[iSummit] 各国での取り組み

1日目の最後に、CCの各国における取り組みを紹介する時間がありました。CCJPも発表しましたが、そのほかに、CC台湾、CCイタリア、CCポーランド、CC南アフリカがそれぞれ発表しました。こちらでは、そのダイジェストを。

CC台湾では、CCライセンスを採用する著作権者が、CCライセンスをつけることの意味をよく理解できるように、CCライセンス採用の過程で「著作権者向けのコモンズ証」のようなページを表示する試みをしている。つまり、たとえば、BY(表示)ライセンスを付す人には、「あなたは、このライセンスをつけると、他人にこの作品を自由に複製、頒布、展示、実演すること、二次的著作物を作成すること、営利目的で利用することを許諾します」といったページが表示されるのである。これにより、著作権者の意思をきちんと確認する、という狙いがあるということだった。また、台湾では、CCの当面の活動資金を政府からの予算でまかなっており、それを使って、CCグッズやポスターの製作・頒布による啓蒙活動や、CCの音楽を使ったBurn & Sellフェスティバル(CC音楽をCDに焼いて売ろう!フェスティバル)などを開催している、ということだった。

CCポーランドでは、CCライセンスの意義を世の中に分かってもらう前段階として、まず、著作権意識を高めることが先決である、という点を強調していた。つまり、ポーランドでは、著作権の遵守意識があまり高くないため、CCライセンスがなくても著作物利用は自由!?ともいえる状況がある。また、著作権法を良く分からずにCCライセンスを誤って用いている人もいる、ということだった。日本も、多少似た部分があるかも!?と思った事務局の野口でした。

CC南アフリカでは、CCを使ったプロジェクトとして、政府主導の教育プロジェクトであるThutong 、米国についでCCの音楽コミュニティであるCCMixter SA、南アメリカのクリエーターをサポートするNPOであるLiquid Fridgeなどが紹介された。

しかし、一番感心したのはCCイタリア。今年9月スタート予定の、「SeLiLi プロジェクト」と呼ばれるCCライセンス・ヘルプデスク・プロジェクトである。CCイタリアでは、CCライセンスに関する質問が非常に多いにもかかわらず、それに対応するキャパシティがなく、「弁護士に聞いて下さい」といえば費用もかかるため、これらの質問に対応する体制を何とか作りたいと考えていた。そこで、地方政府から予算をもらい、CCイタリアとは別のグループとしてSeLiLiプロジェクトを立ち上げ、専門のスタッフを雇って、電話・emailなどからの質問を受け付けるほか、週に1度、オフィス・スペースに人を常駐させ、音楽などを流してサロン的な雰囲気を作りつつ、そこへCCに興味のある人に自由に来てもらって、対面で相談に乗れるような氏組を考えている、という。そこで、まずは、質問をFAQなどにすでに掲載されている基本的な質問か、個別に弁護士などに相談するべき質問か、技術的質問か、ビジネス的な質問か、などに振り分け、それぞれ、個別に回答する必要のあるものは回答する。SeLiLiプロジェクトを利用した利用者は、その結果をWeb上で報告する義務があり、これらの報告の蓄積により、長期的には90%近くの質問がWeb上で解決されることを目指す。このプロジェクトの立ち上げにあたって、もっとも心を砕いたのは、実はプロジェクトのマニュアル作りだそうだ。政府からの資金で行っているプロジェクトであるため、皆に対して公平な体制であること、対応の統一化、報告のシステムの統一化、などがきちんとしていることが重要だ、という認識に基づいているという。CCイタリアでこのプロジェクトを推進しているJuan Carlosは、大学教授の傍らCCイタリアの普及に取り組んでいる人で、「いやぁ、大変だよ」と言いながらも充実したプロジェクトに対する自信を覗かせているところがとっても印象的だった。

各CCが、それぞれ工夫を凝らしているのを目の当たりにして、勇気付けられるとともに、各CCでそれなりの規模のプロジェクトを成功させている裏には、ほとんどといってよいほど、政府からの資金援助がある、という実態にもまた、考えさせられた野口でした。