オープンアクセスに大きな勝利:アメリカ合衆国が公的資金による研究をエンバーゴ(閲覧制限期間)なく自由に利用できるよう義務付け

Cable Green
Cable Green
2022年8月26日

2022年8月26日、アメリカ合衆国科学技術政策局(OSTP)は、すべての米国連邦政府機関に対し次の注目すべきガイダンスを交付しました:政府が資金提供したすべての研究およびデータについて「各機関が指定したリポジトリで、公開後のエンバーゴ(閲覧制限期間)や遅延なく」自由にアクセス・再利用できることを義務づけるようすべての方針を更新することを求める、というものです。

クリエイティブ・コモンズは、より広いオープン・コミュニティと共に、公的資金を受けて作られたリソースがデフォルトで自由に利用でき、オープン・ライセンス(またはパブリック・ドメイン)で提供されることを確保するために長らく協力してきました。私たちはこの大きなニュースを共に祝います。公衆は、公的資金の提供を受けた研究、データ、教育リソース、ソフトウェア、その他のコンテンツを自由に、公平に、そして即座に利用・再利用する資格があります。それは私たちがより良い世界を作るためにデジタル公共財を創造し共有するために必要不可欠です。このOSTPの新しいガイダンスは、そのビジョンの本質的な要素を実現するものです。

An orange open padlock icon sandwiched by the words open and access.

重要な点として、このメモが、政府が資金提供した研究へのアクセスに関する現行の12ヶ月のエンバーゴを撤廃し、さらに研究データを機械可読な形式でオープンな形で利用可能にすることが挙げられます。すべてのアメリカ合衆国の政府機関は、任意に設定可能だった12ヶ月のエンバーゴの終了を含め、更新されたポリシーを3年以内に完全に導入する必要があります。この歴史的な発表の詳細についてはOSTPのブログ記事を参照してください (1 / 2 / 3)。

これはオープンサイエンスに関するユネスコ勧告に沿ったもので、米国政府は、公共投資が公益を支えることを担保するためにオープンアクセス政策とその原則を確立した他の政府と足並みを揃えることになります。

米国政府は、病気の治療、気候変動の緩和、グリーンエネルギーの開発などのために、毎年800億ドル以上を研究資金に充てています。そしてこれは世界各国の政府でも同じです。しかし多くの場合、公的資金で行われた研究の著作権は課金制の商業ベースの論文誌に移り、支払いをしていない人がアクセスできないところに置かれ、対価を支払ったはずの国民に対して販売されます。この仕組みは常に受け入れがたいものでしたが、政府が商業ベースの論文誌に対してCOVID-19およびサル痘の研究への一時的なオープンアクセスを求める必要がある現在、それがよりいっそう際立っています。

OSTPのメモは、既存の知識へのアクセスを体系的に開放するだけでなく、新しい知識に貢献する人々の対象を拡大するよう米国連邦政府機関に求めています。SPARCに所属する私たちの同僚が説明するように、この指針は「政府が資金提供した研究の出版物やデータの、公開とアクセスの両方において、不利な背景を持つ人やキャリアの浅い人の不公平を減らす措置を取るよう機関に求めている」のです。

インクルーシブで公正かつ公平な知識を確立するための取り組みは、単なる共有を超え「より良い共有」を可能とするためのCCの戦略の中心にあります。世界の緊急性の高い諸課題を解決したいのならば、それらの課題に関する知識と、課題への貢献は開かれている必要があります。気候変動、癌、貧困、安全な水などといった課題がある中で、もしこれらに関する研究やデータ、教育資源にアクセスでき、貢献できる人が一部の人に限定されてしまっていては世界的な解決策を生み出すことはできません。

このOSTPの政策は研究へのオープンアクセスにとっての大きな勝利です。私たちは世界中のより多くの国々の政府が類似のオープンな政策を実施することを願っています。これは私たち全員が必要としている科学知識の共有モデルに向かうための重要な一歩ですが、やるべきことはまだあります。私たちが共同で作り出し、利用する知識について、単なるアクセスを超えてより良い共有へと進むためには、(1) オープンな再利用の権利を保証するためのオープンライセンスの採用、(2) コミュニティが所有し管理する公的な知識のインフラ、に取り組む必要があります。

オープンな再利用の権利

CCは20年間、オープンアクセスの方針として、研究論文はCC BYライセンスを、研究データにはCC0を、そしてエンバーゴを設けないことを呼びかけてきました。OSTPのメモはオープンライセンスについての具体的な要求はありませんが、各政府機関の計画が「出版物をデフォルトで自由に公的に利用可能にするために必要な状況または前提条件(利用権および再利用権、そして帰属の表示といった制限が適用されうるかを含む)」を記述することを求めています。良い出だしですが、政府機関のパブリックアクセスの計画が新たなガイダンスに準拠しているかを判断する ​Subcommittee on Open Science と協力し、米国政府機関がパブリックアクセスの計画を更新するにあたり、オープンライセンスと帰属の表示のベストプラクティスについて直々に支援することをCCは楽しみにしています。

公的な知識のインフラ

学術研究コミュニティと図書館が高額なサブスクリプション費用と論文掲載料(APC)に苦労する中で、コミュニティまたは学術機関が所有し維持管理を行うオープンなインフラについて、インクルーシブで公平なかたちで読む、そして投稿することへのアクセスを保証するための興味深いモデルとしてダイヤモンドオープンアクセスが出てきています。CCは最近ダイヤモンドオープンアクセスに向けてのアクションプランを支持しました。CCは、不公平で不公正な知識の制度を観察し再設計するために、行政、市民団体、研究者と連携すること、そしてオープンコミュニティを、公共の利益のために設計された新しい、公平なオープンナレッジのモデルに導くことを楽しみにしています。ダイヤモンドオープンアクセスとダイヤモンドオープン教育モデルについては今後の記事で詳述する予定です。

私たちが全ての国での完全にオープンな再利用の権利、そしてグローバルな公的な知識のインフラ取り組む中で、この重要な政策課題においてバイデン・ハリス政権が継続的にリーダーシップを発揮していることにクリエイティブ・コモンズは祝辞を述べます。CCは、OSTP、そして米国政府機関がこれからの数年をかけてオープンアクセス方針をアップデートし、実施することを支援する準備ができています。クリエイティブ・コモンズからの支援についてはオープンナレッジ担当の Dr. Cable Green までご連絡ください。

このブログ投稿は Cable Green による “A Big Win for Open Access: United States Mandates All Publicly Funded Research Be Freely Available with No Embargo” を翻訳したものです。

(担当:豊倉)