iSummit Academy 2

1日目の Joi と Lessig に引き続き、2日目の iSummit Academy では、世界各地のクリエイティブ・コモンズの具体的な活動と、今後の展望について報告がありました。


クリエイティブ・コモンズのヴァイス・プレジデントである Mike Linksvayer 氏は、ワールド・ワイドでのクリエイティブ・コモンズの現状と、将来への期待について講演されました。
クリエイティブ・コモンズを利用したプロジェクトは世界中で行われており、代表的なものでは MIT をはじめとする世界中の大学機関で連携して行われている、講義資料の共有等を目的としたオープンコースウェアや、よりグローバルな展開をしている Wikimedia Commons などがあります。これらのプロジェクトのケーススタディをまとめて1冊の本を作った時にも、wiki を活用して世界各国が協力して作り上げたそうです。
しかし、クリエイティブ・コモンズにはまだまだ問題点もたくさんあります。CC がまだ導入されていない国もあるし、導入されている国でも資金面等で大きな格差が存在します。また、ライセンス使用率でも格差が存在します。そして何より、著作権に代わる存在としてのクリエイティブ・コモンズの存在感はまだまだ薄く、著作権に関わる問題の中で中心的な役割を果たしているわけではありません。Linksvayer 氏はこれらの問題点を指摘し、今後の課題としました。
課題がクリアされたら、今から5年後にはクリエイティブ・コモンズがより表舞台に出るようになり、よりグローバルな存在となる事を期待したい。さらにこれから10年間で、著作権にあまり縛られることなく、革新的な技術、サービスがさらに出現する事を期待したい、と締めくくりました。
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ブラジルの Ronaldo Lemons 氏は、「著作権のパラドックス」というテーマでお話を始めました。
先住民の歴史的瞬間を撮影した写真の利用を、彼ら自身が求めたが拒否されたり、80年代のドラマについて調べようと試みても、テレビ局としては提供できなかったりと、隣接する権利処理の問題等で、著作権者そのものが自らの作成した著作物を利用できないことがあります。
また、ブラジル著作権法の基本的な問題として、私的複製の権利やフェア・ユースが認められておらず、許諾を得るのが難しい以上、様々な利用形態が許されていないことを説明しました。しかしコモンズであれば、許諾を求める必要がないため、取引コストが減るメリットがあります。フェア・ユースで利用できるものや、例外や制限により利用できるものもコモンズの考え方に通じます。最近では GNU もコモンズの一部でしょうし、Orphan Works の規定や、ブラジルや日本でフェア・ユースの拡大も論じられています。日本の同人誌は世界中に広がる DIY の文化の一部といえ、フェア・ユースはそうした動きを加速させるでしょう。
最後に、ギフト・エコノミーとマーケット・エコノミー、コモンズの関係についてです。Radiohead や Nine Inch Nails の試みはそれらの組合せであり、ギフト・エコノミーは、コモンズを考える上で今後重要になってくるということでした。
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韓国の裁判官でもある Jay Yoon 氏からは、韓国でのクリエイティブ・コモンズの立ち上げから、現在までの活動の経過を報告してもらいました。
韓国では2005年に韓国情報法学会(KAFIL)内に事務局が置かれ、コミュニティは主に芸術、科学、伝統的メディア、ニューメディアの4領域と、ディベロッパーからの協力により構築されているということです。 http://creativecommons.org/ へのアクセス数は韓国からが2位であり、新聞、ブログ、ISP、音楽への CC ライセンスの適用や、ソフトウェアやハードウェアの CC ライセンス埋め込み機能などは、CC への関心の高さを示しています。
Yoon 氏はこの背景として、NAVER と DAUM という、韓国で8割のシェアを占めるポータルが、ブログやコミュニティ・サービスに対して CC ライセンスの適用機能を導入したことが大きいと分析しています。将来的には韓国の著作権委員会や KBS など、他の組織との協力も視野に入れており、KAFIL から独立した法人に移行することも考えているそうです。
韓国クリエイティブ・コモンズの特徴は、核となるボランティアを中心に各プロジェクトは独立して行われ、必要に応じて事務局がコミットする形である点です。そのためソウルの CC サロンでは、”CC Hope Day”という CC の誕生を祝い、各プロジェクトの関係者が年に1度集う催しも開かれています。「コモンズとともに美しい世界を夢見る」という標語や、”Free Music 2″というテーマ曲も作られました。
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