技術の現状と展望:参加型文化を支える芸術の現状と展望

iSummit1日目のきょうは午後から「技術の現状と展望:参加型文化を支える芸術の現状と展望」と題するパネルディスカッションが行われました。このパネルでは、「ニコニコ動画」や「初音ミク」をはじめとする新たな技術を背景としたプラットフォームとそれが支える参加型文化の意義と可能性について話し合われました。


まず司会を務められた三菱UFJリサーチ&コンサルティングの太下義之氏から、歴史的なパースペクティブを踏まえつつ技術の発展と文化の変容の関係を様々な角度から問う必要があるのではないかという本パネルの核となる問題意識が示されました。

次に各パネリストによるプレゼンが行われました。1番目のパネリストである情報セキュリティ大学院大学副学長の林紘一郎氏は、著作者が何らの手続をとることなく著作権が認められる現行の著作権法制から、著作者が著作権を主張する条件として何らかの手続を求める登録型の著作権法制への転換の必要性を提起した上で、登録型の著作権法制を設計する上ではCCライセンスのアイディアとそこから得られた経験が非常に参考になるとの持論を展開されました。次にソフトウェア開発者の山岡幸作氏は、自らが開発中のCCライセンスの適用と利用を容易にするソフトウェアを紹介し、CCライセンスの利用者にとって真に使いやすい技術を実現するために広く参加者からのフィードバックを募りました。ニワンゴの木野瀬友人氏は、動画共有サービス「ニコニコ動画」で近々採用される予定のコニニ・コモンズを紹介し、法的ライセンスとしてのクリエイティブ・コモンズと(一面では)より柔軟なガイドラインといえるニコニ・コモンズの共通点と相違点を説明しました。日本総研の東博暢氏は、ユーザーとクリエイターの架け橋となる新たなビジネスモデルの構築の必要性を提起し、コンテンツ業界の新たな経済モデルとなるべきMash Up Economy実現への道筋を示されました。Xartsの和田昌之氏は、自社の構築する版元とクリエイターのマッシュアップコンテンツのプラットフォームの魅力と可能性を訴えられました。エンターディヴの能見大二郎氏は、1つのコンテンツがいくつもの動画共有サイトで閲覧される現代のウェブのコンテンツ受容のあり方を踏まえて、従来のページ・ビュー単位の人気集計から複数サイトにおける閲覧を総合的に評価するネット上の新たな「視聴率」測定サービスの意義を示されました。

パネリストのプレゼンとその後のディスカッションの議論の1つの軸になっていたのが、参加型文化を実現する上で、CCライセンスをはじめとする法的な枠組がどこまでの役割を担うことができるのか、あるいはどこまでの役割を担うべきなのか、という問いであったように思われます。参加型文化が花開くためには、CCライセンスのような法的枠組ばかりだけではなく、国ごとの文化やそれぞれのオンライン・コミュニティの暗黙の規範、市場のメカニズム、そして今日のパネルの主題である最先端の技術も欠かすことはできないでしょう。クリエイティブ・コモンズも、単に法的なライセンスを提供するだけでなく、参加型文化を支える文化や経済、そして技術を育む場となる必要があるのかもしれません。(S.N)

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