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「クリエイティブ・コモンズの現在地、シェアの未来」開催報告

クリエイティブ・コモンズ・ジャパンは、2023年1月15日に「クリエイティブ・コモンズの現在地、シェアの未来」と題したイベント を開催いたしました。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスのローンチの20周年を記念したものです。

クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのメンバーを中心にパネルディスカッション形式で開催したトークセッションと近隣の会場で開催した懇親会で多岐に渡る議論を行いました。そこで登場した論点・意見のいくつかをご報告いたします。(読みやすさのため、執筆者の判断で再構成しています。)

1.20年間を振り返っての変化

著作権についての考え方

著作物をシェアするというアイディアが奇異の眼で見られることなく、ビジネスの戦略として受け入れられるようになったが、これは大きな変化。

CCライセンスの受容

CCライセンスがグローバルなデファクト・スタンダードとなった領域がある。オープンデータの領域がその好例で、公共的な情報資源の共有に用いられることは非常に増えた。他方、音楽や映画などのビジネス領域では利用例もあったが、広く使われるには至っていない。また、UGCと呼ばれるような領域では使われることも、そうでないこともある。

オープンなインターネットの光と影

様々なコンテンツがネット上で提供され、一面では非常に豊かになったが、他方では望ましいコンテンツばかりではないこと、多様なコンテンツを放置しておくことで発生する弊害も無視できないものになっている。コンテンツをシェアするプラットフォームについても様々な功罪が明らかになった。

2.積み残し課題や浮上した課題

クリエイターと報酬

中間搾取を減らし、クリエイターに金銭的にもより多くの報酬が提供される世界ができるのではないか、という構想は昔からある。近年ではWeb3の運動やブロックチェーンの活用によってそれが実現できる可能性も議論されている。だが、NFTの売買に使われるOpenSeaのように特定のプラットフォームに集中する現象はこうした新興領域にも見られるし、そのプラットフォームが取引料などを低く抑え続けるわけではないことも伺える。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの発足当初は、米国では大手プラットフォームではなくレコードレーベルや映画のスタジオなどが問題視されている時代だったが、こうした企業の影響力は以前として強い。また、そもそもクリエイターになりたい人の数が多く、そこに人々が割くアテンションの量が限られているためにクリエイターとして食べていけない人が多く出るという根本的な事情がある。

著作権とスマートコントラクト、支援ツール

クリエイターへの報酬に関連して特に解くことが難しい課題に、クリエイターへの適正な報酬がどの程度なのか、という問題がある。寄与分のようなものをどう評価するべきか、様々な考え方があり、人によって意見が大きく違う。システムとして実現することが簡単ではない。様々な試行錯誤が必要な領域とも言える。

著作権をアルゴリズムで書けるような明確なルールにできるのであれば、スマートコントラクトなどとの相性が良くなるのでは、という期待はまだあると思うが、ここ10年ほどの試行錯誤を通じて、スマートコントラクトのような取り組みでは、人間のレビューを不要にすることはできず、むしろ望ましくない結果を生むリスクが結構大きいということがわかった。法律も、起こりうる事態を事前にすべて見通してルールを作ることはできないため、法律が自動執行されることは望ましくないだろう。人間のレビューが入ることが望ましいだろう。

著作物の活用について何はOKなのか、そうでないのか、を支援してくれるツールにはニーズがある。著作権法の複雑さなどもあって、理解できずに利用を断念している人が多くおり、委縮効果があると言える。他方では、ライセンスも著作権法もほとんど気にせずシェアしている世界もあり、二極化と見ることもできる。

 生成系AI

生成系AIをめぐっては、多くの議論がある。著作権に関連があるものでも、AIの学習に著作物を利用されたクリエイターが対価を得るべきか、AIを使って特定のモデルを開発した者が著作権者になるべきか、モデルを上手に使って望むような画像を生成する試行錯誤を行った者は著作権者になるべきか、などが。その際に、これまで積み上げてきた法解釈と裁判例に基づいて考えて行くアプローチだけでなく、社会にとっての最適解は何であるかを考えるアプローチが考えられるだろう。

膨大な数の作品を短時間で生み出すことがAIには可能だが人間にはできないため、一方ではAIが生成するコンテンツが物量で人間の創作物を圧倒してしまうような未来も考えられる。クリエイターがツールとして活用し、意外性をとりいれたりする可能性もある。そうした可能性を念頭に社会にとっての正負両面の影響を探っていく必要があるだろう。

アカデミアのように、金銭的な報酬ではなく互いへのクレジットが主な駆動力となって機能している領域もあるし、ファッションのように著作権で保護されていないことで逆に絶えざるイノベーションと流行が生まれているとされることがある領域もある。

3.今後の方向性

クリエイティブ・コモンズはある状況に対してライセンスなどのツールの開発を持って改善を試み、一定の成果をあげたが、これを固守することが重要なのではなく、状況に応じてミッションを再定義することが重要だろう。

デジタル社会の正負両面にどう向き合っていくか、CCはもともと性善説に基づいていたようなところもあり、考えて行く必要がある。

安直な二項対立を排し、中間をどうデザインできるか、それがCC的なフィロソフィーの可能性だと思う。著作権のAll rights reservedとパブリックドメインの中間を支えたように。

アーロン・シュワルツは16歳でCCのアーキテクチャーをデザインし、ファウンダーのローレンス・レッシグはしばしばアーロンを自分のメンターとした。政治とカネのような問題に取り組むようになったのもアーロンがきっかけだった。受動的に物事が決まって行くのを待っていたり、技術の可能性や悪を離れたところから批判するよりも、議論に参加し、共に未来を作って行く態度を持つことがインターネット的なのではないか。

著作権法、ライセンス、などの解説や権利関係を巡るわかりやすいデザインのニーズはCCライセンスの強みだが、課題も多い。ウェブの時代にデザインされ、モバイルの時代には大幅な改修はせずに来ているが、スマートコントラクトやビッグデータ、ウェアラブルデバイスとメタバース等の世界にも適合するのか、インターフェースの課題がある。

むすびにかえて

OERの普及の現状と課題、競争法的な観点からの著作権法の読み替えの可能性、AI生成物を人間の創作物と誤認させる例の増加、音楽領域における新しさの感覚、ポストモダン系の「作者の終焉」説と生成系AIの関係など、Q&Aや懇親会では更に多岐に渡る議論がありました。

オンライン、会場でご参加を頂きました皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。

これらも含め、今回のイベントで得られた知見やアイディアを今後のクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの活動方針を決めて行く上での糧としていきたいと思います。今後ともクリエイティブ・コモンズ・ジャパンやクリエイティブ・コモンズ・ライセンスをどうぞよろしくお願い致します。

なお生成系AIを巡る議論については、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン内でも議論し、後日、米国の法人であるCreative Commonsの呼びかけで開催された生成AIをめぐるコミュニティー・ミーティング https://creativecommons.org/2023/02/06/better-sharing-for-generative-ai/ でも共有しました。

なお、開催にあたっては米国の法人であるCreative Commonsの資金援助を受けました。記してここに感謝します。

(文責:渡辺智暁) 

ライセンスの執行についての資料を公開しました

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは、作品の自由な共有を実現することを目的としています。しかしその趣旨や許諾の内容が十分に理解されず、トラブルに発展してしまうケースもあります。

特に近年問題視されているのが、ライセンスに違反する形で作品を利用した事例において、権利者が次々と訴訟を起こす可能性を示して和解金を集めたり、実際に訴訟を起こして罰金を集める、ビジネスモデルとしてのライセンスの執行です。コピーレフト・トロール(Copyleft Trolling) とも称されるこの行為は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの本来の目的から逸脱しています。もし人々がCCライセンスされた作品を利用することにリスクがあると判断し、作品を利用しない選択をしてしまうと、作品を利用してもらうためにCCライセンスで作品を提供した制作者にも負の影響を及ぼします。

訴訟とまでは行かなくても、作品の提供者と利用者間での理解の不一致によるトラブルは起こりえます。ライセンスの目的はシンプルであっても、その背景にあるのは著作権法という法律ですので規約の中身はどうしても複雑になってしまいます。規約の中身が十分に理解されないままライセンスが使われ、結果的にトラブルに発展してしまうことがあります。

このような状況を受けクリエイティブ・コモンズでは現在、CCライセンスおよびCCライセンスされた作品を、クリエイターと作品の利用者の双方が安心して使うためのベストプラクティスに関する資料や、自身の作品が意図しない利用をされた際にどのように対応すべきかに関する資料を作成しています。

現在公開されている3つの資料について日本語訳版を公開いたしましたのでぜひご覧ください。

(担当:豊倉)

オープンアクセスに大きな勝利:アメリカ合衆国が公的資金による研究をエンバーゴ(閲覧制限期間)なく自由に利用できるよう義務付け

Cable Green
Cable Green
2022年8月26日

2022年8月26日、アメリカ合衆国科学技術政策局(OSTP)は、すべての米国連邦政府機関に対し次の注目すべきガイダンスを交付しました:政府が資金提供したすべての研究およびデータについて「各機関が指定したリポジトリで、公開後のエンバーゴ(閲覧制限期間)や遅延なく」自由にアクセス・再利用できることを義務づけるようすべての方針を更新することを求める、というものです。

クリエイティブ・コモンズは、より広いオープン・コミュニティと共に、公的資金を受けて作られたリソースがデフォルトで自由に利用でき、オープン・ライセンス(またはパブリック・ドメイン)で提供されることを確保するために長らく協力してきました。私たちはこの大きなニュースを共に祝います。公衆は、公的資金の提供を受けた研究、データ、教育リソース、ソフトウェア、その他のコンテンツを自由に、公平に、そして即座に利用・再利用する資格があります。それは私たちがより良い世界を作るためにデジタル公共財を創造し共有するために必要不可欠です。このOSTPの新しいガイダンスは、そのビジョンの本質的な要素を実現するものです。

An orange open padlock icon sandwiched by the words open and access.

重要な点として、このメモが、政府が資金提供した研究へのアクセスに関する現行の12ヶ月のエンバーゴを撤廃し、さらに研究データを機械可読な形式でオープンな形で利用可能にすることが挙げられます。すべてのアメリカ合衆国の政府機関は、任意に設定可能だった12ヶ月のエンバーゴの終了を含め、更新されたポリシーを3年以内に完全に導入する必要があります。この歴史的な発表の詳細についてはOSTPのブログ記事を参照してください (1 / 2 / 3)。

これはオープンサイエンスに関するユネスコ勧告に沿ったもので、米国政府は、公共投資が公益を支えることを担保するためにオープンアクセス政策とその原則を確立した他の政府と足並みを揃えることになります。

米国政府は、病気の治療、気候変動の緩和、グリーンエネルギーの開発などのために、毎年800億ドル以上を研究資金に充てています。そしてこれは世界各国の政府でも同じです。しかし多くの場合、公的資金で行われた研究の著作権は課金制の商業ベースの論文誌に移り、支払いをしていない人がアクセスできないところに置かれ、対価を支払ったはずの国民に対して販売されます。この仕組みは常に受け入れがたいものでしたが、政府が商業ベースの論文誌に対してCOVID-19およびサル痘の研究への一時的なオープンアクセスを求める必要がある現在、それがよりいっそう際立っています。

OSTPのメモは、既存の知識へのアクセスを体系的に開放するだけでなく、新しい知識に貢献する人々の対象を拡大するよう米国連邦政府機関に求めています。SPARCに所属する私たちの同僚が説明するように、この指針は「政府が資金提供した研究の出版物やデータの、公開とアクセスの両方において、不利な背景を持つ人やキャリアの浅い人の不公平を減らす措置を取るよう機関に求めている」のです。

インクルーシブで公正かつ公平な知識を確立するための取り組みは、単なる共有を超え「より良い共有」を可能とするためのCCの戦略の中心にあります。世界の緊急性の高い諸課題を解決したいのならば、それらの課題に関する知識と、課題への貢献は開かれている必要があります。気候変動、癌、貧困、安全な水などといった課題がある中で、もしこれらに関する研究やデータ、教育資源にアクセスでき、貢献できる人が一部の人に限定されてしまっていては世界的な解決策を生み出すことはできません。

このOSTPの政策は研究へのオープンアクセスにとっての大きな勝利です。私たちは世界中のより多くの国々の政府が類似のオープンな政策を実施することを願っています。これは私たち全員が必要としている科学知識の共有モデルに向かうための重要な一歩ですが、やるべきことはまだあります。私たちが共同で作り出し、利用する知識について、単なるアクセスを超えてより良い共有へと進むためには、(1) オープンな再利用の権利を保証するためのオープンライセンスの採用、(2) コミュニティが所有し管理する公的な知識のインフラ、に取り組む必要があります。

オープンな再利用の権利

CCは20年間、オープンアクセスの方針として、研究論文はCC BYライセンスを、研究データにはCC0を、そしてエンバーゴを設けないことを呼びかけてきました。OSTPのメモはオープンライセンスについての具体的な要求はありませんが、各政府機関の計画が「出版物をデフォルトで自由に公的に利用可能にするために必要な状況または前提条件(利用権および再利用権、そして帰属の表示といった制限が適用されうるかを含む)」を記述することを求めています。良い出だしですが、政府機関のパブリックアクセスの計画が新たなガイダンスに準拠しているかを判断する ​Subcommittee on Open Science と協力し、米国政府機関がパブリックアクセスの計画を更新するにあたり、オープンライセンスと帰属の表示のベストプラクティスについて直々に支援することをCCは楽しみにしています。

公的な知識のインフラ

学術研究コミュニティと図書館が高額なサブスクリプション費用と論文掲載料(APC)に苦労する中で、コミュニティまたは学術機関が所有し維持管理を行うオープンなインフラについて、インクルーシブで公平なかたちで読む、そして投稿することへのアクセスを保証するための興味深いモデルとしてダイヤモンドオープンアクセスが出てきています。CCは最近ダイヤモンドオープンアクセスに向けてのアクションプランを支持しました。CCは、不公平で不公正な知識の制度を観察し再設計するために、行政、市民団体、研究者と連携すること、そしてオープンコミュニティを、公共の利益のために設計された新しい、公平なオープンナレッジのモデルに導くことを楽しみにしています。ダイヤモンドオープンアクセスとダイヤモンドオープン教育モデルについては今後の記事で詳述する予定です。

私たちが全ての国での完全にオープンな再利用の権利、そしてグローバルな公的な知識のインフラ取り組む中で、この重要な政策課題においてバイデン・ハリス政権が継続的にリーダーシップを発揮していることにクリエイティブ・コモンズは祝辞を述べます。CCは、OSTP、そして米国政府機関がこれからの数年をかけてオープンアクセス方針をアップデートし、実施することを支援する準備ができています。クリエイティブ・コモンズからの支援についてはオープンナレッジ担当の Dr. Cable Green までご連絡ください。

このブログ投稿は Cable Green による “A Big Win for Open Access: United States Mandates All Publicly Funded Research Be Freely Available with No Embargo” を翻訳したものです。

(担当:豊倉)

クリエイティブ・コモンズの現在地、シェアの未来

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)が世に出た2002年から今年で20年になります。当初は音楽業界のビジネスモデルやファイル共有との関係で論じられることも多かったCCライセンスは、音楽の世界を塗り替えるような大きな変化は起こしていませんが、ウィキペディアやオープンデータのように情報資源共有やコラボレーションの新しい実践を支えるツールとして世界的に見ても大きな役割を担うようになっています。
クリエイティブ・コモンズ・ジャパンではCCライセンスのリリース20周年を機会に、CCライセンスやクリエイティブ・コモンズのムーブメント、更にはシェアの未来について議論し、文化やクリエイティビティ、デジタル社会の行方を考える機会を設けます。
これらの領域にご関心のあるみなさまの幅広いご参加をお待ちしています。

登壇者

ドミニク・チェン* / 野口祐子* / 水野祐* / 山崎富美** / 渡辺智暁*
*クリエイティブ・コモンズ・ジャパン 理事
** クリエイティブ・コモンズ・ジャパン フェロー

開催要項

日時:2023年1月15日(日) 16-18時
場所:トークセッション:オンライン(Webex)及び東京(国際大学GLOCOM)を予定
懇親会:東京会場の近くで開催(トークセッション後、18時半くらいから)
参加申し込み:こちらのオンラインフォームよりお申込み下さい
参加費:トークセッションは無料、懇親会は2000円程度を予定

本イベントは、Creative Commonsの助成金を受けて開催されます。

イベント開催報告:「NFTの使い方と創作活動の未来」

イベント開催報告:「NFTの使い方と創作活動の未来」

CCJPのメンバー内で年に1-2回程度開催される勉強会を、今年はNFTをテーマにし、公開勉強会として実施しました。CCJPメンバー2名による発表と、それに更に2名を加えた4名での討論などが行われました。

 話題は多岐に渡りましたが、増田雅史からはNFTの取引と著作権や所有権などとの関係の曖昧さなど法的な位置づけについての議論があり、以下のような指摘がありました。

・NFTは現在の法律上の所有権の対象にはならないだろう。

・著作物関連のNFTはそれ自体が著作物ではなく、何かの著作物と結びついているものだが、技術的には、著作権者本人でない人がNFTを発行することや、本人がひとつの著作物について複数のNFTを発行することもできてしまう。

・NFTの購入者に著作権を譲渡するという仕組みを考えた場合、購入者がNFTを保持したまま著作権だけを第三者に譲渡することができてしまい、著作権法上、譲渡方式をNFTとともに譲渡するといった一定の方式に制限することはできない。このような譲渡が起きると、残ったNFTは空になる。そのようなリスクがあることから、NFTの譲渡によって著作権を譲渡するという仕組みの取引は実務上行われていない。

永井幸輔からはNFTにおいてシェアが占める重要性を示唆する多様な利用例の紹介と、その理由の分析、CCライセンスやCC0などの使い方についての議論などがありました。Blitmap、CryptoCrystals、mfers、Nouns DAO(いずれもCC0を使っているNFT)、Hashmasks、Bored Ape Yacht Club(利用規約で商用利用を許諾するNFT)などを紹介し、特徴について触れたのち、以下のような点を含む議論を行いました。

・オープンカルチャーとNFTは相性がよいが、その理由にはNFTが転売された場合の利益の一部を発行者などが受け取れるようにできること、そこから、自由な利用を促進して、NFTの価値を高める戦略が合理的になる場合がある。

・CC0の採用にあたっては、ブランドや収益源を手放すことになる点などを踏まえた決定が適切。

・CC0を採用すること自体がブランドづくりや競争戦略として意味を持つこともある。

・CC0以外にもカスタムライセンスなどを採用している例もある。

水野祐(コメンテーター)、渡辺智暁(モデレーター)を交えたパネル討論では、以下のような問いについて意見が交わされました。

・NFTの法的な位置づけについて立法が必要か

・CCライセンスやCC0は万人に開かれたシェアを想定して設計されているが、NFTはメンバーを限定したシェアのためにこうした手段を使っていることがある。これが法的に持つ効果はどのようなものか。

・万人の参加を暗に前提とするオープンカルチャーと、メンバーシップとシェアの組み合わせが重要な役割を果たす(一部の)NFTのあり方とを比べて、後者を低く評価するか。

・収益化が創作活動に果たす役割をどう考えるか。

・投機的な盛り上がりが多いNFTは、より実質的な可能性を持っているのか。

いずれの論点についても登壇者の意見の不一致があり、この話題について様々な見方が可能であることが浮き彫りになるイベントでした。

 イベントの様子は動画で公開されており、以下でご覧頂くことができます。

1.NFTについて概説します(増田雅史) https://www.youtube.com/watch?v=G6I5Pul5cAU 

2.NFT with Open Culture (永井幸輔) https://www.youtube.com/watch?v=DunpeJrCeyU 

3. パネル討論、質疑応答(増田雅史、永井幸輔、水野祐、渡辺智暁) https://www.youtube.com/watch?v=kPZkyOpTZ5k 

また、発表資料は以下のURLから閲覧・入手可能です。

1.NFTについて概説します(増田雅史) https://komtmt.files.wordpress.com/2022/10/220522-ccjpe58b89e5bcb7e4bc9aefbc88nftefbc89.pdf

2.NFT with Open Culture (永井幸輔) https://komtmt.files.wordpress.com/2022/10/20220522-ccjpe58b89e5bcb7e4bc9ae6b0b8e4ba95.pdf

メール受信不具合についてのご報告とお詫び

クリエイティブ・コモンズ・ジャパンで使用しているメールアドレスでのメール受信に不具合が発生していました。お詫びと共にここにご報告いたします。現在は解消されています。

期間:8月4-8日頃から21日頃にかけて

内容:メールの受信の不具合(送信は可能、受信は送信者にエラーメッセージが返され、失敗する)

範囲:creativecommons.jp のついているメールアドレスへの送信メール

原因:メールに関連したサービスの自動支払い設定の誤りによるもの

私どもの不手際によりお手数をおかけして申し訳ありませんが、この期間中にお問い合わせ、その他ご連絡などを下さったみなさまには再度のご連絡をお願いできれば幸いです。

容易に再発する種類の不具合ではないと思われますが、再発防止に努めてまいります。ご連絡を下さったみなさまにご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

「CCJP年次報告書 2021年度」公表のお知らせ

この度CCJPでは、ここ最近の活動などをまとめた「CCJP年次報告書 2021年度」を公表しました。

CCJP年次報告書 2021年度
(PDFファイルとなっております。こちらのリンクからご覧ください。)

この年次報告書では、CCJPのここ最近の活動をご紹介するとともに、グローバルのクリエイティブ・コモンズの活動や、CCJPの会計報告なども記載しています。ぜひ一度ご覧いただけたら幸いです。

引き続きCCJPをよろしくお願いいたします。

5/22(日) 「NFTの使い方と創作活動の未来」(CCJP勉強会)開催のお知らせ

著作権との微妙な関連性や加熱する投資が議論になることもあるNFTをはじめとするWeb3テクノロジーには、創作活動や作品と社会の新しい関係を作る可能性もあるように見えます。動きも早く、技術的・法律的にも複雑な部分があるテーマであることから、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCJP)では著作物の流通や創作活動の現状と未来を考える上で、NFTやCC0、クリエイティブ・コモンズがどういう役割を果たすことができるのか、どのような可能性があるのか、をテーマに勉強会を開催することに致しました。

CCJPではこうした勉強会を主にメンバー限定で開催してきましたが、今回は公開で開催いたします。専門家ではないけれども、改めて学んでみたいという方のご参加を広く歓迎いたします。

話題提供は増田雅史と永井幸輔が行い、水野祐がコメントを、渡辺智暁が議論のモデレーションを行います。

【開催概要】

「NFTの使い方と創作活動の未来」(CCJP勉強会)

5/22 (日) 15:00-17:00
オンラインイベント(Webex)
URL:https://cisco.webex.com/cisco-jp/j.php?MTID=m416a88f792e2d71a4ca266162119c097
参加費無料・事前申込不要です。お時間になりましたら上記URLにアクセスしてください。

登壇予定者
増田雅史(ますだ・まさふみ)
森・濱田松本法律事務所 弁護士
ブロックチェーン推進協会 アドバイザー
日本暗号資産ビジネス協会NFT部会 法律顧問
Creative Commons Japanには、2009年よりスタッフとして参画。
Twitter: m_masuda

永井幸輔(ながい・こうすけ)
弁護士
株式会社メルカリ NFT Business Development マネージャー
Creative Commons Japan理事
一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(JCBI)著作権流通部会 副部会長
Twitter: hanatochill

水野祐(みずの・たすく)
弁護士(シティライツ法律事務所)
Creative Commons Japan理事。
Arts and Law理事。
Twitter: TasukuMizuno

渡辺智暁(わたなべ・ともあき)
国際大学GLOCOM主幹研究員/教授/研究部長
Creative Commons Japan理事長
https://www.glocom.ac.jp/researcher/299

「オープン・レボリューション翻訳記念イベント」開催報告

2021年9月26日にオープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン主催、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン共催で「デジタル時代の価値創出の姿:『オープン・レボリューション』翻訳記念イベント」がZoomにて開催された。

イベントのリンク:https://peatix.com/event/2942382

本イベントは、Rufus Pollock氏による著書「The Open Revolution 」の日本語への翻訳を記念して行われた。

冒頭にオープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン事務局長の東修作氏より開催あいさつが行われ、続いて The Open Revolution の著者である Rufus Pollock 氏のビデオメッセージの上映、そしてクリエイティブ・コモンズ・ジャパン事務局メンバーであり翻訳主担当豊倉幹人氏より本のサマリー紹介が行われた。

サマリー紹介の後、本書に関する討論が行われた。討論の前半部では、島根大学法文学部教授であり情報経済論の研究を行っている野田哲夫氏、シティライツ法律事務所、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事、弁護士である水野祐氏、国際大学GLOCOM研究員、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事長、オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン副理事長である渡辺智暁氏を交え、本書の内容にまつわる様々な議題について意見がかわされた。以下は議題の一部を抜粋したものである。

  • オープン化が制作者のモチベーションに与える影響
  • ネットワーク効果を強める手段としてのオープン化
  • オープン化とビジネスモデル
  • データの囲い込み、プライバシーの問題
  • 国際的な制度設計の問題

討論の後半では、The Open Revolution の著者である Rufus Pollock 氏を迎え、さらに議論を深めた。討論の後半部では以下の内容について意見がかわされた。

  • オープン化における企業の役割
  • 報酬権と著作者人格権
  • NFTの可能性
  • 政治への不信と市民運動

なお、本イベントの様子を収めた映像や発表資料などは以下のリンクにて公開しています。

The Open Revolution 原書(英語)

https://openrevolution.net

The Open Revolution 翻訳版(日本語)

https://docs.google.com/document/d/1MXiRWb8SiXhTNdr-UF1hWoXOoA8tzL0zaOhToZQtcWM/edit

『オープン革命』 もっともよくある質問

https://docs.google.com/document/d/1yXOhSeVg3s3Kznl6ubFUv67TD69MtmvJSYbLI9hIk1U/edit

Rufus Pollock氏によるビデオメッセージ
Pollock氏と渡辺氏による質疑応答
豊倉幹人氏による発表およびスライド

https://docs.google.com/presentation/d/1EfYDs7QyFq2Ky9270lGX_3yO8OvGW3hJG0EWW7-Yanc/edit?usp=sharing

討論前半部
討論後半部

CC活用事例:Asuka Academy

Asuka Academyは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(以下CCライセンス)で提供されている海外の大学のコンテンツの、国内での利活用を推進しているNPOで、ウェブサイトでは数多くの映像教材を日本語字幕つきで無償提供しています(https://www.asuka-academy.com/index.html)。今回、Asuka Academyの事務局長および常務理事を務めていらっしゃる中村久哉氏にお話を伺いました。(以下敬称略。)


CCJP:まずはAsuka Academyについて簡単にご紹介いただけますか?

中村:Asuka Academyは2014年4月に設立されたNPO法人で、海外のオープンコースウェア[^1]やOER[^2]の、ウェブサイトを通じた無償提供を行っています。2021年9月時点で提供しているコースは154個あり、無料会員登録をした上で利用可能となっています。

コンテンツとしては、マサチューセッツ工科大学(MIT)、イェール大学、デルフト工科大学、カリフォルニア大学アーバイン校、英国オープンユニバーシティが提供している、実際の講義や教育用動画があります。「修了証書・オープンバッジ発行」のオプションがあるコースについては、修了条件を満たした方にAsuka Academy から修了証書および「オープンバッジ[^3]」を発行しています。

オープンバッジはIMSグローバルが提唱する、個人の学習歴や取り組みをデジタルのバッジで証明し、生涯持ち歩くための世界標準のしくみです。世界ではすでに年間数千万個も発行されており、日本では一般財団法人オープンバッジ・ネットワークが普及を強力に行っています。なお、Asuka Academy の岸田徹理事長は、オープンバッジ・ネットワークの理事長でもあります。オンラインの学びではモチベーションの継続が課題ですが、バッジの取得は、学びの意欲を維持するのに役立っているようです。

また、CCライセンスでの提供ではありませんが、AFP World Academic Archive(AFPWAA)やGoogleといった、大学以外のコンテンツも提供しています。AFPWAAはニュース映像やフォトストックのアーカイブで、Asuka Academyは AFP通信と提携し、日本語字幕を加え無償で提供しています。

Asuka Academyのトップページ。

CCJP:コロナの流行を受けてオープン教育教材を利用する動きが世界で見られますが、Asuka Academyでもそのような動きは見られましたか?

中村:そうですね、コロナ渦の状況で、利用者は急激に増加しています。全国で休校措置がとられ、企業でテレワークも始まった2020年2月末時点では、利用者数は3万4000人ほどでしたが、5月下旬には6万人を突破し、2021年6月末時点では9万人ほどと、大幅に増えています。

海外との比較でいうと、英語が公用語である国では英語の教材をそのまま理解できますし、国によっては政府や大学が予算をつけて翻訳を行っている場合があります。日本ではそもそもこういった教材の認知度は低く、また日本語ではないため、利用されにくいという現状があります。Asuka Academy の日本語・英語字幕付きのコンテンツは、気軽に海外トップ大学の優れた講義やコンテンツに触れられるところが喜ばれているようです。また、翻訳ボランティアに興味を持つ方も、おかげさまでたいへん増えています。

「[Yale] 哲学と人間 Part 1 」の動画教材。動画と同期した日本語・英語字幕を表示することができる。

CCJP:翻訳はどのように行っているのでしょうか?

中村:のべ2400人以上のボランティアによってオンラインで翻訳が行われています。翻訳ボランティアに参加した方にはオープンバッジを発行しています。最近は高校生の翻訳ボランティアが増えています。コンテンツを翻訳するためにはその内容を深く理解する必要がありますので、翻訳活動を通じて、英語の勉強に限定されない、該当分野への主体的で深い学びなど、様々な学習効果が得られるという好循環が生まれています。高校生や大学生では特に、留学やサマーキャンプといった活動がコロナ渦で難しい状況ですので、代わりとなる活動として行っていただいている方もいます。

CCJP:学生による翻訳の活動についてはどのような反響がありましたか?

中村:例えば広尾学園では課外活動として翻訳を行っているのですが、活動が始まった2015年は6人で翻訳を行っていたのが、今では毎年100人以上が参加する規模になっています。小グループに分かれ、各グループにリーダーがつき、全体リーダーは全体をまとめる必要があり、チームとしてのスキルも養う場となっています。また最近は九州や近畿の高校も翻訳活動に参加しています。生徒たちにとっても楽しく、そして意義深い活動となっているようです。

CCJP:翻訳を行う大学やコースはどのように選んでいますか?

中村:CCライセンスでコンテンツを提供しているという大前提があります。スタンフォード大学やオックスフォード大学も授業の様子を一部YouTubeにアップロードしていますが、ライセンスがオープンでないので、Asuka Academyのコンテンツとしては扱えません。MITのほか、オープンコースウェアの発展を初期から支えているOpen Education Global(旧称Open Courseware Consortium)の中心的なメンバーとなっているのがデルフト工科大学、カリフォルニア大学アーバイン校などで、彼らは継続的に、さかんにコンテンツをCCライセンスで公開しています。これらの大学のコンテンツを対象に、人気の高いコース、各大学が強みとしている分野やコンテンツを選んでいます。たとえばデルフト工科大学は治水やエネルギー、都市設計などについて非常に進んでいる大学なので、これらの内容の講義を翻訳しています。小中高校生向けの教材については、MITの学生などが作成し、公開しているMIT+K12という教材を翻訳しています。

CCJP:翻訳の際に注意している点などはありますか?

中村:画面に表示できる文字数は限られるので、内容を落とさずに、できるだけ端的な訳を行うことに注意しています。先生が早口の場合など、どうしても訳が長くなってしまう場合がありますが、動画を止めたり巻き戻したりできるというのが動画教材の良いところでもあると思います。それから講義の中でジョークやイディオム、ジャーゴンも随時入ってくるので、それらも上手く訳すようにしています。ボランティアの方に翻訳していただいた内容についての最終チェックは事務局が中心に、コンテンツによっては専門家の協力も得ながら、行っています。

CCJP:CCライセンスのついた教材を使うにあたって、権利の扱いなど、難しく感じたことはありましたか?

中村:難しいと感じたことは特にありませんでした。というのも、Asuka Academy設立者の一人であり、前理事長の福原美三氏がオープンエデュケーションに長く携わっていらっしゃったため、CCライセンスとオープンエデュケーションの関係については団体の中でも共有されていました。

CCJP:今後のオープン教育、OERの利活用について、展望や期待をお聞かせください。

中村:国内・国外とも、優れたオープン教育コンテンツの発信はますます増えており、学生・社会人・生涯教育それぞれの分野で、幅広い学びを楽しめ、キャリアにも活かしていける選択肢はたくさんあります。在宅など多様な働き方や、大学のオンライン講義の浸透、リタイア後の学びへの注目などを背景に、オープンな学びコンテンツの利活用は、急激に、多様に、進んでいくことと思っています。Asuka Academy の取り組みやコンテンツをきっかけに、優れたOERの 活用 がより多くの人、多くの教育現場で進んでいくことを期待しています。


あとがき

世界的に見ると毎年数多くのOERが作成されていますが、日本でこれらを利用するとなるとどうしても言語の壁にぶつかります。翻訳は、こうした教材がより多くの人にリーチするためには欠かせない重要な作業です。

OERの文脈で語られる新たな教育方法の一つに、学生自身が他の学生のための教材を作り公開するというものがあります。コンテンツの作成に関わる過程で自身も学びを深めていく。Asuka Academyはまさにそのような、教材を作る人と使う人の双方にとって利益となる、学び合うための場でもあるのだと感じました。お忙しい中インタビューにご協力くださいました中村久哉さん、どうもありがとうございました。 

執筆:豊倉幹人

[^1] オープンコースウェアとは、大学や大学院などの高等教育機関で正規に提供された講義とその関連情報を、インターネットを通じて無償で公開する活動のこと。(Wikipedia:「オープンコースウェア」より)

[^2] OERとは、パブリックドメイン、または無制限または限定的な制約のもとで他者による無償のアクセス、使用、翻案、再配布を許可するオープンライセンスのもとで公開されている教育、学習、研究のための教材のこと。(UNESCO: Open Educational Resources (OER) より)

[^3] オープンバッジとは、達成度や成果、およびそれらを獲得するために何を行ったかなどの情報が含まれているデジタルのバッジのフォーマットのこと。(IMS Global FAQより)