CC BY-SA (表示-継承) 4.0からGPL v3への一方向の互換が実現–ゲーム、ハードウェア・デザインなど、コモンズにおける相互運用性が向上 

元記事:CC BY-SA 4.0 now one-way compatible with GPLv3

去る2015年1月、クリエイティブ・コモンズはCC BY-SA(表示-継承)4.0からGPL v3への一方向の互換性に関する公開協議を、ShareAlike(継承)の互換性の構築プロセスと条項に沿って、正式に開始しました。それから数ヶ月、細部にわたる分析や討議、フリーソフトウェア・ファウンデーション(FSF)など関係諸機関との審議を経て、CC BY-SA 4.0からGPL v3への一方向の互換性を、「互換性のあるライセンス(Compatible Licenses)」の一つに加える運びとなりました。

つまり、CC BY-SA 4.0で公開されている他の許諾者の作品を改変し、GPL v3のもと、その翻案物を公開することが可能になったのです(翻案物は両方のライセンスに依拠するものの、再利用者がリミックス作品などの三次的著作物を公開する際は、GPL v3の条件に従うだけで、BY-SA 4.0のShareAlikeや表示方法の条件を満たすことになります)。
これは、BY-SA 4.0の翻案物にはGPL v3を適用しなければならない、という意味ではありません。CC BYまたはCC0など、アップストリーム(上流側)やピアな関係性にある「仲間たち」との間で進んでいるコラボレーションを促進することが求められていない場面であっても、ほとんどの場合、翻案物をオリジナルと同じライセンスに基づいて公開する方が理にかなっています。しかし、CC BY-SA 4.0を元に改変したあなたの作品をGPL v3で公開した方がよい場合やその必要がある場合(例えば、CC BY-SA 4.0の作品とGPL v3の作品をリミックスしてひとつの作品を作った場合)、GPL v3に基づいて発表することが可能になったのです。互換性のないコピーレフト型ライセンスから発生する著作権は、拡大しつつあるコモンズの取り組みにおいて、もはや障壁ではありません。この新しい互換性が、障壁を取り除くのみならず、ソフトウェアと文化、デザイン、教育、科学の新しくクリエイティブな融合や、ソフトウェアにおける最良な実践の実現である“git”を通じたソースコントロールなどの活性化につながることを願います。

高まる相互運用性

2005年以来、CCはコモンズの法的相互運用性-大まかに言うと、通常、翻案という形で、それら作品を法的な障害なしに相互利用できること-を高めるべく活動してきました。

これは、他のライセンスと互換性がなく(つまり、今や無効となったライセンスを持つ作品は、コモンズ内にある、現在広く使われているライセンスに基づく作品とのリミックスができないということ)、あまり使用されていなかったCCライセンスの整理を意味しました。

これは、他のライセンス機関やユーザー・コミュニティと協力し、関連作品の最大公約数が使っているライセンスと互換性のあるライセンスに、作品を導くという取り組みでありました。フリー・ソフトウェア・ファウンデーション及びウィキメディアと協力した際には、ウィキメディアのデフォルト・ライセンスをGNU・フリー・ドキュメンテーション・ライセンスからCC BY-SA 3.0へと移行させました。また、政府機関と協力し、広く使われているライセンスの使用と指定を実現させること、あるいは少なくとも、政府既定のライセンスを、より広く使用されているライセンス(たいていの場合CC-BY)と互換性のあるものにするよう導くことでもありました。

この長期に渡る、相互運用性向上のための取り組みは、CC BY-SA と、同様の表示型、もしくはコピーレフト型ライセンスとの互換性を確立するためのしっかりと構築されたメカニズムの開発にほかなりません。コピーレフト型ライセンスは通常、オリジナル作品と同じライセンスの下でのみ翻案物の公開を許可しているため、そのようなメカニズムがなかったとしたら、異なるコピーレフト型ライセンスを持つ作品を組み合わせ、翻案物を作成することができなくなってしまうからです。

私たちはまず、CC BY-SA 3.0(2007)でこのメカニズムを発表しましたが、実際の運用には至っていません-当時、相互運用性における最も火急の障害は、ライセンスの移行を一時的に許可することで取り除かれていました(上述のウィキメディアの箇所を参照)。また、慎重な分析と検討なくしては互換性ありと認めることはできない、というのがCCの考え方です。

このメカニズムはCC BY-SA 4.0(2013)から向上し、一方向のみならず双方向の互換性の可能性をもたらしました。一年ほど前には、CC BY-SA 4.0とフリー・アート・ライセンス1.3は双方向の互換性を持つこととなりました。

バージョン4.0(2011)の検討が始まった頃もしくはそれ以前より、CCはフリー・ソフトウェア・ファウンデーションやその他の関係機関と、CC BY-SA 4.0 からGPL v3への、一方向の互換を実現すべく検討を重ねてきました。新しく、CC BY-SA 4.0のもと作成された翻案物をGPL v3で公開できるようにし、いずれのライセンス下にある作品を使っても翻案物の制作を可能にすることが狙いでした。

そういった取り組みの要請は、様々な使用事例から寄せられています。そこにはゲームもあれば、ソフトウェアかノン・ソフトウェアかの識別が簡単ではないスマート・アーチファクト(smart artifacts)、CC BY-SAやGPL系のライセンスが付与されていることの多いハードウェアのデザインも含まれます。また作家たちからも、改変が許可されるだけでなく、GPLが求めるように、「改変を加える上で好ましいとされる著作物の形式」を通じて新たな翻案物の製作が推進されるよう希望する声が上がっています。

文書や画像、データといったメディアだけを考えれば、これらはニッチな問題に見えるかもしれません。しかし「ソフトウェアが世界を飲み込んでいる」と言われるように、優れた教育資源、文化的工芸品、研究に必要な情報もその成果も、将来的にはソフトウェアそのものになったりソフトウェアによってデザインされたり、ソフトウェアによって処理されたりするものとなるでしょう。あるいはその三つすべてになるかもしれません。

コモンズにおいて「ソフトウェア」と「ノン・ソフトウェア(non-software)」をリミックスする法的障壁を引き下げることは、コモンズの活動をこれからも活力あるものにするうえで、我々にできることのひとつです。

コモンズの相互運用性の向上は、長期に渡って継続していくプロセスです。特定の領域の内外にあるライセンス機関との協力によって成される部分もあります。達成するのに長い年月を要しましたが、CC BY-SA 4.0 がGPL v3への一方向の互換を成したことは大きな快挙です。

データ、ハードウェアのデザイン、ソフトウェア、その他の素材に使われているライセンス間には、それぞれの領域内はもちろん、異なる領域間において、いまだ多くの非互換性が存在します。CCがこれから5年、10年の間にどんな相互運用性を可能にしていくのか、ご覧になりたいと思いませんか?

 

翻訳:松丸、東久保、水野