[iSummit]教育コモンズ

三日目のワークショップでは,教育におけるコモンズという題目でセッションが開かれました.南アの国連大学の研究員,ブロガー,アフリカ・コモンズ, MITのOneLaptopPerChild,仮想ゲーム世界Second Lifeといった多様なプラットフォームの開発者が集いました.


Cory Ondrejka

米カリフォルニアのLinden Labs社のSecond Lifeは,ここ数年で急成長を遂げているMMO(マッシブ・マルチプレイヤー・オンライン)ゲームです.既に30万人の会員数を誇るこのオンライン・コミュニティは,ユーザーに多くの能動性を与えている事でも知られており,世界で初めてユーザーがゲーム内で制作したコンテンツの著作権をユーザー自身に認めた事でも有名です.そのおかげで,ユーザーはゲーム内で作成したコンテンツ—制御スクリプト付きの3Dオブジェクト—を自由に現実の通貨で販売したり,またはCCやGPLといったライセンスで配布する事が可能になっています.
このプレゼンテーションでは,いかにSecond Lifeが教育と経済の新しいプラットフォームとして機能し得ているかという事が提示されました.その事を示す一つの指標として,例えばWikipediaのような恊働制作のプラットフォーム上でさえ貢献ユーザー(投稿者)とROMユーザー(閲覧者)の比率を考えた時、参加率は数パーセントに満たないことに対して,Second Lifeではユーザーの60%が何らかの制作をゲーム内で行っているそうです.この数字はウェブ全体の制作者率が10%に満たないことを考えれば,異常に高いものだという事が分かります.この高い参加率の結果,実に様々なプロジェクトがSecond Life内で起こっています.あるゲーム開発者はSecond Lifeの中でパズル・ゲームを制作し,ユーザーのフィードバックを得てからそのゲームを実際に制作・販売し,ビジネスを立ち上げました.ある精神医学の研究者は,幻覚の調査のために,Second Life内にバーチャル幻覚ルームを作成し,1,000人以上の被験者から学術的に有意なデータを採集することに成功しました.航空ロケットに関心を持った人が自身でロケットのモデルを再現した所,様々な人々が集って世界中の歴史的なロケットをアーカイヴし,その挙動をシミュレートする博物館が建設されました.また,Second Lifeの中でミニ太陽系を制作し,宇宙科学に関するビデオ教材を作成してクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで公開した人もいます.
Linden Labs社のCory Ondrejkaは,Second Life内の状況を指して,今までの「仕事VS遊び」や「アマチュアVSプロ」といった二項対立は既にリアリティを失っていると主張します.このSecond Lifeの事例は,その他多くのオンライン・ゲームも含めた仮想世界内の新しい現実感とそれに付随する新たな経済圏の創出を象徴していると言っても過言ではないでしょう.


Pete Barr-Watson


電子ブックとしてのOLPC(OLPC公式ホームページより

そして,CCJPの第2回セミナーにも出演したPete Barr-Watsonによって,MIT Media LabのOne Laptop Per Child(一人の子供に一つのラップトップPCを)プロジェクトが紹介されました.これは簡単に言えば,ネットやPCにアクセスできないでいる世界中の発展途上国の子どもたちに,最高品質のラップトップPCを分け隔てなく無償で与えるというプロジェクトです.このために,MITと契約を結んだ最初の七カ国(中国,アルゼンチン,ブラジル,エジプト,タイ,南アフリカ,ナイジェリア)の政府は,およそ一台につき135米国ドルという低価格で数百万台規模で購入し,各地域の4歳から14歳の子どもたちに支給していきます.2007年第一四半期の出荷後には,一気に1000から1500万人の子どもたちがリナックスOSを使用して勉強を開始するという,社会的な革新が予定されています.
詳しくはプレゼンテーションのPDF(PDF, 338KB)をご覧頂ければ分かりますが,このとても可愛らしいデザインのラップトップの中には最先端の技術が多くの企業の無償投資によって詰め込まれています.基本OSはRed Hat Linuxの特注ディストリビューションがプリ・インストールされ,802.11sという新規格のメッシュ・ネットワーク対応の無線LAN機能は1.5kmの通信範囲を誇り,3M社によって開発された7.5インチのディスプレイは超高輝度であると同時に電子インク的な無電源表示モードも兼ね備え,そして人力の電源供給インタフェースも実装される,といった具合です.殆どの関連企業が無償に近い形で投資をしている背景には,このラップトップが世界的に普及した時には1000万から1500万というユーザー層がマーケティング上孕む価値を見越しているからですが,MIT Media Labのディレクターのニコラス・ネグロポンテ氏は「このプロジェクトの目的はただ一つ,One Laptop Per Childであり,それ以外の隠された意図はないし,またあってはならない」という強い意志を表明し,各界の参加を促すための強いリーダーシップを取っていることも無関係ではないでしょう.
Peteはクリエイティブ・コモンズとOLPCの関係を築くための活動を開始しています.ICommonsの正規プロジェクトとして,シャトルワース財団と共同で,CCライセンス下で配布される教材をSourceForge的なオープンソース開発と共有を行えるポータルの開発を開始したり,また子どもたちにも理解できるようなものに既存のCCライセンスを翻訳・再設計するプロジェクトが立ち上がったりしています.もちろん,MITが開始したOpenCourseWareのCCライセンス付きの教材も,この連携に関係してくるでしょう.このプロジェクトには誰でも参加できるので,ご興味のある個人・企業の方は次のURLをチェックしてみてください.

▷ iCommons 教材カリキュラム・プロジェクト:http://wiki.tsf.org.za/iCommonsiCurriculum

▷ CC-OLPC メーリングリスト:http://lists.ibiblio.org/mailman/listinfo/cc-olpc

Peteが何度も強調していたことは,このOLPCが普及すれば,最も早くて4歳からクリエイティブ・コモンズやオープン・ソースの概念に慣れ親しみ,コンテンツの制作やソフトウェア開発を始める子どもたちが世界中に生まれる事の意味の大きさです.特に,MITとの契約の条項の一つとして,各国の政府は全ての対象年齢層の子どもたちにこのラップトップを支給する義務を負っているので,本当の意味で「全ての子どもたち」がこの機械を与えられるのです.例えばブラジルでは,既に初日のCreate!ワークショップで紹介されたPontos de Culturaという国内に千カ所規模で設営されるフリースタジオなどでこのOLPCと連動した教育プログラムなどが構想されているようです.

このセッションでは,Second Lifeのような先進国における新たな仮想経済圏の創出が行われる一方で,後進国における子どもたちの大規模なレベルでのオープン・コンテント/ソース文化への参入,という重要な革新が同時多発的に起こっていること,そして,その両方において,クリエイティブ・コモンズが重要な役割を果たしている,または果たそうとしていることが浮き彫りになりました.次世代の経済や文化は案外,教育という,もっとも困難でもっとも課題の多い分野を通してその姿を表わすのかもしれません.

文責:[DC]

[iSummit] 文化コモンズ:音楽・映像・マルチメディア

I: Music, video and multimedia: the cultural commons

二日目のワークショップの中でも,実に多様な発表が重なったのがこの音楽,映像とマルチメディアに関するセッションでした.中でも注目を浴びていたのがアメリカの動画配信サービス「Revver」であり,実際にクリエイターと企業が収益を上げている実例に会場の関心も集中していた感があります.

最初にブラジルのTRAMA/TRAMA VIRTUALという大規模な音楽PV,楽曲配信サイトのプレゼンテーションがありました.CDアルバムをCCライセンス付きで販売し,サイト上でMP3の楽曲を公開しているという,ブラジル国内でも類を見ないビジネスモデルによって注目を浴びるこのレコードレーベルは13,000人以上のアーティストによって34,000曲を収蔵しており,ユーザー・コミュニティは300,000人を誇っています. 
http://www.tramavirtual.com/

ブルガリアでは3Dモデリングのコミュニティに,CCライセンスとオープンソース・ソフトウェア(Blender / GIMP)を利用したCGのコンペティションを開催したり,voxxという楽曲制作のパブリック・ワークショップのレーベルがCCライセンスを利用したりといった個別のプロジェクトの他にも,OpenProjectsFoundationという現地のフリーソフトウェア財団とクリエイティブ・コモンズが提携して作られた団体が,C3 (Creative Commons Center)という,機材の利用は無償だが制作物はフリーで公開されるというようなルールで運営される文化施設の計画も展開しています.
www.graphilla.com
www.voxxlab.org
www.openprojectsfoundation.org/

アメリカの動画配信サービス「Revver」は「Super Distribution」(超流通),「Sustainable Creativity」(持続可能な制作環境)というキーワードを掲げ,ユーザー自身が作り上げるコンテンツ(Customer Generated Media)の流通に透明性を与えることを強調しています.そのために,配信する動画の最終1フレームを静的なハイパーリンク広告として挿入するシステムを実装し,企業とビデオ制作者に広告収入が50/50で配分することを可能にしています.また,アフィリエート・プログラムもあるため,ブログやSNS上で紹介するユーザーにも収益が入って来るシステムになっています(音楽でいうWeedshareライセンスと比較できるかもしれません).
実例として,EepyBirdというビデオ制作者は大人気を博した結果,$25,000以上を広告収入として稼ぎ,またビデオの中で利用された無名の音楽家は自身のプロモーションにも繋がり,1000枚以上のCDが売れたそうです.Revverに掲載されているビデオは全てCC:BY-ND(改変禁止,複製共有可能)でライセンスされており,映像コンテンツとアフィリエーションを交えたCC的ビジネスモデルの成功例としても脚光を浴びています.
www.revver.com
EepyBird.comの制作したビデオ

文責:[DC]

[iSummit] Create!ワークショップ:制作系プロジェクト

1日目—Creative Workshop:Creative Models

このワークショップは,クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを利用し,実際に制作や文化普及などの活動を実践している様々なプロジェクトの紹介と,それぞれの改良をオープンに議論するセッションに分かれて開催されました.

まず,Creative Commonsでソフトウェア開発を担当しているNathan Yergler氏によって,CCソフトウェアの紹介が行われました.これらのソフトはSourceForge上でも公開され,それら自体がオープンソース・プロジェクトとして展開しています. http://wiki.creativecommons.org/Developer
MozCCはMozilla ブラウザ用のプラグインとして開発されました.これはブラウザ上でCCPLの埋め込まれたページであるかどうかを利用者に伝えるためのものであり,CCPLのマシン・リーダビリティ(機械判読性)をデモンストレートするためにも開発されました.
次にCCのウェブサービス・アプリケーションが紹介されました.一つ目のccPublisherは,Internet Archive上に自作のコンテンツをメタデータと共にアップロードする一連のプロセスを簡潔に行えるデスクトップ用のツールです.
次のccHostは,音楽共有サイトccMixterのバックエンドとしても知られていますが,これは主に誰でもサーバー上にccMixterのようなコミュニティ・コンテンツ・サイトを設置できるアプリケーションです.CcHostの目的の一つは,どのコンテンツがどのように/誰によってリミックスされたが可視化されることによって,利用者たちが二次利用の連鎖を理解できることです.
またYergler氏は,こうしたソフトウェアの開発にとってコミュニティの支援やフィードバックが大きな助けになっている事を確認しました.

次に,南アフリカのシャトルワース財団のJason Hudsonが展開しているFreedom Toasterプロジェクトが紹介されました. www.freedomtoaster.org
この計画は,自動販売機のような筐体の中に,フリー・ソフトウェアを詰め込んだPC端末を埋め込み,人々が自由にDVDに焼き込んで持ち帰ることを可能にしています.主に通信帯域の低いアフリカや発展途上国といった地域でフリー・ソフトウェアがより普及するために作られており,中身も廉価PC,ウェブブラウザー,そしてDVDRW機器のみで構成されており,低コストで制作が可能になっています.
コンテンツはリナックスのディストリビューションと各種のドキュメンテーション,FLOSS(Free and Libre Open Source Software)つまりオープンソースのソフトウェア全般,そしてコミュニティによるCCコンテンツのアップロードによって構成されています.今後の課題としては各国語版へのローカライゼーションが挙げられていました.
こうしたプロジェクトは日本のような先進国でも有効でありうると思われます.例えば美術館や公園のような公共の場に実装すれば,人々がふらっと訪れた時に様々な自由コンテンツにアクセスできるようになり,ウェブ以外でのセレンディピティ(偶有性)が高まることが考えられます.

その次にオランダ,アムステルダムのNGO「Tactical Technology Collective」(タクティカル・テクノロジー・コレクティヴ)によって紹介されたNGO-in-a-BoxプロジェクトもFreedom Toasterと共通の性格を持つプロジェクトでした.
http://ngoinabox.org/
世界中のNPO(非営利組織)やNGO(非政府組織)の活動家たちがもっとITを活用して組織のコミュニケーションを効率化できるように,様々なオープンソース・ソフトウェアをパッケージ化し,そのドキュメンテーションを各国語に翻訳することを目的としています.

次には,ブラジルの文化施策とも連動しているEstudio Livre(エストゥジオ・リブレ,オープンなスタジオという意)のプロジェクトが今回のサミットに合せて新調されたウェブサイトと共に紹介されました.ブラジル政府が推進するPontos de Cultura(ポントス・ジ・クルトゥラ,文化的ホットスポットの意)の一環として展開されているこのプロジェクトは,Wikiで構築されたオープンな映像・楽曲・画像のアーカイヴをユーザー達の参加によって醸成させていくことを目的としており,個々人の創造性を高めるためのヴァーチャルなスタジオとして機能することを目指しています.Pontos de Culturaはブラジル国内に千カ所以上もの実際のスタジオを建設・運営して,各地域での文化情報教育を促進させると同時に,こうしたオンライン・コミュニティを通したネットワークの形成とグローバルなコミュニケーションを可能にする,という戦略を採っています.

最後にマイクロソフトのMartha Nalebuff(Director, Intellectual Property Guidance, Microsoft)氏が登壇し,Microsoft Officeに実装されたCC書き出しツールについて解説しました.
まず,どうしてマイクロソフトのように,主にプロプライエタリなソフトを開発・販売してきた企業がクリエイティブ・コモンズに関心を寄せているか,という事が次のように説明されました.
▷ MSは以前より,patternshare.orgというソフトウェアコミュニティ上でCCライセンスを利用している
▷ MSはソフトウェアの多様な生態系の構築に関心をもっている
▷ MSは商業的,プロプライエタリな領域と同時に非営利組織とも仕事をしている
▷ MS Officeのユーザー層に,さらに多様な選択肢と革新的なツールを提供したい
– 著作権に対する意識を深めてもらいたい
こうした理由を述べると共に,DRM(Digital Rights Managementデジタル著作権保護)とDRE(Digital Rights Exrepssionデジタル著作権表現)は対立する概念ではなく,共存ができるという主張がなされました.
世界最大のOSディストリビューターであるMS社が,CCに参画したことの意味は少なくないでしょう.この事例により,より多くの商業ドメインの企業体がオープン・コンテントの領域に参画することは,ユーザーや開発者たちにより多くの強力な選択肢を提供するからです.

これら発表の後に行われた参加セッションでは,各発表者を囲んで参加者たちが自由に意見やコメントを交わし,ディスカッションが行われました.特に各プロジェクトにおける翻訳の問題については,様々な国や地域から来ている参加者たちからの多様な意見が反映されていた事が興味深かったです.また,Second Life(3日目のEducation Commonsを参照)は発表は無かったけれど実際にゲーム世界内で,どのように情報共有が出来るか,コンテンツを制作できるかという点に焦点を当てたワークショップが数台のPCを利用して行われました.昨今,物理世界とは独立した経済圏を構築し注目を浴びているSecond Lifeの仮想世界の中で,オープン・コンテントが生成される様は実に刺激的な光景でした.

文責:[DC]

クリエイティブ・コモンズ・ジャパン 第2回セミナー開催予定

CCJPは月例で,クリエイティブ・コモンズに関する情報を提供する公開セミナーを東京で開催しています.

次回は7月14日(金)に「iSummitのご報告 〜 世界のクリエイティブ・コモンズの動きと未来」という題目で,ブラジルで行われたCreative Commons世界会議の報告プレゼンテーションを行います.
ブラジル文化大臣でトロピカリズモ運動の提唱者の一人でもあるジルベルト・ジル,『Free Culture』,『Code』などの著作で知られるCC創立者のローレンス・レッシグ教授,世界最大のオンライン百科事典「Wikipedia」創立者のジミー・ウェールズ氏,SF作家でありブログ「Boing Boing」のライターでもあるコリー・ドクトロー氏などが参加し,その他にも世界中の様々な自由文化の事例が共有された会議についてご報告します.

またスペシャル・ゲストとして,クリエイティブ・コモンズのビジネス・デベロップメント担当者にして,近年は米国MITのOne Laptop Per Child (OLPC) プロジェクトにも携り,Macromedia Flashコミュニティ界のベテランでもある Pete Barr-Watson氏に,OLPCとCreative Commonsの連携についてプレゼンして頂きます.

Pete Barr-Watson:
http://creativecommons.org/about/people#62

One Laptop Per Child:
http://www.laptop.org/

直前のご案内で恐縮ですが、ご興味のある方は、ぜひご参加ください。

日時: 7月14日(金) 午後16:00から18:00(進行に応じて多少の延長あり)
場所: 学術総合センター 12階 会議室 (当日、看板などでご案内します)
101-8430 東京都千代田区一ツ橋2-1-2
http://www.nii.ac.jp/map/hitotsubashi-j.html
定員: 最大60名まで
参加方法: 
お名前、所属、ご連絡先メールアドレスをご記入の上、
info AT creativecommons DOT jp までご連絡ください.

*セミナー後の懇親会は、予算を食べ物・飲み物込みで5000円以内になるように,学術総合センターに近い神保町近辺のお店を手配する予定です.こちらのほうも、ご都合があえば是非ご参加ください.

7月14日 第2回セミナーを開催します

みなさま

下記の要領で開催するCCJPのセミナー第2回に、CC本部の「ビジネス・デベロップメント」担当であるPete Barr-Watson氏がゲスト・スピーカーとしてきてくれることが決定しました。

そこで、今回の第2回セミナーでは、6月末に行われたiSummitの報告会を最初の1時間行い、その後、Pete氏に簡単なプレゼンをしていただき、さらに、米国その他でのCCを用いたビジネス・デベロップメントの最先端についてQ&Aなどを交えてお話いただくことを予定しています。(通訳は、CCJPのスタッフが逐語で行います。)直前のご案内で恐縮ですが、ご興味のある方は、ぜひご参加ください。
なお、すでに参加申し込みをされている方は、もう一度ご連絡いただく必要はありません。

日時: 7月14日(金) 午後4時から6時(場合によっては多少延長あり)
場所: 学術総合センター 12階 会議室 (当日、看板などでご案内します。)
     101-8430 東京都千代田区一ツ橋2-1-2
     http://www.nii.ac.jp/map/hitotsubashi-j.html
定員: 最大60名まで
参加方法: お名前、所属、ご連絡先メールアドレスをご記入の上、
        このメールに返信してください。

なお、懇親会については、予算を食べ物・飲み物込みで5000円以内になるように、学術総合センターに近い神保町近辺のお店を手配する予定です。前回のメールでは、概要があまり明確でなかった点、お詫び申し上げます。こちらのほうも、ご都合があえば、是非ご参加ください。

[文責:のぐち]

[iSummit] 二日目の基調講演

二日目(6月24日)の基調講演では、CC本家の理事であるJames Boyle、米国の音楽アクティビストのJenny Toomeyサイエンス・コモンズJohn Wilbanks、そして最近CCに対して多少批判的な論文を書いたイスラエルの法学教授Niva Elkin-Korenが講演した。

もっとも興味があったのは、Niva Elkin-Koren教授のCC批判と、それに対するLessigやBoyleといったCC理事たちの反論だった。NivaのCC批判の要点は、複数のライセンスから著作権者に自分のニーズに合ったライセンスを選択させる、という「選択の自由」を認めていることが、結果的には、ライセンスの相互互換性を失わせたり、CCライセンスの作品の利用に一定の制限をかけたり(例えば、一定のライセンスは他のライセンスと組み合わせができない、など)、そのためにCC作品を利用する人たちにライセンスのルールの理解やチェックなどの負担(取引費用)をかけることになって、CCの目指す「自由」を逆に制限することになっているのでは、ということだった。したがって、Nivaは、「CCが推奨したい自由」をもっと深く掘り下げ、その「自由」のみを反映するようにCCライセンスの種類を減らして、よりシンプルな体系を作るべきではないか、と主張した。

これに対して、LessigやBoyleは、何が著作物の利用、または文化の発展において、コアな「自由」であるのかは、CCが決めることではない、という反論をした。彼らが最初にCCを始めた頃、彼らには彼らなりの「コアな自由」に対する明確なアイディアがあった。しかし、実際にCCを開始し、色々な分野の人たちやさまざまな権利者に対してCCのライセンスを説明する過程で、社会のさまざまな人たちが求める「自由」とはなんと多様であるのか、そして自分たちが想定していた「自由」といかに社会の実態が異なるのかを痛感することが何度もあった、という。そこから、彼らは、その分野において人々が欲する「自由」はその人たちが決めるべきことだ、それに答えるための選択肢を用意するのがCCの役割だ、という考えに次第に移っていったと言う。また、「これが、コアの自由だ」とCCが決めてそれを受け入れるように、とリクエストしても、人は簡単には受け入れないだろう、という現実的な問題もある、というコメントがあった。そうすると、彼らは「自分たちのニーズとずれているCCライセンスは、採用しない」という結論を出して、そこで終わってしまう。それならば、多少、選択肢が増えて複雑になるとしても、CCライセンスを採用して、多少なりとも自由に貢献しよう、という人たちの全体数が増えるほうが良いのではないか。

この議論から、CCの理事たちのスタンスが、自由とは、その作品が発表されるコミュニティにおける「社会規範」としての自由であると捉えていることが良く分かりました。Nivaは、むしろ、CCが、世の中に普及すべき「自由」を定義して引っ張っていくべきではないか、という発想に立っていて、そういう意味ではむしろ、FSFのリチャード・ストールマン的なのかな、と思いました。

[iSummit] 各国での取り組み

1日目の最後に、CCの各国における取り組みを紹介する時間がありました。CCJPも発表しましたが、そのほかに、CC台湾、CCイタリア、CCポーランド、CC南アフリカがそれぞれ発表しました。こちらでは、そのダイジェストを。

CC台湾では、CCライセンスを採用する著作権者が、CCライセンスをつけることの意味をよく理解できるように、CCライセンス採用の過程で「著作権者向けのコモンズ証」のようなページを表示する試みをしている。つまり、たとえば、BY(表示)ライセンスを付す人には、「あなたは、このライセンスをつけると、他人にこの作品を自由に複製、頒布、展示、実演すること、二次的著作物を作成すること、営利目的で利用することを許諾します」といったページが表示されるのである。これにより、著作権者の意思をきちんと確認する、という狙いがあるということだった。また、台湾では、CCの当面の活動資金を政府からの予算でまかなっており、それを使って、CCグッズやポスターの製作・頒布による啓蒙活動や、CCの音楽を使ったBurn & Sellフェスティバル(CC音楽をCDに焼いて売ろう!フェスティバル)などを開催している、ということだった。

CCポーランドでは、CCライセンスの意義を世の中に分かってもらう前段階として、まず、著作権意識を高めることが先決である、という点を強調していた。つまり、ポーランドでは、著作権の遵守意識があまり高くないため、CCライセンスがなくても著作物利用は自由!?ともいえる状況がある。また、著作権法を良く分からずにCCライセンスを誤って用いている人もいる、ということだった。日本も、多少似た部分があるかも!?と思った事務局の野口でした。

CC南アフリカでは、CCを使ったプロジェクトとして、政府主導の教育プロジェクトであるThutong 、米国についでCCの音楽コミュニティであるCCMixter SA、南アメリカのクリエーターをサポートするNPOであるLiquid Fridgeなどが紹介された。

しかし、一番感心したのはCCイタリア。今年9月スタート予定の、「SeLiLi プロジェクト」と呼ばれるCCライセンス・ヘルプデスク・プロジェクトである。CCイタリアでは、CCライセンスに関する質問が非常に多いにもかかわらず、それに対応するキャパシティがなく、「弁護士に聞いて下さい」といえば費用もかかるため、これらの質問に対応する体制を何とか作りたいと考えていた。そこで、地方政府から予算をもらい、CCイタリアとは別のグループとしてSeLiLiプロジェクトを立ち上げ、専門のスタッフを雇って、電話・emailなどからの質問を受け付けるほか、週に1度、オフィス・スペースに人を常駐させ、音楽などを流してサロン的な雰囲気を作りつつ、そこへCCに興味のある人に自由に来てもらって、対面で相談に乗れるような氏組を考えている、という。そこで、まずは、質問をFAQなどにすでに掲載されている基本的な質問か、個別に弁護士などに相談するべき質問か、技術的質問か、ビジネス的な質問か、などに振り分け、それぞれ、個別に回答する必要のあるものは回答する。SeLiLiプロジェクトを利用した利用者は、その結果をWeb上で報告する義務があり、これらの報告の蓄積により、長期的には90%近くの質問がWeb上で解決されることを目指す。このプロジェクトの立ち上げにあたって、もっとも心を砕いたのは、実はプロジェクトのマニュアル作りだそうだ。政府からの資金で行っているプロジェクトであるため、皆に対して公平な体制であること、対応の統一化、報告のシステムの統一化、などがきちんとしていることが重要だ、という認識に基づいているという。CCイタリアでこのプロジェクトを推進しているJuan Carlosは、大学教授の傍らCCイタリアの普及に取り組んでいる人で、「いやぁ、大変だよ」と言いながらも充実したプロジェクトに対する自信を覗かせているところがとっても印象的だった。

各CCが、それぞれ工夫を凝らしているのを目の当たりにして、勇気付けられるとともに、各CCでそれなりの規模のプロジェクトを成功させている裏には、ほとんどといってよいほど、政府からの資金援助がある、という実態にもまた、考えさせられた野口でした。

[iSummit]CCライセンス関連訴訟

CCポリシー・ワークショップの3つ目は、これまでに提起されたCCライセンス関連の訴訟もしくは紛争の紹介だった。

一つ目はスペインの訴訟(Badajoz事件、英語の判決はこちら)。CCの音楽を流しているバーのひとつ、Bar Metropolに対して、音楽著作権管理団体であるSGAEが公衆での演奏(Public performance)の使用料の徴収を請求した事件。Barのオーナーは、SGAEに登録している権利者ではなくCCでライセンスされた音楽を流していると反論。判事は、Barのオーナーの反論を採用し、「音楽著作権者は自己の望む方法で著作権を管理することができる。BarのオーナーがSGAEのレパートリー以外からも音楽を調達することが可能であることを示した以上、SGAEの方で、Barで演奏された音楽は自分のレパートリーからのものであることを証明する義務がある。SGAEがその証明をしなかった以上、BarのオーナーはSGAEに音楽使用料を支払わなくて良い。」この判決の結果、スペインのBarでは最近、CCの音楽が大流行。

会場では、Barのオーナーはどうやって訴訟をする費用を調達できたのか、という質問があった。CCスペインからは、このBarのオーナーは社会運動などにも興味のある人で、いわゆる政策形成訴訟の一環としてこの訴訟を行ったのだろうというコメントがあった。

次の訴訟は、CCオランダからの紹介で、A. Curry v. Audax/Weekendという事件(判決の英語版はこちら)。事案としては、Adam Curry(MTVのビデオ・ジョッキーやラジオ番組のインタビューアなどを務めたことのある芸能人)が、CCライセンスBY-NC-SA 2.0バージョンで自分の家族の写真をFlickrで公開していたところ、この写真の何枚かが“Weekend”という商業タブロイド誌に掲載された。2006年3月9日、アムステルダム地方裁判所はCurryの主張を採用し、以下のとおり判決した。すなわち、CurryはFlickrにおいて、自分が著作権を有する写真をCCライセンスのBY-NC-SAでライセンスしており、このライセンス条件は一般の人にも認識可能な状態で表示されていたから、Weekend誌はこの使用条件を確認する義務があった。Weekend誌は商業誌であるから、このうちの「非商業(NC)」の条件に違反している。Weekend誌は、Flickrのページ上に”This photo is public”という記載があったことから、パブリック・ドメインかと思った、という主張をしたが、採用されなかった。よって、結論として、Weekend誌はCCライセンスの条件に違反して写真を掲載したため、著作権違反であると判断された。ただし、この判決では、この無断掲載による経済的損失はゼロであると判断された。判事によれば、この写真はすでに、無料で公表されているため商業的な価値はすでに失われているから、という。

この事件の影響で、CCライセンスされたものは経済的に価値が無いのではないか、という誤解が一部に生じているのは遺憾なことだ、というコメントがあった。例えば、日本における裁判であれば、少なくとも「その著作権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」を損害賠償として請求することができるから(著作権法114条3項)、異なる判断になるだろう。

最後は、フランスでの紛争(いまだ裁判にはなっていない)。フランスでは、BY-NC-ND2.0ライセンスのもとで公表されていた音楽がテレビ放送で用いられた。氏名表示も行われておらず、また、番組放映にあたって改変も行われていた。そのため、CCフランスは、TV局に対して、CCライセンスを解説し、利用はライセンス違反であったことを説明。いまだ話し合いを続けているが、裁判所へ提訴する費用は、受け取ることができるかもしれないライセンス料よりも高額になることも予想されるため、裁判をするかどうかは不明である、とのことであった。

[文責:のぐち]

[iSummit]CCと著作権管理団体

CCポリシー・ワークショップの2つ目は、CCと著作権管理団体との関係についてのセッションだった。

ヨーロッパにおいて、CCと著作権管理団体との関係が注目されている。ヨーロッパでは著作権管理団体での管理が包括的かつ独占的であるが、著作権者には、楽曲によって、あるいは局面によってCCライセンスを選択する自由があるのではないか?という問題提起がなされている。米国では、音楽の演奏権の管理団体であるBMIやASCAPは、その管理が非独占的なので、音楽家は音楽を商業CDなどで出版しながら、同時にCCライセンスをつけて公表することもできる。しかし、ヨーロッパでは、そのような処理は許されていない。現在では、著作権管理団体に自分の作品を委任するか、またはCCライセンスをつけるかの二者択一を迫られており、著作権管理団体に委任しなければ、強制許諾料(放送などの強制許諾の利用料)を受け取ることもできないため、結果としてプロの音楽にCCライセンスをつけることが事実上極めて困難になっている。

CCライセンスと著作権管理団体における利用を両立させるためには、二つの方法がありうる。ひとつは、楽曲ごと、または権利ごとにCCライセンスを利用したいものについては著作権管理団体での管理から外す権利を権利者に与えること。しかし、それよりも望ましい解決として、商業利用に関する権利は管理団体に残し、非商業的利用に関してだけ自己管理によるCCライセンスを認める、という方法である。

これらの考えのもと、近年、欧州では著作権管理団体とCCとのミーティングも行われているという。そこで管理団体から表明された問題点としては、(1)音楽の自由利用を認めることが結果的に音楽の価値を下げるのではないか、 (2)CCライセンスにどれが対応しているのかを管理するための手間やデータベース改変の費用をどうするか、、(3)著作権管理団体を通じての放送局などへの包括ライセンスに影響が出るのではないか、(4)一度CCライセンスを採用すると、その期間に流通したコンテンツについてはCCライセンスを撤回できない、などの問題(悲観的な意見)などが指摘された、という。

これらについては、CC側では、いずれも誤解または解決できる問題として、今後も継続的に議論をしていく方針である。具体的には、(1)大前提として、作家には自分の作品をどのような条件で公表するかを決定する選択権を与えるべきである、(2)露出が増えることによって情報の供給源が増え、結果として需要が増える側面もある、(3)商業的な包括ライセンスについては、非商業部分だけのオプト・アウトを認めれば問題が出ないはず、(4)ライセンスの撤回については、CCだけでなく全てのオープン・ライセンス共通の特徴である、(5)効率的なデータ・ベースのアップデート・システムについては検討の余地がある、といった議論を継続していくとのことだった。具体的には、オーストラリア、フランス、オランダなどで、実際に公式または非公式の議論が始まっているということだったが、CCの仕組みそのものや、そのポテンシャルなどについて十分理解が得られていない面もあり、実務的な問題もあり、両者の合意点を見出すには時間がかかりそうだ。

[文責:のぐち]

[iSummit] CC本部の体制について

CCポリシー・ワークショップの1つ目は、CC本部の組織、役割分担、各国プロジェクトとのかかわり方についての基本を確認するものだった。

まず、CCライセンスの各国への展開に関する法律的な側面を担当しているCCi (CC international、本部ベルリン)のクリスチアーナ(Christiane)がCCiの役割を説明した。コアの役割は、CCライセンスを各国の著作権法化すること、それに対応するFAQをつくり、説明すること。それを通じて著作権法のエキスパートの国際的ネットワークを作りあげることが、CCのひとつの成果だ。現在、80カ国と覚書を結んでおり、各国法化するに当たってのいくつかの重要な論点の整理や、過去の経験の蓄積とフィードバックを行っている。その際、最も重要なことは、CCライセンスの裁判所における執行可能性(enforceability)を最大限確保すること。

ライセンスに関しては、今年、バージョン3.0へのバージョン・アップが予定されている。現在の一般(Generic)ライセンスは、実は米国法に基づいたものなので、これを、「米国版」のライセンスと位置づけ、まだ国内法化したライセンスを持たない国々向けに、条約の文言を基本にした本当の一般ライセンスを作る。それに伴い、著作者人格権に対する対応など、各国法ライセンスで扱いをより統一したほうが良いものについても、必要により変更を加える予定。その他、WIPOにおける知的財産政策においても情報のインプットなどを行っている。

次に、ヘザー(Heather)がiCommonsの概略をプレゼン。iCommonsは、CCその他、より自由な、または柔軟な文化を育て(incubate)、つなげる(connect)ことを役割とするプラットフォームを目指す。各国で行われている取り組みで学んだ経験や情報を共有し、それに携わる人々・プロジェクトのネットワークを作る。

CCiとiCommonsの違いは、CCiがCCの一部として、その意味の統一性を担保するために必要最小限のポリシーによるコントロールなどを行い、CCの世界共通化を図るのに比べて(これは、クリエイティブ・コモンズという商標を維持していくために必要とされる要素)、iCommonsは、CCを使ったプロジェクトなどをCCとは独立に自由に行うためのプロジェクトで、そこにはコントロールの要素が極めて少ない。

また、サンフランシスコのCC本部の法務担当(General Counsel)のミア(Mia)は、CCの法務の役割として、CCの名前が世界中で統一的な意味を持つよう(異なる意味で用いられることのないよう)注意するよう呼びかけた。

CTOのマイク(Mike)は、各国のライセンスに共通して利用される技術の部分(ライセンス・エンジンなど)を担当するほか、将来的には、各国プロジェクトのためのブログなどのツールを用意したり、各国プロジェクトの情報をWebを通じてアップデートするためのより機能的なシステムの構築などを目指す。

[文責:のぐち]