Girogos Cheliotis, BY: Dominick Chen
iSummit初日のLegal Day(おもに法的観点からの議論を行う日)で、シンガポール・マネージメント大学(SMU)のジョルジョス・チェリオティス(Giorgos Cheliotis)によるCCライセンスのグローバルな統計分析に関する発表が行われました.
CCライセンスの利用形態に関する学術論文は依然少なく、この発表で振れられているようにZachary Katzによる論文(Zachary Katz, Pitfalls of Open Licensing: An Analysis of Creative Commons Licensing, 46 IDEA 391 (2006).)の他にはMinjeong Kimによる博士論文などに留まっています.その意味でも、このチェリオティス氏による発表は研究分野としてのCCの裾野を大きく広げるきっかけとなることが予想されます.
詳しくはプレゼンテーションがScribdからダウンロードできるので、興味のある方はぜひダウンロードしてリサーチに利用してみてください.要点をここに挙げておくと:
・主な統計手法はGoogleとYahoo!のバックリンク検索とYahoo!のCCライセンス検索に基づいていること:GoogleのCCライセンス検索は数ヶ月毎にアルゴリズムが変わるので、データ増減の振れ幅が大きすぎることが判明しています.
昨年のiSummitでは一億四千万コンテンツがCCライセンスで公開されているという数値がCC本部から発表されましたが、Googleの返す数値が時期によって大きく縮小したり増大したりするので、より精度の高い検索方法(とメタデータの付与方法)が今後とも求められることを意味しています.
・Flickrだけでも3600万コンテンツがCCライセンスで公開されていることと、Yahoo!バックリンク検索では(Flickrの外で)3700万コンテンツが確認できることを考えると、現在のCCライセンスのよりう正確なコンテンツ数は少なく見積もっても6000万コンテンツ以上であるということがいえること
・80%のライセンス利用例が「一般」の管轄地であり、20%のみが地域限定の管轄地であること.しかし「一般」ライセンスは、まだCCライセンスが当地に移植されていない場所/時期でも利用されているため、これが厳密な意味での「国別」の分類だとはいえない.
・日本はYahoo!とGoogleのバックリンク検索の双方で、CCライセンス利用数において35カ国中、6位から10位のあいだにランクしていること(ただし人口比率でいえば18位)
・この研究では各CCライセンスに「創造的自由度」と「商業的自由度」を任意に付与し、その双方の観点から国別のライセンス自由度を調査していること.日本は両方において35カ国中、10〜11位にランクしています.
・ライセンス種類別でみると、全体的には制限的なライセンス(非営利や改変禁止)の使用例の多数.また、最も制限的なものと最も自由度の高いライセンスに利用例は分布しており、中間的なライセンスはあまり利用されていない.
このように様々な問題と共に、今後のCCコンテンツ研究の方向性がいくつか示されてきたことはCCの運動全体にとって大きな利益となった感があります.
リンク:Giorgos Cheliotis氏のプレゼンテーション
文責:Dominick Chen