ことばの多様性、Creative Commonsの道

2006年4月23日、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の世界図書・著作権デーの祝典が開かれた。ユネスコのウェブサイトでは「ユネスコはこの日を世界中で祝うことで、読むことや出版すること、そして著作権を通じた知的所有権の保護の促進を目指す」とされている。


ユネスコの事務局長である松浦晃一郎は、世界図書・著作権デーで毎年行われる声明の中で、出版におけることばの多様性を奨励する必要性を強調し、著作物は「今まで以上に、活力とことばの認知の乗り物として考えられるべきだ」とした。
クリエイティブ・コモンズ・ポーランドの企画指導者であるAlek Tarkowskiも、著作物の翻訳にはもっと多様性が認められるべきだと考えている。「世界のさまざまな地域の間で共有されるべき大切な知識や経験はたくさんある。翻訳は退屈で骨の折れる作業のようだが、そういった知識・経験の共有のためには絶対に必要な段階であり、できる限り支持・促進されるべきだ」と彼は言う。
松浦は声明でこう続けている。「作者および作品の読者のために著作権を保持・促進する必要性をめぐって討論が多くなされるようになっている今、2006年4月23日という日は著作権のための一里塚となるにちがいない。それは、文化や言語の多様性を促進するための別の主題ではなく、一つのアプローチの異なる側面に過ぎない」
iCommonsのインタビューでTarkowskiは、ことばの多様性を奨励しつつ著作権を保護するための別の方策を提示した。つまりイノベーションを奨励すると同時に、テクストの翻訳を法的により親しみやすく、より簡単に行えるようにするという解決策だ。
彼が言うには「CCライセンスは、他のオープンなライセンス機構と同様に、他の言語で書かれたものの翻訳をより容易にする。これによって、オンラインで翻訳物を出版するという目的を持ち、一つの作品を翻訳しようとするボランティアの人々はいかなるコストも払うことなく翻訳作業に従事できる。特に、たいてい著作権ライセンスは非常に高価なものだが、その料金はまったくかからなくなる」
ということで、この日がウィリアム・シェークスピアの死の追悼日でもあったのはぴったりだったといえる。というのも、有名なイギリスの詩人・脚本家である彼の作品は世界中のあらゆる主要言語に翻訳されてきたからだ。多くの人が考えているように、シェークスピアがこれほどまでに有名になっている理由のひとつは、彼の作品が今や社会的に広く知れ渡っており、自由にコピー・共有・実演できることにある。Tarkowskiは、もっと現代的な事例としてLawrence Lessigの著作『Free Culture』の成功について説明した。それはポーランド語に翻訳され、オリジナル版と同じCCライセンスのもと、オンラインで読むことができる。制限として残るのはポーランドで印刷する際に出版者表示権だけだ。2,000部ほど売れている書籍版に対し、「オンライン版は過去一年間にその数万倍もダウンロードされてきた。知識の拡大について考えるとき、それは驚くべき結果だ」と、Tarkowskiは言っている。
「だからオープンライセンスがあれば、外国語の重要な作品をポーランド人読者のためにもっと簡単に翻訳することができるようになり、書籍マーケットと競合しあうことなく、自由に提供できるようになる」と、Tarkowskiは締めくくった。
そうすると、提示されるべき疑問はこうだ――シェークスピアの成功は死後400年で頂点に達しているが、仮にもし彼が今日でも現存・執筆していたとしたら、CCライセンスとオンライン出版は彼の名声およびその詩や劇の翻訳率の爆発的上昇にどんな影響を与えていることだろうか?

翻訳:Takatomo Abe
オリジナルポスト:Diversity of language, the Creative Commons way(2006/4/24)