今日[訳注:原文日付は6月4日]、2つのクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを取り下げさせることになった。 -発展途上国ライセンスと、三種類あるサンプリング・ライセンスの内1種類である。これらのライセンスを取り下げることになった理由は、実際的な理由と原則に基づく理由の双方にある。
実際的な理由は、単純に関心が薄いからだ。クリエイティブ・コモンズは当初から、系列ライセンス群に可能な限りのシンプルさを保たせることを約束してきた。実際の需要がどの程度物事をシンプルにできたかの指標の鍵となってきた。私たちの概算では、既存ライセンス群の内、0.01%だけが発展途上国ライセンスであった。また、0.01%だけがサンプリング・ライセンスの1バージョンであった。これらの数値は、それらのライセンスに需要がないことを示している。
原則に基づく理由とは、それぞれのライセンスで異なったものだ。発展途上国ライセンスは、成長しつつある「オープン・アクセス・パブリッシング」運動とは両立しがたい。同ライセンスが創作物を発展途上国において自由にする間、その他のどこであってもその著作物は自由ではない。これは、発展途上国ライセンスがオープン・アクセス運動の最低限の基準を満たしていないことを意味している。オープン・アクセス運動は科学や知識を拡散させるとても重要な運動なので、このライセンスのスタンドアローン版の推進が正しいとはもはや考えていない。今月中に、私たちは発展途上国ライセンスの条項を5つの他のCCライセンスに追加する事について議論を始める。また、ユーザーにそれらの条項をライセンスに盛り込むことができるオプションを与えるかについて議論も行う(例えば、先進国ではBY-NCライセンスを選択するが、発展途上国のクリエーター達にはBYライセンスで提供するというものだ)。上で挙げたオプションを一般的なCCライセンスに加えたからといって、ここでお話してきたような原則とぶつからない。このアイデアはフィードバックに基づいている。私たちがアイデアを実施するかどうかを今後決定する。
サンプリング・ライセンスにも似たような懸案がある。今日の時点で、私たちは3バージョンのサンプリング・ライセンスを提供してきた。それらのバージョンの内2つは、ライセンス下にある著作物の非商用に限った共有を許可している(SamplingPlusとNonCommercial SamplingPlusだ)。もう1つ(the Sampling License)はライセンス下にある著作物のリミックスのみを許可しており、共有する自由は認めていない。これら[訳注=リミックスを許可するが、著作物の共有を許可していないSampling Licenseの条項]は、ある強力な運動が、中核ライセンスに著作物を非商用で共有する自由を少なくとも認めているクリエイティブ・コモンズを納得させたものだ。
クリエイティブ・コモンズはこの運動を支援している。私たちは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに、少なくとも最低限のこの[共有する]自由も保証しないライセンスを採用することはない ―少なくとも十分な公衆の議論なしには行わない。私たちはフィードバックに感謝しているし、それらを理解している人々の協力でサンプリング・ライセンスを構築した。両方とも私たちがここで得たものだ。
この変化は既存のライセンス下にあるいかなる著作物にも影響しない。これらのライセンスとのリンクや、全てのクリエイティブ・コモンズ・ライセンスもまた引き続き有効である。今日行った唯一の変化といえば、それらのライセンスを私たちのライセンスページではもう提供しないということだ。
ライセンスの取り下げについて詳しく知りたい場合は、取り下げたライセンスのページへ。
この記事はCCの帰属3.0ライセンスのもとで発行された。
オリジナルポスト:Retiring standalone DevNations and one Sampling license by Lawrence Lessig
翻訳:松本洋輔