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皆の声がCCシグナルを形作る:フィードバックへの回答

by Rebecca Ross

Signals © 2021 by Hugo Parasol は CC BY-NC-SA 2.0 の下で提供されています。

6月に私たちはCCシグナルの提案に対する一般からのフィードバック募集期間を設けました。CCシグナルは、AI時代におけるコモンズの持続と、知識の継続的な共有を確保するために設計された、プレファレンス・シグナルの枠組みです。

その目的は、大規模なデータセットの保有者が、AI学習モデルで自身のデータがどのように使用されるかについて基準を設定できるようにすることです。たとえば、データセットの保有者は、そのデータを使用するAI学習に対し、元のソースへの帰属表示(クレジット)を義務付けたり、生成されたAIモデルがオープンであることを要求したいと願うかも知れません。CCライセンスと同様に、CCシグナルは「一部の権利を保持する」という考えに基づいており、クリエイターや知識の保有者が、自身の作品がどのように使われるかについて意味のある選択肢を持つべきだという考えに基づいています。詳細については、私たちのウェブサイトで見ることができます。

キックオフイベント以来、私たちは皆様からのフィードバックに耳を傾けてきました。何百人ものクリエイター、図書館司書、技術者、法律専門家、そしてオープンな活動の推進者から意見を受け取りました。皆さんの声は、それが肯定的なものであれ、懐疑的なものであれ、不満に満ちたものであれ、好奇心に満ちたものであれ、CCシグナルの発展を形作る上で不可欠なものです。皆様からお寄せいただいた意見の要点と、そのフィードバックがどのように取り入れられ、対処されているかについて説明します。

いただいた意見の概要

様々な意見交換を通じて、以下のいくつかのテーマが浮上しました。

CCがクリエイターよりもAI企業を優先しているという懸念。 CCシグナルが、クリエイターを十分に保護することなく、AI学習に正当性を与えているように見える、という懸念が度々聞かれました。

CCライセンスとAI学習に関する混乱と意見の相違。 CCライセンスが、一部のクリエイターが期待した方法で解釈されたり、執行されたりしていないことへの不満が聞かれました。

オプトアウトに対する強い要望。 多くの人が、CCシグナルの草案にオプトアウトの選択肢が含まれていないことに疑問を呈しました。

AI開発者に丁寧に働きかけるだけでは不十分だという意見。 AI企業が著作権、ライセンス、さらにはrobots.txt のような技術的プロトコルさえも無視しているという広範な証拠があるため、CCシグナルが実際に機能するのかという疑念が聞かれました。

AIの社会における役割に対するより広範な批判。 CCコミュニティ全体には、AIに対する様々な見解があります。多くの人がAIに反対する立場を明確にしています。このような意見を持つ人々にとって、CCシグナルのような技術的な枠組みは、より強力な法律や規制がなければ不十分だと感じられます。

このツールの対象者とユースケースについて明確にしてきませんでした。 アーティストのような個人クリエイターのニーズは、機関や集団レベルで活動する人々のニーズとは全く異なるのは当然です。現在構想されているCCシグナルが、個人クリエイターの多様なニーズを満たしていないことが、はっきりと伝わりました。

明確化への要求。 多くの人が、実装や相互運用性に関する詳細、そしてCCシグナルがより広範なミッションの一環として持つ長期的なビジョンについて、より多くの情報を求めていました。

これらの問題は、特に作品が同意なく使用されていると感じ、対抗策を求めているアーティストやクリエイターの皆さんにとって、いかに深刻であるかを私たちは理解しています。その不満は現実のものであり、私たちはそれを真剣に受け止めています。

今後の取り組み

✔️ CCの立場を明確化します。 CCが「どちらかの側についた」あるいはAI企業の影響を受けているのではないかと心配されている方が多いことは承知しています。私たちは、CCシグナルの原動力が、知識の保有者のための実用的なツールを開発することによって、コモンズを守り、維持することであることを明確にしたいと思います。今後は、私たちの指針となる原則や立場を、プロダクトの決定に反映されるような形で明確にしていきます。

✔️ メッセージングと教育を強化します。 CCライセンスとCCシグナルがどのように相互作用しうるか、シグナルが実際にどのように機能しうるかの例、そしてAIにおける著作権の問題について、より深く掘り下げるためのリソースを拡大することに尽力します。まだご覧になっていない方は、CCライセンスとAI学習を理解するための法律入門をご覧ください。CCコミュニティがAIとコモンズ全般についてより多くの情報を得るほど、コモンズを守るコミュニティとして、私たちはより効果的に活動することができます。

✔️ CCシグナルのユースケースを明確にします。 現段階のCCシグナルは、個人クリエイターではなく、大規模なオープンデータセットの保有者に役立つように設計されています。皆様のフィードバックにより、この設計が、ウェブサイトを持つ人なら誰でも利用できる技術プロトコルを活用するという私たちの決定と両立させるのは容易ではないことに気づくことができました。その結果、CCシグナルの対象者が不明確になっていました。今後のプロダクト開発の段階を決定するにあたり、私たちは、目標と目的を実践するために、特定のユースケースに焦点を当てることを計画しています。

✔️ グローバルな連携を深め、プロダクト開発にステークホルダーを招きます。私たちは、反復的なプロセスを通じてCCシグナルの将来について知見を得るため、今後も多様な関係者と対話を続けていく予定です。今年の残りの期間は、パイロット導入者と共に CC シグナルの統合の可能性を探り、テストすることに注力します。この取り組みから得られる知見を、将来的なCCシグナルのより広範な導入を検討する際に活用したいと考えています。

✔️ 開発における透明性を維持します。 GitHubのリポジトリは常に公開され、最新の状態に保たれます。また、一般公開するロードマップを作成中で、進捗についてはブログやバーチャルでのタウンホールを通じて定期的にお知らせします。このフィードバックのサイクルはこれで終わりではなく、CCシグナルの今後の進化の過程に組み込まれます。

今後の展望

コモンズの未来は、オープンさ、公平性、そして主体性という共通の価値観を反映したツールにかかっています。多くの方が、依然として懐疑的であることは承知しています。

CCシグナルはまだ最終形ではありません。それは、ルールが急速に変化している時代に、新たな選択肢の層を構築する実験です。私たちは、コモンズに真に役立つものにたどり着くまで、耳を傾け、調整し、協力し続けます。

時間を割いて、私たちに意見を書き、疑問を投げかけ、挑戦し、そして支持してくださったすべての方々に感謝します。引き続きご協力をお願いします。力を合わせることで、クリエイティブ・コモンズが常にそうであったように、コミュニティと共に、コモンズのための存在であり続けることを確実にできます。

2025年8月27日


このブログ投稿は Creative Commons による “We Asked, You Answered: How Your Feedback Shapes CC Signals” を翻訳したものです。

翻訳に際して Gemini の出力を参考にしました。

(担当:豊倉)

9/21(日) CCJPシンポジウム「生成AIの学習における著作物の無断利用をめぐって」 開催のお知らせ

【開催主旨】
生成AIの開発にあたり、他人のイラストやニュース記事などの著作物を生成AIの学習データとして無断で利用してもよいかについて、問題があるとしてどう対処すべきかについて、さまざまな意見や動きがあります。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンでは、年次イベントのテーマとしてこの点を取り上げて議論する機会を設けます。また、米国に本部をおくクリエイティブ・コモンズ(*1)が対処策として最近提案したCCシグナルの特徴やその背景にある考え方について紹介します。

法律的な観点からは、日本にはAI天国と称されることもある著作権法上の規定が存在し、生成AIの学習に他人の著作物を無断で利用することが幅広く認められています。ただし、規定が適用されない「著作権者の利益を不当に害することになる場合」がどこまでを指すかについての法解釈は専門家の間でも意見の相違があります。また、そのような規定から「オプトアウト」するべくAI学習への利用を禁止する意思表明をする動きもあります。無断利用を違法化することを求める意見も存在しています。

倫理的観点からの批判も様々に存在しています。また、主要なAI開発企業の中にはデータ提供者に対して対価を支払う仕組みを用意し、無断利用や経済的搾取についての批判へ対処する動きもあります。検索エンジンなどの行動を制御するためのrobots.txt への記載など、一定の仕組みを通じて学習データ利用への諾否を表明していればそれをデータ収集時等に反映する場合もあります。CCシグナルもまた、このようなAI利用に関する意向表明の手段の一種として提唱されており、現在世界中から意見を募集しています。

立場、意見や専門領域に関わらず建設的な議論に参加したい方の幅広いご参加をお待ちしています。

なお、本イベントはクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの2024年の活動成果報告として実施するものです。イベントの最後には、本テーマに限らないクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの活動の紹介があります。

*1 クリエイティブ・コモンズは米国に本拠をおく非営利法人で、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンやその母体であるNPO法人コモンスフィアとは別の法人です。

【開催概要】
CCJPシンポジウム「生成AIの学習における著作物の無断利用をめぐって」
主催:クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
後援:国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)、オープン・ナレッジ・ジャパン
日時:9月21日(日) 16:00-18:10
場所:オンライン(WebEx)、および対面(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
参加料:無料
参加申し込み:Googleフォームからお申し込みをお願いします。

登壇者:
・小沢高広(二人組漫画家「うめ」原作担当/日本漫画家協会 常務理事)
・庄司昌彦(武蔵大学社会学部メディア社会学科 教授)
・豊倉幹人(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン事務局)
・渡辺智暁(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン/コモンスフィア理事長)(モデレーター兼)

【プログラム(暫定版)】
※当日までに変更になる可能性があることをご了承ください。
・挨拶と話題設定(10分)
・冒頭発表(15分x2名)
・CCシグナルの紹介(10分)
・パネル討論および質疑(60分)
・まとめ(10分)
・クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの2024年度活動報告(10分)

お問合せ・ご連絡先:
お申し込み期限後のキャンセルなどのご連絡は info at creativecommons.jp までメールでのご連絡をお願いします。( at は@マークに変換してください)