演奏している団体があります。それが、今回演奏を録音させていただいた「越中八尾おわら道場」という団体です。こちらの団体は保存会とは違い、各町ごとの編成ではなく、居住地、年齢、性別を問わず誰でも随時入会でき、地元の人であろうと県外の人であろうと、民謡(唄、楽器、踊りほか)の経験が深かろうが浅かろうが、また老若男女を問わず門戸を開き、ただ技量の進歩上達を基準に審査を行い、段位を取得してもらう、という趣旨のもと活動されています。
富山市八尾町での演奏の他に、他所でも演奏活動をされており、京都大原三千院や比叡山延暦寺、さらにはハワイやインド、ピラミッドの前まで(!)、かなりの世界規模で活動されている団体です。
今回、幸いにもご縁があり、演奏を録音させていただきましたが、リミックスに使わせていただくことやCCライセンスをつけて公表させていただくことも快諾していただきました。「越中八尾おわら道場」代表の庵進さんが、どのような経緯で、またどのような思いで団体を運営されているのか、今回の企画をどのように感じられたのか、色々とお話をお伺いしました。

第1回 越中八尾おわら道場 庵進さんインタビュー

2017年7月9日17:00  富山市八尾町今町善称庵にて収録
インタビュアー:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

おわらとの出会い

CCJP Iorisan Interview1

「越中八尾おわら道場」の代表の庵進さん

庵さんがおわらと出会ったころのお話をお伺いできますか。

僕はね、高山線の越中八尾駅ってあるんですね。そこの町内へ僕婿養子に行ったんですよ。元々は庵じゃないんです。26の時。駅のある町内。福島。それで行ったところの、まあ舅姑と言うのが、この町の狭いところから福島というところに新たに出たわけだったんです。
でちょうどそこの娘のところに行ったわけですけれども。だから、昭和46年正確には47年ぐらいから、おわらというのを見て。僕自身は、おわらのおの字も知らなかった。
たまたま町から出た庵という、そこの舅が町で歌っていたんです。この人がまた真面目いうか歌はうまいけれど、真面目一本で。とにかく町内へ出るのが嫌だと。歌は本当にうまかったんだけど、町内へ出るのがいやで。だからお前行けと言われて、僕は代わりに行ってなんとなくやりはじめたんです。

(注:現在は富山市の一部となっている八尾町。八尾町の中にも東新町、西新町、諏訪町、上新町、鏡町、東町、西町、今町、下新町、天満町といった旧町と呼ばれる地域と、福島、またそれ以外の地域もある。「おわら風の盆」は旧町と福島の各町内で催されている。インタビュー中に出てくる「町」は旧町を示している場合が多い。)

庵さんのご実家はまた別の場所ですか?

すぐそこだけど、ちょっと車でここから5,6分で行けますよ。今だと八尾町。今では八尾はもう富山市になってしまったから。

今だと、おわらって言うといろんな人が知ってて、例えば僕とかでも東京でも名前聞いたりする感じですけど、当時はいかがでしたか?

全然。全く。かすりも。おわらのおの字も。全くかすりもしなかった。まさか僕そんなこと携わるとは夢にも思ってませんでした。

CCJP Iorisan Interview2

八尾町の地図にマークを入れて説明する庵さん

”おわら”以前

で、もともとはお祭り好きというか、二十歳ぐらいの時に、あの、自動車の整備士になろうと思って、岐阜県の大垣に整備士の学校があったんですよ。でそこに行って、そこからアルバイトしたりして、まあ大型の免許を取ったんです。22の時かな。それからいきなりダンプに乗ってね。それで途中から静岡県に天竜川があって。あっこの磐田の方に、えー名神高速道路と言うのは東京オリンピック、昭和39年に合わせて作った日本最初の道路なんです。ところが東名高速道路は、昭和45年の万博に合わせて作った道路なんです。
昭和43,4年中に、23,4、2,3の時かな。磐田の方で、東名高速道路の地盛りのダンプに乗っていたんですよ。考えられないぐらい無茶苦茶な仕事をしていた。当時はダンプと重機の運転手だけの簡単なバラックが、飯場かな、そこに何ヶ月おったかな。そんな事で、当時はね今で言うとお金にすると現金で手取り60万ぐらいもらっていた。22か3で、1週間から10日で綺麗に使うんです。

もう金配って歩く様な。ははは。本当に面白かった。だから今の若い人は可哀想だ。あの時はちょうど高度経済、オリンピックの後の高度経済成長。万博に向かってとにかく大型の運転手が必要だったんです。もう免許証を持っていけばその日からそこで使ってもらえるね。好きなことをしてきた。まそういう事が変な話、肥やしになってるよ。遊んだり、無茶苦茶なことしてきたからね。はははは。お金配って歩いた。
まあまた変な話、好きなことをしていて自分は行方不明ですよ、実家からすれば。ホームシックのホの字も知らない。そうやって歩いてそれで最後に、いま何かな、名古屋の港区になっているかな、どこかそこの土建屋さんに最後いたんですけれども。

で、そこの親方の嫁さんの妹と一緒になってくれんかいなと。いやー、これじゃあ僕はここに一生いないといけない、ダメだということになって、家にいきなり電話をかけた。迎えに来てくれ!って。
兄貴がちょうど造園をやって、高度経済の昭和40年代で、造園というのは富山県で流行ったんですよ。だからちょうど人手不足で。ずっと去年まで兄貴の作った会社でやっていたんですよ。そうしているうちにちょっと縁談があって、養子に入ったわけだけれども。

胡弓の名人、若林久義氏との出会い

CCJP Iorisan Interview 3

石畳の残る八尾の町並み

そんな時にやっぱり僕は、きちっとしたお師匠さんはいないんですけれども、1週間に4日くらい入った家があるんですよ。その方は明治生まれの人です。最後の名人ですね。三味線と胡弓の名人。だから生き字引です。そこへ行ったけれども八尾の町の人は、いっぺんも誰も来なかった。
だから僕の知っとる話を知らない人は山ほどおるわけ。だから、ちょうどその年代で途切れてしまって。八尾の町の人が弾けない三味線を、僕は弾けるんです。
ホームページにもあるけれども、若林久義という胡弓の名人。胡弓の名人と言われていたけど、僕は三味線の名人だと思う。でもね、明治生まれの人だから、全く教えてくれません。聞いたら教えてくれるけれども、だから昔は技術を盗むしかないんです。
直接教えてもらったというのそんなには身につかない。中には、あの先生は何も教えてくれない、この先生はよく教えてくれると言うけれども、それは違うんだと。お前さんの観察力が足らないと。僕はそう思う。

若林さんところに行かれていたのは庵さん40歳ぐらいですか?

30代から40代くらいだね。道場作ってからあの方も高齢になられたからあんまり行かなくなった。

おわら道場の立ち上げ

昭和60年だから、僕がちょうど40の時かな、民謡バブルでこの町へ、この風の盆に人が物凄い来るようになったんです。だんだんよそから本物志向で習わしてくれと言う人が結構来るようになった。だんだんいろんなご縁ができると、そうすると、明治生まれの人たちもこんなことやっとったんじゃ、保存会のことだけじゃダメだなと。全部やりやすいようにやってしまう、みんな楽な方向になってしまって。ましてや過疎になってきたでしょ。やりやすいというのはダメだと。

最初は町の方が何人か集まっておわら道場を立ち上げられたのですか?

そうそう町の人。で、福島の人が何人かな。発起人の中に、半分ぐらいいたんじゃないかな。結局やり手ばっかりがおったから。だから昭和60年4月に、今日からやりましょう、ではなくて、やっぱりその3年も4年も前からやろうやろうと言って、下準備があったんです。発起人だってね、いきなりこういう集まったもんだけど、そうじゃないんだよ。あの人も来んかなと、やっぱりそういう時間は3,4年もっとあったかもしれないですね。

じゃあその頃、庵さんがちょうど若林さんところに行かれていてっていう時ですね、その後に道場が立ち上がったんですね。

まあそんなことで始まって、途中で、その町内の行事とこっちの行事とできなくなったんです。体が二つないから。それでもう道場だけにしたと。あの掛け持ちできなくなって。あの道場はやっぱり県外から集まってくるし。まあ別に町内を捨てたわけではないけれども、何となくこうなって。

おわら道場さんは最初からどこからでも受け入れようという感じだったんですか?

まったくそうそうそう。どなたでも性別国籍問わず。いわゆる来る人拒まず去る人追わずです。ずっとそれでやってます。

聞名寺で奉納演奏をするように

CCJP Iorisan Interview 4

聞名寺でのおわらの様子 
(提供:越中八尾おわら道場)

道場は昭和60年から立ち上がって、ここで踊るようになったの平成6年からなんです。きっかけはいろいろあったんですが、風の盆の碑という石碑があるんですよ。僕らはあの平成4年に若林久義さんが亡くなって、平成5年には、明治生まれでお囃子の名人だった天満町の中田国嗣さんが亡くなった。平成5年に僕ら浴衣デザインする言ったら一応肩書は相談役としていた、絵描きさんの笠原輝芳さんも亡くなって、3人亡くなったんですよ。半年ほどで。亡くなったいろんな経緯があって、とにかく風の盆の碑を作ろうということになって、新潟県の柏崎まで、僕はたまたま造園屋をやってて、石碑になっとる石をただもらいに行ったんです。僕はダンプの運転をして。

立ち上げに関わられた方が亡くなられて、それで碑を聞名寺さんとこに立てて、というのがきっかけで聞名寺さんでおわらをされるようになって…

あ、そうだもっと大事な話をしなければいけない。昭和60年にいきなり60名近く会員が入ったんです。で、当時民謡ブームだから。大阪の人も結構来たんです。で、そしたら結局宿持たずでしょ。当時はね町流しできたんですよ。楽に。自由にいろんな人が。

おわら道場さんのホームページ見てると最初は町流しをしていたって書いてありますね。

そうそう、最初は3日の町流しから始まったんですね。それが宿を持たずで、どうしようもないしさ。最初の会長の家寄って色々話をしていたけれども。浴衣もちゃんと揃えたと、だけど、宿がないとどうしようと。三味線のケースがあったり着替えの場所が必要だったりとか。
それなら、聞名寺さんがあると。接点はいろいろあったんだろうけれども。僕は植木屋しとったし、聞名寺、御前様だったら僕が頼みに行くわと言って。
いやちょっとこういうもんを立て、作って、こうこうこうこうしたいんだけど。その町外の人がほとんどで、着替えの場所がなければ三味線のケースを置く場所もないので、何とかその庫裏の一つ貸してもらえませんかねと言って、と言う話をして。この時代の発起人の、まあ年配者の人の名前を僕があげたら、みんな知っとると。でも、御前様は言うんです、僕はあんたに貸してあげるんだよと。
僕はその時はやったと思ったけど、今度は責任の重さにね。いやあ、あの時、御前様のあの言葉があって、未だにあの言葉で動かされているんだと思います。

最初は着替えなどの場所を貸してもらっていたんですね。

そういう不思議な出会いをもらって。だから植木屋としてずっと出入りしていたから知ってましたけど。それが、僕にすれば全ての始まりそこからかもしれない。聞名寺さんと付き合い、ほんとにいろんなことで可愛がってもらってやっているわけで。

そうなんですか、強い信頼関係と言うか。

まあ僕が言うのはおかしいけれども、そうしなかったらこんなことはできない。とんでもない話だね。

真面目な厳しい昇段試験

CCJP Iorisan interview 5

左:越中八尾おわら道場の昇段試験の風景  
右:厳しい目で昇段審査を行っている審査員たち
(提供:越中八尾おわら道場)

おわら道場って言うのはこれがメインなんですよ。本当は。いわゆる技能審査会というのは硬い名前だけれども結局昇段試験ですよ。例えばあなた、楽器は何かやられる?

僕はギターを弾いたり。

そしたら三味線のところを見て、胡弓か三味線の。一番左から行くと、上から行くと太鼓が一番下で胡弓下から二番、三味線で左から上一番左に行くと初段、中段、上段、準師範とあるでしょう。そしてあの三味線の初段は何から始めるかとか、ほらだんだん課題が。

僕らを30年面倒を見ておられた竹内勉先生という方が、2年前に亡くなったんですが、その方が全国津々浦々、昔民謡を全部というか地元の民謡というか、あの人は NHKの毎週水曜日ラジオでだいぶ前になくなったんだけれど、民謡を紹介する番組、多分40年1人で1時間やられていた。単に民謡を紹介するのではなくて、本当に、例えば芸者さんであったり、地元の歌い手であったりその人の物語やら、その民謡にある物語、歌を紹介するんだけれど。だから歌自慢ではないんです。だからそういうのでものすごく良い番組だったんですよ。
その人がおっしゃったのは、プロアマ通じて、うちが一番真面目な厳しい昇段試験。わかる人が見たらね、びっくりすると思うよ。最短で準師範行った最短で三年、最短でですよ。

僕の記憶では、道場の帳面に載った人は千何百人居ると思う。でもね、喧嘩して辞めた人は僕の腹のなかでは一人もいない、ただ難しくて来なくなった人はいるけれども。準師範になった人の中に大阪から通っていた方もいたけど、それでもやめなかった。

だから民謡といっても、おわらの場合特別なものがあるんですね。結局辞める人と、まあおわらではなくても続ける人は結構いるんですよ。それはまあ絶えず挑戦してますけれど、なかなかそうはいかない。だから竹内先生がおっしゃったのは、プロアマ通じて一番厳しいというのは、なあなあではないということ。つまり、絶対に公開で出入り自由で、それは見た通りのことを評価するわけです。

CCJP Iorisan Interview 6

越中八尾おわら道場の技能審査会の審査要項

年齢層はどんな感じなんですか?

年齢層は結構、幅広いというか、もう高齢者です。若い男性がまずいないでしょう。それは趣味ならできるよ、ただ趣味と言うか没頭できるというのは、家庭持つと、仕事家庭大変でしょう。男は可哀想で50ぐらいで入ってくる人はよっぽどそのうまく切り盛りできる人か、まあ、昔は職人さんとか結構おったんですよ。
今はそういう時代じゃない、趣味もやらんないけんね。で、女性になると結婚したらまず来ないでしょう。子供出来たら。子供手を離れたらなかなか。じゃあ小学生入ってきたら、今小学生名古屋から来てる子いるんです。それからまあ、中学生も過去に何べんも来るけれど、中学生は今度は学校に行かないならん部活やら。

民謡のリミックスと継承

それであなたたちは、大まかにどんなことやっているの?

それでなんですけれどもちょっと見て頂きたいんですけれども、これは、あのクリエイティブコモンズという、これが僕たちのやっている団体なんですね。これ、あの著作権の関係なんですけれども、えーと、例えば演奏された物って演奏された人が権利を持っていて・・・

CCJP Iorisan Interview 6

庵さんにCCライセンスの概要を説明中

それはアマチュアでも関係ないんでしょ。

関係ないです。それは誰でもあるものでして。それであの細かく言うといろいろあって、作詞とか作曲とか演奏とかってあるんですが。

僕はこんな本来的に民謡て、そういうのはないと思うんですね。

作詞作曲はもう、誰かが作ったというより、受け継がれてきたものだから。

民謡はまあ家元がいてね

だけど演奏したことに関しては、それの権利というのがあるので。例えば僕が庵さんの演奏を勝手に録音させてもらって、それを例えば CD にして勝手に売りましたっていうとそれは当然ダメですよね。

僕はそれは何とも思わない。

本当ですか、でもそれは駄目っていうことになっていてですね…

法律上は。

ただ、庵さんが別に何も言わなければ実際には問題にならないことではあるんですが。
例えば庵さんが別にこれ、使われてもいいんじゃないって思ったときに、このマークを作ってまして。例えばこれだったらこれは名前は書いてください、名前は庵さんが演奏しましたよと書いて欲しいと。名前を書くなどいくつかの簡単なことだけ守ってもらったら、後はほとんど何しても構いませんよというやつで。そういうのを何種類か作っていて。
でこういうのを使ったら、例えばいろんな人にもっと聞いてもらえたりとか、それを基に、今回やらしていただいているように、これを基に新しい音楽を作ったりとかっていうのができて、広がっていくと豊かなんじゃないかっていう活動をしてます。こういう考えを広めるということです

いや結構あの昔、沼津でやったやつ。それなんか風の盆で、すごい売っている。別に何ともおもわないけど。沼津に信用金庫ってあって。あれは多分平成12年だったかな。まだバブルの時分ですよ。信用金庫と言えど、沼津は大きいところで、年金の口座を持ってる人が5000人くらいいると言ってた。信金が50周年何かの記念で節目に、年金の人達の感謝デーに1500人あまり入る、大きい会館で、おわらを見せたいって言う話が来てね。じゃあ分かりましたと言って。僕は1時間40なん分をしゃべりながら、僕も歌って、話したりしゃべったり三味線や踊りを紹介したりして。
そしたら一流の音響屋さんが、終わった時に、音響屋の社長が、いや今までも一回もなかったけれど、これからも絶対ないだろうと。何かというと誰も帰らなかった。入った人が一人も帰らないって言うのは過去にないでしょ。

それで、そのことをやったその時に、著作権の話があって。ちょっとこの町中を外れたところにある、特定郵便局、ここはなかなか由緒のある家柄、その人があるとき、おわらのグッズを売ったりなんかして。うちへ訪ねてきて、おわらのグッズで、やりたいんやけどと。うちは録られて恥ずかしいぐらいだけど、何も知らない。
そしたら追っかけが始まって、沼津行ったんです。沼津までグッズ持って行って、でもグッズはほとんど売れずに。当時は MDあるでしょう MDを機械の、そこの音響屋さんに頼んで。マイクから入ってきて放送する前の段階で、だから本当に綺麗なやつをマスターテープにして。
いやあ庵さん、あれで何か商品したいけど、って言われたから、あー別にいいよ。いや別にそんなもん。
そしたら未だに、音源はそのままで。映像はいろいろ変えたりね、どっか町内頼んで別の映像撮ったりして、彼どんどん商売している。最初はね、カセットテープで出して、その次が、ビデオで出して、今度は CDから DVD からも出して、それで映像変わって音源だけはそのまま使っている。いや別にだから何とも思わん。

録音させていただいた音源なんですけれども、サウンドクラウドという名前のサイトに載せさせていただきたいなと思っています。

CCJP Iorisan Interview 7

今回、演奏を録音させていただいた際の風景

僕らがそんな通用すると思わないけど、まあやってみてよ。あなた達は骨折り損のくたびれ儲けになるかもしれないけど、笑。僕はそんなことは一切わかりませんし、そんな事に関して何も言うつもりもないし。ご自由にどうぞ。おもしろいね。でもこれ本業じゃないんでしょう。

本業ではないですね。

まあそういうのは一番良いかもしれないけれどね。いや面白いからやってるというのは。食うためにと行ったら大変だもんね。

食うためというとまたいろいろ考えなきゃいけないことが増えてくると思うんですけれど。これを紹介させてもらって色々できると面白いなと思ってます。

ああ、やってみてください。知らんけど、これはすごい広範囲というか無限だね。考え出すと無限というか。

明治生まれの人たちの想いを、僕は皆に伝えたい

民謡ってその誰かのものっていう感じではないという、お話もあったと思うんですが、例えば演奏とか合奏されたりとかする時に、これは自分の作品だっていう感覚とか、そう感じたりするとは思うんですが。

そうね。そのとても難しい質問だけれども。人数多い少ないはあるけれど、あの一通り誰かうちの会員がいった時、全くオーケストラだと言うんです。オーケストラ、の集合体で踊りみたいになってる。ね、踊りだけうまくたって楽器が下手なら、楽器が下手だったらどんな踊りの名人でも踊ったら下手になってしまう。そうでしょう。僕はそのオーケストラとして、全体が総合力でどうかなという事で、そこの目配せしかできんもんね、気配りというか。

例えば今回録音されたものを使って、新しい、違う形で音楽を作らせてくださいというお願いをさせていただいてますけれども、そのことについては、その話を聞かれた時に、例えばやりたければやればという感じでしょうか?

僕はそんな通用する訳ねーだろと、今でもそう思ってるんだけれども。だから変な話、どうだろうがもう、まな板の上の鯉だから、どういう風にしてもらっても結構ですよ。

庵さんにとって、伝統音楽とか伝統とはどういう風に思っていらっしゃいますか?

どう言ったらいいかな、やっぱり一生懸命やってるうちに、それしかないでしょ。これやらなきゃでやろういってやるのは学校の先生だけで。それを一生懸命やっている人たちはそんなことを。
だから伝統守るという、そんなどういうか、大きい目標というか、何もないね。とにかくやっぱり今前にあること一生懸命やるしか。僕はそういうタイプなんですよ。なんか、そこだけムキになって。だからあんまり、やっぱり能無しはこの程度ですよ。
やっぱりやるという姿を見て、みんな頑張ってくれるから。ついてくる言ったら大げさだけれども、一緒にやってくれるから、協力してるから、それしかないと思う。口でいくら言ったってそれは蛇踊らずでね。自分が一生懸命かどうか知らんけどムキになって。それがまあ、いわゆる側からみれば伝統を守っとるということになるのかなと。僕はそう思う。
やっていることは、習ったことをみんなで一生懸命やっていると。それが人に伝わるということで、それが強いて言えば伝統、伝統と言うのは、本来は伝統ってそんな、、民謡の越中おわら節としては伝統を守っているかもしれないですね。人前で一生懸命やるということで。それが唯一、審査要項という、それに基づいての課外活動だね。

口癖みたいに、本当におわらと言うのは不思議な力を持っとると。とにかく上手下手もそうだけど、とにかく続けようと。僕がいちばん異例だと思う。だってこんなことあったら。おわらでハワイへ行ったりとかエジプトやインドに行ったりとかそんなことは誰もしてない。

CCJP Iorisan Interview 8

エジプト、ピラミッド前でおわらの様子
(提供:越中八尾おわら道場)

すごいですね。おわら道場さんの演奏であったり、審査の基準と言うのは年々変わったりはするんでしょうか?

いやほとんど変わらない。なるべく、僕はその明治生まれの人たちのことを。僕しか知らないわけでしょ。僕は変えないためにこれをやっているわけです。だから引き継ぎと言うのは、とても難しいなと思うんです、時々考えたら寝れなくなります。明治生まれの人たちの想いを、僕は皆に伝えたいと、ただそれだけです。

おわら道場の今後というかこれからは、

これが難しいところで。町も一緒なんだけど人材がいないんですよ。中には若い人もいないではないけれど、若い人は50代かな、まあ大雑把に言えば。

その方たちは庵さんから教わったものを受け継いで、、

いや僕は踊りの事はあんまり教えん、手取り足取り、見る目はあってもなかなかね。踊りの人任せ。

この昇段試験で身につけられたことを指導者になって次の方に。

そうそう、やっぱり順送りだね。難しいところは誰でも難しいし。

そうですね。今日は長いお時間ありがとうございました。

文責:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

8/25 MIAUシンポジウム2016「欧州の事例から考える著作権の未来」サマリーレポート

8月25日(木)に東京飯田橋のアンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュにて「欧州の事例から考える著作権の未来」シンポジウムが開催されましたので、サマリーをレポートします。
(以下、敬称略)
<主催>
インターネットユーザー協会(MIAU)
<協賛>
作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム
Creative Commons Japan

基調講演

講演者:Julia Reda(欧州議会議員、欧州海賊党)
「Correcting CopyWrongs」
ヨーロッパは国ごとに著作権の保護期間と保護規定が異なるので様々な問題がある。例えば意匠性の高い家具は、生産国では購入できても他国だと著作権侵害となって購入不可になる。これらの違いを緩和するため、多くの例外が存在する。例えば 「Freedom of Panorama」サイトは、非商用を条件に風景写真を自由にアップし再利用する仕組み。今の各国の著作権の違いによる弊害を低減するためにEUとしてまとめ(リフォーム、統一、緩和)ようとしており、自分も積極的に法案化に関わっている。

 

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シンポジウム

モデレーター:香月啓佑(MIAU事務局長)
登壇者:
Julia Reda(欧州議会議員、欧州海賊党)
長塚真琴(一橋大学 法学研究科 教授)
上野達弘(早稲田大学 法学学術院 教授)

世古和博 (一般社団法人日本音楽著作権協会 常任理事)
水野祐(弁護士、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事)

1. Redaさんのプレゼンを聴いての所感

<登壇者>著作権は排他権であることは避けて通れない。仕事の単価を維持し高めるための最終手段ではないか。
EUは個別の著作権は守りつつ、共有できる付帯条項を付加するアプローチ。保護期間は、著作権を復活させることも行っている (TPPは著作権が消滅したものは復活させない)。多様性を認めることも大切。
権利者保護と利用者の利便性のバランスを保つことが大切。 
インターネット時代になり、保護だけでは権利者のためにならず、二次利用を促進することの方が得になる場合がある。(フェアユースなどのような法律やCCのような契約で)コモンズをどう作るかが重要である。 著作財産権を排他権行使ではなく報酬請求権で解決したり著作権を登録制にする可能性も考えたい(ベルヌ条約をどう超えていくか)。
そもそも権利保護をしてあげないといけないクリエーターがそんなに多いのか?権利保護の弱い食料生産や料理人、ファッションクリエーターのような分野は市場規模は小さくない。
衣食住のような基本生活品には人は対価を支払う。
音楽やアートは、無料で消費されてしまう可能性があるので、それを守る必要がある。
<Reda>適正に安価であれば音楽やアートでも消費者は対価を払う。

2. 未来の著作権

<登壇者>権利保護が必ずしも著作権者のためになっているのか、なっていない場面も多いのではないか。
かつてなく権利者がユーザにもなる時代なので、再利用しやすくする工夫が求められている。コンテンツIDや登録制、権利者への分配などを(BlockchainやEthereumなどの)テクノロジーの進歩で普及させていくことも重要と考える。
著作権者を守るためにブロックするのも一つの方法だが、表現の自由を束縛する懸念がある。もぐらたたきの保護はお金がかかり、長期にやりたくない。何か仕組みを作りたい。JASRACはすでに登録制と集中管理を実現していると言える。
<Reda>20世紀型の著作権は自動付与だったが、21世紀型の著作権はCCライセンスやインターネットの利用をふまえて登録制もあってよいのではないか。

3. 最後に

<登壇者>レダ レポートは著作権保護期間を死後50年と主張するなど過激さが薄くバランスがとれている。
(どうあるべきかを学問として扱っている我々)学者と違って、議員だけあって現実的な法案作りを目指されていると感じた。
<Reda>EU議員としての立場もあるので、多くのEU構成国に寄与する内容とした。完全に統一された著作権法を作ろうとしているのではなく、できるだけハーモナイズをとりつつ、各国の独自性も維持出来る内容を目指している。
<モデレーター>本イベントを通じてEUと日本のハーモナイズに寄与できたのではないか。

 

投稿者:前川 充

CC事例その2:Linux標準教科書

Linux標準教科書

Linuxはオープンソースソフトウェア(以下OSS)の世界で構築されてきたOS(オペレーティングシステム)です。OSSは、どこか特定の企業が開発しているわけでなく、有志のエンジニアや企業、非営利組織などのコラボレーションによって開発されているという特徴を持つソフトウェアです。このようにしてできたLinuxは世界中の企業等で使われています。たとえば、Linux Foundation とYeoman Technology Groupによれば大企業のサーバ、データセンタークラウドの分野では2014年のLinuxの導入率は79%にのぼります[1]。 Linuxは1991年にフィンランドのヘルシンキ大学の学生だったリーナス・トーバルズが自主的に開発を始めたOSですが、2000年頃からはIBM、HP、インテル等のプログラマも業務の一環として開発に関わるようになり、今ではサーバ系のOSとしては主要なものとして認識されています。

2015年前半にクリエイティブ・コモンズ・ジャパンのチームがインタビューを行ったLPI-Japan(Linux Professional Institute Japan; 以下LPI-J)は、Linuxや、OSSのデータベース(以下OSS-DB)、HTML5(多くの端末上でソフトの変更無くして動作可能な言語)のプロフェッショナルを認定する活動を行うNPOです。また、認定試験の標準教科書も出しており、これらにCC BY-NC-NDライセンス*を採用しました。LPI-Japanの認定試験はITメディア(@IT自分戦略研究所)の調査で「取得したい資格」で8年間連続1位になっており、ITエンジニアにとっての王道資格といえるものです。今回のインタビューは、このLPI-Jが発行するLinux標準教科書他5冊のライセンスとしてCCライセンスが採用されていることについて、採用のきっかけや、採用した効果、そしてCCやオープンソースムーブメント全体に関してLPI-Jがどう考えているかを紹介していきます。

* CCライセンスのライセンス形態の一つ。このライセンスが付与されたコンテンツを使う場合は、適切なクレジットを表示して変更点を示さなければならなず(BY)、営利目的で使ってはならず(NC)、作品を改変した状態で頒布してはならない(ND)。

CCライセンス採用の着想

Linux標準教科書の執筆者の一人である宮原徹氏は、日本でCCライセンスの使用例がまだほとんどなかった2007年、既にCCライセンスを付与したソフトウェアの教科書を出版する計画を立てていました。CCライセンスは著作物の創作者が自分の生み出したものを公開しつつその使われ方をコントロールできる、という点で、GNU GPL*などの他のOSSのライセンスとの親和性が非常に高いものです。宮原氏はこのことを知っており、Linuxの標準教科書を作る際のライセンスとしてCCライセンスを採用することを、現在LPI-Jで理事長を務める成井弦氏に持ちかけました。当時の様子を振り返って宮原氏は次のように語られています。(以下敬称略。)

[1] ZDNet JAPAN 2014/12/4 進む大企業のLinux導入

宮原:「残念ながら標準教科書プロジェクトを最初に立ち上げるときにCCを採用した実例がやっぱり少なかったのですよ。まだまだ。ですので、逆に先取りしてやりましょうよって言って。(成井氏に)『これは絶対目立ちますよ』って。」

このCCライセンスの導入の提案は、成井氏が企図した無料での教科書の公開とうまくマッチしました。成井氏率いるLPI-Jとしては、自身が運営するLinuxのプロを認定する試験の受験人口を増やしたい。そこで、Linuxの基礎的な内容の教科書を無料で提供し、Linuxユーザーの分母を増やしたい。しかし、あまりにも自由な状態で使われてしまっては統制が取れない。そこで、無料での利用を可能にしつつユーザーの出来る行動の範囲を規定するCCライセンスが採用されたのです。

成井:「教科書は無料で配布するのですが、勝手に中身を一部利用されて、我々のコントロールの効かない状況になると困ります。だから、我々が正当な使われ方かどうかを判断して、許可する。そういう、一定の制限を加える必要があるところでは、様々条件設定が出来るクリエイティブコモンズは良いですね。」

Linux教科書photo

CCライセンスで提供されている教科書。現在合計6冊が発行されている。

このCCライセンスの採用により、LPI-Jの教科書の普及は急速に広まったようです。以下、具体的な効果について見ていきます。

*フリーソフトウェアやオープンソース・ソフトウェアの分野で最も使われるライセンスの一つ。商業利用や改変も含めた自由な利用が可能だが、ライセンスされたソフトウェアを改変して再配布をする場合には、改変版も自由に利用できるソフトウェアとしてリリースしなければいけないという特徴がある。

CCライセンスを付与した効果

効果その1 LPI-J自身へのメリット:フィー・オン・フリービジネスモデルの実現

CCライセンス採用の結果、LPI-Jの教科書のフリーな流通が可能になりました。それにより、「フィーオンフリー」のビジネスモデルが可能になったと成井氏は述べます。フィーオンフリーとは、ユーザーに無料のサービスを提供し、その上に有料のビジネスを構築するビジネスモデルです。LPI-Jは、教科書をほとんど無料(製本版は実費のみかかる)で提供する代わりに、認定試験を有料で提供する、オープンソースの世界で言う、フィーオンフリーのビジネスモデルを実現しているのです。

成井:「我々の試験に関連する本を無料で配布することによって、勉強した人が最終的には我々の試験を受けてくれる。たとえばPostgreSQLと呼ばれるオープンソースのデータベース管理ソフトの本を無料で配信することによって今まで中身が判らないクローズドソースのDBMSしか体験しなかった多くの技術者がPostgreSQLの知識をつけて、我々の認定試験を受けて下さる。ビジネスモデル的に言えばフィーオンフリーのビジネスモデルになっていると言えます。ただ、LPI-JapanはNPOですので、我々の認定活動を通じて日本の技術者や企業の技術力の向上を目指している団体で、売り上げや利益を追求している団体ではありません。」

現在LPIC国内受験者総数は延べ24万人(取材時点)を超え、実際のレベル認定を受けた人は延べ8万7千人(取材時点)に上ります。さらに、Linuxの標準教科書は13万ダウンロード、サーバ構築標準教科書が6万ダウンロード等と、非常に大きな数となっています。受験者が必ずLPI-Jが発行する教科書を使っているかどうかは知ることはできません。しかし、宮原氏はこうした無料の教科書が存在することによって受験を勧めやすくなった、と語ります。

宮原:「これから試験を受けようとする人に対して、こういうことから勉強したらいいよと言い易くなりました。もちろん、標準教科書で(全ての)受験者が勉強しているわけではないんですけど、試験を受けている人はだいたい、ダウンロードしてくれているはずです。ホームページでも目立つところに出ているので。」

更に宮原氏は、Linuxの教育を行う学校にも使ってもらいやすくなったと言葉を続けます。

宮原:「あとは、専門学校などの教育機関に使ってもらいやすい。学校ではやはりそれなりに受講費をもらっていて、その中から教科書なりを選ぶ必要があるので、教科書選びには慎重にならざるをえない。でも(標準教科書は)無料だから『PDFでとれますよ、ダウンロードしなさい』って先生が言えばそれで終わり。だから使い勝手がいい。」

これに加えて、教育の現場に使ってもらいやすい形態で教科書が出来たことによって、LPI-Jにとっても更なるメリットを実現しています。それはアカデミック認定校の登録制度です。
アカデミック認定校制度とは、LPI-Jが認定する教材、講師や設備で教育を行う機関をLPI-J認定校にする制度です。登録すれば試験問題の改定情報を事前に得られたり、認定校のプロモーション活動をLPI-Japanと行えたりするメリットがあります。これらの教育機関が我々が無料配布している本をベースに教材を開発する場合もあります。
以上から分かるように、CCライセンスはフリーミアムのビジネスモデルを展開するうえで、使い勝手の良いライセンスとして機能しています。

効果その2 ユーザーへのメリット:教育の底上げ

CCライセンスをつけるメリットは、コンテンツの提供者側だけでなく、試験を受けるユーザー側にも存在します。それは無料で教科書が利用できることで、ユーザーが自身の教育投資が少なる点です。

LPI-Jの活動目的の一つは、「日本の技術者、企業、教育機関、国の技術レベルの向上」です。この目的の達成のためにはエンジニアが自分の意思で学習することが必要不可欠です。しかし、日本人には教育へ投資する意識が低い、と宮原氏は感じていました。株式会社びぎねっとでの初心者のためのコミュニティ運営やセミナーの開催を通じて 10年以上教育に携わってこられた宮原氏は、教育への意識の低さを肌で感じたと語ります。

宮原:「日本人は、教育投資をしなさすぎるというのが私の中の根源的な疑問です。私は10年以上エンジニア教育に関わってきていますが、とにかく日本人はお金を出さない。」

宮原氏がCCの導入を勧めたかったのはこの事態を改善したかったためでもあるといいます。

宮原:「教育にお金を出してくれないから、頑張って標準教科書を無料にしてCCにしたかった。この教科書がスタートになって、その中でもっと詳しく習得したいことを自分で調べたり、本を買ったり、外部の勉強会に行ったりしてもらえればいいな、と考えたのです。ちょっとずつでもいいから、自分に対してお金を使うという習慣の一歩にしてほしかったのですよね。」

宮原氏の試みのおかげで、ユーザーは無料になったLPI-Jの教科書を簡単にダウンロードでき、それによってLinuxへの一歩を簡単に踏み出すことが出来るようになりました。

宮原氏は教科書を作るほかにも「びぎねっと」での活動を含め、さまざまな試みをされています。その背後には、宮原氏自身の、教育格差を是正したいという強い思いがあります。

宮原:「今後ますます教育格差が広がると思います。たとえば親の収入が多い家庭は塾に行かせたりして教育投資をしますよね。だけど収入が少なければそうはできない。すると長い目で見たときに親の収入が多い方が子供はいい教育をうけるっていう傾向が加速すると思います。ですから、なるべく教育コストを下げていろんな人が様々な教育を受けられるようにしないといけないと考えています。
たとえば、初等教育とか中等教育レベルの教材を、リタイアした先生がボランティアのような形で教える。そういう形になっていくと面白いんじゃないかなと思います。私もこのテキストを使ったセミナーや、自習会という、黙々とこの教科書の内容をやって、私がそばにいて質問を受け付ける会を開催したりしています。」

宮原氏は、セミナーや自習会を通じて、長期的に教育格差が是正される世の中を目指していると語ります。そして、CCライセンスについて、教育コンテンツ全般を無料で公開するときのライセンスとして、有効に使えるのではないか、と考えています。

成井氏と宮原氏photo

CCライセンスの有効性について語る成井氏(左)と宮原氏(右)

CCライセンス採用のねらい

ライセンス意識の醸成を目指す

採用した背景の一つに、日本人にライセンス意識を根付かせたいという宮原氏の思いがありました。宮原氏は「日本人は権利義務意識が薄い。」という実感を持っており、ライセンス意識の醸成自体が重要な課題だと考えます。その課題を達成するために、CCライセンスの採用に至ったという経緯があります。

宮原:「Linuxやオープンソースをやっていて感じたのは、日本人のライセンスに対する意識がものすごく低いことなんです。たとえばLinuxやオープンソースは無償で入手できるから、タダでうれしい。でも、それだけという感じなんですよね。それに比べると欧米って権利義務意識が結構はっきりしている。海外のカンファレンスでライセンスに関するセッションに参加した時に感じたのですが、欧米はやっぱり意識が高い。日本では、自分がメリット受けたらちゃんとメリットを返すという意識がちょっと低いと思ったんです。つまり、日本では、ライセンスってものがあるから上手く回っているという意識がすごく薄いんですよ。」

この意識を変えるためには、ライセンス意識の薄い人にライセンスの大切さに気付いてもらうことが必要です。LPI-Jの教科書をダウンロードするときには、トップページに画像でCCのBY-NC-NDライセンスを示すマークが表示されます。また、紙媒体での教科書にも、初めにCCライセンスのマークが表示がされています。このことがユーザーのライセンス意識の向上につながるのではないかと宮原氏は考えています。

宮原:「(無料の教科書でも)ライセンスというものあるんだよっていうのが、たとえばこうやってマーク入れることで知ってもらえる。CCライセンスですよ、って画像で表示してあると、「CCって何?」って思ってもらえる。そこから、「へぇライセンスってものがあるんだ」って思ってもらえるといいな、と思っています。」

教科書に使用のCCマークphoto

製本版の教科書についているCCマーク。一目でそれとわかる場所についている。

もちろん、CCライセンスを使わなくても独自のライセンスを文章で書くことは可能でした。しかし、CCライセンスを導入することでユーザーにライセンスの事をよりわかりやすく伝えられるという効果がありました。

課題

無料教科書の広まりすぎはユーザーに悪影響

宮原氏は、いくつか相性がいい側面がある一方、相性が悪い面もある、といいます。それは、非常に安価な教育コンテンツが、有料のコンテンツと競合関係になると、教育コンテンツ自体から得られる収益が減り、コンテンツ提供者の数を減らすことにつながるということです。その場合、CCライセンスでは対処できません。宮原氏の言葉ではその懸念が次のように表されます。

宮原:「たとえば出版社さんが試験にチャレンジするための教科書を出版していて、それとLPI-Jの標準教科書が競合してしまうと出版社さんたちが出す気をなくしてしまう。それでは最終的には受験者の人たちにいろいろな種類の教科書や問題集を入手する機会を逆に奪ってしまいます。」

こうした懸念に対応するためにLPI-Jではコンテンツの「棲み分け」をしているそうです。あくまでLPI-Jによって無料で提供されているのは基本的な内容のみ、あとの応用の部分では技術力をつけて収入を向上させたユーザーが有料のコンテンツを利用することで対応してもらう、という姿勢をLPI-Jはとっているわけです。

宮原氏の考えでは、コンテンツの市場自体に安価なコンテンツが与えてしまう悪影響に対処するためには、コンテンツの市場をどのようなものにしていきたいか、というプランを持つことが必要です。そのプランと、CCライセンスという道具の両方があって、初めてフィーオンフリーのビジネスモデル上でCCライセンスがうまく機能すると、宮原氏は語っています。

オープンソースとライセンスへの「哲学」

オープンソースにおける「契約」

成井氏と宮原氏はCCライセンス、オープンソースムーブメント全体に対しても考えを持っています。宮原氏はCCライセンスは私人間契約(しじんかんけいやく)のアンチテーゼとして生まれた一種の社会契約だ、と考えます。

宮原:「『オープン』という考え方自体が、一種の共同体の中での社会契約なのです。今までの企業と個人の間の私人間契約だと、片一方の契約主体が何かのサービスを『もうやらないです』って言った途端に終わりになります。しかし、そのサービスが公共財として解放されていれば、『じゃあそれ引き継ぎますよ』という人が出てくることがありうる。わかりやすい例で言うと、何かの建物がダメになったときに、『これ手放します』って言うと、利用価値があれば地元のNPOとかボランティア団体が引き継ぐ例ってありそうですよね。価値あるものだったらそうやって継承されていく。それと同じなのですよね。そうやってLinuxも連綿と引き継がれてくる中で成長してきたということがあります。」

欧米では、ソースコードは一種の共有財産とみなされている場合もあります。また、税金で作ったシステムのソースコードはオープンソースにすべしという考え方を持つ自治体もあるといいます。日本でも国土交通省国土地理院がウェブ地図サービス「地理院地図」のソースコードをGitHub上に公開する、という動きも見られます*。共有財産としての情報という思想の広がりを感じさせる展開です。

一見、企業が責任をもって作っているわけではないOSSは非常に不安定なものに見えるかもしれません。しかし、一旦サポートや契約が終了してしまえば、私企業が作ったシステムであろうと脆弱なものになってしまう傾向があります。CCやOSSの文化は一つのアンチテーゼとして機能するのかもしれません。

* INTENET Watch 2015/1/15 「国土地理院、「地理院地図」がスマホ対応、「触地図」特設サイトや西之島のGIFアニメも登場」参照。
なお、実際のソースコードは コチラから見ることができる。

OSSのルールの生態系

今後のOSS系ライセンスについて、成井氏は「どのような世界を作りたいか」という哲学を持って構築していく必要がある、と言います。

成井:「たとえば、 GNU GPLを作ったリチャード・ストールマンのフィロソフィーは、オープンソースは改変されてもずっとオープンソースでなければいけない、というものでした。彼はライセンスを作るというか、オープンソース方式で作られたソフトはずっとフリーであり続けるという世界自体を作ろうとしたんですよね。同様に、もし新たなライセンス形態を作るなら、そのライセンス形態でどのような新たな世界を作ろうかというマクロなフィロソフィーが必要だと思います。それがないとライセンスの種類が増えるだけで、一体何を目指して新たなライセンス形態を作ったのだかわからなくなってしまう。」

また、宮原氏はよりよいライセンスがつくられていくために、ライセンス間の競争のようなものが起こるといい、という考えを持っています。

成井氏photo

ライセンスの哲学について語る成井氏

宮原:「みんなが準拠するべきルールが一つあるとわかりやすいですよね。OSSの世界って百種類ぐらいルールがありますから。全体的にはGPL、BSD、最近はApacheライセンスもよく使われます。それは多分開発した人が普段使っているソフトを参考にして、ライセンスを選択しているからだと思います。あるいは派生的にこれを再利用させてもらったからこのライセンスにしようといって自然に決まる。そうすると開発する人たちがそれに準拠する形で一種のルールができてグルグル回るようになっていきますね。
そういう時に、場合によってはCC以外のものが出てきても私はいいと思います。使いやすさとかあるいはわかりやすさ、といったところでライセンス同士の競争になって行けばいいと思います。その議論の下敷きとして、こういうライセンスありますよ、という紹介はどんどんしていくべきなのかなとも思います 。」

最近CCライセンスの最新版であるCC バージョン4.0の日本語版が公開されました。この最新バージョンの策定にあたってはCCライセンスの互換性が真剣に検討され、改善案としてグローバル版として文言が統一されました*。日本語版も、日本の法律に合わせて特別に内容を変更することなく、グローバル版の文言をできるだけ正確に伝えるように努めて作成されました。今後CCが世界中のコンテンツ提供者にとって使いやすいものになるために、我々も世界観・哲学を模索しながら活動していきたいと思います。

*しかしながら著作権法は国や管轄地によって異なるため、互換性の問題が完全になくなったわけではありません。たとえば、何を「翻案」とみなし、何を「複製」とみなすかについては、ライセンス上同じ言葉をグローバルに使っているとしても、それを解釈するにあたってグローバルに統一された判断基準はなく、それぞれの国の法廷が判断を積み上げて行って基準を作っていくというアプローチをとっています。このような、国毎に異なる判例の積み重ねの生み出すズレが、CCライセンスが持つ効力を国によって異なるものにしてしまう、といった余地はまだ残っています。

協力(敬称略):成井弦(LPI-Japan  理事長)、宮原徹(株式会社びぎねっと 社長)
取材・執筆・編集:CCJP事務局 中尾悠里、長谷川世一、冨山京子
※お二人へのインタビューは2015年前半に実施されました。肩書等は当時のものです。

なお、本稿に述べられている見解は、執筆・編集者のものであり、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンやコモンスフィアの公式見解と必ずしも一致するものではありません。また、インタビューにご協力頂いた成井様、宮原様、LPI-JapanのCCライセンスについての見解やライセンス利用法は、執筆・編集担当者が示唆に富んでいると判断したことから本記事で取り上げさせて頂いたものですが、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンやコモンスフィアの公式見解と必ずしも一致するものではありません。

CCライセンスを利用したビートメイクドキュメント 『240min Beat Make!!』映像を公開!

4月13日にDOMMUNEで配信した「CC0 CC4.0 RELEASE SPECIAL!CCの航海、コモンズの現在地!!」に先駆けて、美学校の協力のもと行われたイベント『240min Beat Make!!』のドキュメント映像を公開します。

新進気鋭のビートメイカー、Madegg、食品まつりa.k.a foodman、Metome、canooooopy、4名のここでしか見ることのできない生の声を収録。

どのように音源素材を探し、そこからどんなビートができたのか?CCライセンスの可能性とは?「CCライセンス」や「ビートメイカー」に興味がある方は特に!そうでない方も、完成した楽曲と合わせて是非お楽しみください!!

参加していただいたビートメイカーの皆様のご紹介と今回制作していただいた作品はこちら!
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canooooopy
“100%SAMPLING製法”を謳い、GarageBandのみを使ったサンプリングのみによる制作スタイルで話題を呼ぶ。これまでメキシコ、アメリカ、イギリスほか世界15ヵ国からさまざまな形で作品を提供。近作にはVirgin Babylon Recordsからリリースの『百夜を繋ぐ言の千切れ葉』、BOOLとの”共著”短編ポエムコア集『夢は架空の群像に咲く』など。http://canooooopyworks.tumblr.com/

今回の企画では28トラックもの楽曲を使って緻密かつ大胆でハイクオリティな楽曲を制作していただきました。元ネタがどこにどう使われているかを探ってみるのも面白いかも!


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食品まつり a.k.a foodman
ジューク、レフトフィールドその他分類不能で刺激的なトラックを世に送り出す電子音楽作家。
さまざまな作品を国内外のレーベルから次々に発表している。近作にはOrange Milkからリリースの『Ez Minzoku』、postgeographyからリリースの『IKEIKE』など。

今回の企画では、ピッツバーグ出身であらゆるジャンルを横断し絶妙なチープさで心揺さぶる楽曲を公表し続けているJason Shawという方のトラックを複数使い倒して熱いトラックを制作していただきました!


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Metome
ジャズ、ファンク、ベース、エレクトロニカを軸に、様々なジャンルを独特な美的感覚で融合させた、グルーヴィーで優雅なビートミュージックが国内外で高い評価を得ている。近作にはSchistからリリースの『Objet』、postgeographyからリリースの『FEATHR』など

今回の企画では1トラックのみを使用したリミックスで素晴らしい音響の作品を制作していただきました。元ネタと聞き比べてみるのも面白いと思います!


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Madegg
16 歳より音楽活動を始め、フィールドレコーディング、ソフトウェアを使用したコラージュ、ノイズミュージックの制作を開始。 大学在学中にSonarSoundTokyo 2013 に最年少で出演。同年 Roji Ikeda“supercodex live set” World Premiere のオープニングアクトに抜擢される。 これまでに 3 枚のフルアルバム、複数の EP、くるり、泉まくら、Qrion といったアーティストのリミックスを複数発表している。自身名義の近作にflauよりリリースの『NEW』など。http://kazumichi-komastu.tumblr.com/

今回の企画ではダンス要素を拡大させたMDG名義で制作していただきました。冒頭からMadegg節が炸裂しててカッコ良いです!

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3Dプリントでできた物にはどのようなライセンス表示をすべきか?

 

原文(〈著者:ジェーン・パーク〉2016年4月19日)
https://creativecommons.org/2016/04/19/attribute-3d-printed-objects/

 

CCライセンスがついた3Dデザインを用いて印刷し、3Dの立体物を制作する場合、そのデザインの作者をどのように表示すべきでしょうか。

3Dプリントされた物に関する作者の表示、もしくは「デザイン・ソースの確認」にまつわる課題は、CCネットワークの重要な一部である、3Dプリンティングに関わるコミュニティにおいて、広く検討されています。複雑な問題ですが、3Dデザインのクリエイターとユーザー双方がこの問題を検討する必要性を感じています。クリエイターは自分のデザインがクレジットされることを望みます。認知されることは気分のよいものですし、クリエイターとして、自分の作品が使われているのか、そしてどのように使用されているのかは知りたいものだからです。ユーザー(ユーザー自身クリエイターであることもよくあります)は、対象物のデザイン・ソースを知りたいと考えます。そうすれば、そのデザイン・ソースを使って新たに印刷したり、デザインを変更したり、他のデザインとリミックスさせたり、あるいはそのデザインに大きくて、クリエイティブな改良を加えることができるからです。

昨年10月のCCグローバルサミットで、Shapeways(シェイプウェイズ)のマイケル・ワインバーグは、この3Dプリンティングの表示に関する課題について初めてプレゼンテーションを行いました。その問題の概要をこちらの投稿でまとめています。

CCとしては、これは単にCCライセンスの表示の条件を遵守すればよいという問題ではありません。そもそもCCライセンスが付与された3Dデザインを3Dプリンティングした立体物に対し、表示を法的に求められるかどうかは議論の対象となるところです。

表示の必要の是非という法的な問題とは別に、CCがこの問題に興味を寄せるのは、それが私たちの新たな3つの戦略的成果のうちの2つ、すなわち、「発見」と「協働」に関わっているからです。3Dプリンティングされた立体物の表示方法を標準化し、その背景にある情報インフラ(例:レジストリやデータベース)を提供することは、立体物に付与されているCCライセンスのデザインに関するさらなる発見につながります。また、CCライセンス下のデザインを異なる文脈で独自に、もしくは元のクリエイターとのやりとりして翻案物を作っていきたいというユーザーたちにとって、つながりやコラボレーションを増やすことにもなります。

デザインに付与されているライセンスを示すことは簡単です。ThingiverseやSketchfabといったプラットフォームのおかげで、3Dデザインをアップロードし、CCライセンスをつけて掲載することが容易になりました。デザインファイルをダウンロードする先のウェブページに、機械で読み込めるライセンスのメタデータが埋め込まれるようになっています。ただ、そのファイルを3Dプリンティングすると、(物になった時点で)ライセンス情報は消えてしまい、その創作物のソース(作家やソースに辿り着く方法など)も同様に失われてしまいます。3Dプリントされた物にはライセンス情報がつかないのです。例えばThingiverseの「print thing tags」のように、プラットフォームによってはこの問題の回避策が提供されてはいますが、この回避策が有効なのは、置物や立像のような物に対してだけであり、イヤリングのような物には有効ではありません。ではどうやって、著作権を有する3Dプリントされた物のソースを確認し、クレジット付けをしたり、自ら作ったバージョンをあしたり、元のデザインを繰り返し使ったりすることができるのでしょうか?表示することが法的に義務付けられている場合、どうやってCCライセンスの表示に関する必要要件を満たすことができるのでしょうか?

 3Dプリントされた立体物のソースについて、その標準的な表示あるいは確認方法を考えてみましょう。

3Dプリンティングに関する現在のムーブメントや寄せられている関心を考えると、この標準ルールは今すぐにでも導入されることになるでしょう。ただし、どんなルールが作られるのであれ、見つけることができ(機械で読み込める)、使えるもの(ユーザーフレンドリー)であり、広く適用される(3Dコミュニティの承認済みの)ものでなければいけません。また表示一つ一つの背景にある情報が失われることなく、レジストリやデータベース上できちんとインデックス化されるようにしたいと考えています。そうすることで例えばユーザーは、3Dプリントされた立体物をスキャンしたときに、そのソースやライセンス情報だけでなく、その印刷物の派生物や関連する商業製品をも確認したりすることができることが期待されます。

この3Dプリンティングに関する標準ルールは、(デジタルの3Dデータのみならず)デジタル情報にリンクする物理的な立体物の領域でも、適用できることが望ましいですが、ひとまず3Dプリンティングのコミュニティのニーズに焦点を当てたいと考えています。

まずどこから始める?

まず、考えねばならない基本的な問題と法律上の課題を下に挙げましたので、これらに関する検討から始めましょう。

要約:どのような種類のコンテンツならば、著作権の保護対象となるのかを含め、3Dプリンティングの基本についてリサーチし文書化します。3DプリンティングのコミュニティでCCライセンスがどのように使われているのか(ユーザーは何に対し、どのようにCCライセンスを付与しているのか、現在はどのようにクレジットやソースに関する情報をつけているのか)、リサーチします。また、著作権がないゆえに表示が(法的な意味で)必要とされない場合であっても、社会的な規範の一つとして表示を推奨する政策の意味も探っていきます。

リサーチ事項の詳細

Dプリンティングの基本的な知識

  • アイディア作りから対象物のクリエイションまで、最も一般的な3Dプリンティングの過程をわかりやすく説明する。これには関連デジタルファイル(例:スキャン、CADファイル)の種類、3Dプリンターの技術的プロセスの簡単な説明などを含む。
  • この領域ではどのくらい頻繁にCCライセンスが付与されているのか?どの程度正しく表示されているのか?
  • 3Dプリンティングにおいてクレジットを表示したり、ソースを特定したりする際に一般的に用いられている技術は何か?(他の分野と同様の)一般的な表示ライセンス(ShareAlike)の表示方法が用いられているのか?   

3Dプリンティングにおける著作権の役割

  • 3Dプリンティングのプロセスでは、どのデジタルファイルと対象物に著作権が付与されることになるのか? それはなぜか。また付与されないものは何か?
    • これらデジタルファイルと対象物における、著作物性の限界は何か?またどのようにして適用され得たのか、もしくは適用されているのか?(例:適用できる条文があった、創作性が認められる表現かどうか(例: 実用品、マージ理論))?
    • 関連判例の要点を明記(米国、及び主要な海外判例)。
  • 3Dプリンティングのプロセスにおいては、どの時点でこれら対象物の著作権を問われる可能性があるか?
    • 複製や翻案においてはどのような例外や制限が与えられる可能性があるか(例:フェアユース、分離テスト)
    • 関連判例の要点を明記(米国、及び主要な海外判例)

3Dプリンティングにおける著作権についてのリサーチを踏まえて検討すべき政策上の意味

  • クレジットの表示が法的に求められないとしても、表示を行っていくことを原則とすることを推進することが、著作権の保護範囲の拡大(あるいは世間一般の人たちが著作権の範囲が拡大すると認識すること)につながるだろうか
  • 著作権が適用されない場合、この領域におけるCCの役割は何か、あるいは役割は何であるべきか。

マイケル・ワインバーグとPublic Knowledgeはこれらの疑問に対し、素晴らしい基本的な事項のリサーチをすでに行っています。他の既存のリサーチへのリンクも歓迎します。私たちがアクセスできないアカデミックなリサーチもあるかもしれませんので(皮肉なことですが)、どのようなアドバイスでも歓迎です。

 ご意見・アイディアをお待ちしています

法的なリサーチを詳細に行うと同時に、私たちは法律、デザイン、そしてテクノロジーに関する3Dの専門家たちの初会合の開催(CCライセンス下の3Dデザインのホスティングと配布ができるプラットフォームづくりを含む)に向けて尽力したいと思います。私たちは、会合を踏まえて最初に考えたことやプロトタイプの青写真をシェアし、コミュニティからのフィードバックを集約し、プロトタイプを発展させていくつかのプラットフォームでテストしたいと思います。目的は、技術的にパーフェクトな何かを開発することではなく、広く簡単に使える、コミュニティに支持されるものを開発することにあります。

上記のいずれに関することでもご意見をお待ちしています。法律上、あるいはポリシー上の疑問において、何か見落しとていることがあれば、あるいはプラットフォームですでに用いられているテクニカルなソリューションで私たちが検討すべきことがあれば、さらにはまだ私たちが接触していないものの協力してもらうべき人たちがいれば、ぜひお知らせください。最後に、重要なこととして、ユーザーとしてあなたが現在行っていることやあなたがお持ちのアイディアも歓迎します。ご連絡は直接こちらか、CCコミュニティのリストへどうぞ。プロジェクトは、ようやく始まったばかりです。

 

翻訳:松丸、東久保、水野