CC BY-NC-SA

SACEM-FAQ

先月お知らせしたこちらの記事『フランスの著作権団体SACEMのメンバーがCCライセンスを使用できる試験的プロジェクトが始まりました』に関して、より理解を深めていただけるようFAQをご紹介したいと思います。訳注:以下、今回のSACEMの取り組みを「パイロット・プログラム」と総称します。

注記:以下のFAQは指針について大まかな情報提供を目的に、合同でSACEMとフランスCCアフィリエイトが独自に作成したものです。これらは法的助言を構成するものではなく、またそれに値するものでもありません。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの利用を決定する必要のある場合は、このFAQが一部の情報であることをご認識下さい。

私はSACEMのメンバーですが、どうすればこの取り組みに参加できますか?
非営利目的に限って作品の再頒布を許可する3つのクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのうち、いずれかの条件であなたの作品を公開することができます(次の項目をご覧ください)。ライセンスを適用する前に、著者・作曲者・出版社から作品に対する許可を得たことを確認し、録音された作品の実演版を利用したい場合は、問題となっている作品に付随する隣接権の保持者もCCライセンスの採用に同意するか十分な認識が必要です。

全ての著者・作曲者・出版社から作品に対しての許可獲得を確認後、どの作品にCCライセンスをつけたいのかをSACEMに伝え、ライセンスを選びます。sacem.frのアカウントにログインする、もしくは次の4ステップ“CCで作品を選ぶ” に従って選択作業を行なってください。:

1) クリエイティブ・コモンズ・非営利ライセンスをつけたい作品を選ぶ。
2) 3つあるクリエイティブ・コモンズ非営利ライセンスのうち1つを選択する。
3) パイロット・プログラムの条件に同意し、
4) パイロット・プログラムの条件に同意したことを確認する。

作品に適したライセンスを選んだ後、その作品のライセンス適用応方法について指示が提示されます。ここまでのステップを終えた時点で、オンライン上で作品利用を可能にするなど、ライセンス条件に従った作品の頒布が可能になります。

自分の作品にどのクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを適用できるのでしょうか?
非営利目的での利用を許可する以下のライセンスのうち、いずれか1つを選択することができます。

  • 表示—非営利 (CC BY-NC 3.0) このライセンスは非営利目的での作品のリミックス・操作・改変を許可しています。新しい改作品のクリエイターは元作品の権利者に同意し、非営利目的で利用するという許可を得なければなりませんが、同じCCライセンスを二次的著作物にライセンスをつける必要はありません。
  • 表示—非営利—継承 (CC BY-NC-SA 3.0) このライセンスは、非営利目的であり、かつ原作品の条件と同じCCライセンスをつけて公開するのであればリミックス・操作・改変を許可するというものです。
  • 表示—非営利—改変禁止 (CC BY-NC-ND 3.0) このライセンスは3つのうちで最も制限のあるものです。クレジット(氏名・作品タイトル・URL)を表示するのであれば、作品のダウンロード・共有は可能ですが、営利目的での利用や、非営利目的であっても改変は許されていません。

なぜ3つの非営利(NC)ライセンスから1つだけを選ばないといけないのですか?

このパイロット・プログラムは、音楽作品利用者からの著作権使用料を集めるSACEMの強みと、クリエイティブ・コモンズがオープン・ライセンス条件のもと音楽の頒布を可能にしているという強みを組み合わせています。
このパイロット・プログラムの一環としてライセンスのつけられた作品に対し、SACEMは営利利用によって発生した印税を収集する働きを、後述される“混合利用”の一部に非営利目的での利用が含まれない場合に限り、行ないます。3つのNCライセンスのうち1つが適用されていれば、その条件の原作品は非営利目的で自由に利用・頒布されることができるのです。これらの作品の自由な非営利利用を許可することは作品の広いプロモーションを望む著者に対して柔軟性を与え、彼らのファンに対しては頒布やリミックスを促します。

SACEMの主目的は会員の作品利用に対する印税を集めることなので、今回のパイロット・プログラムでは作品の非営利目的の利用を扱うCCライセンスの利用に焦点を当てることが決定されました。

営利目的であると考えられるライセンス作品の使用とはどのようなものですか?
SACEMメンバーによってクリエイティブ・コモンズ・非営利ライセンスの1つが適用されている作品に対し、以下の使用が営利目的であるとみなされます(つまりNCライセンス下では許可されていない利用であり、SACEMの契約に従ってSACEMへの印税の支払いが発生します)

  • 営利目的の団体による作品利用。
  • 金銭もしくはその他の形式・理由・動機に関係なく、また受益者が誰であっても、報酬を生じさせる作品利用。
  • 利益を受ける人が誰であろうと、いかなるプロモーション活動もしくは製品やサービスの促進や広告を目的とした作品利用。
  • 放送事業体や職場・店頭・販売スペースでの作品利用。
  • レストラン、バー、カフェ、コンサート会場などの公共の場での作品利用。
  • 収益を発生させる活動の一部となる、もしくは関連する団体による作品利用。
  • デジタル・ファイル共有やその他の方法によるCCライセンス作品とその他の著作物との交換。ただし直接的・間接的は関係なく、広告や資金提供の受領、また他の著作物との交換に関連した金銭取引が生じた場合のみ。

これらの利用は今回のパイロット・プログラムにおけるクリエイティブ・コモンズ・非営利ライセンスの範囲外であり、今後ともSACEMはこれらの利用形態に対してライセンス供与を行い、それに伴う著作権料を収集します。

非営利目的の利用とはどのようなものですか?
以下の利用は権利所持者と第三者の利益に関した金銭取引・収入が発生しない“混合利用”(後述する説明をご覧ください)の範囲内で、非営利とみなされるものです。

  • ブログやウェブサイトでのブロードキャスティング
  • ファイル共有
  • クリエイティブ・コモンズ非営利ライセンスのつけられた作品のストリーミングやダウンロード
  • クリエイティブ・コモンズ非営利ライセンスのつけられた作品の宣伝用レコーディング
  • 上記のようなレコーディングのパブリック・ブロードキャスト
  • クリエイティブ・コモンズ非営利ライセンスのつけられた作品のパブリック・パフォーマンス。ただしアーティスト出演料や照明、音響、会場料などの支出が発生しないもの。
  • 会場(教会、家、コンサートホール、公共イベント、インフォーマルな集まりなど)でのコンサート
  • 路上パフォーマンス
  • セミナーや会議
  • 学校(教育目的を除く)
  • 住宅マンションや公共の場の公共BGM
  • 民間の結婚式
  • 非営利団体の施設内でのBGM

上記のリストは非営利目的利用の例として挙げたものであり、制限的なものではありません。

バナー広告のあるウェブサイトによる音楽作品の利用は、営利と非営利どちらと考えられますか?
バナーが収益を生み出す場合、もしくは実費(訳注:サーバーの稼働コストなどを指していると思われます)を補う場合、いずれの場合も営利目的と考えられます。

自分の作品が営利目的で利用された場合どうなりますか?
SACEMとクリエイティブ・コモンズは全ての営利目的の利用はパイロット・プログラムの範囲外であると合意しています。この場合、SACEMが会員に代わり、表示規定に従ってクリエイティブ・コモンズ非営利ライセンス範囲外の作品の使用形式に合わせたライセンス供与と著作権料の収集を行ないます。

非営利ライセンスの作品が、異なるライセンス作品(NCライセンス以外)と組み合わせて使われる場合(混合利用)、どうなりますか?
SACEMメンバーによるクリエイティブ・コモンズ・非営利ライセンスが適用された作品と、CCライセンスが適用されていないSACEM管理下の作品が同じ同じイベントや活動において利用された場合、著作権料を徴収します。例えば、ある非営利組織団体が(訳注:”association loi de 1901”)年1回の会合でSACEMメンバーがCC非営利ライセンスをつけた作品と、CCライセンスがつけられていないSACEMメンバーの作品を流したとします。この場合、SACEMは作品の両カテゴリーから発生した著作権料を収集する権利があります。

なぜこのパイロット・プログラムを実施しているのか?
著作者のための団体として、SACEMは会員・著者・作曲者・出版社をマネージメントし、会員間で作品を流通させるために音楽作品のあらゆる利用者から著作権料を収集します。クリエイティブ・コモンズは著者に対し、いくつかの条件が合えば作品を自由に公開することを許可するライセンス基礎を発達させてきました。これによって著者は自由なオンライン流通の利用が可能になり、ファンは作品をリミックスしたり他の作品へ統合するなど、新しい楽しみ方ができるようになりました。また、このパイロット・プログラムによってSACEMとクリエイティブ・コモンズは、非営利目的で作品流通させたいSACEMメンバーに対し、CCライセンスの利用を可能にしています。同時に、SACEMは営利目的の作品に対してはこれまで同様、ライセンス供与・著作権料収集を続けることができるのです。このパイロット・プログラムはSACEMメンバーである作者たちに、より柔軟な選択肢を与えることを目的としています。

どのくらいの期間、このパイロット・プログラムは継続しますか?
2012年1月1日から2013年6月30日まで、18ヶ月間継続されます。

パイロット・プログラムの有効期間が終わった後、CCライセンス作品はどうなりますか?
パイロット・プログラム有効期間が終わると、SACEMメンバーはパイロット・プログラムの延長が無い限り(延長は保証されていません)、追加の作品へクリエイティブ・コモンズ非営利(NC)ライセンスを選ぶことを停止しなければなりません。しかし、有効期間が過ぎた後でも、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス期間内で発行された作品は、ライセンスとパイロット・プログラムの規定に従い利用の継続が可能です。 私たちは今回のパイロット・プログラムが、SACEMメンバーに期間終了後もCCライセンスの利用を可能にするような、構造化された解決策に繋がることを望んでいます。

CCライセンスと取り消したい場合、どうすればよいのでしょうか?
CCライセンスを無効にすることはできません。CCライセンスは作者の権利が存続する限り有効です。

どうすればこの度のパイロット・プログラムの成功に貢献することができるでしょうか?
SACEMメンバーとして、このパイロット・プログラムがもたらす柔軟性を利用することが貢献につながります。私たちは、皆さんがCC:NCライセンスをご自身の作品(の一部)に採用した際の反響を楽しみにしています。ご自身の経験についてのコメント報告はCreative Commons FranceもしくはSACEMで受け付けています。
あなたがSACEMメンバーでない場合、今回のパイロット・プログラムはあなたの作品へのCCラインセス適用には何ら影響を与えません(あなたの作品に寄与した可能性のあるその他全ての権利者からの許可がある限りにおいて)。あなたが自身の作品の商業的な権利を保持し、作品の営利利用から得る著作権料を収集するSACEMの強みを活かし、更に音楽の自由流通を可能にするクリエイティブ・コモンズの強みを享受したいと思うなら、SACEMメンバーになり、いずれかのNCライセンスを利用することを検討してください。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスにつてのより詳しい情報はこちらをご覧ください。

注記:これらのFAQは指針について大まかな情報提供を目的に、合同でSACEMとフランスCCアフィリエイトが独自に作成したものです。これらは法的助言を構成するものではなく、またそれに値するものでもありません。クリイティブ・コモンズ・ライセンスの利用を決定する必要のある場合は、このFAQが一部の情報であることを再度ご確認下さい。パイロット・プログラムについて不明な点や質問がある場合はSACEMにご連絡いただくか、パイロットのプログラムの規約をご覧下さい。

原文:SACEM-FAQ (CC Wiki)
執筆者:Paul Keller、その他 (履歴
http://wiki.creativecommons.org/SACEM-FAQ
最終修正日:2012年1月9日

メディアのオープン化を考える最新著作、CCライセンスで公開!

mediactive

ダン・ギルモア著『あなたがメディア! ソーシャル新時代の情報術』(平和博・訳、朝日新聞出版、2011)の第0章と解説部分の全文がCCライセンスで公開されました。

この本は、早くからメディアの双方向化、オープンソース化に取り組んできたシリコンバレーのベテラン・ジャーナリスト、ダン・ギルモア氏のメディアの最新著作で、メディアの最先端の現状を読み解き、そのメディアの変化が引き起こす課題を解説するとともに、その変化が生み出すチャンスを読者が活かしていくことを願って書かれたものです。フェイスブックやツイッターといった、最近注目を浴びているメディアに対する著者の考え方なども丁寧に紹介されています。そのなかで、ウィキリークス、東日本大震災といった事象を受けて日本語版の出版に合わせて書き起こされた「第0章 大震災、ウィキリークス、ビンラディンの死が示したメディアの未来」と、朝日新聞編集委員であり訳者の平和博氏の「解説 メディアで今起きていること」の全文ならびに目次が、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示・非営利・継承)で公開されています。

ちなみに、英語版は全文がWeb上で、またはPDFでご覧いただけます。

是非、あなたも読んでみてください!

国連大学メディア・スタジオ

国連大学のメディア・スタジオは教育用のリソースを開発、オンラインで提供するプロジェクトとして2003年にスタートし、国連組織や他大学の専門家と協力して様々なプロジェクトを実施しています。

スタジオのウェブサイトはクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで公開されているほか、各種プロジェクトを通じて開発された教材の多くがCCライセンスの下で提供されています。例えば「里山イニシアチブ」では里山やそれに結びついた文化が生態系保全にとって持つ意義を評価すべく、世界中の事例や、映像資料などを収集・提供しています。事例紹介はCCの表示-非営利-継承3.0 バージョンライセンスで提供されています。また、Strategic Environmental Assessmentでは、環境政策の策定に関する大学院レベルの授業を想定し、ウィキを使った百科事典作成のための場や、教材として使えるモジュールなどを提供しています。これらはいずれもCC表示-非営利-継承3.0 バージョンライセンス下にあります。

また、国連大学メディア・スタジオと同じサイトで公開されている国連のウェブマガジン「Our World 2.0」は地球環境問題などを扱ったものですが、クリエイティブ・コモンズの表示-非営利-継承3.0 バージョンライセンスで提供されています。フリッカーを通じて提供されているこのウェブマガジンの写真も、CCライセンスが適用されています。

Nine Inch Nailsが2枚のアルバムでCCライセンスを採用

2008年、音楽シーンを沸かせたアーティストの1つとして、Nine Inch Nailsは記憶に新しいところです。彼らは、2008年3月にリリースした『Ghost I-IV』、そして5月5日にリリースした『The Slip』の2枚を、CC BY-NC-SAライセンスで提供しました。また、『Ghost I-IV』は4枚組のうちの初めの1枚”Ghost I”、”The Slip”は全曲が無料ダウンロード可能です。
特に”Ghost I-IV”は、300ドルのウルトラデラックスパッケージ、75ドルのデラックスパッケージ、10ドルの2枚組CD、5ドルのダウンロード、そして4部作中第1部のフリーダウンロードとパッケージングとダウンロードを組み合わせた多彩なアルバム展開を行いました。そしてこのアルバムがCCライセンスを採用しているにもかかわらず、Amazon MP3ストアで2008年最も購入されたMP3アルバムに輝き、多くのチャートで1位を獲得するなど、収益面でも予想を上回る結果となったことも話題となりました。
レコード産業界はどのように音楽を販売していくのか、一方でレコード購入者がアーティストへどのようにサポートを行うことが可能なのか、まだまだ出口の見えない状況ではありますが、その方向性の1つとして、Nine Inch Nailsの今回の取り組みは評価できるのではないでしょうか。

Beep! Beep! Back up the Truck

「Beep! Beep! Back up the Truck」は、2008年5月に設立されたオランダのネットレーベルです。

CCライセンスによる自由な音楽は,より多くのリスナーに聴かれ、より多くのファンを生み出し、そうしたファンは美しいアートワークのCDを買い求め、ライブに足を運びバンドTシャツを買う…FAQにはこのようなインディペンデントレーベルの新しい可能性が宣言されています。

Magnatune

2006年にサービスを開始したMagnatuneは、CD及び音楽ファイルの販売を目的としたネットレーベルです。全曲フリー試聴できる上に、非営利での利用については「帰属ー非営利ー継承」のライセンス条件で無料で利用することができます。

音源を購入する際はアルバム1枚につき5ドルから18ドルの範囲で購入者が支払う金額を自由に決めることができます。またライセンス契約も使用対象の規模に応じて金額が上下し、小規模の範囲であれば低く、大規模であれば高く料金が設定されています。アーティストが全ての権利を保有し、売り上げはMagnatuneとアーティストで山分けする、という方式も、これまでのレーベルでは考えられなかったやり方です。Magnatuneはその斬新なビジネスモデルで注目を集めています。

楽曲検索はとてもシンプルな構造です。例えばこれは「classical」のページ。バリエーション豊富なアーティストの中からお気に入りの曲をじっくりと探すことができます。

ついコン

はてなグループ「ついったー部」に集った、総勢49名のtwitterユーザーによって制作された、オリジナルコンピレーションアルバム「ついコン2!~realtime result for you~」の音楽データ27曲が、CCライセンス(BY-NC-SA)で公開されています。

ついコンこと『ついったーコンピレーションアルバム』の概要等はこちらに掲載されています。
楽曲のダウンロードはこちらから。
デジタルな感触の楽曲が多いですが(ひんやりしたものからズンドコしたものまで)、ポップスやロック調の曲もあり、多彩な楽曲が揃っています。twitterユーザーならではの歌詞も楽しめます。
個人的には、アイスランド周辺で鳴らされているかのようなAPAZOMEさんの「x」という曲が綺麗だと思いました。
皆さんも是非聴いてみて、お気に入りを見つけてみてください。twitterに感想を書くのも良いかもしれません。


例えばJamendoのようなウェブサイトでCCライセンスが付与された音楽に触れることができますが、今回のようにジャケットデザイン等を含めて、ひとつのパッケージとしてCCの音楽が提供されると、利用の幅がひろがる印象があります。

アンサイクロペディア

「可能な限りもっとも無駄な形で、もっともきつい皮肉とユーモラスな方法でもって、世界に嘘情報を広めること」をその使命とする「Uncyclopedia(アンサイクロペディア)」の記事は「表示ー非営利ー継承」のCCライセンスで公開されています。

「Encyclopedia(百科事典)」をもじったこの辞典は、「嘘と偽りでいっぱいの百科事典」「百科事典に『サイケ』を持ち込んだもの」などの説明がなされています。アンサイクロペディアに載せられている記事がCCライセンスで公開されています。

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