iSummit報告:基調講演ダイジェスト 3

iSummit 2007 では、基調講演(Keynote Speach)は毎晩20:00から行われるという形式が採用されていました.ここではレッシグの長年の盟友であり昨年刊行された『The Wealth of Networks』(未訳)が世界中のcommoner (CC活動家)の愛読書となっているヨハイ・ベンクラー(イェール大学)、アジアのもうひとりのLLと呼ばれるローレンス・リャン(CC India)、東欧圏において社会文化的な側面からコモンズを研究するボド・バラス(CC Hungary)、そしてレッシグと共にEldred v. Ashcroftを闘った若きギーク教授のジョナサン・ジットレイン(Oxford / Harvard / Berkman)たちによる講演のダイジェストをお送りします

□ 生成的なインターネットに向けて:ジョナサン・ジットレイン


Lawrence Lessig, Jonathan Zittrain, BY: mecredis

レッシグ以上にオタクでギークな法学者であるジットレインは、インターネット文化に対する無尽とも思われる愛情に溢れたユーモラスなスピーチを行い、会場を湧かせていました.彼の講演の要旨としては、オープンな技術アーキテクチャにはスパム、ウイルス、アドウェアといった脆弱性が必ず伴うものであり、そのことによって分散的な情報の生産・流通の様式がふたたび中央化されてしまう口実を生んでしまうという問題提起に貫かれていました.

そうした一連の「ダメ」な技術が、まさにインターネットの自律分散的な力学によって乗り越えられ、彼の最近の論文の題名でもある「自生的なネット」(generative internet)を維持しなければならない、という彼の主張は、ネットワークのインフラはあくまで中立で透明であれば良いというこれまでのネット中立論者にもゆさぶりをかけるものであり、セキュリティを確保するためには理想主義と介入主義の中間領域を志向しなければならないということを含意しています.

リンク:Jonathan Zittrain, The Generative Internet

文責:Dominick Chen