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【まとめ】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC

2017年、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンでは、『CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC』と題して一連の企画を実施してきました。

富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを付けて公表するというのが基本的な内容なのですが、そこから派生した一連の企画も展開してきました。
まとめとして各々のリンクを以下に掲載していますので、気になる内容がありましたらご覧いただけましたら幸いです!伝統文化が新たな創造へと繋がって行く可能性、そしてCCライセンスの可能性と限界を探る連続した試みです!

「越中おわら道場」による演奏の録音と、VIDEOTAPEMUSIC、colorful house bandによるリミックス


演奏を録音させていただいた「越中おわら道場」代表の庵さんインタビュー

【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.1
リミックスを制作していただいたVIDEOTAPEMUSICさんインタビュー
【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.2
リミックスを制作していただいたcolorful house bandのDJ KENSEIさんインタビュー
【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.3

DOMMUNEで放送した、ドミニク・チェンCCJP理事・大石始さん・高橋幸治さん・宇川直宏さんによる、上記の録音&リミックスの紹介から伝統・リミックス・テクノロジーなど多方面に展開したトークプログラムの書き起こし記事(前編/後編)
【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.4
【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.5

DOMMUNE放送時のtweetを中心にまとめたTogetter
#DOMMUNE 「Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC ~伝統文化からCCライセンス、ブロックチェーンまで~」まとめ #越中おわら節xCC

まとめてご覧いただけると、様々な角度から楽しんでいただけると思います。音源はCC-BYで公開していますので、新たなリミックスを作ってもらったり、CC-BYの条件の下で自由に使っていただけたら嬉しいです。
創造の循環が広がることを祈って!

【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.5

DOMMUNEトークプログラム『Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC ~伝統文化からCCライセンス、ブロックチェーンまで~』ダイジェスト版書き起こし(後編)

富山県富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表するという今回の企画。

今回は最終回!! 2017824日にDOMMUNEで配信されたトークプログラムのダイジェスト版後編です!!!!

CCJP理事のドミニク・チェンをホストに、ライター・編集者の大石始さん、編集者の高橋幸治さんをゲストにお迎えして、DOMMUNE宇川さんがトークに参加する場面もありつつ、前編ではアラレちゃん音頭からダンシングヒーローなど進化系盆踊りのお話や、きゃりーぱみゅぱみゅが音頭で国民的アイコンになった瞬間などのお話を、お届けしてきましたが、後編では今回の企画で録音された越中おわら節と、制作されたリミックスの試聴から始まり、ブロックチェーンの可能性、そして音楽の未来に希望を見る妄想トークをお届けします。

ぜひお楽しみください!

なお、番組に寄せられたツイートをtogetterにまとめていますので、こちらも合わせてどうぞ!
togetterまとめ→https://togetter.com/li/1147105

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(ドミニク)いやぁ、本当に話も尽きないのですが、今回録音した越中おわら節の元音源と、それをVIDEOTAPEMUSICさんとcolorful house bandさんにリミックスしていただいた曲を聞いていきましょう。この「越中おわら節」面白いのは、胡弓が入っているんですよね。胡弓が入っている日本の民謡とかってあるんですか?

(大石)結構珍しいんですよ。胡弓が「越中おわら節」で使われるようになったのは明治40年代以降らしくて。江戸初期には胡弓はいわゆる門付芸人、いろんな家を回りながら金品を受け取って生活をする芸人が胡弓を使って演奏をしていたっていう話はあるらしいんですけれど、その時代から演奏されていたものではないんですね。

(ドミニク)明治40年っていうと、日清戦争の10数年後ぐらいですね。

(大石)そうですね。だから、大きい時間で言えば割と最近のことですよね。

(ドミニク)こういう貪欲さも日本的な特異さなのかもしれないですね。では、お聞きください、「越中八尾おわら道場」による「越中おわら節」です。

(ドミニク)はい。こちらが原曲の「越中おわら節」でしたけれども、大石さんいかがでしたか?

(大石)いやあ、素晴らしいですよね。やっぱりこのテンポ感、すごくゆっくりしてるんだけども、しっかり確かなグルーヴがあって。踊ってる図は見えるんだけども、現代のポピュラー音楽の感覚からすると、ここまで遅い音楽ってなかなかないですよね。

(ドミニク)ありがとうございます。高橋さんいかがでしたか?

(高橋)独特ですよね。日本における弦楽器の受容みたいなことで言うと、弦楽器に幾つか種類があると思うのですが、バチで弾いたりとか、指で爪弾いたりとか。胡弓というのは、馬のしっぽの毛とかで擦るものですよね。以前本で読んだのですが、日本には弦を擦るタイプの弦楽器が、実は相当入ってきてるんだけれど、広まらなかったようですね。

(ドミニク)確かに、無いですよね。

(高橋)バチで弾くとか叩くと指で爪弾くというもの、例えば三味線中国から一回沖縄に入って、本土に入ってきてますよね。正倉院には大陸から伝わってきた楽器がたくさんあるけども、その中には馬の尻尾の毛で擦るタイプの楽器も実はたくさんあるらしいんですよね。入ってきてるんだけども、日本の風土には広まらなかったという歴史があるようですね。だから胡弓が入ってる音楽は、そういう意味でもとても珍しいんだと思うんですよね。

(ドミニク)これ自体がリミックス的という感じがしますね。

(大石)そうですね。エキゾチックな感じもしますよね。

(ドミニク)とても不思議な感じですよね。ちなみに「おわら節」の「おわら」ってどういう意味があるんですか?

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(大石)「おわらい」からきてるんじゃないかとか、いろんな説あるらしいんですよね。ルーツがはっきりしなくて、謎めいた部分も多いんですけど、民謡自体そういうものが多くて。ただね、九州各地に「ハイヤ節」っていう歌があるんですよ。

(ドミニク)「ハイヤ」ですか。

(大石)「ハイヤ節」っていうのは、日本列島の民謡の大きな源流の一つなんですけど、その「ハイヤ節」に近いフレーズが「おわら節」に入ってるんですね。だから九州から北前船経由で富山に入ってきている部分が確実にあるんですよ。「おわら節」にも混血音楽的なところがあって、そこがおもしろいところですね。

(高橋)民謡っぽい節回しもあり、ちょっと義太夫のような感じもあったり、不思議ですよね。

(大石)そうですよね。八尾っていう土地は昔から義太夫や小唄が親しまれていたっていう話があるらしいですよね。そういう影響がもしかしたら出てるのかもしれない。

(高橋)なるほど。

(ドミニク)はい、じっくり原曲を聞いて、その背景も知ったところで次はリミックス曲に移りたいと思います。最初にVIDEOTAOEMUSICさんによる「Ecchu-Owara-Busi VIDEOTAPEMUSIC Remix」をお聞きください

(ドミニク)VIDEOTAPEMUSICさんによるリミックスでしたけれども、大石さん、いかがでしたか?

(大石)最高ですよね、これ。本当に素晴らしいと思います。最初と最後に水の音が入っていて、すごく印象的なんですけど、クリエイティブ・コモンズのホームページに掲載されているVIDEOTAPEMUSICさんのインタヴューによると、八尾の町に実際にVIDEOTAPEMUSICさんが足を運んだとき、路地の横をずっと水が流れていることが印象的で、それで水の音を録音した、と。

(ドミニク)フィールドレコーディングをしてるんですよね。

(大石)そういう事ってすごく重要だと思うんですよ。最初のほうでお話をした岐阜県の郡上踊りも、踊る人の下駄の踏み鳴らす音がリズム面においてすごく重要な役目を果たしているんですね。しかも大地を踏み鳴らす動きというのは悪霊を祓う意味合いもあるんです。お相撲さんの四股と一緒の、いわゆる悪霊祓いの足踏み、返閇がルーツにある。ただ、郡上踊りのCDを聞くと、その下駄の音って大抵入ってないんですよ。

(ドミニク)なるほど、それはちょっと残念ですね。

(大石)そうなんです。だから聞くと、なにかが圧倒的に足りないんですよ。

(高橋)実は重要な要素なんですね。

(ドミニク)それでは、最後の曲ですねcolorful house bandさんによる、「Ecchu-Owara-Bushi colorful house band Rebuildお聞きください

(ドミニク)はい。colorful house bandさんによるリミックスでした。これもやばいですね!色々好きすぎるポイントがあって、司会の役を放棄しそうになってますが(笑)いかがでしたか、大石さん。

(大石)これもまた、いろんな意味で面白いですね。さっきのVIDEOTAPEMUSICヴァージョンが元の歌に八尾の空間性などを加えていって世界観を広げていったとすれば、こちらのバージョンはラップが入っている。ここでラップしてるのはHIDENKAという素晴らしいラッパーですね。いわば「おわら節」を一つのトラックとして捉えているような感覚があるというか。いろんな言葉を新たに乗せていくって意味では、リミックスというよりもリビルドの領域ですよね。

(ドミニク)再構築ですね。

(大石)新しい曲が作られてるっていう感じがすごくしますよね。

(ドミニク)ありがとうございます。高橋さんはいかがでしたか。

(高橋)この「越中おわら節」が内包している色々なものを、それぞれ2組のトラックメーカーの方が、それぞれ違う形でうまく引きだしてるなという感じがしますね。

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(宇川)凄い良かったですね、今のトラックね。

(大石)最高ですね。

(宇川)彼岸を感じましたよ。

(ドミニク)彼岸を感じますよね。

(宇川)そこから先の涅槃すら感じますね。

(ドミニク)いやこのHIDENKAさんの声とリリックがやばすぎて、もう泣きそうになってるんですけど。

(全員)笑

(ドミニク)途中でコブシも入っている、コブシ入りのラップってちょっと聞いたことない。

(大石)そうですね。

(ドミニク)これは、ド名曲が2曲も出来ちゃったんじゃないですか!

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(ドミニク)SoundCloud上の、これはcolorful house bandさんのリビルド曲のページです。どのような条件かは、説明文の下のクリエイティブコモンズライセンスっていう部分をクリックすると出てきます。これはAttributionと言って、クレジットをちゃんと表記してさえくれれば、You are free to share and adapt、どんな場所でも自由に連絡とか全く必要なく使うことが可能です。だから是非これらの曲を日本中の盆踊りを踊るときに使っていただきたい。

(高橋)そうですよね。

(森)今回かけてませんが元の曲の胡弓のソロバージョンも収録していて、そちらもすごく良いと思います。素材としても魅力的で使いやすいものではないかと思っています。

(ドミニク)はい。どんどんリミックスしてもらって、21世紀ならではのお盆カルチャーがネットと実世界を交差しながら成長していってほしいです!

さて第一部は、一旦ここで区切らせていただいて、第二部がブロックチェーンの可能性という

(高橋)唐突な感じがしますね(笑)

(ドミニク)唐突感ありますね、ここまでのソウルフルな感じが一気に消し飛んでしまいそうですが(笑)。今回の主旨をご説明しますと、dotBlockchainというベンチャー企業がアメリカにあるのですが、彼らは音楽の権利許諾をブロックチェーンの技術を使うことによって、解決しようという人達です。Wiredでインタビュー記事が載っていたりもしていて、その創業者であるBenjiさんにインタビューを申し込んで、OKを頂いてたのですが、残念ながら急遽出張が入ってしまってキャンセルということになってしまい、少々変更となります。

ここからは、先ほど前半でいろんな民謡であるとか伝統芸能の話をしてきましたが、その世界観をもっとテクノロジーを使うことによって、こういうことができたら良いよねみたいな、妄想を広げるような話をしていければと思うんですね。

(高橋)そうですね。

(ドミニク)まずはこのお題で何か思うことはありますか?高橋さん。

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(高橋)音楽ということを、深く考えてしまうとですね、一つのエピソードですが、沖縄民謡の嘉手苅林昌さんという方がいらして。本当に名人でいらっしゃるんですけども、その方が自分のライブの時に、お客さんに向かって、歌を聞きにくるやつは馬鹿だって言ったらしいんですね。要するに歌っていうのは歌うものであって聞くものではないと。

(ドミニク)ああ、聴きに来てるんじゃない、音楽とは自分で歌うものだということですね。

(高橋)そうなんです。それをお客さんに向かって言ったっていうのが一つエピソードとしてあるようなんです。色々な見方考え方はありつつも、とても僕は音楽の、すごく根源的な部分みたいなものを言い当てているような気がするんです。

(ドミニク)なるほど。

(高橋)自分が参加してなんぼっていうところがあると思うんですね。演奏する人と聞く人、歌う人と聞く人が分化して別れてきたというのは、音楽が産業化していく中で、出来てきた区分ではないかと。だからそれが確立する以前は、自分で歌ってなんぼとか踊ってなんぼというものだったと思うんですよね。

(ドミニク)そう考えると、まさに創造の共有、クリエイティブ・コモンズだったわけですよね。

(高橋)そうなんですよね。だから自分で何かしらの形で活用する、使うものであるという事を考えると、労働歌みたいな文脈の中では、例えば替え歌が作られたりとかいう形で、その土地の人達に歌われてきたんですよね。

(大石)そうですね。レコードという記録媒体に記録されたり、譜面に書かれたりする前というのは、歌の形自体が固定していなかったと思うんですね。だから人によって、集落によって歌い方も違っていたわけだし、リズムもメロディーラインもそれぞれバラバラだったと思うんですね。それがレコードに記録されて、ラジオに乗ってしまうと、ひとつのスタンダードなスタイルになってしまう。民謡で言えば「正調」とか言われたりしますけれど、お師匠さんがその正調というスタイルをお弟子さんに伝えていくことで、様式がさらに固定していくわけですね。でも、民謡はそもそも異なる土地の歌が結びついたり、新しく作り替えられたりしながら歌い継がれてきた。リミックスというのは、固定された民謡の形をもう一回揺さぶって、改めて流動的なものにするものだと思うんです。

(高橋)そもそも持っていた、改変性や流動性というような自由度みたいなものをもう一回解放することで、音楽が再び活力をもてるのではないかという気がしています。

(ドミニク)ブロックチェーンの本質はいくつかありますが、一言で言うとユニバーサルな分散データベースなんですね。分散してるというのは、つまりある個人や企業や国家が独占できないアーキテクチャとなっていて、ノードと呼ばれる世界中の人たちが参加しているネットワークの中で、ハイパーレジャーと呼ばれている台帳が分散してあちらこちらにクローンがあるわけです。

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例えば、僕が高橋さんからお酒か何かを譲ってもらって、その報酬として0.04ビットコインとか払うとすると、その記録っていうのが世界中に分散するハイパーレジャーにクローンされていくわけです。そして、そのクローンしていくときに計算能力をとても使うプロセスが走り、計算がすごく大変なのでハックもしづらいっていうことなんですね。

だから、世界一セキュアなものを目指しているものではあります。過去には有名なイーサリアムっていうブロックチェーンは何回かハックされ、大損害を出したこともありますが、原理的には本当の意味での分散データベースというものができてきていると思います。
今、それが様々な人に想像力を掻き立てていて、例えば不動産の登記とかは現在、政府による認証を得ていますよね。それこそ役所とかで確かにこの土地はあなたのものですとかやるわけですよね。でも、そういった情報を全部ブロックチェーンに置いて共有することで一番セキュアで効率的な社会システムを作れるのではないか、ということをやり始めているベンチャーも出てきていますね。

その大きな流れの中で音楽に関係するところで言えば、著作権情報などをブロックチェーンに記録しておけば、今まで出版社とかを通して交渉したりしなきゃいけなかったところが中抜きできたり、自分が決めた一定の条件下での利用をあらかじめ許諾しておくということもできるのではないか、更にスマートコントラクトのプログラムを走らせれば、例えば僕が高橋さんの曲をリミックスして僕がお金を儲けると、僕が儲かった分から高橋さんに自動的に数パーセント還元されるような仕組みもできるのではないか、ということが考えられています。

(高橋)中間業者とかを介さずに個人間送金とかもできてしまう。

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(ドミニク)触っていいのかとかダウンロードしていいのかということを、エンドユーザーが意識せず、ただ聞くだけではなくて自由に使ったりする事が出来るようになる可能性があります。

(高橋)そうですね。ブロックチェーンは色々話題になっていますが、まだまだこれから使い方とか活用のされ方とかが開拓されていくところでもあると思うので、いろいろな文脈で捉えている人がいると思います。ビットコインとセットで考えている人もいれば、そうじゃない人もいると思う。今ドミニクさんの説明を聞いた人の中にも、なんかそのすごくサーベランスな、みんなで監視して誰がいつ何を買ったとかが全て記録される閻魔帳のようなイメージを持つ人もいるかもしれないですね。

(ドミニク)閻魔帳って良いですね(笑)

(高橋)もう良いこと悪いことも、みんな記録されていくように捉える人もいるかもしれないけれど。もっとポジティブに、今までのインターネットが「情報のインターネット」だとすれば、これからのインターネットは、「価値」をいかにちゃんとみんなで共有しながら上手く運用していくかというもの、と捉えていくことで、自分が使い、誰かに提供し、発表し、さらに誰かに改変されることを、とてもオープンな形で、そこに参加する個人個人で運用をしていくものに育つ可能性がある気がします。

(宇川)現在YouTube の動画をスキャンして自動検知するコンテンツIDってありますよね。例えば dommune ってリアルにこのシステムに晒されているのでが、DJが著作隣接権に触れる楽曲をプレイして、警告の上、2回バンされたら、アカウント剥奪されるっていうシステムがあります。その前提として、例えば誰かがここで北島三郎さんの「まつり」をかけたとして、権利元に連絡が行ったとします。その上であえて広告を表示させ、動画を収益化させて、そのコピーライトを現金として還元させるシステムっていうのは既にありますよね。

(ドミニク)そうですね。そのYouTube のコンテンツIDは、優秀で先見的な取り組みですね。コンテンツを配信してる人は権利を意識せずに使っても良いと、使っても良いんだけれども、ちゃんとYouTube がその広告収益を権利者に還元するよっていうことで関係者間の平和を保っているということですよね。

(宇川)そうですね。作詞作曲という意味での著作権に関しては、日本であればJASRACやドイツであればGEMAで権利の配分の取り組みがありますよね。そこからやっぱり一歩進んだところで原盤権の問題がありますよね。特に dommuneはDJカルチャーを推しているので、原盤権問題が常にグレーなのです。それにも関わらず、このような形でのびのびとやらせて頂いていますが(笑)、それはやはり、コマーシャルメディアとしての実績があるから、と言えます。例えばニューリリースがあったとして、DOMMUNEに出演することによって、AMAZONの売り上げが配信時間中に急激に伸びる。そうやって販促値がきちんと数字として現れているので、レーベル側もむしろ出稿してでもこのメディアに出演させたいと思ってくれている。そういった風通しの良さと新陳代謝があります。しかし、現代の日本の法律では、原盤権問題が常につきまとっているわけです。それもブロックチェーンが解決してくれるという話ならば、明日から師匠と呼ばせていただきます(笑)。

(ドミニク)そこは先ほど高橋さんがおっしゃっていたように、全部定義できるがゆえに、逆に雁字搦めになる部分もあるのではと思います。

(高橋)そこは問題ですよね。権利問題とかグレーにしているがために、豊穣に育ったカルチャーとかあったりするわけですよね。

(ドミニク)現代で言えばコミケや民謡というのもそうですよね。例えば江戸時代にJASRACがいたら(笑)

(全員)笑

(高橋)もう大変ですよね(笑)

(ドミニク)端唄とか小唄とか全部ね。今の音楽教室問題が江戸時代にあったら、長唄の寺子屋とか謡曲の習い本とか含めて、もう日本滅亡しちゃいますね(笑)

(高橋)本当ですね。全部摘発されちゃいますね(笑)

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(大石)やっぱり民謡や伝承歌ってやっぱりその土地だったり、あるコミュニティーで育まれてきた側面がすごく強いと思うんですね。今回のおわら節に関しては、オリジナルの演奏者の方が「自由に改変して良いよ」っていうことで、こういうプロジェクトが成立してるわけですよね。土地の人からこういう形で許諾を得れているというのは大きい。法的な許諾、改変する権利を獲得しても、土地のルールのなかではあまり効力を持たないこともあると思うんですよ。

(ドミニク)なるほど。仁義的なものが大事なんですね。

(大石)VIDEOTAPEMUSICさんのインタビューの中でも、伝統芸能に映像をつけてVJをやったら怒られたというような話をしてましたよね。民謡の世界でもそういうことはあると思います。いくらこちらが良かれと思ってリミックスしても、土地の人たちからしてみると、「こんな話、聞いてないよ」で終わりというか。そういう難しさっていうのはどこか孕んでるところがあると思うんで、今回みたいに演奏者の人から「好きにやって良いよ」とお墨付きを得てる物は、ある意味すごく安心だと思うんですよ。そういうものがないと、まず土地の方に一升瓶持ってお邪魔して、朝まで飲むところから始まるわけですよ(笑)。

(ドミニク)お神酒を捧げて、奉納して(笑)。

(大石)で、「君もなかなか飲むな、じゃあ好きにしていいよ」みたいな世界って、現代でもありますからね(笑)。

(ドミニク)それはブロックチェーンじゃ無理だなぁ。

(全員)笑

(大石)だから、そういう理解のある地元の演奏者の方が「好きにしていいよ」とオープンにしてくれる音源がもっと増えれば、民謡を新しく改変してリミックスするという行為ももっとやりやすくなると思うんですよ。

(ドミニク)リスペクトする気持ちでね。ただリスペクトを払う行為を自動化するのは語義矛盾な気がするんですよ。だから逆に情緒や人情が、すごく大事なパスワードになる、と言うと変な言い方になるかもしれないけれど。それは何か一周して面白い話ですね。

(高橋)音楽って記録されるようになって以降、普及という観点でいえば、たくさんの人に聞かれるようになったとか、ある種とても自由を得たと思うんです。でも、その裏では、記録され様々な権利関係などが出てきたことで音楽というものが不自由なものになっているとも感じます。だから一つのテストとしても、その不自由さを少しでも解放できる何か方策がないのかっていうことで、ブロックチェーンというものには期待したいっていう感じはあります。

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今日は、たまたま「越中おわら節」が取り上げられましたけれど。歌を歌う人がいなければなくなってしまう音楽ってすごいたくさんあるわけですよね。だから、どのように残すのかということもありますよね。

(大石)そうなんですよね。この瞬間にもなくなっている歌って確かにあって。僕もいろんなところを回っていると、地元の人たちから「いろいろと大変で、3年後はもう続けられないかもしれない」という話を頻繁に聞くんですよ。そこの歌や囃子を録音して記録として残すことはできるんですけれど、それを生きたものとして繋げていくにはどうしたら良いのか。それはもしかしたらリミックスもそのひとつの方法なのかもしれないですよね。

(ドミニク)お祭りのレシピは作れないんですかね。

(大石)お祭りのレシピ!

(ドミニク)つまり、マニュアルって言うと悪い言葉かもしれないですけれど、それが一回消えてなくなったとしても、やる人がいなくなったとしても、そのレシピがあれば、違う場所で、復活っていうか、再生できるっていうかね。なんか、そういう形式ってないのかなっていう。

(大石)そうですね。多分ね、歌われている言葉やリズムは、そうやって記録して再生することもできると思うんですけど、歌っていたこのお爺さんしか知らない個人史、地域の歴史みたいなものがやっぱり大事で、それが途切れることによって、一回歌やリズムが死んでしまうことってあるんですよ。そのあと誰かがその楽譜をもとに伝統を再生することはもちろん素晴らしいことですけれど、一回歴史が断絶してしまう部分はどうしてもある。歌が本来持っていた生命力をどういう風に維持するかが大事で、そのやり方は僕らも考えていかなくちゃいけないし、いろんなアイデアが出るべきかなと思いますね。

(ドミニク)VIDEOTAPEMUSICさんのリミックス曲の中での、川の音から環境の広がりを感じさせる方法や、先ほどの大石さんのお話での、郡上踊りでの下駄が石垣に当たる音をそのまま曲の一部と捉えるあり方などを聞いていると、デジタル音源でも、こういう音が鳴る場所を作るには、こういう環境が必要だと川を探し始めるとか、そういうアーカイブとアーカイブの対象が同じ次元にあるという作り方を模索できる気がしました。

(宇川)重要ですよね。やっぱりここで重要なキーワードは風土ですよね。

(ドミニク)ああ、風土ですね。風と土ですね。

(宇川)そうですよね。

(大石)ですね。

(ドミニク)越中には越中の風土があるし、関東には関東の風土があるし、それがローカリティーによって、勝手に自生的に生まれてくってのが、すごく美しいように思います。

(大石)そうですね。そもそも民謡自体がそういう形で、どんどん各地でローカライズされてきたものですからね。だから、おわら節は八尾の風土の中で生まれたものだし、その土地の風土、歴史や記憶みたいなものが、歌やリズムに現れてくるっていう事だと思うんですよね。

(ドミニク)だから、実在の空間が一種のニューラルネットワークのノードのようになり、点から点を移動するたびに違うプロセスがかかって別な物へと派生していく。それゆえに、人為的に変えようというのでなく、自然に生まれて変化していくところを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスも今後とも支援していきたいですね。

(高橋)改変がすごく自由に、あるルールのもとに出来るようになることが理想ですよね。たぶんクリエイティブ・コモンズのビジョンもそこだと思うんですけれど。

(ドミニク)そうなんです。今クリエイティブ・コモンズっていうのは契約とか同意みたいなスキーム、つまり意思表示なので、僕は勝手にこれを宣言しますと言えば、誰でも使えるようになります。しかし、それすらも人為的というか面倒とか、わざとらしいと感じて嫌がるクリエイターの人もいると思うんですよね。息を吸って吐くように、曲を歌って作る事が、ただ消え去るのではなく、アーカイブも同時にされていくというような、アーカイブや改変が自然化するってのが、僕の私見なんですが、理想だと思います。っていうのは、100年後ぐらいですかね(笑)。

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(ドミニク)さて最後に、ご感想をゲストのお2人に聞きたいと思います。大石さんいかがですか?

(大石)僕は基本的に土に近いところばかり掘り下げてきたので、今回のお話をいただいて初めてブロックチェーンの可能性を知ることができました。ブロックチェーンみたいな新しい技術と土に近いところの文化が組み合わさって、今後いろんなものが生まれてくるかもしれない。そういう可能性を感じれる、とてもワクワクする放送でした。ありがとうございました。

(ドミニク)大石さん、ありがとうございました!高橋さんいかがでしたでしょうか?

(高橋)クリエイティブ・コモンズの放送、今回2回目ですけれど。行きがかり上音楽の話が中心になりますが、音楽を色々な角度からひたすら考えたり、語るのはすごい大事だなっていう気がしますね。

(ドミニク)あまり日常生活でこういう観点では語らないですよね。

(高橋)3弾、第4弾もあれば、また呼んでください。

(ドミニク)ではこれは毎年、お盆の季節の恒例企画に出来るように。

(高橋)お盆と言えばクリエイティブ・コモンズ(笑)。

(ドミニク)はい(笑)お盆と言えばクリエイティブ・コモンズという風に、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン一同も頑張っていきたいと思います。

(宇川)そして、何か僕がまた最後にシメとして、傷跡を残さないといけないような雰囲気になってるんですけど(笑)、やっぱり「クリエイティブ・コモンズは土であり、風であり、dommuneは肥やしである。」ということが今日分かりました。つまりこのフロアは肥溜だということです(笑)。ありがとうございましたー。

(ドミニク)宇川さん、再び名言をありがとうございます(笑)そして最後にこの「越中おわら節」の原曲を提供していただいた八尾の庵さんたち、及び、VIDEOTAPEMUSICさん、colorful house band さん達に、改めてありがとうございましたと、心から感謝をしたい気持ちです。

改めて、大石さん、高橋さんありがとうございました!

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以上をもちまして、5回にわたって連載してきた『CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC』は終了となります!

今回の企画を進めるにあたっては、本当に多くの方からのご好意をいただきました!

庵さんをはじめとする越中八尾おわら道場の皆さん、リサーチ・録音などに多大なご協力をいただいたKENTARO IWAKIさん、remixをしていただいたVIDEOTAPEMUSICさん、colorful house bandの皆さん、DOMMUNEにご出演いただいた大石さん・高橋さん、宇川さんをはじめとするDOMMUNEの皆さん、CCJPの皆さん、繋がりを紹介をしてくれたり相談に乗ってくれたり資料提供などしてくれた友人の皆さん、諸々の企画を視聴していただいた皆さん、書き出すとキリがありませんが、本当に多くの方に感謝しています!

創造の循環が広がることを祈って!

文責:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.4

DOMMUNEトークプログラム『Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC ~伝統文化からCCライセンス、ブロックチェーンまで~』ダイジェスト版書き起こし(前編)

富山県富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表するという今回の企画。

vol.1,vol2,vol.3では演奏者、リミックス制作者のインタビューをお届けしてきましたが、今回のvol.4では2017年8月24日にDOMMUNEで配信されたトークプログラムの模様をお届けします!!!!

CCJP理事のドミニク・チェンをホストに、ライター・編集者の大石始さん、編集者の高橋幸治さんをゲストにお迎えして、質・量ともに超人的なコンテンツを毎週月~木の夜に配信し続けている宇川直宏さん主宰のライブストリーミングチャンネルDOMMUNEにて多方面にわたるトークが繰り広げられました。宇川さんがトークに参加する場面もあり、全編に渡って濃い内容だったので、ダイジェスト版と言いつつ前編・後編に分けてお届けするボリュームになりました。ぜひじっくりお楽しみください!

なお、番組に寄せられたツイートをtogetterにまとめていますので、こちらも合わせてどうぞ!
togetterまとめ→https://togetter.com/li/1147105

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番組スタート!!!

CCDM1

(ドミニク)はい、こんばんはー。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのドミニク・チェンと申します。よろしくお願いします。『Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC ~伝統文化からCCライセンス、ブロックチェーンまで~』というお題で、2時間過ごさせていただくんですけれども。今日のゲストはライター・編集者の大石始さん、

(大石)はい、よろしくお願いします。

(ドミニク)よろしくお願いします。それと編集者の高橋幸治さんです。

(高橋)よろしくお願いします。

(ドミニク)よろしくお願いします。

(ドミニク)今日は、クリエイティブ・コモンズの枠ということで、大きくクリエイティブ・コモンズ を飛び出して、テーマは、民謡からリミックスそしてブロックチェーンまでを予定しているのですが、そこまでたどり着けるのか。

(高橋)すごいですね、はたしてまとまるのか。

(ドミニク)はい。まずはクリエイティブ・コモンズの簡単な説明からさせていただきますが、私たちはクリエイティブ・コモンズ・ジャパンと申しまして、クリエイティブ・コモンズとは、インターネット上でクリエイター自身が自由に作品に関する著作権の意思表示ができるシステムです。

これがクリエイティブ・コモンズのライセンスのページとなりますが、普通、利用規約とか法律の文章は、この100倍ぐらい長いテキストが、難解な法律用語で書かれてるんですけども。この「 You are free to share and adapt」は、自由に複製・コピーしてネット上でシェアしても良いし、リミックスしたり改変したりしたものを商用利用も含め使って良いという事を事前に認めているので、いちいち連絡したり許諾をとったりする必要がないということになります。

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このようなライセンスが、2002年にアメリカで生まれて、およそ15年を経って、最新の統計ではネット上に12億個以上のCCライセンスのコンテンツが存在しているようです。前回宇川さんが「クリエイティブ・コモンズ は大地、dommuneは給食」と最後に素晴らしい一言で締めくくってくれましたね。

(高橋)名言でしたね。

(ドミニク)ほんと、名言でしたよね。あの言葉が未だに脳内で響いていて、今年は、色々付け加えて「インターネットはぬか床」とか「サウンドクラウドは神社」とか、よくわかんないですけど(笑)。そういうことも含めて、色々お話していければと思っております。
では、今日の企画の説明について、企画担当の森さんと吉田さんからお願いしてもよろしいでしょうか。

(吉田)はい。前回の企画を昨年やりまして今回2回目です。先ほどもお話にあった宇川さんの名言にインスパイアされたところもありまして、今回はCCライセンスと民謡というところを取り上げさせていただきました。

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(森)はい、CCの大地を広げようという感じですね。

(吉田)そうですね。伝統文化って割とみんな興味があったりして、でも一方では日本で廃れていってるなっていう印象もある中で、自分たちがどういう風に関わっていけるんだろうって思って。そこに、CCライセンスがどういう風に活用できるかっていうことに特に興味があった、というところですね。

地方のお祭りとかに、東京の人が行って、今回で言えば富山県の民謡を取り上げさせていただきましたが、どういう風に触れれば良いのかという部分も、最初結構2人で話したり相談したりしていたところです。デジタルでオープンになってない文化を、クリエイティブ・コモンズの特徴であるリミックス性とかアーカイブ性を重ねていくと、どうなるんだろうところを今回チャレンジさせていただきました。

(森)なぜ富山なのかという話もあると思うんですが、これは本当に成り行きの部分もあります。今回リミックスをしているcolorful house bandに僕も参加しているのですが、そこで一緒にやってるDJ SAGARAXXさんと、この企画とはあんまり関係なしに民謡とかライセンスが自由になったもので制作できないかなという話を雑談でしていて。
SAGARAXXさんが、先輩でDJのKENTARO IWAKIさんというベテランの方が、地元の富山に戻って住んでいるよと。で、富山には色々民謡があるらしいよ、じゃあちょっと行ってみようといことで、去年の9月なんですけど、2人でIWAKIさんに案内してもらいながら、おわら節であったりとか、おわら風の盆の本番ではなかったんですが、実際に体験して、素晴らしいなと思いました。

その時、ちょうどクリエイティブ・コモンズで企画を行う話もあったところだったので、じゃあこれでやってみたらどうだろうというところですね。

(ドミニク)この方がおわら道場を主宰されているのですね?

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(森)そうですね。「越中八尾おわら道場」という演奏団体の方に今回は録音をさせてもらっています。今映ってっているのが、代表の庵さんという方ですね。

今回録音させてもらったおわら道場さんっていう団体は、八尾町の真ん中に聞名寺という町の中心のお寺があるんですけれど、そこで演奏している団体になります。この団体は町の外の人とか、県外の人とかも巻き込んで、ウェルカムな感じで、技術を習得したい人はどんどん来てくださいっていう体制でやっている団体になります。

(ドミニク)考えてみると不思議な流れですよね。「越中おわら節」にCCのスタッフが出会うところからして、オーソドックスではない企画です。後ほど皆さんも曲を聞いていただければ分かると思いますが、とても不思議な仕上がりで聞いたことのない音楽になっていて、改めて面白いなと思っています。

ここから大石さんと高橋さんと、お盆についてお話したいと思うのですが、まずは大石さんはお盆のプロなんですね?(笑)

(大石)お坊さんみたいですね(笑)。ま、盆踊りや祭りを追いかけながら、原稿の執筆、著作を書いたりしているという感じですね。

(ドミニク)旅と祭りの編集プロダクション B.O.Nですよね。

(大石)そのままですよね(笑)。カメラマンの妻とその名義でいろいろやらせていただくこともあります。

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(ドミニク)大石さんは、風の盆はご存知でしたか?

(大石)もちろんです。日本にもいろいろなお祭り・盆踊りがありますけど、その中でもトップクラスで有名ですね、風の盆は。ただ、実は僕まだ行ったことがなくて、ずっと憧れ続けていて。

(ドミニク)定番の盆踊りやお祭りもあれば、いわゆる奇祭や秘祭のような、激レアお盆みたいのもあるんですか?

(大石)奇祭ではないですが、有名なものでいえば、このあいだ徹夜踊りが終わったばかりの郡上踊り(岐阜県)。8月の半ばには徹夜で踊る期間がありまして、その期間は朝4時過ぎまで踊るんです。そこにはもう日本中のですね、踊り狂いの方々が集結するという。

(高橋)マニアが集結してくるんですね。

(大石)すごいですね。熱気が素晴らしい。

(ドミニク)それは盆踊りのマニア?それとも、盆踊りの達人に混ざって普通に騒ぎたい方や、踊りたい人も集まってくるんですか?

(大石)いろんな方がいらっしゃいますけれどね。何年も通い続けて完全にマスターしている方もいますし、ここ最近は郡上踊りの話が広がっているので、今年初めて来ましたという方もかなり多かったと思います。

(ドミニク)そうなると、盆踊りに参加する人口は増えていると思いますか?

(大石)僕の感覚的には増えてると思いますね。

(ドミニク)そこにはもちろん、大石さんの活動も寄与していると思うんですが、何か盆踊りを巡る大きな時代的な流れみたいなものは感じられますか?

(大石)盆踊りといっても、特定の土地で受け継がれてきたものもあれば、戦後になって都市部や郊外でコミュニティーが再編されるなかで新しく作り出された盆踊りもありますよね。さっき言った郡上おどりは前者に分類されるものですが、全国的には後者のほうが数自体は多いですよね。そういう盆踊りでかかっているのは東京音頭や炭坑節、それにアニソン音頭などです。

(ドミニク)おお、アニソン音頭!

(大石)有名なものだとアラレちゃん音頭やドラえもん音頭、オバQ音頭などですね。

(ドミニク)ありますね。アラレちゃん音頭。

(大石)そういった現代的な盆踊りのなかにも盛り上がってきているものもありますね。若い子がすごく増えてきてるものもある。まあ、盆踊りはインスタ映えしますから。

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(ドミニク)SNS映えですね。

(大石)浴衣を皆で着て、友達同士で写真撮る。櫓に提灯がかかっている光景は写真映えするし、盆踊りはやっぱりSNS向きだとは思いますよ。

(高橋)そう考えると、音頭というものが、色々とその時代その時代、様々なコンテクストの中で命脈を保ってますよね。

(大石)そうですね。実際今、何とか音頭って色々な形で出てる音頭って、進化とも言えますけれど、音頭って付いてるだけで、音頭でもなんでもないものもたくさんあるじゃないですか。

(高橋)実は何でもない(笑)

(大石)「音頭」という言葉が付けば音頭ってなってしまうぐらいの、すごくゆるい様式なんですよね、音頭って。だからこそ、音頭は時代の移り変わりにも耐えてきたとも言えると思うんですよ。

(ドミニク)大石さんは、民謡にフォーカスする前はどのような音楽に興味があったんですか?

(大石)もともと子供の頃から盆踊りで踊っていたわけでも、両親が民謡やっていたわけでもないんですよ。もともと旅をするのが好きで、それもアジア各地で現地の音楽に直接触れる旅をやってたんですよ。そのなかでワールドミュージックと言われる様なものであるとか、各地の大衆音楽にすごく惹かれるようになって。
その延長で2007年から2008年にかけて、1年間、中南米とかカリブとか北アフリカの方とか、いろいろまわってたんですよ。

(ドミニク)本当に世界中、満遍なくって感じですね。

(大石)そうですね。それでトリニダード・トバコでカーニバルに行ったり、ブラジルのサルバドールに行ったり、音の現場に触れたんですが、2008年に日本に帰ってきた時、モロッコのエッサウィラでグナワを体験したときのような感動を日本のどこかで体験できないんだろうか?と思ったんですね。それで最初に行ったのが東京・高円寺の阿波踊りでした。

そこでもうめちゃくちゃに感動してしまったんですね。高円寺の阿波踊りの存在はもちろん知っていましたけれど、ちゃんと触れたのはそれが初めて。で、その阿波踊りのビートを浴びた時に、ブラジルのサルヴァドールで体感したバトゥカーダみたいだ!という興奮がすごくあったんですよ。街全体が低音がぶわーっと揺れる感じであるとか。

(ドミニク)ああ、かなりでかい音に包まれる感じ。

(大石)もうすごい音ですね。

(ドミニク)低音も身体にビリビリ響くって感じで。

(大石)ですね。しかもそこいら中で演舞が繰り広げられているので、ある種カオスみたいなことになってる。そういったものって、ライブハウスやクラブで体験してきたものとはちょっと違う感覚だったんですよ。見る側聞く側も飛び越えたような、空間をシャッフルしちゃうおもしろさというか、圧倒的な祝祭感覚みたいなものがあった。「こういう凄いものがあるんだったら、実際にいろいろと現場で体験してみよう」というところから盆踊り・祭りをめぐる旅が始まったという感じでしたね。

(ドミニク)入り方が面白いですよね。日本人なのにブラジルを経由して高円寺を発見するみたいな。

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(大石)ただ、最初は「阿波踊りはブラジルみたいだ」とか、「河内音頭はジャマイカのキングストンみたいだ」とか、いろんなこと考えるわけですけど、まあ実際そんなはずもなくて、それぞれやっぱり違うわけですよね。

(ドミニク)それはそうですよね(笑)。

(大石)高円寺の阿波踊りは昭和30年代から地元の商店街の人たちが中心になって、地域振興の一環として始まったものですね。

(高橋)あ、結構古いんですね、あの高円寺のやつって。

(大石)そうなんです。ただ、本場・徳島のものをお手本として始まりながらも、徳島のリズムそのままではなくて、徐々に高円寺という地域性の中でまた別のものになっていくんですね。

(ドミニク)クレオール化していくっていう。

(大石)そうですね、ローカライズされていくというか。戦後の新しい文化であっても、そうやって土地の風土やそこで育まれてきた身体性だったり、いろんなものと結びついているんですね。そういうものが見えてきて、よりズブズブとはまっていったという感じはあります。

(ドミニク)2008年とおっしゃっていたので、もう10年ぐらい経ちますね。

(大石)そうですね。たった10年という感じではありますけどね。

(ドミニク)様々な国や地域の伝統音楽と共通項も見つけられたと思うのですが、大石さんから見て、どんなところが日本特有で面白いと感じてますか?

(大石)たとえば、東海地方や関東の一部の地域では荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」で踊る盆踊りが80年代後半から根付いていて、ある種伝統文化になってるんですよね。その盆踊りのように、その場で踊ってる方々がその土地の宗教性を意識していなくても、根底に念仏踊りであるとか、盆踊りが本来持っていた信仰的な部分であるとか、そういったものが横たわってることっていっぱいあると思うんですね。郊外でやっている夏のイベントとしての盆踊りも、そういった土地の風土や仏教以前の宗教性と地続きになっている部分がある。そこがおもしろいと思います。

(ドミニク)混ぜちゃうところですか。

(大石)そうですね。ボニーMっていうディスコのグループの「バハマ・ママ」っていう曲があるんですけど、関東を中心にした広い範囲の盆踊りでこの「バハマ・ママ」が踊られているんですよ。

(ドミニク)関東カルチャーなんですね。

(大石)面白いのが、この「バハマ・ママ」、振り付けのなかに炭坑節の振りが入っているんですね。

(ドミニク)炭坑節!

(大石)炭坑節の「掘って掘って~」という振りが「バハマ・ママ」のなかには取り入れられているんですね。あの動きってすごくシンプルで、転用しやすいんですよ。あと、いわゆる盆踊りの「ドドンがドン」っていう太鼓のフレーズがありますけど、あれもどんな曲調のものでもハメやすい。そういうフレーズであるとか体の動き、あと櫓を中心にしたその空間であるとか、そういうほかの何かに転用しやすい要素って日本の祝祭のなかにはたくさんある気がするんですよね。それもまた日本の祭り文化のひとつの特徴かもしれないですね。

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(ドミニク)面白いですね。炭鉱歌って、いわゆる労働歌なんだけども、多分、農作業とは違うビートとリズムに従う形の労働歌。

(大石)それがなぜかディスコと結びついて、当たり前に広がっている。すごく面白い現象だと思いますね。

(宇川)やはり考えるべきポイントは、日本特有の文化という前提であれば、もう一つ、ヤンキーカルチャーとの接続ですよね。

(ドミニク)確かに、よさこいとか。

(宇川)そうそう。どう思いますか?大石さん。

(大石)すべての盆踊り・祭りがヤンキー・カルチャーと結びついてるわけじゃないですけど、先輩から後輩へと受け継がれていくヤンキー・カルチャーの伝統は、地域コミュニティーの伝統的な形成のされ方とも同じですよね。盆踊りや祭りもまた、地域の先輩から後輩へと受け継がれていく部分が多分にあるので、どうしても繋がってきちゃうところはありますよね。ヤンキー的な繋がりのなかで継承されていくという。

(ドミニク)なるほど。コミュニティの構造が相似形になっているんですね。

(大石)そうですね。親和性が高いというか。盆踊りや祭りに限らず、地域の行事全般にいえることだとは思いますけど。

(宇川)あと、さっきアラレちゃん音頭の話が出ていましたが、「国民的ポップアイコンは、音頭に辿りつく」という推論を立証しようとしていたことがあって。それは、きゃりーぱみゅぱみゅの「なんだこれくしょん」というアルバムが出たタイミングで16000字の原稿を書いたのですが。アルバム1曲目の「なんだこれくしょん」は、中田ヤスタカさんのトラックに、きゃりーが熱唱した音頭なんですよ。

(全員)へー。

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(宇川)やはり、あのタイミングで、きゃりーが音頭をリリースしたのは、国民的なポップアイコンとして世の趨勢が迎え入れたタイミングだったからなんですよ。その証明として「なんだこれくしょん」は、オリコンで週間一位を獲得し、その年の日本レコード協会のプラチナディスクに選ばれて、日本レコード大賞の優秀アルバム賞も受賞してる。

(ドミニク)そこがある意味一つのゴールなんですね。

(宇川)そうなのです。例えばアラレちゃんに関わらず、オバケのQ太郎。そして僕ら世代はドラえもん音頭ですよね。例えば古くで言えば三波春夫さんや北島三郎さん。あとビートルズの「イエロー・サブマリン」には、そのオマージュとして金沢明子さんの「イエロー・サブマリン音頭」だってある。「ノリピー音頭」はすでにトリップチューンとして認識されていますが(笑)、当時は国民的アイドルでした。

(高橋)やっぱり、音頭はある程度のステータスに達しないと作れない(笑)。

(宇川)ステータスと言えますよね。

(大石)そうですね。

(ドミニク)音頭になるのが最高位なわけですね(笑)

(宇川)そうです、日本においては王座です。音頭は死者を供養する行事である、盆踊りのための音楽で独唱者っていうのはソリストで、言い換えれば司祭な訳ですね。だから、司祭になれる貫禄を身につけたキャラクターと言ったら、やっぱり既にある意味国民的アイコンである筈。

(ドミニク)なるほど〜。

(宇川)それで、現場の合いの手として、老若男女、ヤクザも商店街のおじさんもサラリーマンも幼児も参加する、シャッフルしたコミュニティがある。そこで重要なのが、「ハレとケ」という日本の伝統的世界観で「ハレ」の日を共有するための音楽が、音頭だと捉えられます。そもそも祭り自体が感謝と祈りの装置という概念で捉えるならば、「ケ」の日常を耐え忍んで、ようやく弾ける為の非日常の空間。「あげてこー」ってけけ声が聞こえそうですが(笑)もうほんとクラブカルチャーというか、パリピの精神ですよね(笑)。

(大石)そうですね。

(宇川)その中で身も心も委ねられる司祭として、それを先導する立場になれるのは、やっぱり国民的ポップアイコン。きゃりーぱみゅぱみゅがその地位に立てたということの証明として、「なんだこれくしょん」では1曲目が音頭だったと、僕は捉えたわけなんです。

(ドミニク)それは、その16000字の論文の主旨なわけですね。

(宇川)はい、そうです。ナタリーで読めるので、是非読んでください。

(ドミニク)それは素晴らしい論文ですね(笑)。

(高橋)宇川さんがおっしゃっていた、ヤンキーカルチャーやヤンキー的なマインドみたいなことで言うと、神楽ってあるじゃないですか。神に捧げる、お芝居的な踊りなんですが。いろんな地方に神楽ってありますよね。ある地方の神楽の公演を東京で見たことがあって。若い人たちが、ちゃんと継承してるんですよ。

それは強制されて嫌々やっているわけではなくて、若い人たちが、昔のままの状態のものを、多少アレンジは入りますが、本当に率先して継承してるんですよね。その演目なんかはそのスサノオが大蛇を退治するような展開の物語なんです。

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(ドミニク)ヤマタノオロチですね。

(高橋)これが単純に派手でかっこいいんですよ。

(ドミニク)なるほど。モチーフとしてかっこいい。

(高橋)物語自体がとても面白いし、いろんな衣装を身に付けたり。だから単純に若い人たちに自分もやりたいって思わせているんじゃないかと思います。

(大石)福岡の筑豊のほうにすごく渋い盆踊りがあるんですけど、太鼓と歌だけでやる古風な盆踊りで、しかもやってるのは全員若い人たちばかりなんですね。その団体の代表の方、30代前半ぐらいの方に取材したことがあって。「どうして盆踊りを始めたんですか?」と聞いたら、「先輩ですごくかっこいい太鼓打ちの人がいた」と言うんですよ。で、僕も叩いてみたいと思って始めた、と。

高橋さんがおっしゃった神楽のように単純に格好よくて継承されていく部分もあるだろうし、「あの人の太鼓の叩き方がかっこいい」「あの人の神輿の担ぎ方がかっこいい」みたいに素朴なところで繋がってく線っていうのもあるんじゃないかなと思いますね。

(ドミニク)それは、とても良い話ですね。去年、番組の時に原雅明さんとお話していて、LAのミュージシャンで20代30代なんですが、やたらめったら50年代60年代のジャズに詳しいと。

でも、それは全部原盤で聞いてたのではなくて、全部YouTubeで見ていて(笑)。名プレイヤー達の演奏を何回も何回も見てるうちに、自分でもやるようになったようです。だから今で言えばInstagramやInstagramストーリーがきっかけで、太鼓打つようになった人などが出てくるかもしれないわけですよね。

(高橋)そうですね。意外なところに、その継承の導線っていうのが案外あるもんだなっていう。

後編に続きます!!!!!

文責:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

CCライセンス・バージョン4.0 およびCC0イタリア語版の公開

このたび、クリエイティブ・コモンズでは、CCライセンス・バージョン4.0 およびCC0のイタリア語版を公開しました。
CCイタリアが中心となり、CCスイス、およびCC関連組織のNexa Center for Internet & Society の協力のもと、イタリア語版を完成させました。英語版4.0起案のときからクリエイティブ・コモンズ本部のリーガルチームと密接にディスカッションを行ってきたCCイタリアですが、その結果、今回の翻訳にあたっては齟齬を最小限に抑えられました。
翻訳のプロセスについての詳細は、Creative Commons wikiをご覧ください。

(2017年7月31日付記事https://creativecommons.org/2017/07/31/annuncia-la-traduzione-4-0-della-licenza-italiano/(by Sarah Pearson)より)

(担当:松丸)

バッセル・ハルタビル記念基金を設立

悲しいお知らせですが、私たちの友人でありCCシリアのプロジェクトリーダー、そしてオープンソースの開発者であるバッセル・ハルタビルが、先ごろ、シリア政府によって処刑されました。ご冥福をお祈りするとともに、バッセル・ハルタビル記念基金を設立したことをお知らせします。
同基金は、遺族の要望のもと、フリーカルチャーの熱心な推進者であったバッセルのスピリットを受け継ぐべく設立されました。CCも基金に賛同し、1万ドルを寄付しました。また皆さんからの寄付を広く歓迎します。
同基金への寄付は、アラブ世界におけるコミュニティ構築やリーダー養成プロジェクトなどに使われます。また、新しいクリエイションと歴史的文物のデジタル保存や共有、リミックスのサポートのためにも使われます。いずれもCCの、そしてバッセルが関わった他のコミュニティのミッションと深く関わるものです。
基金の詳細はBassel Khartabil Memorial Fundをご参照ください。
(担当:松丸)

2018年CCサミットはトロントで開催

来年4月13日から15日まで、昨年に引き続きカナダのトロントで2018年CCサミットを開催します。ボストン、リオデジャネイロ、ソウルなどでのCCサミット経験を踏まえ、より充実した内容でお送りします。500人以上の参加が見込まれ、Global Network Councilの初会合も開かれる予定です。追って準備委員会が始動しますが、2018CCサミット開催のためのアイディアがあればどうぞお寄せください。

(2017年7月21日付記事https://creativecommons.org/2017/07/21/summit-2018-announcement/より)

(担当:松丸)

【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.3

音が持つ「質感」という名のDNA

富山県富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表するという今回の企画。
vol.1では「越中おわら節」を録音させていただいた「越中八尾おわら道場」の代表、庵進さんの、vol.2ではリミックスを制作していただいたVIDEOTAPEMUSICさんのインタビューをお届けしました。

今回のvol.3では録音した「越中おわら節」の一節をターンテーブルでループさせながら、その上に楽器とMICを重ねていくことでサウンドを再構築したcolorful house band、その中心人物であるDJ KENSEIさんのインタビューをお届けします。制作過程のお話や、サンプリング、土地と音楽の関係、CCライセンスの今後など、ぜひ音源を聴きながら、お楽しみください!

colorful house band / Ecchu-Owara-Bushi colorful house band Rebuild

越中八尾おわら道場の演奏、VIDEOTAPEMUSICによるRemixも含む企画全体はこちら

colorful house bandプロフィール

colorful house band_Fotor

毎月第1水曜日、青山蜂にて行われている『colorful』にて毎回SOUND LIVEを繰り広げている、パーティーの『house band』と言える面々。
メンバーはDJ KENSEI (Turntable&Effect)、DJ Sagaraxx (Visual) 、HIDENKA (Mic) 、ケンゴコバヤシ (Synth)、Norio Fukaishi (Bass)、YASUHIRO MORI (Guitar)
ここ最近のcolorfulでのSOUND LIVEは、DJ KENSEIのアジア旅行をきっかけにタイ~インド~アフリカ~日本まで各地の様々なルーツミュージックにフォーカスし、現代のサウンドと融合させた新たな”エレクトリック・ヴァージョン”をイメージしたものとなっている。

DJ KENSEIプロフィール

DJ KENSEI2

DJ/プロデューサー/ラップトップミュージシャン/ビートメーカー。
長い現場経験とそこで培われたキャリアによって、自然にクロスオーバーしながらも新鮮で洗練されたDJスタイルを真化させていくDJ Kensei。
ヒップホップを起点に80年代後期から現在に至るまで、常にDJを続けながら国内外の様々なレーベルからクラシックな作品やオフィシャルミックス等をリリースしている。ソロ以外に、Indopepsychics、Final Drop、Nude Jazz、Outerlimits Inc、Kemuri Productions、Coffee & Cigarettes Band、OMA’N’SEI(w/ Suzuki Isao)など、プロジェクトの中心として幅広く活動し、多彩なイベントに出演。
ミュージシャンとのライブを積極的に行い、「生音」と「DJ」から生まれるオリジナリティ溢れるユニークなトラックを多数リリース。Coffee & Cigarettes BandとしてレーベルElectric Rootsを主催、ネットラジオdublab.jp内でも同名の番組Electric Rootsを担当。
2016年にはオフィシャルミックス「Melancholic Jazz Moon BLK Vinyasa Mix by DJ Kensei」(Introducing)、タイ・ラオス滞在中に制作した自身初のサウンドスケッチビートテープ「Is Paar / DJ Kensei Beat Tape」(Mary Joy Recordings)をリリース。

第3回 DJ KENSEIさんインタビュー

2017年8月13日15:00 渋谷 某会議室にて収録
インタビュアー:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)
(森はcolorful house bandにも参加しています、、)

INTERVIEW DJ KENSEI 1

今回の制作のお話をはじめ、様々なお話をお伺いしました

まず、最初にcolorful house bandの説明をさせてもらったほうが良いかなと思うのですが、毎月第一水曜日に青山蜂でやっている『colorful』というパーティーでライブをしているメンバーですよね。

そうですね。自分がターンテーブルをやって、森君がギターを弾いて、ケンゴ君っていう十三画っていうグループのパーカッションとかMPC、リズム系の人が自分のFADERBOARDを使って(笑)。cat boysっていうグループのNO RIOっていうベーシストがベースを弾いて。あとラップ兼語りでHIDENKA。いつもライブやる時は映像も流してて、それをSAGARAXXが出してます。

この前までは、COFFEE&CIGARETTES BAND(DJ KENSEI & DJ Sagaraxx) feat.で参加してるメンバーを連ねてという名義だったんですけど、今回から名前を変えた形にしてますよね。

元々colorfulの前身のDREAM CATCHERっていうパーティーがあって、JLDという名義で僕とウッドベースのM.A.B.O.っていうやつを中心にライブをやり始めて、、、2〜3年やっていたのですがM.A.B.O.が事情があって出れなくなって。それで、パーティー名をcolorfulという名前に変えて、最初C&Cを中心にリニューアルしました。
colorfulをやっていく中で次第にいろんな人が自然に参加してくれるようになっていって。過去にクロマニヨンのTSUYOSHI,TAKUちゃん、BASSのシンジュ、VOでSOUCE81、SAXのMOTOHARUやPETの黒田卓也君とかも参加してくれたました。他にも色々、、
以降自分がインドに半年くらい行ってる間にお休みしていて、戻って来てから今のメンバーに落ち着いた感じです。メンバーも変わって表現も変わって来たのでこの名義の方が自然かなと….

なるほど。いろんなところから、メンバーが自然と集まってcolorful house bandができたということですね。

それぞれが持ち合わせる音の質感

音の質感に特徴がある人が好きだったりするんですよね。技術的なものよりも出てる鳴りというか。音質に特徴があるっていうことに、自分的には結構こだわっています。

音の質感っていうのはどういうことですか?

僕は時代とか場所がわからないような質感の音楽が好きで。サンプリングが好きなのかもしれないですけど。時代とか場所とか、そういうのを超える感じがするじゃないですか。質感でそういうところが分かるというか。音に入ってる空気とか。

音質にも情報が色々と入っていて、そこからイメージが湧いてくる感覚ですか?

音質に情報が凄く入ってるかもしれないですね。使うソフトもハードもなんとなく画一化されてきていると思うんですけれど、でも質感だけはその人が出ると思うんで。
質感から受けるインスピレーションはかなりありますね。空気、匂い、使ってた機材やその国や場所や時期、作り手のルーツやフィーリングとか。
自分がDJで色々な質感のソースをかけているというのもあるけど。

質感は人それぞれ持ってるとして、音楽制作を長く続けていく中で変わっていくものなのか、それとも変わらないものですか?

質感自体は時代や経験で変わっていくとは思うんですけど、やっぱその人から出るものは、そんなに変わらないのかもしれないですね。DNAみたいなもんですね。音にはすごい情報量が入っている。シンプルなフレーズにも。

モーラム経由、再認識した民謡のグルーヴ感

DJ KENSEIがタイを旅して制作したビート集より、Khane Whistle Reprise (JRP のテーマ)のPV

最初に、富山の音を録音してリミックスする企画を聞いた時の感想は何かありましたか?

民謡自体はすごい興味があったんで。昔から沖縄の民謡とかはすごい好きで趣味でレコード集めてたり、昨年タイに行って現地でモーラムとか聴くようになってそれを肌で感じて、なんか民謡感あるなって、それでメロディーやグルーヴ、音にイントゥしてる感じや楽器の持つ響きとか、、日本のグルーヴというか民謡の良さみたいなのを再認識したというか。頭でじゃなくて感覚的に良いなって思えるようになって。時代的に体が求めてるところもあるかもしれない。
その中でも、おわらって特徴があるというか、使ってる楽器にも特徴があるんで興味はあったんですけど。でも、自分でそれを体験してないっていうのが、そこがどうかな、と感じてはいたんですが、、、

でも、森君が録ってきた音源をみんなで聴いた時に全員がこれいいねってなって。皆でその音を聴きながら音を出したらいい感じになったので、いけそうかなって思ったっていうのが、感想ですかね。

民謡が気になったのは、タイ、モーラム経由なんですね。

それまで、日本にある古い音楽の良さをあんまり見出せなかったんですけど、モーラムを現地で聴いた後に民謡を聴いたら、すんなり入れたっていうのがあったんで。それがどうしてかっていうと、うまく説明できないですけど。現地でその空気を感じながら聴くのがいいんだろうね。

(注:モーラムはタイの東北部・イサーン地方の伝統音楽。元々は物語を抑揚をつけて歌うように語る芸能で、ビートが延々とループするダンスミュージックでもある。モーラムについてはsoi48というDJユニットが超絶詳しいので、興味のある方は彼らの書籍やブログをチェックしてみてください。)

モーラムを聴くことによって何か視点というか感覚がちょっと変わるみたいなところがあったんですかね。

なんだろう、プリミティブなものを求めてたのかもしれないですけどね。あと何度も言うけど地元で聴く体験はより刻まれるし、体に入るよね。

ローカルの想いを自分のフィルターに通すこと

今回は制作期間を決めていたこともあり、おわらを体験せずに作って頂いたのですが、サンプルを使う時は、自分で体験するなどして一度自分の中に入れたいっていう感覚があるんでしょうか?

やっぱり民謡って、ちょっと自分の中で敷居が高いイメージがあって。地元の人の想いとかいろんなものがあったりするんで。理解のない感じで、それを自分のものとして取り入れることに対してちょっと抵抗があったというか。
ヒップホップとかそういう音楽もローカルなコミュニティーの人たちが生み出した音楽だったりして。それを他人が簡単に拝借することに対して、ちょっと抵抗があったんですけれど。勘違いみたいなのは嫌だなと思って。
自ら経験したりその空気を知ったり、それを自分のフィルターを通してっていう方が自然かなとは思ったんだけれど、森君も何度も足を運んでるし、(音源を聴いた時)メンバー全員いいねって言ったのが、やっても良いなって思えるきっかけになったと思います。

INTERVIEW DJ KENSEI URANO 1

『colorful』でのSOUND LIVE
photo by Daisuke Urano

この録音は、FADERBOARDでリズムを出しているのもあるし、手の感触があるというか。例えばリミックスだとドラムブレイクを入れて作る方法とかもあるとは思うんですが、そういうのとはちょっと違う感じで元のグルーヴが活かせたかな、と感じています。

そうですね。おわらのグルーヴにメンバーが入ってる感じですね。
胡弓のメロディーも印象的だから、メロディーでアプローチするっていう方法もあったんで、そういう意味ではブレイクビーツとかもありなんですけれど、なんかこの揺らぎが一番グッときたっていうか、今回はそういう風になった感じですかね。

(注:FADERBOARDはシンセとドラムの音源を内蔵した機材。外部音源のサンプリングも可能。一般のシンセやドラムマシーンであれば、鍵盤やパッドで音を出すタイミングをコントロールするが、FADERBOARDはDJミキサーと同様のFADERで音の出力をコントロールする、このため独特の発音タイミングとニュアンスになる。)

音のズレ、うねり、揺らぎ

録音した時にはKENSEIさんがターンテーブルを使って元の音源を操作してるので、かっちりしたループとは違う感じになってますね。

みんなの演奏も聴きながら入れるっていう、だから全員の音がうねるというか。いい揺れというか、揺らぎというか。

タイミングが完全に正確なわけではなくて。ズレというか、かっちりしたものとはまた違うものになったのかなと思います。

同じようだけど、全然違うのかもしれない。その揺れが全編にわたって元になってるんで。揺らぎが良いグルーヴ感になってるっていうか、打ち込みだけではなかなかできないものですね。

そうですね、元の演奏も揺れてるっていうか。

クリックを聞きながらやってるわけじゃないですもんね、おわらも。そこはなんかちょっと表現できたのかもしれないなと。

録音のときなど、ターンテーブルを回してる時はどういう音を一番重視するというか、意識的にどこかに集中するのでしょうか。

それは音質と、その「間」とかですかね。

INTERVIEW DJ KENSEI URANO 2

『colorful』でのSOUND LIVE
 photo by Daisuke Urano

意識する、みんなの「間」

特にこの楽器ってわけじゃなくて、全体的な空間ということでしょうか。

ビートがループされてて、抜いて、また出すっていうと、ビートは一定でループされているものを抜いてまた同じ拍で入ってくると思うんですけど、抜いた時に、一回止めてみんなのタイミングで出すと、一定ではなくなるんですよね。みんなの突っ込んだり、レイドバックしたりっていう所をすごい意識してますね。
あとはみんなの音が馴染むように質感を聴きやすくするっていうのはすごい意識してますね。サンプリングなんで、音が浮かないようにとか、生楽器とちゃんと馴染ませたいなっていうのはあって。
以前はもう少し技術的なところに意識がいってた時期もあるんですけど。何かそこよりもっと重要なことがあるなっていう。そっちの方が結構ハートにダイレクトに突き刺さったりするんですよね。

日常の中のジェームスブラウン

今までに、民謡以外にもサンプリングやリミックスなどの際、気軽に扱いにくい素材とかはありましたか?

僕はヒップホップをやってきてるっていうのがあるんで。今はまた状況も変わってきたけど、自分の世代とか、例えばジェームスブラウンの曲を黒人が使うのと、自分が使うのは違うじゃないですか。子供の頃から親が聴いてて慣れ親しんで生活にあるとか、ラジオでずっとかかっててとか、それってなんか自分のルーツだったりするから自然にそこにいってると思うんで。もちろん使ってもいいんだけど、自分は知れば知るほど扱いにくかったかな。JB使うだけでもうかっこいいってのもあるけどね(笑)。

なるほど。

若い頃はそういうところあったんですよね、自分も。やっぱそういうのに憧れるじゃないけど、それ使えばかっけーみたいなあるんだけど、自分との温度差みたいな、自分がまだそこになんかこう馴染んでないみたいなのはありましたね。

民謡はやっと自分の年齢とか、いろんな音楽聴いてきた経験とかから、なんか自然に、違和感なく同じ温度で聴けるようになったのが、やっと最近そういうのがあるんで。

サンプリングやコラボレーションのセレンディピティ

制作される時はサンプルを使うことが多いとは思うんですけれども、サンプリングの魅力とは?

そうですね。空気が入るのが良いですよね。その空気ってやっぱりその土地とか時代とかそのコミュニティとか関わってる人とか情報だったりするんで。

KENSEIさんは、このバンドもそうですけど、いろんな人とコラボレーションされてるのが多いなっていう印象があるんですけれど、いろんな人と作った方が面白いものが出来るという感じでしょうか。

個人でできるものには、意外と限界がある気がしてて、いろんな人が関わることによって、できるものが自分の想像を超えてきますからね。コントロールしきれないっていうのもまた面白いし、作っていくプロセスも好きなんで。自分の描いてる世界を明確にしていくというより、コラボレーションしていくうちに、自然とそっちの流れになっていく感じが好きだったりしますね。やっていく中で方向性が決まってきた方が、みんなも自然にそこに向き合えるのかなみたいなのもあるんで。

音に込める、共有した時間と場所の空気

INTERVIEW DJ KENSEI 2

場所や時間と音楽制作についてもお伺いしました

タイとかインドとかもそうですけれど、いろんな土地で制作をされていたり、今回も京都にいるKND君に協力してもらって、実際にKND君の家に行ってミックスしたんですが、場所を移動して作ると、そうでない時とは違いますか?

より思いが強くなるというか。例えば、東京とかで生活してると、寝る前に今日はこんな一日だったな、みたいな回想はなかなかしないですよね。だけど地方行くと、ぼーっとしたりして、今日はこういう一日だったなって考えたりする。そうすると、その曲に対して考える時間とか、客観的にも見れるようになったりとか、向き合ってることを実感しますね。

(注:KNDは京都在住のミュージシャン、サウンドエンジニア。Final Drop、SOFT、aMadoo、UCND等での活動のほか、エンジニアとしてもDachambo、Nabowa、Coffee&Cigarettes Band、Based On Kyoto等々、多数の作品に関わっている。)

日常とは違うところに行くから落ち着いてというか、違う視点で見れたりとか

同じ時間を共有してる感じもあるんですよね。森君と一緒に京都行ったのもそうですけど、東京で会うよりも共有してる感じがあって。そこはその空気も入れてみたいところがありますね。

そうなんですね。今回の曲も京都に行ってミックスしなかったらまた違う感じになってたかもしれないですね。

京都じゃなきゃ駄目だっていうわけでもないんですけど、KND君のところじゃないとあの感じは出ないみたいのはありますね。で、森君とその後お祭りに行けたりとか。

そうですね。下鴨神社のみたらし祭っていう。世界遺産の神社があるんですけど、その奥にある池にみんなで入って、膝ぐらいまでなんですけど入って、ロウソクを納めてっていう。

涼しげなね。ああいうことを共有することでリミックスをやった時の記憶としてインプットされるというか。日常に追われてると結構、音楽に対する思いが消費されてる感が、特にDJとかやってると、出てきがちなんで、強制的にそういう環境に身を置くというのもあるのかもしれないですね。

改めて出来上がった音を聞かれてどんな印象でしょうか。

なんか遠い記憶を、呼び起こす感じありますよね。あと何だろう、晩夏、そういうのを思い出しましたね。

夏が終わっていくような感じがしますね。季節的にも風の盆は9月の1,2,3ですけど、ちょうどその時期の雰囲気っていうか。

そう、だからなんか、直球なものだけじゃない色んな夏があって。こういう夏も表現できるような年齢になったのか、でもきっと、みんながいたからそうなってると思うんですけれど。

意外と!?知られていないCCライセンス

今回はクリエイティブ・コモンズの企画で、CCライセンスをつけて出させてもらっているんですけれども、CCライセンスを付けてリリースって事に関してはどう思われますか?

自由に素材を使って、みんながやりたいように、なんか感じたものを作って広がっていくっていうのは良いと思うし、きっかけになると思いますね。
ただ、そのきっかけになるものを作る人は、責任が違うっていうか、そういう意味で自分は現場に行きたかったとかそういうのはあったんですけど。それ以降っていうのは、みんな自由に料理して、音楽だから楽しんでもらえれば良いんじゃないかな。

これ聞いた人がちょっと自分で使ってみようかとかってなると本当に嬉しいなと思います。クリエイティブ・コモンズの活動に対しての印象は何かありますか?

僕の周りで言うと、サンプリングを好きな人はとても多いんですが、ただそういう手法を使ってる人に対して、そこまで認知されてない気がする。

CCライセンスが使われやすい分野もあるんですけど、音楽分野ではそこまで広がらないというか。

ヒップホップとか、サンプリングカルチャーみたいなのもあるじゃないですか。ダンスミュージック、ハウスとかもそうですけど、CCライセンスはそこに意外と知られてないというか、どんな音源があるのかも、あんまりみんな分かってないのかもしれない。
でも、あんまり整頓されすぎてもどうなのかっていうところもありますからね。100円コーナーのゴミみたいなものから見つけてきてサンプルする楽しみ方というのもあるし。

CCライセンスと民謡の親和性

interview-dj-kensei-3.png

CCJPの活動やCCライセンスの印象などについてもお話していただきました

音楽分野だと、これはOKだけどこれはNGかなみたいな、なんとなくの感覚があってそれでやっていけてるから、別にCCライセンスがなくてもいいのかな、みたいには思ったりはするんですが、いかがですか?

その曲を発表する場所でも違ってくるよね。堂々と使えた方が良いんだけど、本当に好きだったらお金を払う人もいるし、それがリスペクトだったり。だけど逆にライセンス料が高すぎて払えなくて弾き直す人もいるし、、CCライセンスは法律的な部分を気にしないでできる意味ではいいんですけど、気にしないものを使いたいか?みたいなところもあるし、、、ヒップホップのサンプリングとか、もともとグレーではあるからね。ただそれって生まれるべくして生まれてるからね。自然なプロセスから生まれるものは美しいし。工夫して使うのがいいんじゃないかな?

あとは祭りとか民謡なんかの文化ごとライセンスして欲しいですね。

そうですね。文脈も込みで音だけに限らないライブラリーみたいのができたら面白いかもしれないですね。その土地の風土が理解できたり、町のことを知れたり、音なども取れるみたいなものが。

コンスタントに何年かこういうプロジェクトをやり続けないと、なかなかワンショットだと難しいですよね。是非続けてもらいたいなと思いますね。でも大石始くんとかね、そういう民謡をサポートしてやってる人たちが、どんどん協力して、少しずつは広がってる気がしますね。俚謡山脈という人たちもいるし。いろんな人が、それぞれの魅力を語った方が良いと思うんですよね。
まずは興味を持って、その存在を知るって言うことが大事だったりするからね。日本中の民謡が全部クリエイティブ・コモンズにあったらいいですけどね。

(注:大石始は編集者、ライター。著書に「ニッポン大音頭時代」「ニッポンのマツリズム」など。連動企画であるDOMMUNEでの8/24の特集番組にも出演)
(注:俚謡山脈は民謡のみでフロアを揺らすDJユニット。いわゆるダンスミュージックのもつビート/グルーヴ感ではなく、素の民謡のもつグルーヴ感をクラブで表現している稀有な存在。)

今後、それができたら面白いと思ってます。

ライフワークにした方が良いんじゃないですか(笑)?そのアーカイブ作ったらもう国宝級じゃないですか。それは日本で残すべきものなのかもしれないですね。北から南までね。

日本の人でも外国の人でも音楽で使ってみようっていうのも良いだろうし、そこからさらに調べてみようとなったりするのも面白いかもしれないですね。

まだ海外の人は存在すらあまり知らないんじゃないですかね。僕の場合すぐヒップホップに置き換えちゃうんだけど、ヒップホップも地域性があったりして、南部でトラップが生まれたとかさ。マイアミでベース・ミュージックが始まったり。日本でもその土地の風土からストーリーがあってこういうものが生まれたとかっていうのは案外知らないんじゃないかな?
自分もそうだし。同じ三味線や囃子なのに北と南じゃ全くテンポも弾き方も歌い方も違う。当たり前なんだけど。民謡はさ、ストリート感、生活感、水商売感(笑)あるよね。ベタだけどソーラン節とかニシン漁の話だったりするじゃないですか。その地元の話っていうか、全国区なローカル感。今はそういうリアルな感覚の音楽を皆欲っしてたりしますからね。

貴重なお話、ありがとうございました。

文責:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

8/24(木)19時よりDOMMUNEにて特別番組の配信が決定!!!!!!

8/24(木)19時よりDOMMUNEにて特別番組『Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC ~伝統文化からCCライセンス、ブロックチェーンまで~』の配信が決定しました!

民謡「越中おわら節」の録音を行いそれを元にリミックスも制作、両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表、さらには演奏団体、リミックス制作者のインタビューも連続して公開していく今回の企画、『Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC』
締めくくりとなるポイントとしてDOMMUNEでの特別番組の配信が決定!
番組までに公表した音源、インタビューなどを題材にしつつ、そこに留まらない幅広い視点でのトークが繰り広げられます!
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出演:
ドミニク・チェン(早稲田大学文学学術院・表象メディア論系准教授/株式会社ディヴィデュアル共同創業者/NPO法人コモンスフィア理事)
⼤⽯始(ライター、編集者/旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」所属)
⾼橋幸治(編集者/元「MacPower」編集長/日本大学芸術学部文芸学科、横浜美術大学美術学部非常勤講師)

ビデオ出演(録画):
Benji Rogers (dotBlockChain Media CEO & Co-founder)

諸事情によりBenjiさんのビデオ出演はキャンセルとなりました。

リミックス制作:
VIDEOTAPEMUSIC / colorful house band

リミックス元音源演奏:
越中八尾おわら道場

企画:
森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

クリエイティブ・コモンズ・ジャパンは、「CCは大地、DOMMUNEは給食!!」という宇川氏の言葉から着想して、よりクリエイションの連鎖や大地を広げる試みができないかと考えた結果、日本の伝統文化に焦点をあてた企画を開催!!!!!!!!!!!!!!富山県で毎年9/1から3日間行われるお祭りで、毎年約20万人の観光客が訪れる「おわら風の盆」で演奏される「越中おわら節」を、現地の演奏団体の方々に録音をさせていただき、その音源を元に2組のアーティストによるリミックス作品を制作、その後オリジナルの録音とリミックス作品にCCライセンスをつけてSoundCloud上に公開しました!!!!!!!!!!!!!!連動したインタビュー記事も連続公開する中、総仕上げとなるDOMMUNEでは録⾳&リミックスの紹介から、日本の伝統文化の伝播や変遷、CCライセンス、はたまたブロックチェーンまで、過去と未来の双方向に話題を向けつつ、クリエイションを生む土壌や、著作権・⾳楽の今後の可能性を考察します。

ぜひご覧ください!!!!!!!!!!!!!!

連載インタビュー記事 VOL.1 / 越中八尾おわら道場代表、庵進インタビュー

連載インタビュー記事 VOL.2 / VIDEOTAPEMUSICインタビュー

連載インタビュー記事 VOL.3 / DJ KENSEIインタビュー

【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.2

サンプリングは肉体の手癖も越えられる

富山県富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表するという今回の企画。
vol.1では「越中おわら節」を録音させていただいた「越中八尾おわら道場」の代表、庵進さんのインタビューをお届けしました。
今回のvol.2では「越中おわら節」の歌心を生かしながら、ダブ感・納涼感の溢れる素敵なリミックスを制作していただいたVIDEOTAPEMUSICさんのインタビューをお届けします。制作過程のお話や、サンプリングに対する感覚、CCライセンスの印象など、ぜひ音源を聴きながらお楽しみください!

VIDEOTAPEMUSIC / Ecchu-Owara-Bushi VIDEOTAPEMUSIC Remix

越中八尾おわら道場の演奏、colorful house bandによるRebuildも含む企画全体はこちら

 VIDEOTAPEMUSICプロフィール

VIDEOTAPEMUSIC Profile

地方都市のリサイクルショップや閉店したレンタルビデオショップなどで収集したVHS、実家の片隅に忘れられたホームビデオなど、古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作している。VHSの映像とピアニカを使ってライブをするほか、MV制作、VJ、DJ、イベントのオーガナイズなど活動は様々。MVでは盟友ceroを始め坂本慎太郎、小島麻由美、NRQなどジャンルレスに手がける。ほかにもモデル、女優の菊池亜希子のムック本「マッシュ」のCM映像、楽曲も製作。ライブにおいては、クラブシーンからインディペンデントシーンまで幅広く活動。ダンスミュージックとしての下地に、近年盛り上がりを見せつつあるムード音楽やラウンジミュージックの文脈から繰り出すポップでメロウなメロディは絶妙であり、映像のセンス含め、まさに洒脱な音楽を作り出している。昨年秋にリリースした2ndアルバム「世界各国の夜」は全国各地で大好評ロングセールス中。
2016年5月に配信限定シングル「Sultry Night Slow」(カクバリズム)リリース、7月にはceroとのコラボレーション編成の「VIDEOTAPEMUSIC×cero」としてフジロックフェスティバル出演、12月に坂本慎太郎との共作 LP「バンコクの夜」(em records)、2017年1月に7inchシングル 「Kung-Fu Mambo」(雷音レコード)リリースと引き続き精力的に活動中。
映像のみならず音楽との双方向でゆらゆら踊れる夜を演出する、そんな素敵な男がVIDEOTAPEMUSICである。

昨年配信限定でリリースされたシングル VIDEOTAPEMUSIC / Sultry Night Slow MV

第2回 VIDEOTAPEMUSICさんインタビュー

2017年7月27日19:30 三軒茶屋 某会議室にて収録
インタビュアー:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

VIDEOTAPEMUSIC Interview 1

今回のリミックス制作のお話など色々とお伺いしました

まずは、基本的なことをお伺いできたらと思うんですが、最初はVHSの編集から映像と音楽を同時に制作するというスタイルで活動を始められたのでしょうか?

最初は映像とかを作ったりしてて。音楽はビデオ編集の延長で作り始めた感じです。

最初にビデオの編集をしようと思われた時には、何かきっかけがあったんですか?

美大に行って、ビデオアートって言って良いのかわからないですけど、そんな映像作品を作っていました。でも音楽も好きでバンドとかもやっていて。それである時、サンプリングと編集で作るっていう、実際には演奏しない作り方が音楽にはあるんだなということを知って、ビデオの素材だけを編集して曲を作るっていう作り方になりました。平行してやってたことがちょうど合わさったみたいな感じで。

サンプリングの魅力や面白いところってどのあたりに感じますか?

何ですかね。全然違う別の空間とか別の時代のものが、一緒の空間で鳴ったときに変に調和したり、ぎこちなくなったりみたいなそういう部分とかですね。

たしかに、時代とか場所を越えちゃうところがありますね。

サンプリングは元々の文脈から切り離されたものが無関係に合わさる面白さもあると思うし、逆にある時代や空間を意識させる面白さもあると思うし。どっちの面白さもあると思うんですけれども、時代とか空間を行ったり来たりできる感じが面白いですね。自分の肉体の手癖みたいのも全然越えられるっていうか。

VIDEOTAPEさんは、外的な要因から影響を受けて作る事って結構多いんですか?

そういうのが好きでこういう作り方をしているというか、あんまり自分の内から出てくるものは信用してないところがあったりするので。

そうなんですね、例えば怒りとか、内から出てくる感情が制作に影響することは?

まったくないという訳ではないですが、たまたま観た映画とか、景色とか、そういうものを毎回自分のフィルターを通して出す感じが多いです。
サンプリングするネタにしろモチーフとなる風景とか町のことにしろ、出会いは偶然というか、その偶然をいかに捕まえるかが自分の中の主題ではあります。

街の空気をそっと染み込ませる

最初にメールでこの企画のお願いをしたのですが、どんな印象でしたか?

自分としては願ってもないというか。やっぱり僕はサンプリングをメインに作っていて、そこに可能性を感じていることは間違いないんですが、その一方で著作権的な壁にぶち当たることも多々ありまして。リスクの大きな制作方法を選んでるなとは自覚していたので、こういう話をもらって、ちょうど悩んでる部分とも重なるというか、勉強にもなりそうだしちょうどいいなと思って。
ビデオの音声のサンプリングに限らず、違うつくり方も模索しようとしていたところで、今作っている音源もフィールドレコーディングの比重がけっこう多かったし。それも含め、何かタイミング的にやろうとしてることとリンクしている部分があったんで。

フィールドレコーディングというのは、自然の音とかを録ってくるってことですか。

厳密にはいわゆる自然だけではなくて、その街で流れている音とか、街の中の人のしゃべっている声とか、人が歌っている声とかを色々使ってやったりしていますね。
色々な地域を題材にした曲を作ることは多いのですが、曲の題材になった地域の空気みたいなのをフィールドレコーディングの素材を使って無意識レベルで染み込ませようとするような作り方はわりとずっとやっています。

今回のリミックスにも水が流れる音が使われていますね。

あれもそうですね。八尾の町に実際に行った時に、路地の側溝にずっと水が流れていて。町を歩くとずっと水の音がしていてそれが印象的だったので録音した音です。

VIDEOTAPEMUSIC Interview 2

八尾の町中にはエンナカと呼ばれる側溝が流れています

八尾の町が持つダブっぽさ

今回、町に流れる水の音を入れたっていうことで、親しみが増したりとかはありますか?

そうですね。話をもらって、おわら風の盆の事を色々調べたり、音源を聴いたり、YouTubeで動画を見たりしたんですが、初めて知った民謡だったので、やっぱり自分との距離がどこか遠く感じて。実際にその町に行って歩いたことで、インスピレーションみたいのはいっぱい得られました。使う使わないは考えずに、まず録音して後から考えようって感じで。行ったことでムードは自分の中に消化できたかな、みたいなのはありますね。

その土地に行ったことで、自分の中で納得感が増すという感じでしょうか?

そうですね。現地にある資料館に行った時に色々見たんですけれど、八尾の路地は狭くて道も石畳で出来ていて、それによってお祭りの時に四、五歩歩くたびに音の響きが違ってくるみたいで。虫の鳴き声だったり、水の音だったり、町を練り歩くときの音の変化も一緒に楽しんでました、みたいな解説があって。
四、五歩歩くたびに、その町の建物の変化で音の響きが変わる感じが、もしかしたらダブっぽい考えかなというか。建物の狭い路地から広いところに抜けただけでその石畳の響きが、反響の仕方が変わる。それも昔からお祭りをやってる人は意識してたんだなと思うと、その考え方がダブっぽいなあと思って。だからちょっとダブっぽい感じのニュアンスのリミックスにしようっていうのは、なんかその時に決めて。
それで、その時の水の音と石畳を歩いている音を録って使ってるっていう感じです。アタックの音に微妙に石畳の足音を紛れ込ませたりとか。

VIDEOTAPEMUSIC Interview

八尾の町の狭い路地

そうなんですね。現地に行ったことによって、作品の方向性が決まるというのは面白い作り方ですね。

自分の中でつじつまを合わせるというか。それを全面に伝える気はないんですけど、自分の中で納得できれば良いかなと。ただ実際にその場所に行けて見れたのは良かったです。自分が家にいて頭の中で考えただけではないアイデアがそこで出てくるから。その町に行ったことで音楽も変わってくるっていうか。

VIDEOTAPEMUSIC Interview 4

路地を抜けると広い通りに

土地勘と距離感

先ほども少しお話がありましたけど、アジアの国や熱海など、特定の土地をテーマにされる場合がありますが、サンプリングをする際はそこに愛着や憧れを感じてテーマを決められるのでしょうか?

きっかけは本当に色々です。本当に好きでやるときもあるし、なんか結果的に愛着がわくときもあるし。例えば、映画のワンシーンを何も考えずにサンプリングして、ある程度曲ができたとして、後々そのシーンがどこで撮られてたっていうことを知ることで、その土地に愛着や興味が湧いたり。そうこうしているうちに、土地を題材にした曲が増えてくるというところがあるかもしれませんね。

土地とか人とか作品とかを遡ることを意識されているのでしょうか?

そうですね。そこで見えてくる時代の変化みたいな事だったり、そういうのに惹かれることは多いです。
何の情報も無しに、音を聞いて凄く良いなって思うのも、もちろん好きなんですけれど。それだけじゃなくて、これはどの時代にどの場所で録られたものなのかって知ることで、自分との距離とかが分かって愛着が湧いたり。むしろ逆にすごい距離感を感じたり。そこで、その対象に対する理解が深まったり変わったりするみたいな、そういう楽しみも好きですね。

模索する、民謡との距離感

今回、題材が日本の民謡だったんですけれど、いかがですか?

興味はすごいあったんですけれども、取り込むにはもうちょっと自分の中で時間と経験がいるなっていうか、無責任に扱えないところでもあるっていうか。学生時代に大学の企画でとある伝統芸能の踊りに合わせてVJをしたことがあったのですが、その時に踊る方からすごく怒られたんですよ。歴史も文脈も理解せず生半可な気持ちでやるのは失礼だという感じで。
だから民謡は、ちょっと覚悟がいるなって。やりたいけど、もうちょっと自分の経験がいるし、中途半端に手を出せない分野だなと思っていたんです。でも今回、機会を与えてもらえて、踏ん切りがついたって感じです。

僕らも途中まで、結構悩んだんですよね。富山の伝統芸能に対して東京の僕らが手を加えることに対して。

まあ、そういうのももちろんありますね。それは向こうにとってみたら迷惑な可能性もあるし。

よくある話ですけど、搾取的なイメージで捉えられてしまう、というかそうなってしまう場合もありますね。

それはこういう作り方をしている時に、民謡だけでなく何事に関しても、結構直面する問題でもあるというか。全然文脈なく引っ張ってくる面白さもある一方で、文脈を無視することで失礼にあたるよくない場合もあるし。無邪気に珍しがって面白がるだけなのも違うし、ちゃんとこっちも勉強しないといけないっていうのもあるだろうし。

目に見えないリスペクト感を、お互いいかに持つかという難しさですよね。

それは大事かもしれないです。小さなコミュニケーションが案外大事なのかも。今回はお会いできるタイミングがなかったから、せめて町をもうこれでもかというぐらい歩くしかないというか。自分なりの落とし前のつけ方として、一応現地に行って勉強はしてくるっていう。

近寄り難さはどんなコンテクストから?

さっきの距離感の話で、ビデオの素材だったらそこまで気にしないと思うんですけれども、民謡とかだったら気になっちゃうっていうのが、不思議だなとも思うんですけれども。存在が近いがゆえなのでしょうか。

でも、ビデオでも気になる時は気になっちゃうんですけどね。気になる度合いの多さは違うと思うんですけど。

近いと気になるんでしょうかね?

もちろんそうですけどね。でもかといって、遠いから良いってこともないとは思うんで。そこは何か一概には言えないですけど。

例えば商業ベースに乗ってたら使いやすいけど、非商業だと使いにくいとか。

作品としてパッケージされたものと、民謡のようにそうでないものは確かに違う気もします。でも本当はどちらがどうとかあんまり区別しちゃいけないとも思う。そういうことを考えるきっかけに今回はなったかなみたいな。

徐々にアップデートされていく民謡

今回、録音した「越中おわら節」の音源をお渡しした際、聞かれた時の印象は何かありましたか?

胡弓がけっこうやっぱり効いてる感じはして。唄は、使ったのはほぼアカペラ状態のところが抜きやすかったので、そこしか使わなかったんですけど。歌詞は、なんて言っているのか調べてみても、一つだけではなくいろんなパターンの歌詞が出てくるからそれが面白かったですね。色々増殖していく感じというか。次から次へと作られていて、新しく増えたり変わったりしているのか、そんなところ面白かったです。

定番的な歌詞もあれば、それ以外のものも、すごくいっぱいありますからね

自分たちで替え歌みたいなのを作って、更新っていうか、地域毎にそれぞれの歌詞があるって感じなんですかね。

それもあるし、その昔、八尾の町を盛り上げようっていう時に、どんどん作ろうみたいな動きがあって、色んな人を呼んだりとか作っていったみたいですね。

歌詞を調べたら色々出てきて面白かったです。次から次へと歌詞がたくさん出てきて。
しっかり伝承しようという部分も、時代とともに自由に変化していく部分も、どちらも存在している感じがして、それも面白いなと思いました。

実際、出来上がった音をご自身で聞いてみて、どのような印象というか、普段とちょっと違う感じとかあったりしますか?

おかげさまで自分としても新しい試みができたのが面白かったですね。この先の自分の制作のきっかけというか。もうちょっとこの感じは掘り進めたい、みたいな感じはあります。

それは良かったです。

なんなら本当に各地いろいろやってみたいぐらい。

ノイズと偶然性

録音の状態に関しては、何か感想などありますか?

僕はもうめちゃめちゃ音の悪いものからとかもサンプリングしてるから。どういうものが来たとしても受け入れる準備はできてました。でも綺麗な状態のものが来てたんで。

反対にノイズに関しては何か思いがあったりしますか?人によっては、人の声もノイズ。でもそれを音楽に変えていくことに、どんな理由があるのかなって。

それがないと面白くないなって思っていて。曲を作ってても絶対なにかしらのノイズを入れちゃいますね。音に関しても世の中の状況に関しても、ノイズは必要というか、そもそも何がノイズかなんて人によっても違うし、一見邪魔だったり一般的に考えたら消すべきも音も、実はそうじゃないというか。本来ノイズとされている音を曲の中にはできるだけ取り入れたい気持ちはありますね。

偶然性や意外性とか、ちょっとストレートじゃないものがあった方がやっぱり面白いですか?

そうですね。綺麗にノイズが消された状態はなんか嫌だなぁっていうのはちょっとある。そもそもなにが不必要なものかは簡単には言えないと思っていて。必要ないと思っていたものでも、音楽では実は効いていたみたいな事はあったりすると思うんで。

そうですね。ノイズを全部消していったら綺麗ですけどね。ストレートになるけど、味気けないかもしれないし。

自分はノイズある方を選んじゃうかな。だから今回も綺麗に録ってもらってはいるんですけど、ずっと僕その下に環境音のノイズを入れちゃってるんで(笑)

CCライセンスの今後の可能性と限界

VIDEOTAPEMUSIC Interview 5

CCライセンスの印象などについてもお伺いしました

作品にCCライセンスをつけたものが提供されていけば、いろいろな音楽の可能性や、使える範囲というのも広がってくると思うのですが、今回実際使ってみて、ライセンスのここは使いづらいよとか、気になることなどはありますか?

なんですかね。もうちょっと僕もこれをきっかけに、こういうものがあるっていうのを勉強したいなとは思いますけれど。

例えばですが、他の人がVIDEOTAPEさんの曲を使った場合、そんな気にしないとか、他の人がお金を儲けてたらその何パーセントは還元してもらわないと嫌だなとか、人によって差があると思うんですけれども、いかがですか?

その作品によるというか。初めから自分もそういうつもりで出してれば、そんなに気にしないです。難しいですけどね。サンプリングで作った自分の作品がまた別の誰かに自由に使ってもらえることは、理想を言えば構わないとは思っています。でも作品は僕一人の意思で出していない場合もあるから全部がそうはいきませんが…

今回のやつで、ここからさらに派生したものが出来たりすると嬉しいですよね。

そうですね。ちゃんとライセンスつけて、自由に使っていいよって、こっちも意思表示をしていれば、そこから更に作れるっていうのは、何か良いですね。

ただ、CCライセンスは、どう使われたかっていう事に関して追うことはできなくて。例えば僕がVIDEOさんのやつを使ってリミックスを作ったとして、僕の発表した所には情報を掲載するかもしれないしけど、VIDEOさんに報告や通知がある訳ではないので。

こっちに報告が必ず来ないといけないということはないですよね。

そうです。そのあたりの仕組みが出来るようになると良いのかもと、ちょっと思ったりとか。

こういうところで使いましたっていうのが分かると嬉しいですね。知らないとこで使われてるかもしれないっていうのも面白いですけどね。

現在だと、ブロックチェーンの仕組みを使って情報管理や記録をみんなでしようっていう、それを使って著作権管理できないかみたいな動きも多少あって。いろんな細かい条件付けれたり、別に売ってもいいけど売れたらその10%下さいとか。その使われた情報がこっちに来たりとか。

そういう交渉や情報交換が、やりやすくなるとすごく良いなと思いますね。例えばこっちがサンプリングして使った時に、それをちゃんと許可を取ってやりたい時とか、交渉がしやすいとすごく良いですね。この音源使いたいけど誰に連絡したいかわからない。どこに許可とって良いか分からないという場合も結構あったりするんで。

気軽に連絡取れたりとかすると、また違ったコミュニティができたりとか、いろんな出会いができそうな感じですよね。音楽をやっている上で新しいコミュニティのあり方というか、なんか新しい出会いがあったり、それによってまた音楽が出来たりみたいな、なんかいい流れになるんじゃないかなと。

それは、面白そうですね。

今後、クリエイティブ・コモンズとかライセンスとかに何か期待することとかありますか?

サンプリングで作っていくのは色々と難しい部分もあります。でも、それでしか作れないものは確かにあるので、そういうものに対してクリエイティブ・コモンズが、突破口になってくれるといいなみたいな。勝手なあれですけど。期待してますって感じで。

クリエイティブ・コモンズはちょっと、逃げ道じゃないですけど、使えばまあ一曲ぐらい増えるぞみたいな。

いやいやいや(笑)

興味深いお話、ありがとうございました。

文責:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.1

なぜ私たちは、富山市八尾町へ?

今回クリエイティブ・コモンズ・ジャパンでは、富山県富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表するという試みを行いました。
この企画の背景には、実践を通じてCCライセンスの<可能性>と<限界>を検証するとともに、デジタルと親和性の薄い、地域・伝統文化との良い関係性の持ち方を模索したいとの思いがありました。

もっとライトに表現をすれば、日本の伝統文化は近くて遠い存在であり、リミックス等にそこまで多用されてはいないと感じていたので、日本の伝統文化とフラットに接して、模索しながらリミックスを行うことで、新鮮な音楽や刺激的な創作の連鎖が起きるのではないか、と思ったことが一番大きなモチベーションだったりします。

このような思いを抱いて調べていくうちに、富山が民謡の宝庫であること、またその中でも「越中おわら節」は屈指の名曲であることを知りました。実際に聞いてみると、日本の民謡には珍しく胡弓が使われていて耳を奪われましたし、また哀愁を帯びた響きが素晴らしく、とても心惹かれるものがありました。

何度か富山に足を運ぶうち、幸運にもご縁があり、今回の企画の実現に至ることができました。

演奏を録音させていただいたのは「越中八尾おわら道場」の皆様、リミックスを制作していただいたのはVIDEOTAPEMUSIC, colorful house bandの2組です。完成した音源をお楽しみいただきながら、以下読んでいただけるととても嬉しいです!

今回、企画の一環として「越中八尾おわら道場」の代表の庵進さんと、リミックスを制作していただいた2組の方々にインタビューを行っています。

まずは、第一回目として「越中八尾おわら道場」の代表の庵進さんのインタビューをお届けいたします。

「越中八尾おわら道場」は「越中おわら節」の研修と伝承・普及を目的とし、1985年に設立された団体です。
越中八尾おわら道場ホームページ

「越中おわら節」は富山市八尾町で毎年9月の1,2,3日に催される「おわら風の盆」というお祭りで演奏されています。「おわら風の盆」では十一の町ごとに編成される越中八尾おわら保存会の各支部が、それぞれの町を演奏と踊りを披露しながら練り歩く町流しが名物となっています。しかし、それとは別に、町の中心にある名刹、聞名寺のステージで演奏している団体があります。それが、今回演奏を録音させていただいた「越中八尾おわら道場」という団体です。こちらの団体は保存会とは違い、各町ごとの編成ではなく、居住地、年齢、性別を問わず誰でも随時入会でき、地元の人であろうと県外の人であろうと、民謡(唄、楽器、踊りほか)の経験が深かろうが浅かろうが、また老若男女を問わず門戸を開き、ただ技量の進歩上達を基準に審査を行い、段位を取得してもらう、という趣旨のもと活動されています。
富山市八尾町での演奏の他に、他所でも演奏活動をされており、京都大原三千院や比叡山延暦寺、さらにはハワイやインド、ピラミッドの前まで(!)、かなりの世界規模で活動されている団体です。
今回、幸いにもご縁があり、演奏を録音させていただきましたが、リミックスに使わせていただくことやCCライセンスをつけて公表させていただくことも快諾していただきました。「越中八尾おわら道場」代表の庵進さんが、どのような経緯で、またどのような思いで団体を運営されているのか、今回の企画をどのように感じられたのか、色々とお話をお伺いしました。

第1回 越中八尾おわら道場 庵進さんインタビュー

2017年7月9日17:00  富山市八尾町今町善称庵にて収録
インタビュアー:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)

おわらとの出会い

CCJP Iorisan Interview1

「越中八尾おわら道場」の代表の庵進さん

庵さんがおわらと出会ったころのお話をお伺いできますか。

僕はね、高山線の越中八尾駅ってあるんですね。そこの町内へ僕婿養子に行ったんですよ。元々は庵じゃないんです。26の時。駅のある町内。福島。それで行ったところの、まあ舅姑と言うのが、この町の狭いところから福島というところに新たに出たわけだったんです。
でちょうどそこの娘のところに行ったわけですけれども。だから、昭和46年正確には47年ぐらいから、おわらというのを見て。僕自身は、おわらのおの字も知らなかった。
たまたま町から出た庵という、そこの舅が町で歌っていたんです。この人がまた真面目いうか歌はうまいけれど、真面目一本で。とにかく町内へ出るのが嫌だと。歌は本当にうまかったんだけど、町内へ出るのがいやで。だからお前行けと言われて、僕は代わりに行ってなんとなくやりはじめたんです。

(注:現在は富山市の一部となっている八尾町。八尾町の中にも東新町、西新町、諏訪町、上新町、鏡町、東町、西町、今町、下新町、天満町といった旧町と呼ばれる地域と、福島、またそれ以外の地域もある。「おわら風の盆」は旧町と福島の各町内で催されている。インタビュー中に出てくる「町」は旧町を示している場合が多い。)

庵さんのご実家はまた別の場所ですか?

すぐそこだけど、ちょっと車でここから5,6分で行けますよ。今だと八尾町。今では八尾はもう富山市になってしまったから。

今だと、おわらって言うといろんな人が知ってて、例えば僕とかでも東京でも名前聞いたりする感じですけど、当時はいかがでしたか?

全然。全く。かすりも。おわらのおの字も。全くかすりもしなかった。まさか僕そんなこと携わるとは夢にも思ってませんでした。

CCJP Iorisan Interview2

八尾町の地図にマークを入れて説明する庵さん

”おわら”以前

で、もともとはお祭り好きというか、二十歳ぐらいの時に、あの、自動車の整備士になろうと思って、岐阜県の大垣に整備士の学校があったんですよ。でそこに行って、そこからアルバイトしたりして、まあ大型の免許を取ったんです。22の時かな。それからいきなりダンプに乗ってね。それで途中から静岡県に天竜川があって。あっこの磐田の方に、えー名神高速道路と言うのは東京オリンピック、昭和39年に合わせて作った日本最初の道路なんです。ところが東名高速道路は、昭和45年の万博に合わせて作った道路なんです。
昭和43,4年中に、23,4、2,3の時かな。磐田の方で、東名高速道路の地盛りのダンプに乗っていたんですよ。考えられないぐらい無茶苦茶な仕事をしていた。当時はダンプと重機の運転手だけの簡単なバラックが、飯場かな、そこに何ヶ月おったかな。そんな事で、当時はね今で言うとお金にすると現金で手取り60万ぐらいもらっていた。22か3で、1週間から10日で綺麗に使うんです。

もう金配って歩く様な。ははは。本当に面白かった。だから今の若い人は可哀想だ。あの時はちょうど高度経済、オリンピックの後の高度経済成長。万博に向かってとにかく大型の運転手が必要だったんです。もう免許証を持っていけばその日からそこで使ってもらえるね。好きなことをしてきた。まそういう事が変な話、肥やしになってるよ。遊んだり、無茶苦茶なことしてきたからね。はははは。お金配って歩いた。
まあまた変な話、好きなことをしていて自分は行方不明ですよ、実家からすれば。ホームシックのホの字も知らない。そうやって歩いてそれで最後に、いま何かな、名古屋の港区になっているかな、どこかそこの土建屋さんに最後いたんですけれども。

で、そこの親方の嫁さんの妹と一緒になってくれんかいなと。いやー、これじゃあ僕はここに一生いないといけない、ダメだということになって、家にいきなり電話をかけた。迎えに来てくれ!って。
兄貴がちょうど造園をやって、高度経済の昭和40年代で、造園というのは富山県で流行ったんですよ。だからちょうど人手不足で。ずっと去年まで兄貴の作った会社でやっていたんですよ。そうしているうちにちょっと縁談があって、養子に入ったわけだけれども。

胡弓の名人、若林久義氏との出会い

CCJP Iorisan Interview 3

石畳の残る八尾の町並み

そんな時にやっぱり僕は、きちっとしたお師匠さんはいないんですけれども、1週間に4日くらい入った家があるんですよ。その方は明治生まれの人です。最後の名人ですね。三味線と胡弓の名人。だから生き字引です。そこへ行ったけれども八尾の町の人は、いっぺんも誰も来なかった。
だから僕の知っとる話を知らない人は山ほどおるわけ。だから、ちょうどその年代で途切れてしまって。八尾の町の人が弾けない三味線を、僕は弾けるんです。
ホームページにもあるけれども、若林久義という胡弓の名人。胡弓の名人と言われていたけど、僕は三味線の名人だと思う。でもね、明治生まれの人だから、全く教えてくれません。聞いたら教えてくれるけれども、だから昔は技術を盗むしかないんです。
直接教えてもらったというのそんなには身につかない。中には、あの先生は何も教えてくれない、この先生はよく教えてくれると言うけれども、それは違うんだと。お前さんの観察力が足らないと。僕はそう思う。

若林さんところに行かれていたのは庵さん40歳ぐらいですか?

30代から40代くらいだね。道場作ってからあの方も高齢になられたからあんまり行かなくなった。

おわら道場の立ち上げ

昭和60年だから、僕がちょうど40の時かな、民謡バブルでこの町へ、この風の盆に人が物凄い来るようになったんです。だんだんよそから本物志向で習わしてくれと言う人が結構来るようになった。だんだんいろんなご縁ができると、そうすると、明治生まれの人たちもこんなことやっとったんじゃ、保存会のことだけじゃダメだなと。全部やりやすいようにやってしまう、みんな楽な方向になってしまって。ましてや過疎になってきたでしょ。やりやすいというのはダメだと。

最初は町の方が何人か集まっておわら道場を立ち上げられたのですか?

そうそう町の人。で、福島の人が何人かな。発起人の中に、半分ぐらいいたんじゃないかな。結局やり手ばっかりがおったから。だから昭和60年4月に、今日からやりましょう、ではなくて、やっぱりその3年も4年も前からやろうやろうと言って、下準備があったんです。発起人だってね、いきなりこういう集まったもんだけど、そうじゃないんだよ。あの人も来んかなと、やっぱりそういう時間は3,4年もっとあったかもしれないですね。

じゃあその頃、庵さんがちょうど若林さんところに行かれていてっていう時ですね、その後に道場が立ち上がったんですね。

まあそんなことで始まって、途中で、その町内の行事とこっちの行事とできなくなったんです。体が二つないから。それでもう道場だけにしたと。あの掛け持ちできなくなって。あの道場はやっぱり県外から集まってくるし。まあ別に町内を捨てたわけではないけれども、何となくこうなって。

おわら道場さんは最初からどこからでも受け入れようという感じだったんですか?

まったくそうそうそう。どなたでも性別国籍問わず。いわゆる来る人拒まず去る人追わずです。ずっとそれでやってます。

聞名寺で奉納演奏をするように

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聞名寺でのおわらの様子 
(提供:越中八尾おわら道場)

道場は昭和60年から立ち上がって、ここで踊るようになったの平成6年からなんです。きっかけはいろいろあったんですが、風の盆の碑という石碑があるんですよ。僕らはあの平成4年に若林久義さんが亡くなって、平成5年には、明治生まれでお囃子の名人だった天満町の中田国嗣さんが亡くなった。平成5年に僕ら浴衣デザインする言ったら一応肩書は相談役としていた、絵描きさんの笠原輝芳さんも亡くなって、3人亡くなったんですよ。半年ほどで。亡くなったいろんな経緯があって、とにかく風の盆の碑を作ろうということになって、新潟県の柏崎まで、僕はたまたま造園屋をやってて、石碑になっとる石をただもらいに行ったんです。僕はダンプの運転をして。

立ち上げに関わられた方が亡くなられて、それで碑を聞名寺さんとこに立てて、というのがきっかけで聞名寺さんでおわらをされるようになって…

あ、そうだもっと大事な話をしなければいけない。昭和60年にいきなり60名近く会員が入ったんです。で、当時民謡ブームだから。大阪の人も結構来たんです。で、そしたら結局宿持たずでしょ。当時はね町流しできたんですよ。楽に。自由にいろんな人が。

おわら道場さんのホームページ見てると最初は町流しをしていたって書いてありますね。

そうそう、最初は3日の町流しから始まったんですね。それが宿を持たずで、どうしようもないしさ。最初の会長の家寄って色々話をしていたけれども。浴衣もちゃんと揃えたと、だけど、宿がないとどうしようと。三味線のケースがあったり着替えの場所が必要だったりとか。
それなら、聞名寺さんがあると。接点はいろいろあったんだろうけれども。僕は植木屋しとったし、聞名寺、御前様だったら僕が頼みに行くわと言って。
いやちょっとこういうもんを立て、作って、こうこうこうこうしたいんだけど。その町外の人がほとんどで、着替えの場所がなければ三味線のケースを置く場所もないので、何とかその庫裏の一つ貸してもらえませんかねと言って、と言う話をして。この時代の発起人の、まあ年配者の人の名前を僕があげたら、みんな知っとると。でも、御前様は言うんです、僕はあんたに貸してあげるんだよと。
僕はその時はやったと思ったけど、今度は責任の重さにね。いやあ、あの時、御前様のあの言葉があって、未だにあの言葉で動かされているんだと思います。

最初は着替えなどの場所を貸してもらっていたんですね。

そういう不思議な出会いをもらって。だから植木屋としてずっと出入りしていたから知ってましたけど。それが、僕にすれば全ての始まりそこからかもしれない。聞名寺さんと付き合い、ほんとにいろんなことで可愛がってもらってやっているわけで。

そうなんですか、強い信頼関係と言うか。

まあ僕が言うのはおかしいけれども、そうしなかったらこんなことはできない。とんでもない話だね。

真面目な厳しい昇段試験

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左:越中八尾おわら道場の昇段試験の風景  
右:厳しい目で昇段審査を行っている審査員たち
(提供:越中八尾おわら道場)

おわら道場って言うのはこれがメインなんですよ。本当は。いわゆる技能審査会というのは硬い名前だけれども結局昇段試験ですよ。例えばあなた、楽器は何かやられる?

僕はギターを弾いたり。

そしたら三味線のところを見て、胡弓か三味線の。一番左から行くと、上から行くと太鼓が一番下で胡弓下から二番、三味線で左から上一番左に行くと初段、中段、上段、準師範とあるでしょう。そしてあの三味線の初段は何から始めるかとか、ほらだんだん課題が。

僕らを30年面倒を見ておられた竹内勉先生という方が、2年前に亡くなったんですが、その方が全国津々浦々、昔民謡を全部というか地元の民謡というか、あの人は NHKの毎週水曜日ラジオでだいぶ前になくなったんだけれど、民謡を紹介する番組、多分40年1人で1時間やられていた。単に民謡を紹介するのではなくて、本当に、例えば芸者さんであったり、地元の歌い手であったりその人の物語やら、その民謡にある物語、歌を紹介するんだけれど。だから歌自慢ではないんです。だからそういうのでものすごく良い番組だったんですよ。
その人がおっしゃったのは、プロアマ通じて、うちが一番真面目な厳しい昇段試験。わかる人が見たらね、びっくりすると思うよ。最短で準師範行った最短で三年、最短でですよ。

僕の記憶では、道場の帳面に載った人は千何百人居ると思う。でもね、喧嘩して辞めた人は僕の腹のなかでは一人もいない、ただ難しくて来なくなった人はいるけれども。準師範になった人の中に大阪から通っていた方もいたけど、それでもやめなかった。

だから民謡といっても、おわらの場合特別なものがあるんですね。結局辞める人と、まあおわらではなくても続ける人は結構いるんですよ。それはまあ絶えず挑戦してますけれど、なかなかそうはいかない。だから竹内先生がおっしゃったのは、プロアマ通じて一番厳しいというのは、なあなあではないということ。つまり、絶対に公開で出入り自由で、それは見た通りのことを評価するわけです。

CCJP Iorisan Interview 6

越中八尾おわら道場の技能審査会の審査要項

年齢層はどんな感じなんですか?

年齢層は結構、幅広いというか、もう高齢者です。若い男性がまずいないでしょう。それは趣味ならできるよ、ただ趣味と言うか没頭できるというのは、家庭持つと、仕事家庭大変でしょう。男は可哀想で50ぐらいで入ってくる人はよっぽどそのうまく切り盛りできる人か、まあ、昔は職人さんとか結構おったんですよ。
今はそういう時代じゃない、趣味もやらんないけんね。で、女性になると結婚したらまず来ないでしょう。子供出来たら。子供手を離れたらなかなか。じゃあ小学生入ってきたら、今小学生名古屋から来てる子いるんです。それからまあ、中学生も過去に何べんも来るけれど、中学生は今度は学校に行かないならん部活やら。

民謡のリミックスと継承

それであなたたちは、大まかにどんなことやっているの?

それでなんですけれどもちょっと見て頂きたいんですけれども、これは、あのクリエイティブコモンズという、これが僕たちのやっている団体なんですね。これ、あの著作権の関係なんですけれども、えーと、例えば演奏された物って演奏された人が権利を持っていて・・・

CCJP Iorisan Interview 6

庵さんにCCライセンスの概要を説明中

それはアマチュアでも関係ないんでしょ。

関係ないです。それは誰でもあるものでして。それであの細かく言うといろいろあって、作詞とか作曲とか演奏とかってあるんですが。

僕はこんな本来的に民謡て、そういうのはないと思うんですね。

作詞作曲はもう、誰かが作ったというより、受け継がれてきたものだから。

民謡はまあ家元がいてね

だけど演奏したことに関しては、それの権利というのがあるので。例えば僕が庵さんの演奏を勝手に録音させてもらって、それを例えば CD にして勝手に売りましたっていうとそれは当然ダメですよね。

僕はそれは何とも思わない。

本当ですか、でもそれは駄目っていうことになっていてですね…

法律上は。

ただ、庵さんが別に何も言わなければ実際には問題にならないことではあるんですが。
例えば庵さんが別にこれ、使われてもいいんじゃないって思ったときに、このマークを作ってまして。例えばこれだったらこれは名前は書いてください、名前は庵さんが演奏しましたよと書いて欲しいと。名前を書くなどいくつかの簡単なことだけ守ってもらったら、後はほとんど何しても構いませんよというやつで。そういうのを何種類か作っていて。
でこういうのを使ったら、例えばいろんな人にもっと聞いてもらえたりとか、それを基に、今回やらしていただいているように、これを基に新しい音楽を作ったりとかっていうのができて、広がっていくと豊かなんじゃないかっていう活動をしてます。こういう考えを広めるということです

いや結構あの昔、沼津でやったやつ。それなんか風の盆で、すごい売っている。別に何ともおもわないけど。沼津に信用金庫ってあって。あれは多分平成12年だったかな。まだバブルの時分ですよ。信用金庫と言えど、沼津は大きいところで、年金の口座を持ってる人が5000人くらいいると言ってた。信金が50周年何かの記念で節目に、年金の人達の感謝デーに1500人あまり入る、大きい会館で、おわらを見せたいって言う話が来てね。じゃあ分かりましたと言って。僕は1時間40なん分をしゃべりながら、僕も歌って、話したりしゃべったり三味線や踊りを紹介したりして。
そしたら一流の音響屋さんが、終わった時に、音響屋の社長が、いや今までも一回もなかったけれど、これからも絶対ないだろうと。何かというと誰も帰らなかった。入った人が一人も帰らないって言うのは過去にないでしょ。

それで、そのことをやったその時に、著作権の話があって。ちょっとこの町中を外れたところにある、特定郵便局、ここはなかなか由緒のある家柄、その人があるとき、おわらのグッズを売ったりなんかして。うちへ訪ねてきて、おわらのグッズで、やりたいんやけどと。うちは録られて恥ずかしいぐらいだけど、何も知らない。
そしたら追っかけが始まって、沼津行ったんです。沼津までグッズ持って行って、でもグッズはほとんど売れずに。当時は MDあるでしょう MDを機械の、そこの音響屋さんに頼んで。マイクから入ってきて放送する前の段階で、だから本当に綺麗なやつをマスターテープにして。
いやあ庵さん、あれで何か商品したいけど、って言われたから、あー別にいいよ。いや別にそんなもん。
そしたら未だに、音源はそのままで。映像はいろいろ変えたりね、どっか町内頼んで別の映像撮ったりして、彼どんどん商売している。最初はね、カセットテープで出して、その次が、ビデオで出して、今度は CDから DVD からも出して、それで映像変わって音源だけはそのまま使っている。いや別にだから何とも思わん。

録音させていただいた音源なんですけれども、サウンドクラウドという名前のサイトに載せさせていただきたいなと思っています。

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今回、演奏を録音させていただいた際の風景

僕らがそんな通用すると思わないけど、まあやってみてよ。あなた達は骨折り損のくたびれ儲けになるかもしれないけど、笑。僕はそんなことは一切わかりませんし、そんな事に関して何も言うつもりもないし。ご自由にどうぞ。おもしろいね。でもこれ本業じゃないんでしょう。

本業ではないですね。

まあそういうのは一番良いかもしれないけれどね。いや面白いからやってるというのは。食うためにと行ったら大変だもんね。

食うためというとまたいろいろ考えなきゃいけないことが増えてくると思うんですけれど。これを紹介させてもらって色々できると面白いなと思ってます。

ああ、やってみてください。知らんけど、これはすごい広範囲というか無限だね。考え出すと無限というか。

明治生まれの人たちの想いを、僕は皆に伝えたい

民謡ってその誰かのものっていう感じではないという、お話もあったと思うんですが、例えば演奏とか合奏されたりとかする時に、これは自分の作品だっていう感覚とか、そう感じたりするとは思うんですが。

そうね。そのとても難しい質問だけれども。人数多い少ないはあるけれど、あの一通り誰かうちの会員がいった時、全くオーケストラだと言うんです。オーケストラ、の集合体で踊りみたいになってる。ね、踊りだけうまくたって楽器が下手なら、楽器が下手だったらどんな踊りの名人でも踊ったら下手になってしまう。そうでしょう。僕はそのオーケストラとして、全体が総合力でどうかなという事で、そこの目配せしかできんもんね、気配りというか。

例えば今回録音されたものを使って、新しい、違う形で音楽を作らせてくださいというお願いをさせていただいてますけれども、そのことについては、その話を聞かれた時に、例えばやりたければやればという感じでしょうか?

僕はそんな通用する訳ねーだろと、今でもそう思ってるんだけれども。だから変な話、どうだろうがもう、まな板の上の鯉だから、どういう風にしてもらっても結構ですよ。

庵さんにとって、伝統音楽とか伝統とはどういう風に思っていらっしゃいますか?

どう言ったらいいかな、やっぱり一生懸命やってるうちに、それしかないでしょ。これやらなきゃでやろういってやるのは学校の先生だけで。それを一生懸命やっている人たちはそんなことを。
だから伝統守るという、そんなどういうか、大きい目標というか、何もないね。とにかくやっぱり今前にあること一生懸命やるしか。僕はそういうタイプなんですよ。なんか、そこだけムキになって。だからあんまり、やっぱり能無しはこの程度ですよ。
やっぱりやるという姿を見て、みんな頑張ってくれるから。ついてくる言ったら大げさだけれども、一緒にやってくれるから、協力してるから、それしかないと思う。口でいくら言ったってそれは蛇踊らずでね。自分が一生懸命かどうか知らんけどムキになって。それがまあ、いわゆる側からみれば伝統を守っとるということになるのかなと。僕はそう思う。
やっていることは、習ったことをみんなで一生懸命やっていると。それが人に伝わるということで、それが強いて言えば伝統、伝統と言うのは、本来は伝統ってそんな、、民謡の越中おわら節としては伝統を守っているかもしれないですね。人前で一生懸命やるということで。それが唯一、審査要項という、それに基づいての課外活動だね。

口癖みたいに、本当におわらと言うのは不思議な力を持っとると。とにかく上手下手もそうだけど、とにかく続けようと。僕がいちばん異例だと思う。だってこんなことあったら。おわらでハワイへ行ったりとかエジプトやインドに行ったりとかそんなことは誰もしてない。

CCJP Iorisan Interview 8

エジプト、ピラミッド前でおわらの様子
(提供:越中八尾おわら道場)

すごいですね。おわら道場さんの演奏であったり、審査の基準と言うのは年々変わったりはするんでしょうか?

いやほとんど変わらない。なるべく、僕はその明治生まれの人たちのことを。僕しか知らないわけでしょ。僕は変えないためにこれをやっているわけです。だから引き継ぎと言うのは、とても難しいなと思うんです、時々考えたら寝れなくなります。明治生まれの人たちの想いを、僕は皆に伝えたいと、ただそれだけです。

おわら道場の今後というかこれからは、

これが難しいところで。町も一緒なんだけど人材がいないんですよ。中には若い人もいないではないけれど、若い人は50代かな、まあ大雑把に言えば。

その方たちは庵さんから教わったものを受け継いで、、

いや僕は踊りの事はあんまり教えん、手取り足取り、見る目はあってもなかなかね。踊りの人任せ。

この昇段試験で身につけられたことを指導者になって次の方に。

そうそう、やっぱり順送りだね。難しいところは誰でも難しいし。

そうですね。今日は長いお時間ありがとうございました。

文責:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)