理研サイネス(SciNetS : Scientists’ Networking System = 科学者達の連携網システム)は、理化学研究所の生命情報基盤研究部門が開発・運用している、共同研究のための生命科学データベースです。
このデータベースは、複数のバーチャルラボが並存する、いわゆるクラウド型のウェブシステムです。各研究者が連携してデータベースをセキュアに共有できるため、国際連携研究を進めるための基盤としても利用されています。
個々のバーチャルラボでは、さまざまなコンテストの開催や、オープンイノベーションも企画されています。
例えば最近では、「GenoCon」というゲノム設計のオープンイノベーションが、コンテスト形式で開催されています。生物の性質を決める遺伝情報は、DNAデータであるゲノム情報となるわけですが、このゲノム情報を設計することで、ある生物に新たな機能を付与したり、既存の長所を更にのばしたりすることが期待できます。GenoConの参加者はバーチャルラボでDNAデータを設計して提出し、安全基準を満たしている設計のみを専門家が選んでさらに実験的に評価します。このように、設計と実験を明確に分離することで安全性に十分な配慮がなされているため、「GenoCon」には高校生部門も設けられています。そして、「GenoCon」によって蓄積されたゲノム設計の手法やプログラムは、CCライセンスBY-SAを付して共有され、最良のゲノム設計のためのデータリソースとして役立つこととなります。
このように、ゲノム研究の進歩のためには、既存の研究から得られた膨大なデータを研究者が共有することが必要と考えられており、理研サイネスのようなデータベースは不可欠の存在でしょう。こうしたデータベース構築の際のデータライセンスは、パブリックドメインとされることもありますが、「設計」のような創作性の高い知的活動によって生み出されたDNAデザインは将来的に著作権が主張されることも十分ありうるため、今のうちからそれらの集積・統合・共有に際して明示的に、氏名表示・継承といったCCライセンスを適用して共有していく意義は大変大きいといえます。CCライセンスに準拠して情報共有を行える理研サイネスの今後の動向にも注目です!
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