【連載】CC JAPAN REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC / VOL.4

DOMMUNEトークプログラム『Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC ~伝統文化からCCライセンス、ブロックチェーンまで~』ダイジェスト版書き起こし(前編)

富山県富山市八尾町に伝わる民謡「越中おわら節」の演奏を録音して、それを元に2組のアーティストによるリミックスを制作、その両方にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を付けて公表するという今回の企画。

vol.1,vol2,vol.3では演奏者、リミックス制作者のインタビューをお届けしてきましたが、今回のvol.4では2017824日にDOMMUNEで配信されたトークプログラムの模様をお届けします!!!!

CCJP理事のドミニク・チェンをホストに、ライター・編集者の大石始さん、編集者の高橋幸治さんをゲストにお迎えして、質・量ともに超人的なコンテンツを毎週月~木の夜に配信し続けている宇川直宏さん主宰のライブストリーミングチャンネルDOMMUNEにて多方面にわたるトークが繰り広げられました。宇川さんがトークに参加する場面もあり、全編に渡って濃い内容だったので、ダイジェスト版と言いつつ前編・後編に分けてお届けするボリュームになりました。ぜひじっくりお楽しみください!

なお、番組に寄せられたツイートをtogetterにまとめていますので、こちらも合わせてどうぞ!
togetter
まとめhttps://togetter.com/li/1147105
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番組スタート!!!

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(ドミニク)はい、こんばんはー。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンのドミニク・チェンと申します。よろしくお願いします。『Creative Commons Japan REMIX SPECIAL / ECCHU-OWARA-BUSHI CROSS CC ~伝統文化からCCライセンス、ブロックチェーンまで~』というお題で、2時間過ごさせていただくんですけれども。今日のゲストはライター・編集者の大石始さん、

(大石)はい、よろしくお願いします。

(ドミニク)よろしくお願いします。それと編集者の高橋幸治さんです。

(高橋)よろしくお願いします。

(ドミニク)よろしくお願いします。

(ドミニク)今日は、クリエイティブ・コモンズの枠ということで、大きくクリエイティブ・コモンズ を飛び出して、テーマは、民謡からリミックスそしてブロックチェーンまでを予定しているのですが、そこまでたどり着けるのか。

(高橋)すごいですね、はたしてまとまるのか。

(ドミニク)はい。まずはクリエイティブ・コモンズの簡単な説明からさせていただきますが、私たちはクリエイティブ・コモンズ・ジャパンと申しまして、クリエイティブ・コモンズとは、インターネット上でクリエイター自身が自由に作品に関する著作権の意思表示ができるシステムです。

これがクリエイティブ・コモンズのライセンスのページとなりますが、普通、利用規約とか法律の文章は、この100倍ぐらい長いテキストが、難解な法律用語で書かれてるんですけども。この「 You are free to share and adapt」は、自由に複製・コピーしてネット上でシェアしても良いし、リミックスしたり改変したりしたものを商用利用も含め使って良いという事を事前に認めているので、いちいち連絡したり許諾をとったりする必要がないということになります。

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このようなライセンスが、2002年にアメリカで生まれて、およそ15年を経って、最新の統計ではネット上に12億個以上のCCライセンスのコンテンツが存在しているようです。前回宇川さんが「クリエイティブ・コモンズ は大地、dommuneは給食」と最後に素晴らしい一言で締めくくってくれましたね。

(高橋)名言でしたね。

(ドミニク)ほんと、名言でしたよね。あの言葉が未だに脳内で響いていて、今年は、色々付け加えて「インターネットはぬか床」とか「サウンドクラウドは神社」とか、よくわかんないですけど(笑)。そういうことも含めて、色々お話していければと思っております。
では、今日の企画の説明について、企画担当の森さんと吉田さんからお願いしてもよろしいでしょうか。

(吉田)はい。前回の企画を昨年やりまして今回2回目です。先ほどもお話にあった宇川さんの名言にインスパイアされたところもありまして、今回はCCライセンスと民謡というところを取り上げさせていただきました。

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(森)はい、CCの大地を広げようという感じですね。

(吉田)そうですね。伝統文化って割とみんな興味があったりして、でも一方では日本で廃れていってるなっていう印象もある中で、自分たちがどういう風に関わっていけるんだろうって思って。そこに、CCライセンスがどういう風に活用できるかっていうことに特に興味があった、というところですね。

地方のお祭りとかに、東京の人が行って、今回で言えば富山県の民謡を取り上げさせていただきましたが、どういう風に触れれば良いのかという部分も、最初結構2人で話したり相談したりしていたところです。デジタルでオープンになってない文化を、クリエイティブ・コモンズの特徴であるリミックス性とかアーカイブ性を重ねていくと、どうなるんだろうところを今回チャレンジさせていただきました。

(森)なぜ富山なのかという話もあると思うんですが、これは本当に成り行きの部分もあります。今回リミックスをしているcolorful house bandに僕も参加しているのですが、そこで一緒にやってるDJ SAGARAXXさんと、この企画とはあんまり関係なしに民謡とかライセンスが自由になったもので制作できないかなという話を雑談でしていて。
SAGARAXX
さんが、先輩でDJKENTARO IWAKIさんというベテランの方が、地元の富山に戻って住んでいるよと。で、富山には色々民謡があるらしいよ、じゃあちょっと行ってみようといことで、去年の9月なんですけど、2人でIWAKIさんに案内してもらいながら、おわら節であったりとか、おわら風の盆の本番ではなかったんですが、実際に体験して、素晴らしいなと思いました。

その時、ちょうどクリエイティブ・コモンズで企画を行う話もあったところだったので、じゃあこれでやってみたらどうだろうというところですね。

(ドミニク)この方がおわら道場を主宰されているのですね?

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(森)そうですね。「越中八尾おわら道場」という演奏団体の方に今回は録音をさせてもらっています。今映ってっているのが、代表の庵さんという方ですね。

今回録音させてもらったおわら道場さんっていう団体は、八尾町の真ん中に聞名寺という町の中心のお寺があるんですけれど、そこで演奏している団体になります。この団体は町の外の人とか、県外の人とかも巻き込んで、ウェルカムな感じで、技術を習得したい人はどんどん来てくださいっていう体制でやっている団体になります。

(ドミニク)考えてみると不思議な流れですよね。「越中おわら節」にCCのスタッフが出会うところからして、オーソドックスではない企画です。後ほど皆さんも曲を聞いていただければ分かると思いますが、とても不思議な仕上がりで聞いたことのない音楽になっていて、改めて面白いなと思っています。

ここから大石さんと高橋さんと、お盆についてお話したいと思うのですが、まずは大石さんはお盆のプロなんですね?(笑)

(大石)お坊さんみたいですね(笑)。ま、盆踊りや祭りを追いかけながら、原稿の執筆、著作を書いたりしているという感じですね。

(ドミニク)旅と祭りの編集プロダクション B.O.Nですよね。

(大石)そのままですよね(笑)。カメラマンの妻とその名義でいろいろやらせていただくこともあります。

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(ドミニク)大石さんは、風の盆はご存知でしたか?

(大石)もちろんです。日本にもいろいろなお祭り・盆踊りがありますけど、その中でもトップクラスで有名ですね、風の盆は。ただ、実は僕まだ行ったことがなくて、ずっと憧れ続けていて。

(ドミニク)定番の盆踊りやお祭りもあれば、いわゆる奇祭や秘祭のような、激レアお盆みたいのもあるんですか?

(大石)奇祭ではないですが、有名なものでいえば、このあいだ徹夜踊りが終わったばかりの郡上踊り(岐阜県)。8月の半ばには徹夜で踊る期間がありまして、その期間は朝4時過ぎまで踊るんです。そこにはもう日本中のですね、踊り狂いの方々が集結するという。

(高橋)マニアが集結してくるんですね。

(大石)すごいですね。熱気が素晴らしい。

(ドミニク)それは盆踊りのマニア?それとも、盆踊りの達人に混ざって普通に騒ぎたい方や、踊りたい人も集まってくるんですか?

(大石)いろんな方がいらっしゃいますけれどね。何年も通い続けて完全にマスターしている方もいますし、ここ最近は郡上踊りの話が広がっているので、今年初めて来ましたという方もかなり多かったと思います。

(ドミニク)そうなると、盆踊りに参加する人口は増えていると思いますか?

(大石)僕の感覚的には増えてると思いますね。

(ドミニク)そこにはもちろん、大石さんの活動も寄与していると思うんですが、何か盆踊りを巡る大きな時代的な流れみたいなものは感じられますか?

(大石)盆踊りといっても、特定の土地で受け継がれてきたものもあれば、戦後になって都市部や郊外でコミュニティーが再編されるなかで新しく作り出された盆踊りもありますよね。さっき言った郡上おどりは前者に分類されるものですが、全国的には後者のほうが数自体は多いですよね。そういう盆踊りでかかっているのは東京音頭や炭坑節、それにアニソン音頭などです。

(ドミニク)おお、アニソン音頭!

(大石)有名なものだとアラレちゃん音頭やドラえもん音頭、オバQ音頭などですね。

(ドミニク)ありますね。アラレちゃん音頭。

(大石)そういった現代的な盆踊りのなかにも盛り上がってきているものもありますね。若い子がすごく増えてきてるものもある。まあ、盆踊りはインスタ映えしますから。

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(ドミニク)SNS映えですね。

(大石)浴衣を皆で着て、友達同士で写真撮る。櫓に提灯がかかっている光景は写真映えするし、盆踊りはやっぱりSNS向きだとは思いますよ。

(高橋)そう考えると、音頭というものが、色々とその時代その時代、様々なコンテクストの中で命脈を保ってますよね。

(大石)そうですね。実際今、何とか音頭って色々な形で出てる音頭って、進化とも言えますけれど、音頭って付いてるだけで、音頭でもなんでもないものもたくさんあるじゃないですか。

(高橋)実は何でもない(笑)

(大石)「音頭」という言葉が付けば音頭ってなってしまうぐらいの、すごくゆるい様式なんですよね、音頭って。だからこそ、音頭は時代の移り変わりにも耐えてきたとも言えると思うんですよ。

(ドミニク)大石さんは、民謡にフォーカスする前はどのような音楽に興味があったんですか?

(大石)もともと子供の頃から盆踊りで踊っていたわけでも、両親が民謡やっていたわけでもないんですよ。もともと旅をするのが好きで、それもアジア各地で現地の音楽に直接触れる旅をやってたんですよ。そのなかでワールドミュージックと言われる様なものであるとか、各地の大衆音楽にすごく惹かれるようになって。
その延長で2007年から2008年にかけて、1年間、中南米とかカリブとか北アフリカの方とか、いろいろまわってたんですよ。

(ドミニク)本当に世界中、満遍なくって感じですね。

(大石)そうですね。それでトリニダード・トバコでカーニバルに行ったり、ブラジルのサルバドールに行ったり、音の現場に触れたんですが、2008年に日本に帰ってきた時、モロッコのエッサウィラでグナワを体験したときのような感動を日本のどこかで体験できないんだろうか?と思ったんですね。それで最初に行ったのが東京・高円寺の阿波踊りでした。

そこでもうめちゃくちゃに感動してしまったんですね。高円寺の阿波踊りの存在はもちろん知っていましたけれど、ちゃんと触れたのはそれが初めて。で、その阿波踊りのビートを浴びた時に、ブラジルのサルヴァドールで体感したバトゥカーダみたいだ!という興奮がすごくあったんですよ。街全体が低音がぶわーっと揺れる感じであるとか。

(ドミニク)ああ、かなりでかい音に包まれる感じ。

(大石)もうすごい音ですね。

(ドミニク)低音も身体にビリビリ響くって感じで。

(大石)ですね。しかもそこいら中で演舞が繰り広げられているので、ある種カオスみたいなことになってる。そういったものって、ライブハウスやクラブで体験してきたものとはちょっと違う感覚だったんですよ。見る側聞く側も飛び越えたような、空間をシャッフルしちゃうおもしろさというか、圧倒的な祝祭感覚みたいなものがあった。「こういう凄いものがあるんだったら、実際にいろいろと現場で体験してみよう」というところから盆踊り・祭りをめぐる旅が始まったという感じでしたね。

(ドミニク)入り方が面白いですよね。日本人なのにブラジルを経由して高円寺を発見するみたいな。

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(大石)ただ、最初は「阿波踊りはブラジルみたいだ」とか、「河内音頭はジャマイカのキングストンみたいだ」とか、いろんなこと考えるわけですけど、まあ実際そんなはずもなくて、それぞれやっぱり違うわけですよね。

(ドミニク)それはそうですよね(笑)。

(大石)高円寺の阿波踊りは昭和30年代から地元の商店街の人たちが中心になって、地域振興の一環として始まったものですね。

(高橋)あ、結構古いんですね、あの高円寺のやつって。

(大石)そうなんです。ただ、本場・徳島のものをお手本として始まりながらも、徳島のリズムそのままではなくて、徐々に高円寺という地域性の中でまた別のものになっていくんですね。

(ドミニク)クレオール化していくっていう。

(大石)そうですね、ローカライズされていくというか。戦後の新しい文化であっても、そうやって土地の風土やそこで育まれてきた身体性だったり、いろんなものと結びついているんですね。そういうものが見えてきて、よりズブズブとはまっていったという感じはあります。

(ドミニク)2008年とおっしゃっていたので、もう10年ぐらい経ちますね。

(大石)そうですね。たった10年という感じではありますけどね。

(ドミニク)様々な国や地域の伝統音楽と共通項も見つけられたと思うのですが、大石さんから見て、どんなところが日本特有で面白いと感じてますか?

(大石)たとえば、東海地方や関東の一部の地域では荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」で踊る盆踊りが80年代後半から根付いていて、ある種伝統文化になってるんですよね。その盆踊りのように、その場で踊ってる方々がその土地の宗教性を意識していなくても、根底に念仏踊りであるとか、盆踊りが本来持っていた信仰的な部分であるとか、そういったものが横たわってることっていっぱいあると思うんですね。郊外でやっている夏のイベントとしての盆踊りも、そういった土地の風土や仏教以前の宗教性と地続きになっている部分がある。そこがおもしろいと思います。

(ドミニク)混ぜちゃうところですか。

(大石)そうですね。ボニーMっていうディスコのグループの「バハマ・ママ」っていう曲があるんですけど、関東を中心にした広い範囲の盆踊りでこの「バハマ・ママ」が踊られているんですよ。

(ドミニク)関東カルチャーなんですね。

(大石)面白いのが、この「バハマ・ママ」、振り付けのなかに炭坑節の振りが入っているんですね。

(ドミニク)炭坑節!

(大石)炭坑節の「掘って掘って~」という振りが「バハマ・ママ」のなかには取り入れられているんですね。あの動きってすごくシンプルで、転用しやすいんですよ。あと、いわゆる盆踊りの「ドドンがドン」っていう太鼓のフレーズがありますけど、あれもどんな曲調のものでもハメやすい。そういうフレーズであるとか体の動き、あと櫓を中心にしたその空間であるとか、そういうほかの何かに転用しやすい要素って日本の祝祭のなかにはたくさんある気がするんですよね。それもまた日本の祭り文化のひとつの特徴かもしれないですね。

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(ドミニク)面白いですね。炭鉱歌って、いわゆる労働歌なんだけども、多分、農作業とは違うビートとリズムに従う形の労働歌。

(大石)それがなぜかディスコと結びついて、当たり前に広がっている。すごく面白い現象だと思いますね。

(宇川)やはり考えるべきポイントは、日本特有の文化という前提であれば、もう一つ、ヤンキーカルチャーとの接続ですよね。

(ドミニク)確かに、よさこいとか。

(宇川)そうそう。どう思いますか?大石さん。

(大石)すべての盆踊り・祭りがヤンキー・カルチャーと結びついてるわけじゃないですけど、先輩から後輩へと受け継がれていくヤンキー・カルチャーの伝統は、地域コミュニティーの伝統的な形成のされ方とも同じですよね。盆踊りや祭りもまた、地域の先輩から後輩へと受け継がれていく部分が多分にあるので、どうしても繋がってきちゃうところはありますよね。ヤンキー的な繋がりのなかで継承されていくという。

(ドミニク)なるほど。コミュニティの構造が相似形になっているんですね。

(大石)そうですね。親和性が高いというか。盆踊りや祭りに限らず、地域の行事全般にいえることだとは思いますけど。

(宇川)あと、さっきアラレちゃん音頭の話が出ていましたが、「国民的ポップアイコンは、音頭に辿りつく」という推論を立証しようとしていたことがあって。それは、きゃりーぱみゅぱみゅの「なんだこれくしょん」というアルバムが出たタイミングで16000字の原稿を書いたのですが。アルバム1曲目の「なんだこれくしょん」は、中田ヤスタカさんのトラックに、きゃりーが熱唱した音頭なんですよ。

(全員)へー。

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(宇川)やはり、あのタイミングで、きゃりーが音頭をリリースしたのは、国民的なポップアイコンとして世の趨勢が迎え入れたタイミングだったからなんですよ。その証明として「なんだこれくしょん」は、オリコンで週間一位を獲得し、その年の日本レコード協会のプラチナディスクに選ばれて、日本レコード大賞の優秀アルバム賞も受賞してる。

(ドミニク)そこがある意味一つのゴールなんですね。

(宇川)そうなのです。例えばアラレちゃんに関わらず、オバケのQ太郎。そして僕ら世代はドラえもん音頭ですよね。例えば古くで言えば三波春夫さんや北島三郎さん。あとビートルズの「イエロー・サブマリン」には、そのオマージュとして金沢明子さんの「イエロー・サブマリン音頭」だってある。「ノリピー音頭」はすでにトリップチューンとして認識されていますが(笑)、当時は国民的アイドルでした。

(高橋)やっぱり、音頭はある程度のステータスに達しないと作れない(笑)。

(宇川)ステータスと言えますよね。

(大石)そうですね。

(ドミニク)音頭になるのが最高位なわけですね(笑)

(宇川)そうです、日本においては王座です。音頭は死者を供養する行事である、盆踊りのための音楽で独唱者っていうのはソリストで、言い換えれば司祭な訳ですね。だから、司祭になれる貫禄を身につけたキャラクターと言ったら、やっぱり既にある意味国民的アイコンである筈。

(ドミニク)なるほど〜。

(宇川)それで、現場の合いの手として、老若男女、ヤクザも商店街のおじさんもサラリーマンも幼児も参加する、シャッフルしたコミュニティがある。そこで重要なのが、「ハレとケ」という日本の伝統的世界観で「ハレ」の日を共有するための音楽が、音頭だと捉えられます。そもそも祭り自体が感謝と祈りの装置という概念で捉えるならば、「ケ」の日常を耐え忍んで、ようやく弾ける為の非日常の空間。「あげてこー」ってかけ声が聞こえそうですが(笑)もうほんとクラブカルチャーというか、パリピの精神ですよね(笑)。

(大石)そうですね。

(宇川)その中で身も心も委ねられる司祭として、それを先導する立場になれるのは、やっぱり国民的ポップアイコン。きゃりーぱみゅぱみゅがその地位に立てたということの証明として、「なんだこれくしょん」では1曲目が音頭だったと、僕は捉えたわけなんです。

(ドミニク)それは、その16000字の論文の主旨なわけですね。

(宇川)はい、そうです。ナタリーで読めるので、是非読んでください。

(ドミニク)それは素晴らしい論文ですね(笑)。

(高橋)宇川さんがおっしゃっていた、ヤンキーカルチャーやヤンキー的なマインドみたいなことで言うと、神楽ってあるじゃないですか。神に捧げる、お芝居的な踊りなんですが。いろんな地方に神楽ってありますよね。ある地方の神楽の公演を東京で見たことがあって。若い人たちが、ちゃんと継承してるんですよ。

それは強制されて嫌々やっているわけではなくて、若い人たちが、昔のままの状態のものを、多少アレンジは入りますが、本当に率先して継承してるんですよね。その演目なんかはそのスサノオが大蛇を退治するような展開の物語なんです。

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(ドミニク)ヤマタノオロチですね。

(高橋)これが単純に派手でかっこいいんですよ。

(ドミニク)なるほど。モチーフとしてかっこいい。

(高橋)物語自体がとても面白いし、いろんな衣装を身に付けたり。だから単純に若い人たちに自分もやりたいって思わせているんじゃないかと思います。

(大石)福岡の筑豊のほうにすごく渋い盆踊りがあるんですけど、太鼓と歌だけでやる古風な盆踊りで、しかもやってるのは全員若い人たちばかりなんですね。その団体の代表の方、30代前半ぐらいの方に取材したことがあって。「どうして盆踊りを始めたんですか?」と聞いたら、「先輩ですごくかっこいい太鼓打ちの人がいた」と言うんですよ。で、僕も叩いてみたいと思って始めた、と。

高橋さんがおっしゃった神楽のように単純に格好よくて継承されていく部分もあるだろうし、「あの人の太鼓の叩き方がかっこいい」「あの人の神輿の担ぎ方がかっこいい」みたいに素朴なところで繋がってく線っていうのもあるんじゃないかなと思いますね。

(ドミニク)それは、とても良い話ですね。去年、番組の時に原雅明さんとお話していて、LAのミュージシャンで2030代なんですが、やたらめったら50年代60年代のジャズに詳しいと。

でも、それは全部原盤で聞いてたのではなくて、全部YouTubeで見ていて(笑)。名プレイヤー達の演奏を何回も何回も見てるうちに、自分でもやるようになったようです。だから今で言えばInstagramInstagramストーリーがきっかけで、太鼓打つようになった人などが出てくるかもしれないわけですよね。

(高橋)そうですね。意外なところに、その継承の導線っていうのが案外あるもんだなっていう。

後編に続きます!!!!!

文責:森靖弘・吉田理穂(Creative Commons Japan)