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クリエイティブ・コモンズの現在地、シェアの未来

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)が世に出た2002年から今年で20年になります。当初は音楽業界のビジネスモデルやファイル共有との関係で論じられることも多かったCCライセンスは、音楽の世界を塗り替えるような大きな変化は起こしていませんが、ウィキペディアやオープンデータのように情報資源共有やコラボレーションの新しい実践を支えるツールとして世界的に見ても大きな役割を担うようになっています。
クリエイティブ・コモンズ・ジャパンではCCライセンスのリリース20周年を機会に、CCライセンスやクリエイティブ・コモンズのムーブメント、更にはシェアの未来について議論し、文化やクリエイティビティ、デジタル社会の行方を考える機会を設けます。
これらの領域にご関心のあるみなさまの幅広いご参加をお待ちしています。

登壇者

ドミニク・チェン* / 野口祐子* / 水野祐* / 山崎富美** / 渡辺智暁*
*クリエイティブ・コモンズ・ジャパン 理事
** クリエイティブ・コモンズ・ジャパン フェロー

開催要項

日時:2023年1月15日(日) 16-18時
場所:トークセッション:オンライン(Webex)及び東京(国際大学GLOCOM)を予定
懇親会:東京会場の近くで開催(トークセッション後、18時半くらいから)
参加申し込み:申し込み方法は後日公開します
参加費:トークセッションは無料、懇親会は2000円程度を予定

本イベントは、Creative Commonsの助成金を受けて開催されます。

イベント開催報告:「NFTの使い方と創作活動の未来」

イベント開催報告:「NFTの使い方と創作活動の未来」

CCJPのメンバー内で年に1-2回程度開催される勉強会を、今年はNFTをテーマにし、公開勉強会として実施しました。CCJPメンバー2名による発表と、それに更に2名を加えた4名での討論などが行われました。

 話題は多岐に渡りましたが、増田雅史からはNFTの取引と著作権や所有権などとの関係の曖昧さなど法的な位置づけについての議論があり、以下のような指摘がありました。

・NFTは現在の法律上の所有権の対象にはならないだろう。

・著作物関連のNFTはそれ自体が著作物ではなく、何かの著作物と結びついているものだが、技術的には、著作権者本人でない人がNFTを発行することや、本人がひとつの著作物について複数のNFTを発行することもできてしまう。

・NFTの購入者に著作権を譲渡するという仕組みを考えた場合、購入者がNFTを保持したまま著作権だけを第三者に譲渡することができてしまい、著作権法上、譲渡方式をNFTとともに譲渡するといった一定の方式に制限することはできない。このような譲渡が起きると、残ったNFTは空になる。そのようなリスクがあることから、NFTの譲渡によって著作権を譲渡するという仕組みの取引は実務上行われていない。

永井幸輔からはNFTにおいてシェアが占める重要性を示唆する多様な利用例の紹介と、その理由の分析、CCライセンスやCC0などの使い方についての議論などがありました。Blitmap、CryptoCrystals、mfers、Nouns DAO(いずれもCC0を使っているNFT)、Hashmasks、Bored Ape Yacht Club(利用規約で商用利用を許諾するNFT)などを紹介し、特徴について触れたのち、以下のような点を含む議論を行いました。

・オープンカルチャーとNFTは相性がよいが、その理由にはNFTが転売された場合の利益の一部を発行者などが受け取れるようにできること、そこから、自由な利用を促進して、NFTの価値を高める戦略が合理的になる場合がある。

・CC0の採用にあたっては、ブランドや収益源を手放すことになる点などを踏まえた決定が適切。

・CC0を採用すること自体がブランドづくりや競争戦略として意味を持つこともある。

・CC0以外にもカスタムライセンスなどを採用している例もある。

水野祐(コメンテーター)、渡辺智暁(モデレーター)を交えたパネル討論では、以下のような問いについて意見が交わされました。

・NFTの法的な位置づけについて立法が必要か

・CCライセンスやCC0は万人に開かれたシェアを想定して設計されているが、NFTはメンバーを限定したシェアのためにこうした手段を使っていることがある。これが法的に持つ効果はどのようなものか。

・万人の参加を暗に前提とするオープンカルチャーと、メンバーシップとシェアの組み合わせが重要な役割を果たす(一部の)NFTのあり方とを比べて、後者を低く評価するか。

・収益化が創作活動に果たす役割をどう考えるか。

・投機的な盛り上がりが多いNFTは、より実質的な可能性を持っているのか。

いずれの論点についても登壇者の意見の不一致があり、この話題について様々な見方が可能であることが浮き彫りになるイベントでした。

 イベントの様子は動画で公開されており、以下でご覧頂くことができます。

1.NFTについて概説します(増田雅史) https://www.youtube.com/watch?v=G6I5Pul5cAU 

2.NFT with Open Culture (永井幸輔) https://www.youtube.com/watch?v=DunpeJrCeyU 

3. パネル討論、質疑応答(増田雅史、永井幸輔、水野祐、渡辺智暁) https://www.youtube.com/watch?v=kPZkyOpTZ5k 

また、発表資料は以下のURLから閲覧・入手可能です。

1.NFTについて概説します(増田雅史) https://komtmt.files.wordpress.com/2022/10/220522-ccjpe58b89e5bcb7e4bc9aefbc88nftefbc89.pdf

2.NFT with Open Culture (永井幸輔) https://komtmt.files.wordpress.com/2022/10/20220522-ccjpe58b89e5bcb7e4bc9ae6b0b8e4ba95.pdf

メール受信不具合についてのご報告とお詫び

クリエイティブ・コモンズ・ジャパンで使用しているメールアドレスでのメール受信に不具合が発生していました。お詫びと共にここにご報告いたします。現在は解消されています。

期間:8月4-8日頃から21日頃にかけて

内容:メールの受信の不具合(送信は可能、受信は送信者にエラーメッセージが返され、失敗する)

範囲:creativecommons.jp のついているメールアドレスへの送信メール

原因:メールに関連したサービスの自動支払い設定の誤りによるもの

私どもの不手際によりお手数をおかけして申し訳ありませんが、この期間中にお問い合わせ、その他ご連絡などを下さったみなさまには再度のご連絡をお願いできれば幸いです。

容易に再発する種類の不具合ではないと思われますが、再発防止に努めてまいります。ご連絡を下さったみなさまにご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

「CCJP年次報告書 2021年度」公表のお知らせ

この度CCJPでは、ここ最近の活動などをまとめた「CCJP年次報告書 2021年度」を公表しました。

CCJP年次報告書 2021年度
(PDFファイルとなっております。こちらのリンクからご覧ください。)

この年次報告書では、CCJPのここ最近の活動をご紹介するとともに、グローバルのクリエイティブ・コモンズの活動や、CCJPの会計報告なども記載しています。ぜひ一度ご覧いただけたら幸いです。

引き続きCCJPをよろしくお願いいたします。

5/22(日) 「NFTの使い方と創作活動の未来」(CCJP勉強会)開催のお知らせ

著作権との微妙な関連性や加熱する投資が議論になることもあるNFTをはじめとするWeb3テクノロジーには、創作活動や作品と社会の新しい関係を作る可能性もあるように見えます。動きも早く、技術的・法律的にも複雑な部分があるテーマであることから、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCJP)では著作物の流通や創作活動の現状と未来を考える上で、NFTやCC0、クリエイティブ・コモンズがどういう役割を果たすことができるのか、どのような可能性があるのか、をテーマに勉強会を開催することに致しました。

CCJPではこうした勉強会を主にメンバー限定で開催してきましたが、今回は公開で開催いたします。専門家ではないけれども、改めて学んでみたいという方のご参加を広く歓迎いたします。

話題提供は増田雅史と永井幸輔が行い、水野祐がコメントを、渡辺智暁が議論のモデレーションを行います。

【開催概要】

「NFTの使い方と創作活動の未来」(CCJP勉強会)

5/22 (日) 15:00-17:00
オンラインイベント(Webex)
URL:https://cisco.webex.com/cisco-jp/j.php?MTID=m416a88f792e2d71a4ca266162119c097
参加費無料・事前申込不要です。お時間になりましたら上記URLにアクセスしてください。

登壇予定者
増田雅史(ますだ・まさふみ)
森・濱田松本法律事務所 弁護士
ブロックチェーン推進協会 アドバイザー
日本暗号資産ビジネス協会NFT部会 法律顧問
Creative Commons Japanには、2009年よりスタッフとして参画。
Twitter: m_masuda

永井幸輔(ながい・こうすけ)
弁護士
株式会社メルカリ NFT Business Development マネージャー
Creative Commons Japan理事
一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(JCBI)著作権流通部会 副部会長
Twitter: hanatochill

水野祐(みずの・たすく)
弁護士(シティライツ法律事務所)
Creative Commons Japan理事。
Arts and Law理事。
Twitter: TasukuMizuno

渡辺智暁(わたなべ・ともあき)
国際大学GLOCOM主幹研究員/教授/研究部長
Creative Commons Japan理事長
https://www.glocom.ac.jp/researcher/299

「オープン・レボリューション翻訳記念イベント」開催報告

2021年9月26日にオープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン主催、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン共催で「デジタル時代の価値創出の姿:『オープン・レボリューション』翻訳記念イベント」がZoomにて開催された。

イベントのリンク:https://peatix.com/event/2942382

本イベントは、Rufus Pollock氏による著書「The Open Revolution 」の日本語への翻訳を記念して行われた。

冒頭にオープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン事務局長の東修作氏より開催あいさつが行われ、続いて The Open Revolution の著者である Rufus Pollock 氏のビデオメッセージの上映、そしてクリエイティブ・コモンズ・ジャパン事務局メンバーであり翻訳主担当豊倉幹人氏より本のサマリー紹介が行われた。

サマリー紹介の後、本書に関する討論が行われた。討論の前半部では、島根大学法文学部教授であり情報経済論の研究を行っている野田哲夫氏、シティライツ法律事務所、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事、弁護士である水野祐氏、国際大学GLOCOM研究員、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事長、オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン副理事長である渡辺智暁氏を交え、本書の内容にまつわる様々な議題について意見がかわされた。以下は議題の一部を抜粋したものである。

  • オープン化が制作者のモチベーションに与える影響
  • ネットワーク効果を強める手段としてのオープン化
  • オープン化とビジネスモデル
  • データの囲い込み、プライバシーの問題
  • 国際的な制度設計の問題

討論の後半では、The Open Revolution の著者である Rufus Pollock 氏を迎え、さらに議論を深めた。討論の後半部では以下の内容について意見がかわされた。

  • オープン化における企業の役割
  • 報酬権と著作者人格権
  • NFTの可能性
  • 政治への不信と市民運動

なお、本イベントの様子を収めた映像や発表資料などは以下のリンクにて公開しています。

The Open Revolution 原書(英語)

https://openrevolution.net

The Open Revolution 翻訳版(日本語)

https://docs.google.com/document/d/1MXiRWb8SiXhTNdr-UF1hWoXOoA8tzL0zaOhToZQtcWM/edit

『オープン革命』 もっともよくある質問

https://docs.google.com/document/d/1yXOhSeVg3s3Kznl6ubFUv67TD69MtmvJSYbLI9hIk1U/edit

Rufus Pollock氏によるビデオメッセージ
Pollock氏と渡辺氏による質疑応答
豊倉幹人氏による発表およびスライド

https://docs.google.com/presentation/d/1EfYDs7QyFq2Ky9270lGX_3yO8OvGW3hJG0EWW7-Yanc/edit?usp=sharing

討論前半部
討論後半部

CC活用事例:Asuka Academy

Asuka Academyは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(以下CCライセンス)で提供されている海外の大学のコンテンツの、国内での利活用を推進しているNPOで、ウェブサイトでは数多くの映像教材を日本語字幕つきで無償提供しています(https://www.asuka-academy.com/index.html)。今回、Asuka Academyの事務局長および常務理事を務めていらっしゃる中村久哉氏にお話を伺いました。(以下敬称略。)


CCJP:まずはAsuka Academyについて簡単にご紹介いただけますか?

中村:Asuka Academyは2014年4月に設立されたNPO法人で、海外のオープンコースウェア[^1]やOER[^2]の、ウェブサイトを通じた無償提供を行っています。2021年9月時点で提供しているコースは154個あり、無料会員登録をした上で利用可能となっています。

コンテンツとしては、マサチューセッツ工科大学(MIT)、イェール大学、デルフト工科大学、カリフォルニア大学アーバイン校、英国オープンユニバーシティが提供している、実際の講義や教育用動画があります。「修了証書・オープンバッジ発行」のオプションがあるコースについては、修了条件を満たした方にAsuka Academy から修了証書および「オープンバッジ[^3]」を発行しています。

オープンバッジはIMSグローバルが提唱する、個人の学習歴や取り組みをデジタルのバッジで証明し、生涯持ち歩くための世界標準のしくみです。世界ではすでに年間数千万個も発行されており、日本では一般財団法人オープンバッジ・ネットワークが普及を強力に行っています。なお、Asuka Academy の岸田徹理事長は、オープンバッジ・ネットワークの理事長でもあります。オンラインの学びではモチベーションの継続が課題ですが、バッジの取得は、学びの意欲を維持するのに役立っているようです。

また、CCライセンスでの提供ではありませんが、AFP World Academic Archive(AFPWAA)やGoogleといった、大学以外のコンテンツも提供しています。AFPWAAはニュース映像やフォトストックのアーカイブで、Asuka Academyは AFP通信と提携し、日本語字幕を加え無償で提供しています。

Asuka Academyのトップページ。

CCJP:コロナの流行を受けてオープン教育教材を利用する動きが世界で見られますが、Asuka Academyでもそのような動きは見られましたか?

中村:そうですね、コロナ渦の状況で、利用者は急激に増加しています。全国で休校措置がとられ、企業でテレワークも始まった2020年2月末時点では、利用者数は3万4000人ほどでしたが、5月下旬には6万人を突破し、2021年6月末時点では9万人ほどと、大幅に増えています。

海外との比較でいうと、英語が公用語である国では英語の教材をそのまま理解できますし、国によっては政府や大学が予算をつけて翻訳を行っている場合があります。日本ではそもそもこういった教材の認知度は低く、また日本語ではないため、利用されにくいという現状があります。Asuka Academy の日本語・英語字幕付きのコンテンツは、気軽に海外トップ大学の優れた講義やコンテンツに触れられるところが喜ばれているようです。また、翻訳ボランティアに興味を持つ方も、おかげさまでたいへん増えています。

「[Yale] 哲学と人間 Part 1 」の動画教材。動画と同期した日本語・英語字幕を表示することができる。

CCJP:翻訳はどのように行っているのでしょうか?

中村:のべ2400人以上のボランティアによってオンラインで翻訳が行われています。翻訳ボランティアに参加した方にはオープンバッジを発行しています。最近は高校生の翻訳ボランティアが増えています。コンテンツを翻訳するためにはその内容を深く理解する必要がありますので、翻訳活動を通じて、英語の勉強に限定されない、該当分野への主体的で深い学びなど、様々な学習効果が得られるという好循環が生まれています。高校生や大学生では特に、留学やサマーキャンプといった活動がコロナ渦で難しい状況ですので、代わりとなる活動として行っていただいている方もいます。

CCJP:学生による翻訳の活動についてはどのような反響がありましたか?

中村:例えば広尾学園では課外活動として翻訳を行っているのですが、活動が始まった2015年は6人で翻訳を行っていたのが、今では毎年100人以上が参加する規模になっています。小グループに分かれ、各グループにリーダーがつき、全体リーダーは全体をまとめる必要があり、チームとしてのスキルも養う場となっています。また最近は九州や近畿の高校も翻訳活動に参加しています。生徒たちにとっても楽しく、そして意義深い活動となっているようです。

CCJP:翻訳を行う大学やコースはどのように選んでいますか?

中村:CCライセンスでコンテンツを提供しているという大前提があります。スタンフォード大学やオックスフォード大学も授業の様子を一部YouTubeにアップロードしていますが、ライセンスがオープンでないので、Asuka Academyのコンテンツとしては扱えません。MITのほか、オープンコースウェアの発展を初期から支えているOpen Education Global(旧称Open Courseware Consortium)の中心的なメンバーとなっているのがデルフト工科大学、カリフォルニア大学アーバイン校などで、彼らは継続的に、さかんにコンテンツをCCライセンスで公開しています。これらの大学のコンテンツを対象に、人気の高いコース、各大学が強みとしている分野やコンテンツを選んでいます。たとえばデルフト工科大学は治水やエネルギー、都市設計などについて非常に進んでいる大学なので、これらの内容の講義を翻訳しています。小中高校生向けの教材については、MITの学生などが作成し、公開しているMIT+K12という教材を翻訳しています。

CCJP:翻訳の際に注意している点などはありますか?

中村:画面に表示できる文字数は限られるので、内容を落とさずに、できるだけ端的な訳を行うことに注意しています。先生が早口の場合など、どうしても訳が長くなってしまう場合がありますが、動画を止めたり巻き戻したりできるというのが動画教材の良いところでもあると思います。それから講義の中でジョークやイディオム、ジャーゴンも随時入ってくるので、それらも上手く訳すようにしています。ボランティアの方に翻訳していただいた内容についての最終チェックは事務局が中心に、コンテンツによっては専門家の協力も得ながら、行っています。

CCJP:CCライセンスのついた教材を使うにあたって、権利の扱いなど、難しく感じたことはありましたか?

中村:難しいと感じたことは特にありませんでした。というのも、Asuka Academy設立者の一人であり、前理事長の福原美三氏がオープンエデュケーションに長く携わっていらっしゃったため、CCライセンスとオープンエデュケーションの関係については団体の中でも共有されていました。

CCJP:今後のオープン教育、OERの利活用について、展望や期待をお聞かせください。

中村:国内・国外とも、優れたオープン教育コンテンツの発信はますます増えており、学生・社会人・生涯教育それぞれの分野で、幅広い学びを楽しめ、キャリアにも活かしていける選択肢はたくさんあります。在宅など多様な働き方や、大学のオンライン講義の浸透、リタイア後の学びへの注目などを背景に、オープンな学びコンテンツの利活用は、急激に、多様に、進んでいくことと思っています。Asuka Academy の取り組みやコンテンツをきっかけに、優れたOERの 活用 がより多くの人、多くの教育現場で進んでいくことを期待しています。


あとがき

世界的に見ると毎年数多くのOERが作成されていますが、日本でこれらを利用するとなるとどうしても言語の壁にぶつかります。翻訳は、こうした教材がより多くの人にリーチするためには欠かせない重要な作業です。

OERの文脈で語られる新たな教育方法の一つに、学生自身が他の学生のための教材を作り公開するというものがあります。コンテンツの作成に関わる過程で自身も学びを深めていく。Asuka Academyはまさにそのような、教材を作る人と使う人の双方にとって利益となる、学び合うための場でもあるのだと感じました。お忙しい中インタビューにご協力くださいました中村久哉さん、どうもありがとうございました。 

執筆:豊倉幹人

[^1] オープンコースウェアとは、大学や大学院などの高等教育機関で正規に提供された講義とその関連情報を、インターネットを通じて無償で公開する活動のこと。(Wikipedia:「オープンコースウェア」より)

[^2] OERとは、パブリックドメイン、または無制限または限定的な制約のもとで他者による無償のアクセス、使用、翻案、再配布を許可するオープンライセンスのもとで公開されている教育、学習、研究のための教材のこと。(UNESCO: Open Educational Resources (OER) より)

[^3] オープンバッジとは、達成度や成果、およびそれらを獲得するために何を行ったかなどの情報が含まれているデジタルのバッジのフォーマットのこと。(IMS Global FAQより)

「CCJP年次報告書 2020年度」公表のお知らせ

この度CCJPでは、ここ最近の活動などをまとめた「CCJP年次報告書 2020年度」を公表しました。

CCJP年次報告書 2020年度
(PDFファイルとなっております。こちらのリンクからご覧ください。)

この年次報告書では、CCJPのここ最近の活動をご紹介するとともに、グローバルのクリエイティブ・コモンズの活動や、CCライセンスに限らないオープン化の動きとして近年のオープン教育の動きやCOVID-19にまつわるオープン化のトピックや事例紹介、またCCJPの会計報告なども記載しています。ぜひ一度ご覧いただけたら幸いです。

こちらの年次報告書は2021年6月12日に開催した「CCJP年次報告会2021」の内容を反映したもので、年次報告会にゲスト出演していただいた吉岡純希さんの取り組みも紹介しています。吉岡さんは昨年のコロナ感染の拡大期において、3Dデータを利用したフェイスシールドの製作・リスク軽減のための情報提供活動をされました。こちらも是非ご覧ください。

CCJP年次報告会では20名以上の方に参加していただき、CCやオープン化の動きの紹介だけでなく、参加者の方々と情報交換やディスカッションも行われるなど有意義な時間となりました。またゲストの吉岡純希さんからはファブと医療にまたがるオープン化の貴重なお話もお伺いできました。

年次報告会の際の発表資料も以下に掲載しますので、ご興味ある方はこちらもご覧ください。
CCJPここ最近の活動報告(CCJP事務局 森靖弘)
デジタルアーカイブとCCの「準用」(CCJP理事長 渡辺智暁)
グローバル CC 活動紹介(CCJP事務局 前川充)
近年のオープン教育の動き(CCJP事務局 豊倉幹人)
COVID-19を巡るオープン化のトピック(CCJP事務局 森靖弘)

引き続きCCJPをよろしくお願いいたします!

 

6/12(土) CCJP年次報告会2021 開催のお知らせ

この度CCJPでは、「CCJP年次報告会2021」と題して、最近のCCJPやグローバルCCの活動を報告するとともに、コロナ・教育・アーカイブなどを巡るオープン化の動きなどを紹介するイベントを開催します。
私たちCCJPが普段どのような活動をしており、グローバルのCCではどのような動きがあるかをお伝えするとともに、最近のオープン化のトピックについてコロナ・教育・アーカイブなどといった分野を対象に、いくつかの具体例を挙げながらご紹介いたします。

またゲストに吉岡純希さんをお迎えして、昨年のコロナ感染の拡大期の、個人メイカーによるオープンな3Dデータを利用したフェイスシールドの製作・提供にまつわる話をお伺いします。
吉岡さんは、医療とファブの両方の現場を知る立場として、フェイスシールド提供や、安全性確保のための活動をされました。そのお話を中心に、オープンライセンスが実際に有効活用されるまでの道のりも取り上げます。

CCやオープン化にまつわる情報共有と意見交換の場とできたらと考えておりますので、CCの活動に興味をお持ちの方々はもちろん、著作権、オープンライセンス、デジタル・アーカイブ、オープン教育などにご関心のある方も、ぜひお気軽にご参加ください。

【開催概要】

「CCJP年次報告会2021」
コロナ・教育・アーカイブなどを巡るCCとオープン化を振り返る。
6/12 (土) 14:00-17:00
オンラインイベント(Webex)
URL:https://cisco.webex.com/cisco-jp/j.php?MTID=m2f911f307173ef065af95cff3fdd16c3
参加費無料・事前申込不要です。お時間になりましたら上記URLにアクセスしてください。

(プログラム)予定ですので、変更となる場合もあることをご了承ください。
14:00-14:30 CCJPここ最近の活動報告(CCJP理事長 渡辺智暁/事務局 森靖弘)
14:30-15:00 グローバル CC 活動紹介(CCJP事務局 前川充)
15:00-15:30 近年のオープン教育の動き(CCJP事務局 豊倉幹人)
15:30-15:45 休憩
15:45-16:00 Covid-19を巡るオープン化のトピック(CCJP事務局 森靖弘)
16:00-16:45 3Dデータを利用したフェイスシールドの製作・リスク軽減のための情報提供の活動を通じて(ゲスト:吉岡純希さん)
16:45-    質疑応答

吉岡純希 プロフィール
株式会社NODE MEDICAL 代表取締役社長
慶應義塾大学SFC研究所上席所員
1989年、札幌市生まれ。集中治療室や在宅での看護師の臨床経験をもとに、テクノロジーの医療現場への応用に取り組む。2014年より病院でのデジタルアート「Digital Hospital Art」をスタートし、患者・医療スタッフとともに病院でのプロジェクションマッピングや、身体可動性に合わせたデジタルアートを制作・実施。2015年より、慶應義塾大学SFCにて看護と3Dプリンタに関する研究「FabNurseプロジェクト」に参画。2017年に慶應義塾大学 制作メディア研究科エクスデザインコースにて修士号を取得。2018年より、研究の実践を社会に実装するため、株式会社NODE MEDICALを設立。

CC活用事例:IPSJ MOOC

2020年の秋より、情報処理学会(IPSJ)による高等学校「情報Ⅰ」に関する教材が公開され始めました(https://sites.google.com/view/ipsjmooc/)。こちらの教材は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-NC-SA 4.0)にて無償で公開されており、日本ではまだまだ普及途上にあるOERの貴重な事例と言えます。今回、放送大学の教授で、情報処理学会の理事も務め、MOOCの制作に携わっておられる辰己丈夫氏にご協力いただき、CCライセンス導入に至った経緯等について話を聞くことができました。(以下敬称略。)


CCJP:まずは IPSJ MOOC について簡単にご紹介いただけますか?

辰己:IPSJ MOOC は、高等学校「情報科」の教員研修や授業等で活用できる教材です。実際にプログラムを書きながら学習ができるGoogle Colaboratoryを用いた教材と、動画の教材を用意しています。MOOC 制作のプロジェクトは情報処理学会の理事が受け持っているもので、学会内部では特別なワーキンググループとしての位置づけで行っています。

IPSJ MOOCのwebサイト

CCJP:2020年はコロナの流行でデジタル教育への関心が集まっている印象を受けますが、こちらの教材もコロナを受けてのものだったのでしょうか?

辰己:プロジェクトが始まったのは2019年の秋からで、同じ年の暮れには全体の構想は出来上がっていましたので、コロナが流行する以前から制作は始まっていました。コロナの影響で公開が想定よりも遅れてしまい、どちらかというと負の影響が強かったです。「コンピュータとプログラミング」の章の動画の撮影は2020年の3月に行う予定でしたが、コロナの影響でこれを延期せざるを得なくなり、最終的に公開できたのは同年の秋となりました。

CCJP:MOOC 制作の背景にはどのようなことがあるのでしょうか?

辰己:2022年度より高校での「情報Ⅰ」が共通必履修科目となります。しかし全国的にこの科目の内容に追いついけている教員が不足しているのが現状です。こうした状況を踏まえて文部科学省から高等学校情報科教員研修用教材が公開されましたが、この教材だけでは実際のプログラミングまで理解するのは難しいという声が多くありました。そこで情報処理学会と、情報処理学会と交流のある関係者とで話し合い、民間企業および一般社団法人から寄付を受けるかたちで情報処理学会が本教材を作成する運びとなりました。教材の作成の目的にはこのように情報科教員の研修がありますが、教員に限らず誰でも学習に利用できる教材にしようという考えのもとで制作しています。

CCJP:どのような経緯でCCライセンスを採用することになったのでしょうか?

辰己:CCライセンスを採用することはプロジェクトの初期の段階から決まっていました。高等学校の情報科の教員研修、もっと大きく言うと日本の情報教育のアップデートが目的ですので、なるべく広く利用してもらうために無償で使えるようにすることは優先事項でした。無料であれば教員間での二次利用などが発生することも当然想定されます。こうした場合、利用者に許諾を申請してもらって、それを私達の方で承認していくというのは双方にとって負担になりますので、そうした手続きは省いて自由に使ってほしいという思いがありました。ただし民間企業および一般社団法人からの寄付で作成している以上、教材の営利目的での利用はふさわしくないのではないかという考えから非営利(NC)の条項を入れています。動画もGoogle Colaboratoryで提供している教材も同ライセンスですので、インターネットが使えない環境でも事前にファイルをダウンロードして様々な形で利用することができます。

Google Colaboratoryを使った教材。ウェブブラウザ上でPythonのコードを書いて実行することができる。

CCJP:CCライセンスを採用するにあたって課題はありましたか?

辰己:特にありませんでした。情報処理学会のこのワーキンググループのメンバーは情報活用についてもカバーしていまして、著作権やCCライセンスの意義などについて理解している人は非常に多いと思います。

CCJP:教材を公開したことへの反響はありましたか?

辰己:利用に際して許諾申請の必要が無いので、どこでどのように活用されているかの把握はできませんが、YouTubeの再生数を見るとぼちぼち利用されつつあるかな、という感じです。4月現在までで公開している教材はPythonを使った実践が中心でしたが、制作中の「情報システムとデータサイエンス」では情報に関するより幅広い内容になっています。今後コンテンツが追加されていくので多くの方に使っていただきたいですね。

CCJP:今後、教材がどのように利活用されることを望んでいますか?

辰己:できるだけ多くの人に学習機会を提供したいという思いがありますので、教員研修での利活用はもちろんですが、学生や社会人などの個人や企業研修などでも使って欲しいです。実際に民間企業から社員研修で使ったという声をいただきましたし、また別の企業から、この教材をベースに新たな教材を作りたいという申し出もありました。CCライセンスで公開していますのでライセンスの範囲内であれば自由に利用していただけますし、利用に際して申告の必要はありませんが、こうした声が聞けるのは嬉しいですね。企業に限らず学校などで同じように、この教材をもとになにかを作っていただくのも大歓迎です。また、今回の教材は高等学校の教員研修にフォーカスしていますが、生徒を対象とした授業や、中学校や小学校、幼稚園での学習にも広がって欲しいという思いがあります。

CCJP:一時期に比べてMOOCに対する世間の関心は薄れているように感じますが、今後のオンライン教育の可能性についてどのようにお考えですか?

辰己:MOOCで目指していたやり方が後退していくことは無いと考えています。教材をオープンな形で公開することで多くの人々が幸せになり、そこから新たな価値が生まれます。そしてそれは長い目で見ると自分たちにとっても利益となります。こうした投資は中長期的に世の中を良い方向に向かわせるということを私が所属している情報処理学会や放送大学の教員・研究者らも理解しています。また、情報が物理的なものに縛られてしまうと価値の創造も制限されてしまいます。デジタルな情報は物理的なメディアに縛られていないからこそたくさんの人に使ってもらえますし、コストも負担しなくて済みます。そしてそれが結果として多くの価値を生み出します。ですので、こういったオープンな形でのオンライン学習は進んでいくと私は考えています。


あとがき

ここ数年でGIGAスクール構想により生徒一人ひとりへの端末の配備が進み、2021年3月にSTEAMライブラリーが公開されるなど、デジタル教育はますます進んでいます。その中でオープンな形の教材を作成・公開し、教育を進展させ支えていこうとしている方々がいることを今回のインタビューを通じて改めて認識することができました。オープン教育の認知度はまだまだ低いですが、多くの人々に利益をもたらすポテンシャルを持っています。IPSJ MOOCはそのポテンシャルを示す重要なロールモデルであると感じました。お忙しい中インタビューにご協力くださいました辰己丈夫さん、どうもありがとうございました。

執筆:豊倉幹人