8月1日 11:30- クリエイターから見た権利と文化

「クリエーターから見た権利と文化」では、クリプトン・フューチャー・メディア代表取締役の伊藤博之氏、角川デジックス代表取締役社長の福田正氏、ゲームデザイナーの飯野賢治氏、現米国CC理事兼CEOの伊藤穣一氏を登壇者としてシンポジウムが行われました。


DSCN0135-1
DSCN0135-1 posted by (C)sandii

冒頭に、自己紹介を兼ね、各登壇者のスピーチが行われました。

1番手の伊藤氏は、クリプトン・フューチャー・メディア社のDTMソフトウェアである『初音ミク』のムーブメントの解説を中心にスピーチを行いました。
伊藤氏は『初音ミク』大ヒットの理由として、ユーザーが音楽コンテンツの制作を超えてイラストや3DCGコンテンツの二次創作までをも行うようになったこと、ユーザーの手で作品が動画共有サイトにアップされることが『初音ミク』のプロモートとなること、会社自身もピアプロ「を開設し二次創作を積極的に奨励したことを挙げました。

2番手の福田氏は、角川デジックスのYoutubeを使った新規事業について説明しました。作品を送り出すクリエーターのマネジメントの役割を果たし、またコンテンツの共有によってユーザーとのWIN-WINの関係を作りたいと述べました。

3番手の飯野氏は、10代でゲーム会社を立ち上げた経緯から現在までの自身来歴を述べた上で、ゲーム開発の現場を守りたいと述べました。その背景には、クリエーターが権利を主張しない現状があると言います。

DSCN0138-1
DSCN0138-1 posted by (C)sandii
<二次創作された『初音ミク』の動画も上映された>

スピーチの後は、日本とアメリカの著作権に対する意識の違い、コンテンツ利用の際の権利処理コストの問題、コンテンツの営利/非営利目的利用の区別、クリエイティブ・コモンズの有用性等について活発に議論が交わされました。

中でも、コンテンツの営利/非営利目的利用の区別については、シンポジウムの中で何度も話題に上り、登壇者の、ひいてはクリエーションの現場における高い興味を感じました。
クリエイティブ・コモンズのライセンスでも、営利/非営利の区別はライセンスの種を分ける一つのメルクマールになっていますが、例えば”アドのついているサイトでの利用”がいずれの目的の利用となるのかなど、営利/非営利の判断は容易ではありません。
福田氏は、営利/非営利の切り分けがもう少し固まれば、CC等のライセンスも有用性が増すのでは、と言います。
伊藤氏は、ユーザーがどこで「気持ち悪い」と思うかが一番重要な基準であり、半数のユーザーは広告の有無にその判断のメルクマールを置いていると言います。ただ、ブログにグーグルのアドセンスが入っているだけで営利目的と判断されてしまうと、多くの重要なウェブサイトが営利目的となってしまいます。そのため、”営利が主目的”という場合以外は非営利目的とするべきである、と述べていました。CCでは、物の販売や広告が主な利用目的である場合は営利、サイト運営等のインフラのために広告をつける場合は非営利であると判断しており、これによればYouTubeは非営利団体にあたります。
さらに、福田氏は、ユーザーやコンテンツ・ホルダーのいずれにも共通して営利と判断されるのは、動画を流している画面に直接的に広告を載せる方法(代表的なのは、テレビや雑誌)であると述べていました。

その他、伊藤氏は、NHKがアーカイブを多数出していることに触れ、オリジナルを作るのは困難だが、いいコンテンツが根っこにあればそこに絵や音楽を付けるなどクリエイティビティが爆発する。そういう機会を増やしたいと発言しました。
また、互いにリスペクトすることがキーワードであり、”私はこういう風に使って欲しい”、”それならば私はそれを尊重します”、という著作権レイヤーでのリスペクトが求められているといいます。日本のコンテンツ産業ではファンのリスペクトが海外より強いため、これまでルールにする必要はありませんでした。そのような日本のやり方を、海外に発信することも必要なのでは、と述べていました。

飯野氏は、オンライン化によりゲームクリエイター、ゲームプレイヤーのいずれの意識も変化し、ビジネスも変化したことに言及し、どのように経済システムを作りお金を稼ぐのか、クリエーターが考えてものを作るいいきっかけになるのではないかと述べていました。

コメントを残す