v3.0に関する議論で大変盛り上がったもののひとつに、DRM(デジタル管理技術、Digital Rights Management)に関する規定の改定の問題があります。
ご存知のように、現在のCCライセンスでは、DRMに関して以下のような規定が入っています。
英語:
“You [being the licensee, not the licensor] may not distribute, publicly display, publicly perform, or publicly digitally perform the Work with any technological measures that control access or use of the Work in a manner inconsistent with the terms of this License Agreement.”
日本語:
「あなたは、この利用許諾条項と矛盾する方法で本著作物へのアクセス又は使用をコントロールするような技術的保護手段を用いて、本作品を利用してはならない。」
このDRMに関する規定について、フリーソフトウェアの世界では有名なDebianのコミュニティから、現在の規制では「フリー」なライセンスとしては不十分ではないか(つまり、Debian Free Software Guidelineの要件を満たさないのではないか)という指摘がなされました。Debianとの議論の中で、CCは、ライセンスの中に新しいDRMに関する規定追加を検討することに合意しました。
追加するかどうかが検討された内容は、簡単に言えば、「もしもあなたが作品にDRMによる制限を加える場合には、DRMのかかっていないファイルを同時に公衆に提供しなければならない」という趣旨の規定でした。
これに対して、6月にブラジルで行われたiSummitでの各国CC法律家の間の議論では、この規定の導入に反対の声が相次ぎました。その主な理由は以下のようなものです。
(1)このような「アンチ技術的制限手段条項」を導入しなければならない明確な必要性が感じられない
(2)CCライセンスの普及のためには、ライセンスが分かりやすく、使いやすいことが必要であるのに、この規定を加えることによってライセンスが必要以上に複雑になる
(3)このような規定を入れなくても、CCコミュニティにはすでにDRMに対しては否定的なカルチャーが存在している(ので実害がない)
その後、米国のライセンス・ディスカッション・メーリングリストでは、Debianの意見に賛成する人たちと導入に消極的な人たちとの間で活発な議論がなされましたが、全体的には導入に消極的な議論が優勢でした。これを受け、CC本部ではv3.0での上記規定の導入は見送ることにし、DRMに関する規定については、現在の規定の趣旨を明確化する微修正にとどめることにしたい、と最終提案しています。その微修正とは、現在の文言を以下のような趣旨を反映する内容に改めるというものです((具体的に各国版に反映される場合の表現は、各国CCに任されています)。
「あなたがこの作品を頒布、譲渡、公衆送信その他の方法で公衆に提供するにあたっては、本作品の受領者がこのライセンスの中で与えられている権利の行使を制限されるような技術的手段を本作品に適用してはならない。」
上記の議論に関して、ご意見のある方は、コメントをお願いいたします。
文責:野口