2006年10月は南アフリカ共和国にとって非常に重要な月だった。アフリカの先端にあるこの国において、世界的に有名なDesmond Tutu大司教の75歳の誕生日ほど重要なイベントはないからだ。
多くの人々に知られる彼は、南アフリカの自由化闘争の中心的人物であり、また世界的に尊敬されている政治・宗教的指導者である。また、彼はその功績によってノーベル平和賞を受賞している活動家でもある。
そして、彼の誕生にちなんで10月に非常に興味深いプロジェクトがはじまった。いまの時代において、すべての活動家はネットで結ばれている。この事実こそ、10月初頭に立ち上げられたこの新しいプロジェクトのおもしろい点だ。
「Desmond Tutu Digital Archive」プロジェクトとは、大司教の書いた文章や個人的な記録、彼の録音テープなどすべてをアーカイブ化するという計画である。将来的には、学生やジャーナリスト、神学者などの人々が自由に利用・改変できるようにするのが目標だという。さらに、このインタラクティブなアーカイブは、南アフリカだけでなく世界中のさまざまな文化・年齢・社会にいるあらゆる人々に対して開放される予定である。
このプロジェクトはTutuが卒業したイギリスのKing’s College LondonのCentre for Computing In The Humanitiesと、南アフリカのケープタウンにあるThe University of the Western Cape、ヨハネスバーグにあるUniversity of the Witwatersrandの三校が共同で行うという。
Tutuアーカイブは、南アフリカのさまざまな公文書館・図書館などのアーカイブをもとにしてウェブ上に構築され、20万ページ超の文献と100時間を超す音声などのさまざまなメディアを収蔵するように開発される予定だ。これらのコンテンツは現在デジタル化されているところだ。また、アーカイブに収蔵されないほかのコンテンツに関してもカタログ化し、アーカイブに入っているいないに関わらず、研究者たちが関連する世界中のあらゆる資料の詳細な目録を調べることができるようにするという。
またこのプロジェクトは、ワークショップやさまざまな形式の訓練を通じて、デジタルな資料を扱うスキルを身につけたいと願う公文書館職員や図書館司書に対してのトレーニングにもなる予定だ。
プロジェクト計画案では、アーカイブの技術的アーキテクチャについては「オープンソースのソフトウェアに使われているもっとも堅固な国際標準を基礎とする。このプロジェクトにおいて開発されるいかなるツールも、オープンソース・ライセンスのもとに公開される予定だ。」とされている。その一方で、クリエイティブ・コモンズとしてはもっとも気になるアーカイブ・コンテンツのライセンス方法については、今のところ特に言及されていない。
しかし、今後アーカイブの知的アーキテクチャの構築とそれに対するアクセスの管理をどのように行っていくか検討するために、南アフリカの公文書館職員や研究者からなる編集・諮問委員会が設置される予定である。そうすると、自然にCCライセンスは非常に適切な手法となる可能性が高くなるだろう。もしかすると、Tutuアーカイブは地域固有の歴史や文化などの知識に対して、CCライセンスが実際に用いられる初めてのケースになるかもしれない。
翻訳:Ono
オリジナルポスト:The Archbishop, Archived(2006/10/23)