【CCPLv3.0】著作権管理団体を通じての報酬請求権に関する議論

CCライセンスv3.0最後のトピックは、著作権管理団体を通じての報酬請求権とCCライセンスとの関係です。著作権管理団体は、とくに音楽の世界では、権利処理に欠かせない重要な存在です。彼らは、多くの場合、二つの顔を持っています。一つは、純粋なビジネス上のライセンスを著作権者にかわって取りまとめ、利用者にライセンスを与え、その対価を徴収して分配する役割。もうひとつは、法律上で定められている強制許諾制度や補償金制度により発生する対価(たとえば、放送に関するレコードの二次使用料や、ブランクCDなどに課せられている私的複製の補償金など)を受領して分配する役割です。

CCライセンスと、著作権管理団体を通じた権利処理というのは、類似点も沢山あります。両方とも、権利処理のコストを下げて、著作物の利用を促進する、という側面があるからです。しかし、時折、著作権管理団体とCCライセンスを利用したい著作権者との間では、緊張関係が生じることがあります。この緊張関係は、とくにヨーロッパ諸国で、少し前から注目を集めてきました。その理由は大きく二つ。

ひとつは、多くの著作権管理団体では、著作権者が自分の作品を全て管理してもらうか、全く管理を依頼しないか、のどちらかしか選択肢を与えていないことです。したがって、著作権者は、ひとつの作品にだけ、試しにCCライセンスを付けてみる、ということができません。または、音楽で食べて生きたいけれど、いくつかの曲は純粋に商業的な利用をして、いくつかの曲だけをCCライセンスで公開する、といった使い分けもできません。CCライセンスをとるか、著作権管理団体による商業的利用をとるか、の二者択一を迫られてしまうのです。ヨーロッパのCCは、この点を見直してもらえるよう、何度か著作権管理団体と話し合いをしているそうですが、なかなか簡単には解決しないようです。

もうひとつの問題は、法律で定められている報酬権(法定請求権)が著作権管理団体を通じてしか分配されない、という方式を取っている国が沢山あることです。そして、これらの権利は、国によっては法律上、放棄できないようになっている場合も有ります。

このような状況の中、著作権管理団体を通じて著作権者が利用者に請求できる(または法律を通じて受領できる)請求権のCCライセンスの中での処理の仕方は、国によってバラバラになってしまいました。

例えば、CCライセンスの始まった米国では、著作権管理団体はあまり強い力を持った存在ではありません。彼らの著作権管理は、基本的に非独占的です。つまり、著作権管理団体に自分の作品の管理をお願いしながら、同時に、自分でも好きなように作品をライセンスしたりできます。したがって、CCライセンスをつけるかどうか、というときに、著作権管理団体との関係や報酬請求権の処理については、あまり悩む必要なく、決定することができます。その結果、米国ライセンス2.0では、著作権管理団体を通じて請求できる報酬請求権については、商業利用もCCライセンスで許諾している場合(非営利アイコンのついていないライセンスを採用している場合)には、著作権管理団体を通じた報酬請求権を放棄するものとし、非営利ライセンスを採用している場合には、商業利用については別途ライセンスをする意思表示として、著作権管理団体を通じた報酬請求権を留保するものとしていました。

しかし、ドイツや日本の様に、現状では何も言及していないライセンスもあれば、フランスのように強制許諾に関する取り扱いのみを明記しているものなどもありました。

そこで、できるだけ著作権管理団体を通じて請求できる報酬請求権についての規定を統一しようというのがv3.0の論点のひとつとなりました。

具体的に現在提案されている規定は、以下のとおりです。

(1)法定の報酬請求権が法律上放棄できない国においては、許諾者はその請求権を留保する。
(2)法的の報酬請求権が法律上放棄できる国においては、許諾者は、非商業ライセンスをつけている場合にはその権利を留保し、商業利用も可能なライセンスをつけている場合にはその権利を放棄する。
(3)任意のライセンスの請求権については、許諾者は、非商業ライセンスをつけている場合にはその権利を留保し、商業利用も可能なライセンスをつけている場合にはその権利を放棄する。

文責:野口

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