作成者: commonsjp

クリエイティブリユースの活動を紹介する最新著作がCCライセンスを採用

大月ヒロ子、中台澄之、田中浩也、山崎亮、伏見唯 著の『クリエイティブリユース 廃材と循環するモノ・コト・ヒト』millegraph2013)のテキストと写真にCCライセンスが利用されています。

クリエイティブリユースとは、廃材など消費社会において見捨てられている「モノ」を観察し、想像力と創造力によって再び循環させることによって、地域ビジネスなどの「コト」を起こし、そこに関わる「ヒト」同士のコミュニケーションを活発にするものです。本書では、まず、世界各国のクリエイティブリユースの多種多様な活動が写真付きで紹介されています。また、東京都美術館と東京藝術大学が連携するアート・コミュニティ形成事業「とびらプロジェクト」の経過と、このプロジェクトに先行して関連する活動されている中台氏、田中氏、山崎氏のレクチャーが収録されています。さらに、日本初のクリエイティブリユースの拠点「IDEA R LAB」の誕生のプロセスや今後の活動内容が紹介されています。

本書にCCライセンス(表示・非営利・改変禁止)が活用されることで、このようなクリエイティブリユースの考え方が多くの人に共有され、「モノ・コト・ヒト」の循環が生じることになるのではないでしょうか! 今後のさらなる発展に期待です。

漫画『聖☆おにいさん』がCCライセンスを採用

2013年4月、月刊「モーニング・ツー」誌(講談社)に連載中の漫画『聖☆おにいさん』(作:中村光)のアニメ映画公開にあたって、第1話「ブッダの休日」4ページ分の原稿データが、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示-改変禁止2.1(CC BY-ND 2.1 JP)のもと提供されました。

『聖☆おにいさん』は、“世紀末”という大仕事を終えたブッダとイエスが、下界のバカンスを満喫しようと、東京・立川の安アパートをシェアして暮らす日常を描いたコメディ漫画。累計1000万部を超える大ヒット作品ながら、アニメ映画公開にあたって、さらに多くの読者に原作を知ってもらいたいという編集部と原作者の意向で、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの採用に至ったそうです。また、本作が「口コミ」で広まりやすい作品であったため、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの採用によって、ブログに転載されるといったその後の展開も期待しやすいなど、作品との親和性の高さも決め手になったといいます。
採用されたライセンス(CC BY-ND 2.1 JP)の意味は、「原著作者のクレジット表示」「改変の禁止」の条件を満たせば、第1話の冒頭4ページを自由に転載・印刷できるというもの。「改変の禁止」はユーザーによる原作のリミックス可能性を禁じるものであるため、実際にはそれほど多く活用されるものではありません。しかし、『聖☆おにいさん』で、このライセンスが採用されたのには作品固有の理由がありました。つまり、実在のイエスと仏陀という元のキャラクターを改変して、新たにイエスとブッダというキャラクターが設定されているところにこそ、作品の本質がある。そもそも原作自体が、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスで「改変可能」ライセンスを採用したかのような設定になっている、というわけです。そのため、あくまで作品の広がりは期待しながらも、「改変禁止」ライセンスの選択によって、その本質は骨抜きにされないように、という配慮がなされたわけです。

創作における模倣性、オリジナリティを考える上でも、あるいは、キャラクターの広がりとクリエイティブ・コモンズ・ライセンスとの親和性の高さを考える上でも興味深い事例と言えるでしょう。今後、ストーリーメインのフィクションにおいても、採用事例が現れるのかどうか。どのような漫画作品、小説作品においてクリエイティブ・コモンズ・ライセンスが採用されるのか、さらなる展開が楽しみです。

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編集者田渕浩司さんへのインタヴューはこちら

内閣官房TPP政府対策本部にTPP交渉に関する意見を提出しました

クリエイティブ・コモンズ・ジャパンは、本日、内閣官房TPP政府対策本部の行っている意見募集に対して、以下のとおり意見を提出しましたので、ご報告いたします。

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クリエイティブ・コモンズ・ジャパンは、ThinkTPPIPの一構成メンバーとしてすでに意見を提出しているところであるが(http://thinktppip.jp/?p=196)、その内容に重複しない部分について、以下、知的財産についての意見を提出する。

著作権保護期間の延長については、2005年から2009年まで文化審議会著作権分科会で検討され、賛成反対双方の意見の隔たりが大きいとして見送られたものである。米国や欧州などがすでに延長しているのは事実であるが、実際にこれらの延長した国において、著作権保護期間の延長によって創作が増えた事実は認められておらず、逆に、孤児著作物の増加等の問題が表面化している。現実に、欧州は2012年に孤児著作物のためのディレクティブを採用するにいたっており、米国でも2013年3月に著作権局長が未登録著作物(つまり権利者が不明となりやすい著作物)については保護期間を死後50年に短縮すべきであるとの提言を行うなどの動きが認められる。日本においても、著作権保護期間の延長は、全体として文化の発展を促すよりは、著作物の流通を阻害する負の要因を増やす側面が強いと考えられるため、反対する。

また、著作権の法定賠償金の導入や特許権の3倍賠償導入など、知的財産権侵害に対する損害賠償額の高額化についての提案もなされていると報道されているが、実損害を超える高額の損害賠償金が認められる法的制度を導入することは、従来の民法における不法行為の理念と整合性がとれないばかりか、パテント・トロールやコピーライト・トロールなどの、損害賠償金の獲得を目当てに知的財産を買い集めて権利行使をビジネス化する動きを招き、知的財産制度全体の不健全化や事業会社・クリエイターへの不要な経済負担の増加を招く危険性が高いため、反対する。現実に、米国の特許訴訟の実に6割がパテント・トロールによるものと報道されており、これらのパテント・トロールによる知的財産訴訟の活発化が、米国で活動する多くの事業会社に不要な訴訟コストを強い、経済に負の効果を与えると報告されていることはご案内のとおりである。また、損害賠償額の高額化を行ったドイツでも、その法律改正後にパテント・トロールが急増した事実がある。投資(つまりは知的財産購入コストと訴訟提起コスト)に比べてリターン(損害賠償額やそれを前提とする和解金)が大きければ、その制度を利用してビジネスを行う主体が登場することは資本経済の仕組みからみて不可避であるから、このように、知的財産訴訟が投資目的として成立するような法制度を導入することそのものを避けるべきである。一般に、損害賠償額の高額化は発明や創作のインセンティヴを増やし、ひいては発明や著作物の創作の活発化を促す、という単純な理解のもとに損害賠償額の高額化が議論される傾向があるが、日本政府におかれては、損害賠償額の高額化が事業会社やクリエイターにもたらす負の側面についても十分に考慮していただくことを強く要望する。

著作権侵害の非親告罪化については、現政権が閣議決定した知的財産ビジョン(平成25年6月7日)においても、クールジャパンに代表されるコンテンツを中心としたソフトパワーの強化が謳われているが、マンガ・アニメなどのクールジャパンは、広く黙認されている二次創作活動や同人活動等にその裾野を支えられ、全体としてエコシステムを形成しているのはご案内のとおりである。著作権侵害の非親告罪化により、権利者が望まない刑事事件化が行われるようになれば、これらの二次創作活動や同人活動が萎縮し、クールジャパンを支えるクリエイター層に大きなダメージを与えることは不可避である。非親告罪化は、審議会で2007年に検討され、著作権者等が黙認している場合の著作権者等の利益との関係からも慎重に考えるべき、として見送られているとおり、日本の現在の文化を支える上では不要であるどころか、有害である可能性が高いため、反対する。

以上

(報告)シンポジウム“日本はTPPをどう交渉すべきか 〜「死後70年」「非親告罪化」は文化を豊かに、経済を強靭にするのか?”が開催されました

TPPの知的財産権協議の透明化を考えるフォーラムの公開セミナー“日本はTPPをどう交渉すべきか 〜「死後70年」「非親告罪化」は文化を豊かに、経済を強靭にするのか?”が、6月29日、開かれた。

司会のメディアアクティビスト・津田大介氏のほか、赤松健氏(漫画家、Jコミ代表取締役)、太下義之氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員/芸術・文化政策センター長)、富田倫生氏(青空文庫呼びかけ人)、野口祐子氏(弁護士、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)、八田真行氏(駿河台大学経済経営学部専任講師)、福井健策氏(弁護士、日本大学芸術学部客員教授)が登壇。会場は、ほぼ満員となり、ニコニコ動画でも生放送された。

著作権保護延長問題では、日本の現行の「死後50年」から、米国の「死後70年」への延長について、意見が交わされた。福井氏によると、世界最大のコンテンツ輸出国であるアメリカは、2011年のデータで9.6兆円の著作権使用料を稼ぎ出している。対して、日本は年間5800億円の赤字を出している。この違いは、日本が米国のように古いコンテンツ(ミッキーマウスなど)で著作権使用料の収入を得られていないためで、保護延長を繰り返せば、日本の赤字は固定化されるという。

八田氏は、保護期間が延長された場合、日本にとって経済的利益が得られる論拠が少ないことを、田中辰雄・林紘一郎両氏の「著作権保護期間」をはじめとする先行研究をあげながら指摘。また、MIAU(インターネットユーザー協会)も参加している、保護期間延長を含む、TPPによるより拘束的な著作権法への改正に反対するキャンペーンOur Fair Dealを紹介した。

富田氏は、保護期間が20年延長されると、パブリック・ドメイン入りにする日本の作家の作品が激減することに強い危機感を示した。保護期間が切れた作家の作品を青空文庫で公開することにより、タブレットや、視覚障害者のための音声変換機能等を通じて多くの人が作品にアクセスする機会を得られるとし、延長は文化を利用する機会を損なうと指摘した。

野口氏は、データを参照しながら議論をする必要性について述べた。ベルヌ条約以前の米国で実施されていた保護期間56年間の登録制の著作権制度(当初登録で28年、その後更新登録することにより28年延長されて合計56年になる)について紹介し、この制度が運用されてから50年経過した段階での登録更新率の低さ(最高でも14.7%)を指摘。ごく一部の大ヒット作品等を除き、大半の作品が公開から28年の保護期間で満足しており長期の著作権保護を必要としていないとした。

太下氏は、著作権者が不明となっており、利活用できないでいる孤児作品(Orphan Works)が、保護期間の延長により激増する懸念があると指摘。このような孤児作品を死蔵させないため、孤児作品を自由に公開・活用できるOrphan Works Museumの設立を提案した。実際、国会図書館の所蔵作品の7割が著作権者不明であるという。

今年3月には、米のマリア・パランテ著作権局長が未登録作品の著作権保護期間を著者の死後50年に短縮する案(米国は1998年に著作権保護期間を死後50年から死後70年に延長したが、これを一部元に戻す提案)を出している。これは、コンテンツのデジタル化その他の利用をする上で孤児作品の権利処理に米国も頭を悩ませているからと考えられる。福井氏は、日本としては交渉の際に、孤児作品について死後50年を超える独占権を与えない、TPP加盟国で孤児作品として認定された作品についてはTPP域内で相互承認して作品を自由に利用可能にする、などの提案をしてみてはどうかという。

非親告罪化については、コミケ等での二次創作を阻害する可能性が議論された。赤松氏は、日本のコンテンツを面白く保ち、クール・ジャパンを推進するためにも、アマチュアの二次創作のすそ野を広くしておくことが重要だとした。その上で、二次創作を阻害しないため、コミケ開催当日のみ二次創作を黙認する意思表示システムマーク案を提案した。

韓国は米韓FTAの際、フェアユースを交渉の過程で導入することに成功しているが、これは国民の声が盛り上がった結果だったという。福井氏は、今回の日本のTPP知財交渉でも、国民の関心が高まれば政府側としても積極的に交渉しやすいはずだとした。内閣官房は7月17日までメールでの意見の受け付けもしている。詳しくはhttp://www.cas.go.jp/jp/tpp/tppinfo.htmlを参照のうえ、多くの意見を送ってくださるよう呼びかけが行われた。

書籍紹介:『オープン化する創造の時代 著作権を拡張するクリエイティブ・コモンズの方法論』

コモンスフィア理事であるドミニク・チェンによる電子書籍『オープン化する創造の時代 著作権を拡張するクリエイティブ・コモンズの方法論』(カドカワ・ミニッツブック、定価230円)2013年6月27日に発売されました。
およそ30分で読めるボリュームで、CCライセンスに限らずオープンライセンス全般の社会背景について初学者にも読みやすく書いています。Amazon Kindleストア以外でも、様々な電子書籍ストアでお求め頂けます。

楽天KOBO
・紀伊国屋書店Kinoppy
・ソニーReader Store
・KDDI ブックパス
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以下は書籍説明文です。

「ウィキペディアやYouTube、ボーカロイドの『初音ミク』やマンガ『ブラックジャックによろしく』など、その範囲や方法は違えども、作品の著作権を保持したまま、自由な二次創作/リミックスを広く一般に開放する作者やクリエイターが増えてきている。そこには従来の著作権ビジネスとは異なる、ネット時代の新たな創作文化の台頭が関係している。自由な創作と「著作権」との間にあるジレンマを、前向きに解決する方法として注目されるオープン・ライセンスという考え方。本書には、その代表例「クリエイティブ・コモンズ」の運動に参加する著者による、活動内容の紹介とともに、「新しい自由な文化の可能性についてオープンな場でみんなで考えたい」という読者へのメッセージが込められている。」

東京藝術大学建築科がCCライセンスを採用

リニューアルした東京藝術大学美術学部建築科のウェブサイトの写真やテキスト等のコンテンツに、CCライセンス(CC BY-NC-ND)が採用されました。

構築的かつシンプルなデザインは、Semitransparent Designによるもの。

OER(オープン・エデュケーショナル・リソース)やオープンガバメント、オープンデータの動きは、日本ではまだまだ広まっていませんが、この試みがその一助となることを期待しています。

2013年3月27日、文化庁シンポジウムでCCライセンスについて語りました

2013年3月27日に開催された文化庁の第8回コンテンツ流通促進シンポジウム『著作物の公開利用ルールの未来』において、文化庁が2007年から検討を開始していた、文化庁独自の意思表示システム(ライセンスシステム)であるCLIPシステムの公開を中止し、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)の普及を支援することを表明しました。これは、2011年度に行われた「意思表示システムの在り方に関する調査研究」の結果を受けたものです。その理由としては、調査研究の報告書に記載されているとおり、(1)検討を始めた2007年頃と比較して、2012年時点で世界中で爆発的にCCライセンスの普及が進んだこと、(2)CLIPシステムの主な利用者として想定していた教育機関や公的機関においてもCCライセンスの採用が世界的に進んでいること、(3)完全ではないものの代替可能な優れた仕組みが普及したことで、必ずしも行政機関が自ら意思表示システムを構築することが不可欠とはいえない状況になったこと、などが挙げられています。

文化庁著作権課の山中弘美 著作物流通推進室長は、シンポジウム上で、「今後は、CCライセンスなどの民間の意思表示システム、パブリックライセンスの仕組みとの連携・協力を視野に入れ、引き続き検討を行っていく。」と述べ、今後は、政府や地方自治体などの公的セクターでのCCライセンスの採用や、民間における普及推進などの形で支援するとコメントしてくださいました。

このシンポジウムでは、CCライセンスの基本的な考え方から、世界における最先端事例まで、CCの現在を報告してほしい、とのことで、40分ほどいただいて、CCJPの常務理事の野口祐子が活動報告をさせていただきました。
そのときの発表資料はこちらです(Creative Commons Now 20130327(PDF), Creative Commons Now PPT 20130327(PPT))。

当日のシンポジウムの様子は、ニコニコ生放送の文部科学省チャンネルシンポジウムページでご覧になれます。後日YouTubeにもUPされるとのことでした。

今からちょうど10年少し前にCCの活動が米国で始まり、日本でも多くのボランティアの方々や寄付を下さった多くの方々の熱意や善意に支えられて、CCJPは地道に活動をしてきましたが、こんな風に文化庁が後押ししてくださるときが来るとは思っていませんでした。最初の頃から関与してきた私としては、とても感慨深く思います。これはまさに、この日までいろんな形で活動を支えてくださったCCJPの仲間や支援者の皆様のおかげです。心から、本当に、どうもありがとうございます!

今年は、まさに、日本政府の持っている情報やデータの公開にCCライセンスが採用されるか?という局面でもCCライセンスが議論される年になると思います。このシンポジウムでの文化庁の意見表明が、日本政府のCCライセンスやCC0という著作権放棄宣言の採用の動きを後押ししてくれるといいなぁと思っています。

これからも、CCJPはがんばって活動を続けていきます。引き続き、応援をよろしくお願いいたします!

(文責:野口)

Open DATA METIサイトでCCライセンスを採用

政府の持っている情報(データや著作物など、ありとあらゆる情報)を広く公開して国民に活用してもらい、経済活性化につなげていこう、また、同時に行政の透明化を図ろう、という理念から、政府情報をオープン化して、インターネット上で二次利用可能な形で公開する動きが世界中で始まっています。欧米では特に、税金を払って作られた政府のデータは、もともとは国民のものではないか?そうだとすれば、国民に還元して当然ではないか?という意識がとても高いため、ビックデータ時代の到来を背景にしてこのような動きが高まってきたのは、とても自然なことかもしれません。

こうした取り組みは、オープンガバメント、オープンデータなどと呼ばれることが多く、欧米をはじめ世界中に例があります。たとえば、2009年12月に米国のオバマ大統領が就任後の目玉政策のひとつとしてOpen Government Initiative を発表し、2010年3月には英国のキャメロン首相が政府機関宛書簡で推進姿勢を打ち出しました。その他、フランス、オーストラリア、ニュージーランドなど、多くの国でオープン・ガバメントの動きがあり、オープンガバメントを推進する国際的イニシアチブであるオープン・ガバメント・パートナーシップ(Open Government Partnership)の参加国や、オープンデータの提供ウェブサイトのリストなどを見るとその広がりが伺えます。こうした世界的な潮流の中で、CCライセンスの政府や公的機関による利用例についても30ヶ国を超える国での利用が報告されています。

日本でも、2012年7月に「電子行政オープンデータ戦略」がIT戦略本部で打ち出され、現在その具体的な内容について電子行政オープンデータ実務者会議で議論が行われています。この動きと並行して、いくつかの省の中でも具体的な取り組みが検討されています。

と、前置きが長くなってしまいましたが、今回ご紹介するのは、この日本におけるオープン・ガバメントの動きの中で、経済産業省の取り組みです。経済産業省の取り組みは、主に公共データWGで議論されていますが(筆者も委員の一人です)、まずは、モデルケースとしていくつかのデータを公表してみよう、ということになり、下記の経済産業省のオープンデータサイト(Open DATA METI, http://datameti.go.jp/)で統計データと白書データが公開されました。

統計データには、CC表示ライセンスが、白書データにはCC表示-改変禁止ライセンスがつけられています。CCライセンスは、上記でもご紹介したとおり、すでに世界中で広く使われているライセンスですので、今後の世界規模でのビック・データの動きも視野にいれて考えた場合、日本でもCCライセンスを採用してくださったことはとてもよい動きだと思います。

なお、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは著作権に関するライセンスですので、著作物ではないもの(統計データなどの数値がその代表です)についてまで及ぶものではありません。(Open DATA METIサイトの利用規約も、「当サイトの内容(掲載されている情報を含む。)に存在する著作物の著作権は注があるものを除いて、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示 2.1(http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/)のもとでライセンスされています。」と記載されていますので、著作物ではないものには適用されないということだと思います。)

白書については、改変禁止がついている点は今後の課題だと考えています。この点は、公共データWGの第4回会合でも取り上げて議論しましたが、経済産業省としては、不正確な引用などで誤解を招く利用をされた上で経済産業省の名前を使われることに対して警戒していることが、改変禁止を利用条件とした主な理由であるとのことでした。公共データWGでは、私も含め多くの委員から、改変を許容したほうが翻訳や要約など正しい二次利用が促進されるため望ましい、不適切な利用への対策は別の方法で検討すべきだとの意見が出されました。私としては、この点は、基本的には第三者が検証し指摘することで訂正されていくことで対応すべき問題だと考えています。

2013年はオープンガバメントにとって大切な年になると思います。このブログでも出来るだけ発信しますが、皆様に是非興味を持っていただければ嬉しいです。

(文責:野口)

国立情報学研究所が成果物をCCライセンスで公開

国立情報学研究所が開発している情報教育教材「ヒカリ&つばさの3択教室シリーズ」のウェブサイトが、このたびリニューアルされました。

「ヒカリ&つばさの3択教室シリーズ」は、ウェブブラウザ上で動作する、インタラクティブな学習コンテンツです。現在公開されている2種類のコンテンツのうち、「ヒカリ&つばさの情報サバイバル3択教室」がCCライセンス(表示—非営利—改変禁止)の条件に基づいて利用可能となっています。

大学生の会話によって展開するストーリーを3択形式で進めていくことで、情報セキュリティに関する知識が自然に身につくように設計されており、すでに各種教育機関等における情報教育教材としての活用が進んでいます。ぜひ一度、ご覧ください。

第5回CCサロン:「建築・都市におけるソーシャルデザインの可能性」開催のお知らせ

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クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCJP)による、オープンカルチャーに関する新しい対話の場/学びの場である「CCサロン」第5回「建築・都市におけるソーシャルデザインの可能性」を開催いたします。

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0021世紀に入り、日本では、人口減少・高齢化と経済停滞による財政上の問題を前に、公共建築や都市計画の設計のあり方が変容を余儀なくされている。2040年には空き家率が40%に達することや、現在の建築物の床面積を3,4割に圧縮しないと維持することができなくなる等の研究・報告がなされるなかで、これまで構築されてきた既存の公共建築や社会的インフラ等のリソースをどう有効再利用または縮小していくか?これらは公共建築に特有の問題なのか?それとも商業施設や戸建ての住宅にも適用可能なのか?
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00一方で、インターネット/デジタル技術の発達により、建築や都市計画の設計における技術的・データベース的なインフラは整いつつあり、それをベースにして、よりプロセスをオープンに透明化・可視化する集団的設計のあり方も模索されるようになった。そして、それは政府や教育機関の情報を市民に対して公開・透明化するという、オープンガバメント・オープンデータという世界的な潮流とも整合しているように思われる。そのような流れのなかで、建築のデザインとクライアント・住民の要求のバランスをいかに図っていくのか?
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00今回のCCサロンでは、日本社会の縮小をポジティブに捉え直す「列島改造論2.0」を構想し、「公共建築から考えるソーシャルデザイン・鶴ヶ島プロジェクト」なども行っている建築家の藤村龍至氏、そして、オープンガバメント・データの専門家であり、『情報社会と共同規制』などの著書でも知られる生貝直人をゲストに、集合知的な建築、都市計画、そして(ソーシャル)デザイン等の可能性をオープンガバメント、オープンデータといったオープン化の流れの中で多角的に議論してみたい。
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【開催概要】

日時:2013年2月3日(日)16:00~18:00

場所:loftwork Lab

東京都渋谷区道玄坂1-22-7 道玄坂ピア10F

地図: http://www.loftwork.jp/profile/access.html

ゲスト:藤村龍至(建築家)、生貝直人(博士(社会情報学)、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教)

モデレーター:ドミニク・チェン(CCJP理事)

【入場料・申込方法】

入場料:1,500円(including 1 drink)

申込み:こちらに入力お願いいたします。

【プロフィール】

■藤村龍至(建築家) 1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年より藤村龍至建築設計事務所主宰。2010年より東洋大学専任講師。2007年よりフリーペーパー『ROUNDABOUT JOURNAL』企画・制作・発行。2010年よりウェブマガジン『ART and ARCHITECTURE REVIEW』企画・制作。

建築家として住宅、集合住宅、オフィスビルなどの設計を手がけるほか、現代の建築、都市に関わる理論を発表し、建築系、思想系の専門誌などに寄稿を行う。建築や都市に関わるテーマでフリーペーパーや書籍、シンポジウム、トークイベント、ウェブマガジンの企画・制作・編集、展覧会のキュレーション等、メディア関連のプロジェクトを数多く手がける。近年は、公共施設の老朽化と財政問題を背景とした住民参加型のシティマネジメントや、日本列島の将来像の提言など、広く社会に開かれたプロジェクトも展開している。

主な建築作品に「BUILDING K」(2008)「東京郊外の家」(2009)「倉庫の家」(2011)「小屋の家」(2011)「家の家」(2012)。主な編著書に『1995年以後』(2009)『アーキテクト2.0』(2011)『3・11後の建築と社会デザイン』(2011)『コミュニケーションのアーキテクチャを設計する』(2012)。主なキュレーションに「超都市からの建築家たち」(hiromiyoshii, 2010)「CITY2.0」(EYE OF GYRE, 2010)「超群島 -ライト・オブ・サイレンス」(青森県立美術館, 2012)

■生貝直人(博士(社会情報学)、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教 1982年埼玉県生まれ。博士(社会情報学、東京大学)。2005年慶應義塾大学総合政策学部卒業、2012年東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。情報・システム研究機構融合プロジェクト特任研究員、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教、東京藝術大学総合芸術アーカイブセンター特別研究員、特定非営利活動法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事、総務省情報通信政策研究所特別フェロー等を兼任。

専門分野は日米欧の情報政策(知的財産、プライバシー、セキュリティ、表現の自由)、文化芸術政策。『情報社会と共同規制』により第27回テレコム社会科学賞奨励賞受賞。